47NEWS >  共同ニュース >  北京五輪 >  スカウト現場に異変  過渡期の中国スポーツ
 伝統を重んじる古都が、国際基準の祭典を前にどう変わろうとしているのか。五輪の街角から報告する。
 世界のトップアスリートが集う五輪を直前に控えて変わりゆく中国。北京五輪開催の意義を、多様な観点から聞いた。

スカウト現場に異変  過渡期の中国スポーツ

中国雲南省西部の大理市。白族自治州体育学校の柔道場では、OBで省体育職業学院の劉煥堂・柔道監督(35)が十歳前後の生徒の練習に目を光らせていた。気になる子どもは呼び寄せて運動能力テストの数値から親の身長、スポーツ歴までを問いただしメモを取る。

中国雲南省大理市の白族自治州体育学校で柔道の練習をする生徒=3月(共同)

学院のスカウト拠点となる自治州や市、県レベルの体育学校は、日本とほぼ同じ38万平方キロに約3900万人が住む雲南省で78校ある。全国で3000以上ともいわれるこうした体育学校こそ、「挙国体制」を支える中国スポーツ強化ピラミッドの底辺だ。

その現場で異変が起きている。自治州体育学校の王懐科・柔道コーチ(34)は「10年前は“付け届け”をもらうくらいだったのに、今は10軒回って2、3人」と、年々難しくなるスカウト事情を打ち明けた。経済発展と1人っ子の増加で「今ここに来る子の家は昔のようにものすごく貧しいか、逆に裕福かの両極端になっている」。

かつて全寮制の体育学校にわが子を預ける親の説得で何より効いたのは、一定レベルに達すれば引退後も就職をあっせんするといった「生活の糧」だった。しかし市場経済化の進展に伴い、地区政府などが世話できる国有企業はリストラの対象となった。たった1人の子どもに「つらい思いをさせたくない」と考える親も増えたという。

劉監督が、半年前に入学した肖波くん(14)に目を留めた。初めて練習を見にきた母顧麗祥さん(41)が不安げな視線を送る。顧さんも夫もリストラされ、今は低賃金の短期労働で生活をつないでいる。「この厳しさを見ると心が痛む。でもスポーツでいい仕事が見つかるかも」。成功のチャンスは少ない。「だから授業もちゃんと頑張ってほしい」と付け加えた。

練習後、長男が省代表チームにいる楊鵬程さん(39)が監督にあいさつに訪れた。「息子が好きなことをしているのが一番。駄目で帰ってきてもわたしの仕事を手伝えばいい」。家業のタイヤ販売店の経営は順調だ。

日本とは比べものにならない格差が存在する中国。経済的な「勝ち組」と「負け組」が、ここでは共存している。

体育学校で20年間働いてきた袁紅校長(44)は「中国のスポーツは変革の過渡期」という。「生活のため」から「競技への愛情や興味のため」へ。生活に余裕のある層が広がれば、スポーツに親しむ子どもも増える。同校長は「その中からトップを目指す人材も出てくる」と楽観的だ。

21年前、この学校から省チーム入りした劉監督は「将来は国が丸抱えするやり方はなくなり、欧米や日本のように協賛企業が支えるシステムになる」とみる。「その時、中国は今よりもっと強くなる」と、姿を変えたスポーツ強国の出現を予想した。(共同)



 最新のニュース


ロード中 関連記事を取得中...