『ど・スピリチュアル日本旅』たかのてるこ著 失笑、苦笑の列島巡礼エッセー

新刊レビュー 2014/09/01 10:25

エネルギッシュであけっぴろげ、陽気な体育会系女子が旅先で出会った人たちの情に触れ、人生と世の中を学んでリフレッシュする。読んで元気が出る紀行エッセーの王道ここにあり。著者の場合、これに大阪人のノリツッコミとおばちゃんキャラが加わって、失笑、苦笑のリポートになっている。

ベストセラー『ガンジス河でバタフライ』をはじめ、世界各国一人旅を映像と声と文章で報告してきた著者が初の日本巡礼の旅に出た。

高野山、伊勢神宮、アイヌの里、佐賀の農家民宿、沖縄離島と、旅先の多くは確かにタイトルのようにスピリチュアル度の高い場所なのだが、それ特有の厳かさやあやしさをちっとも感じさせないのは、ひとえに俗でポップな著者のキャラによる。「日本人の心のふるさと」伊勢神宮への道ゆきなどは、同行した「おかん」の無神経な言動にいちいちブチ切れる娘と母のゴタゴタ場面しか印象に残っていない。

行く先々で初対面の人たちと意気投合し、決まったように宴会が催され、「また来てねー」と別れるのは著者の人徳。神事に遭遇し、夜這いに遭い、オバアスナックで狂乱の一夜を過ごすなど、書くネタが尽きないのは著者の強運。

けれども根はマジメな旅人に導かれ、この世にはいろいろな所でいろいろな人が生きていて、いろいろな幸せの形があるという今さらながらの事実を私たちもあらためて知ることになる。写真に写った旅先の人たちが、みんな格別の笑顔を見せているのが印象的だ。

(幻冬舎 1400円+税)=片岡義博

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