社説・論説

  • 【北海道新聞】

    あまりに激烈な発言である。米国のトランプ大統領が初めて国連総会の演説に臨み、北朝鮮に対して「米国や同盟国を攻撃から守る必要に迫られれば、完全に破壊するしか選択肢がなくなる」と警告した。トランプ氏はこれまでも北朝鮮への軍事攻撃を示唆してきたが、見過ごすわけにはいかない。言葉での過激な挑発が軍事的緊張を高めることになりかねない。米軍が先制攻撃に出れば、北朝鮮の反撃が予想される。犠牲者は北朝鮮の一般市民、そして韓国や日本に及ぶ恐れがある。軍事衝突はなんとしても避けなければならない。米国は北朝鮮との直接対話を含めて、外交交渉によって問題の解決を目指すことが不可欠だ。トランプ氏は演説で「核・ミサイル開発を無謀に追求し、全世界に脅威を与えている」と北朝鮮を非難し、国際社会が結束して圧力を強めるよう呼び掛けた。北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど挑発行為を重ねていることは断じて許されない。経済制裁により、北朝鮮に国際的な圧力をかけることも重要である。気になるのは、演説からは衝突を回避し、対話に導こうという戦略がうかがえないことだ。トランプ氏は横田めぐみさんを念頭に日本人拉致事件も非難した。拉致問題を世界にあらためて知らしめた意味は大きい。だが、拉致問題も、北朝鮮との交渉なくして進展は望めまい。対立を深めるばかりでは解決の道はさらに遠のく。トランプ氏はこれまでも「(北朝鮮は)炎と怒りに見舞われる」と軍事攻撃を示唆してきた。一方で政権内からは慎重な声も発信されてきた。今回もトランプ氏の演説後、マティス国防長官は外交手段を尽くす考えを示し「ティラーソン国務長官がその取り組みを主導している」と述べた。トランプ氏の言葉に踊らされず、慎重な対応が求められる。こうした中、危うさを感じるのが、安倍晋三首相の言動である。安倍氏は今週、米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し「北朝鮮と対話しても行き詰まる」との見方を示した。その上で「すべての選択肢がテーブルにある」との米国の立場を全面的に支持している。これでは軍事行動も支持しているようではないか。安倍氏は米国に追従するのではなく、トランプ氏に対話を促す責務がある。

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  • 【河北新報】

    原子力規制委員会は安全のための議論を全うしたのかどうか、疑問が拭えない。再稼働を目指す東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が、規制委の安全審査に合格する見通しになった。小早川智明社長はきのう、事業者としての「適格性」容認の条件だった「安全文化の確立」について、2基の保安規定に明記すると確約した。規制委は合格証に当たる審査書案を10月4日にも了承する。審査を始めた2013年当時から規制委は「優先すべきは福島第1原発の問題解決」と言い続けてきた。柏崎刈羽の技術的審査に加え、福島での取り組みをにらみ、全体の適格性を見極めるという姿勢は筋が通っていた。しかし、4年を経過した今月になって、従来の厳格な対応が一変。規制委は、「福島第1の廃炉をやりきる」などとした東電側の決意表明を評価し、「適格性はある」と信認の方向に転じた。経営陣らの決意と現状の適格性の評価とは別のものだろう。保安規定への記載にしても、どれだけ安全確保に実効性があるかは明確でない。東電は未曽有の事故を起こしたが、詳細な原因は解明されていない。しかも廃炉の道筋は手探り状態だ。今なお県外への避難者は3万数千人に上り、約30件もの集団訴訟を起こされている。こんな状況で東電に他の原発を動かす資格、能力があるとは信じ難く、場当たり的な方針転換に映る。2基は福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉。安全への国民の懸念は残ったのではないか。今年は審査終盤に入ってのトラブルも目立った。柏崎刈羽の免震重要棟の耐震性不足を把握しながら何年も事実を隠していたことが2月に発覚。7月には、放射性物質トリチウムが残留する処理水の海洋放出方針を巡る会長発言で、釈明に追われた。規制委はその都度「審査は進められない」「住民に向き合っていない」と指摘。経営陣を呼び「主体性のない事業者に再稼働の資格はない」と一喝した。その厳しさは、粘り強く安全文化を醸成していくためではなかったのか。柏崎刈羽は、東北電力女川2号機(宮城県女川町、石巻市)など、後に続く同じ沸騰水型のモデルとして優先して審査された。日程的に先を急いだ感は否めない。田中俊一委員長の任期中に合格の道筋を付けたかったという内輪の事情もささやかれるが、もし事実なら原子力行政の信頼性も問われよう。たとえ合格しても再稼働には地元の同意が不可欠だ。米山隆一新潟県知事は「福島の検証が終わるまで(再稼働を)認めるつもりはない」と語っている。住民本位のぶれない判断こそ、立地自治体の長に最も求められる。あす就任する更田豊志新委員長は、適格性の根拠を真っ先に説明する責務がある。

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  • 【東奥日報】

    電気自動車(EV)普及への取り組みが世界規模で本格化してきた。自動運転技術の開発も加速している。移動という人類の基本的な要望を100年以上にわたり担ってきた車の概念が大きく変わる。飛行機などと違い、人々の近くで日常生活を支えてきた車が飛躍的な進歩を遂げ、利用方法も転換されれば、暮らし方や価値観にも大きく影響を与えることになりそうだ。電動モーターを動力源とするEVの普及は裏返せば、ガソリンなどを燃料とするエンジンとの決別でもある。これを地球規模での環境改善や、産業の高度化に向けた追い風にしたい。エンジンは機関内で燃料を燃焼し、そこで生じた力を、変速機などを通じ車輪に伝える。こうした複雑な仕組みを作動させるには約3万点の部品が必要になるため、メーカー本体に下請けの部品企業などが連なる構造が効率的だった。部品数が多い分、雇用の創出にもつながっていた。これに対しEVの構造は極めてシンプルだ。基本的には電池とモーター、これをコントロールする制御機器があればいい。部品数はガソリン車に比べ極端に少ないが、基幹部品の電池の性能向上や車体に使用する新素材開発はこれからが本番。自動運転技術も、実用レベルに到達するには、まだまだ改善が必要とされる。自動車産業は、動力源がモーターに移行するプロセスで、関連産業や雇用が、部品製造から電池開発などに拡散していくことになるだろう。EVは走行距離が短いことなどがネックだったが、フランス、英国が、環境対策の一環で2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する目標を打ち出した。中国もこれに続く方針を示し、世界の名だたるメーカーが大きくEVにかじを切った。激しい開発競争が見込まれる中、出遅れ気味だった日本は、トヨタ自動車とマツダが資本提携に合意、EVの共同開発を加速させる方針だ。世界で最も売れているEV「リーフ」を擁する日産自動車は今月、新型モデルを発表、先駆者として首位を死守する構えだ。EV本格化に伴う技術開発は各メーカーの努力はもちろんだが、産業としての潜在力を考えれば、政府も必要に応じ支援策を講じるなど、官民挙げた取り組みを加速させるべきではないか。

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  • 【デーリー東北】

    日朝平壌宣言15年複合的なアプローチを(9月21日)北朝鮮が核実験やミサイル発射という軍事挑発を続ける中で、平壌(ピョンヤン)を訪問した小泉純一郎首相と金正日(キム・ジョンイル)総書記が会談し「日朝平壌宣言」を発表して15年が過ぎた。北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイル「火星12」は北海道上空を通過し、飛距離は過去最長の3700キロに達した。6回目の核実験に続く、許し難い暴挙だ。「日朝平壌宣言」では「双方は、国際法を順守し、互いの安全を脅かす行動をとらない」と確認している。北朝鮮は金正日総書記が署名した宣言を踏みにじる行為を続けている。国際社会は国連安全保障理事会による経済制裁などで圧力を加えているが、北朝鮮の暴走を阻止する有効な手段がなく、手詰まり状況だ。軍事的手法を取れば、北朝鮮の報復攻撃で韓国は多大な被害を受けるだろう。それは日本にも及ぶ可能性が高い。まどろっこしくとも外交的手段で解決するしかない。北朝鮮の核ミサイル脅威が高まる中で、拉致問題の進展はない。拉致被害者家族の高齢化は進む一方だ。拉致問題の解決を求める「国民大集会」が開かれたが、横田めぐみさんの両親の横田滋さん、早紀江さんは体調不良や疲労で初めて参加を見送った。滋さんがビデオメッセージで振り絞るように語った「めぐみちゃんと、早く、会いたい」という訴えは重い。日朝平壌宣言では「懸案問題」という表現で拉致問題の解決が確認されている。また、双方は「国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注する」としていた。さらにミサイル発射の一時停止や日朝間の安全保障協議も含まれている。日朝平壌宣言はほごになった紙切れなのだろうか。そうではないはずだ。宣言は金正日総書記が署名した文書だけに、北朝鮮もこれを破棄したとは言っていない。北朝鮮はこの宣言の精神に立ち返るべきだ。安倍晋三首相は「今こそ最大の圧力をかける時だ」と主張するが、単純な圧力だけで核ミサイル問題や拉致問題は解決するだろうか。圧力で相手を変化させる構想が必要だ。中国やロシアを巻き込むことや、北朝鮮を変化させる対価の提示、水面下の非公式協議など複合的なアプローチが必要なのではないか。北朝鮮情勢一つを見ても、解散、総選挙で政治的空白をつくることは許されない。選挙期間中に北朝鮮のミサイル発射があるかもしれない状況だ。北朝鮮の暴走を利用した党利党略と言われても仕方ないだろう。

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  • 【秋田魁新報】

    秋田市は、地域づくりや地域課題の解決に取り組む町内会などに対する従来の交付金の対象を本年度、大学生や市民グループにも広げた。次代を担う若者のアイデアを実現させたり、町内の枠を超える活動を活発化させたりして、住民の自主性を街づくりに生かすのが狙いだ。市は2005年の旧河辺、雄和両町との合併後、市民と行政が共通の目的を達成するための「協働」と、身近な課題を地域で解決する「地域分権」を重点目標として打ち出した。こうした住民主体の自治の充実を促すため11年に創設したのが「地域づくり交付金」である。交付額は1〜3年目まで1団体当たり年間上限50万円。市内七つの市民サービスセンターごとに配分先を決める。これまで町内の防災活動や交流事業、健康づくりなど延べ500団体が利用。本年度の予算は2500万円で、町内会などへの交付額は1センター当たり約170万〜420万円となっている。新設した学生グループ(交付上限10万円)と市民グループ(同50万円)の枠には総額200万円を充て、住民活動の一層の活性化を図る。先月末に開かれたプレゼンテーションでは、応募した大学生の3団体全部と12市民グループのうち5団体の事業が採択された。主な活動内容は、学生団体では地域課題を自ら解決しようとする高校生の育成や県内企業と連携した中学生の職業体験支援など。市民グループはスロージョギングを通じた健康づくりや子どもの貧困問題対策、放置されている柿の収穫事業などだ。それぞれの活動を住み良い街づくりにつなげてほしい。県によると、秋田市と類似の助成制度は今年7月現在で県内に21市町村にあり、4年前と比べ5市町増えた。ビジネスの手法で地域振興を目指す「コミュニティービジネス」への補助も4市町増の10市町村になった。自治体による施策は、地域によって課題が異なるのに一律的になりやすい。それだけに住民自身が主体的に動いて課題を解決する手法は、少子高齢化が進む中で重要性を増している。住民にとっても地域を見詰め直し、自治や政治への関心を高めるきっかけになるはずだ。一方、行政も地域の課題をすくい上げ、政策に反映させる努力が一層必要になる。交付金などによる地域づくりは、住民に任せるだけではいけない。地域の実情に応じたさまざまな住民の実践例を紹介し、他地域の参考にしてもらうなど面的な取り組みが求められる。リーダーとなる人物がいないため、課題があっても十分対処できない地域もあるだろう。交付金の申請がないから、課題がないと捉えてはならない。地域間格差を招かないためにも、行政は相談窓口の設置で済ませるのではなく、助言者らを派遣するなどして積極的に人づくりを推進してもらいたい。

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  • 【岩手日報】

    衆院の解散、総選挙は、もはや決定的なようだ。安倍晋三首相は週明け25日に記者会見を開き、28日召集の臨時国会冒頭で解散する意向を示す見通しだ。同時に争点に類する話もするという。首相不在で強まる解散風。その大義は論者によってさまざまに解釈される。常日ごろ常在戦場とされる国会議員にして、今回の解散には与野党問わず戸惑う向きが少なくないようだ。首相に近い筋からさえ疑問の声が上がる。一般国民は、なおさらだ。今の改造内閣が発足したのは8月3日。安倍首相は「結果本位の仕事人内閣だ」と胸を張ったものだ。一度も国会を経ず、各閣僚の所信すら満足に伝わっていないのに「結果」をどう判断するべきか。北朝鮮が挑発行動を繰り返すさなかでもある。安倍首相周辺の関与が疑われる森友学園や加計学園の問題で、世論調査は国民の大多数が納得していない現状を示す。野党が憲法に基づき要求していた臨時国会が、審議もせずに冒頭解散とあっては、国民の声にも憲法の要請にも背を向けていると言わざるを得ない。週明けには首相の口から大義が示されようが、衆参両院ともに与党が圧倒的多数を握る中で、流動化する野党勢力の足元を見透かすように解散に打って出るのは、政局的な意味は認めても極めて内向きな印象がある。首相の説明いかんでは、解散の是非そのものが争点になるだろう。衆院の解散権は首相の専権とされるが、憲法に明確な規定はない。解散に関する条文は二つ。衆院で内閣不信任となった場合に10日以内の衆院解散か内閣総辞職を定めた69条と、7条が定める天皇の国事行為の中の「衆議院を解散すること」という項目だ。天皇の国事行為は「内閣の助言と承認」によるから、内閣に権限がある−とするのが7条解散の解釈だ。内閣を主導するのは首相。実質的に、解散は首相の胸三寸ということになっている。司法は三権分立の建前から「権限の外」と憲法判断を回避。いわば消極的に認める立場だが、毎回600億円を超える国費と人員を投入して行われる衆院選が、首相の意のままに実施可能な今の仕組みには疑問が拭えない。日本が議院内閣制のモデルとする英国では、2011年の法改正で首相の解散権を制限。議会で3分の2以上の同意を得なければならなくなった。ドイツやフランスも解散権を制限するなど、先進各国が首相権限を厳格に縛る傾向にあるのは見逃せない。日本の衆院解散の仕組みは今のままでいいのか。安倍首相が好む「戦後レジーム(枠組み)からの脱却」は、この観点でも議論の余地がある。(2017.9.21)

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  • 【福島民報】

    【介護事業再生】不十分な人材確保策(9月21日)東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で不足している相双地方の介護人材の確保に向け、復興庁は2018(平成30)年度予算の概算要求に11億円を盛り込んだ。初めての措置で、職員を派遣する福祉事業所への補助制度の新設や就労希望者への就職準備金の引き上げなどが柱となっているが、対策としては不十分だ。県の調査によると、震災前に双葉郡で介護サービスを提供していた特別養護老人ホームなど48事業所のうち7月1日までに地元町村で事業を再開したのは全体の4割弱にとどまり、人材確保支援を求める回答が目立った。こうした現状を踏まえ、県は支援強化を来年度政府予算要望の重点項目に位置付けていた。ただ、支援内容を見ると現場の実態を十分に踏まえた対応とは言い難い。介護人材の不足は全国的な傾向だ。各地で事業所紹介などを実施しても、県内で働きたいという人を見つけるのは容易でないという。被災地や中山間など条件不利地域であればなおさらだろう。現行の就職準備金制度は一定期間勤務すれば返済が免除される。一時的に効果があっても、将来にわたって人材が定着するかは不透明だ。そもそも介護報酬をベースにした職員給与は復旧・復興関連事業の影響で高騰する相双地方の他の職種に比べると見劣りがする。だからといって、施設の改修など将来を見据えた事業所運営を考えた場合、そう簡単に給与は引き上げられないのが現状だ。こうした状況を打破するためには地元での人材育成が必要との指摘が関係者から出ている。確かに地元で就職したい、地域福祉に貢献したいという若者は少なくない。行政、事業所、職業訓練施設や専門学校などが連携し、若者が地元で介護福祉士の資格を取得し、就労しやすい環境や仕組みを整えれば、若者の定着にもつながる。ロボット産業の集積を目指す相双地方であれば、介護現場へのロボットの積極導入により、先進的で魅力的な職場づくりもできるのではないか。先述したように介護人材不足は人口減と少子高齢化に伴う全国的な問題だ。そのため「被災地に限った話ではない」と支援に消極的な役人もいると聞く。震災と原発事故で先鋭化した地方の課題はまず被災地で十分に予算を投じて解決策を練り、全国のモデルにするぐらいの発想をなぜ、持てないのか。その場しのぎ程度の施策に予算をつけるだけでは対策を講じたとはとても言えない。(早川正也)

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  • 【福島民友新聞】

    住民が再び古里で暮らすことができるよう帰還困難区域の復興へ着実な一歩を踏み出したい。政府は、双葉町が申請していた特定復興再生拠点(復興拠点)の整備計画を認定した。復興拠点は、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のインフラ復旧と除染を一体的に進めて、5年後をめどに避難指示を解除するために整備する。地元の自治体が作った計画を国が認めることで国費で整備を進めることができる。双葉町の認定は帰還困難区域がある7市町村で初めてだ。双葉町は、帰還困難区域が町の96%を占め、原発事故の発生から6年半が過ぎた今も全町避難が続いている。住民の「帰りたい」という願いに応えられるよう町は国、県と一体となり整備計画を具体化し、復興を前に進めてもらいたい。整備計画によると、町はJR双葉駅を中心とした約560ヘクタールに住宅地をはじめ、医療・福祉や商業施設などの整備を想定する。さらに農地の再生や、工場用地の整備など産業集積の拠点を設ける。町は、2020年3月末までを目標とするJR常磐線の全線開通に合わせて駅周辺の一部と避難指示解除準備区域の避難指示を先行して解除し、22年春までに拠点全域で避難指示の解除を目指す。解除準備区域には国が復興祈念公園を整備する。これら施設と連動させてまずは町ににぎわいを取り戻し、避難住民の帰還につなげたい。町は拠点を整備することで、約6000人の住民のうち2割強となる約1400人の帰還を見込む。しかし昨年度の国の意向調査では「戻りたい」と答えた住民は約1割にとどまる。町は商店の再開や企業誘致などに尽くし、拠点の機能を引き出すことが大切だ。帰還困難区域を抱える自治体のうち、南相馬市を除く浪江、大熊、富岡、葛尾、飯舘の5町村が復興拠点の整備計画を作成中で、本年度中の認定を目指している。整備の目的は大熊が町の中心部の再生、浪江が山間地復興の拠点づくりなどで、原発事故の影響や復興の進度により異なる。国と県には各町村の実情に柔軟に対応し、計画作りや事業の推進を後押しすることが求められる。復興拠点の線引きについて県は、拠点外となった住民に「置き去りにされている」という不安が生まれることを懸念する。政府は本県の復興加速の基本指針で、帰還困難区域の避難指示を将来的に全て解除すると明記している。政府は、それが実現されてこそ本県の復興が初めて果たされるということを忘れてはならない。

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  • 【茨城新聞】

    5年に1度の中国共産党大会が10月18日に開幕する。トップの習近平総書記(国家主席)が再選され、既に党の「核心」となった習氏への権力集中がさらに進む見通し。大会終了後の第19期中央委員会第1回総会(1中総会)で習氏2期目の新指導部が発足する。習氏は、国内では汚職摘発と政治的引き締めに力を入れ、外向きには海洋権益を拡大し、現代版シルクロード構想「一帯一路」を提唱する大国外交を推進してきた。党大会後、習氏は強権政治をより先鋭化させる可能性もある。日本でも同時期に総選挙を経て新内閣が発足するとみられる。政府は中国新指導部の動向を見極め、入念に対中政策を練るべきだ。党大会で注目されるのは、習氏の権力基盤の強化に関わる指導部人事と党規約の改正だ。党の中枢、政治局常務委員会は、現在7人で構成する。68歳定年制のため、通常であれば、習氏と李克強首相を除く5人が引退し、ポスト習時代を担う「第6世代」の若手が登用される。有力候補として、習氏に近い陳敏爾・重慶市党委書記、栗戦書・党中央弁公庁主任らの名前が挙がる。習氏は党中央軍事委員会人事で軍部掌握も強める構えだ。党規約改正では、習氏の「治国理政」(国政運営)に関する新思想が盛り込まれ、習氏の権威付けが行われるもようだ。人事を巡り、さまざまな臆測も流れている。一つは、反腐敗闘争をけん引してきた常務委員、王岐山・党中央規律検査委員会書記の処遇についてだ。習、王両氏は多数の汚職官僚を摘発し、党内で恨みを買った。腹心を失いたくない習氏は、王氏の定年を特例で延長し、常務委員として残すのではないか、との見方だ。このほか、習氏は5年後、慣例を破り3選を狙うとか、総書記の上の「党主席」ポストを復活させ就任するなどの観測も出ている。だが、恣意(しい)的にルールを変えれば、権力闘争を招く恐れもあり、先行きは不透明だ。王毅外相は習氏の外交思想の特徴として「平和的発展と民族の復興」「協力と共栄の新型の国際関係をつくり、人類運命共同体を築く」を挙げて平和主義を掲げる一方、東・南シナ海の領有権争いや台湾、香港問題など「核心的な利益」に関わる問題では譲歩しないとの立場を強調した。2期目の習氏の外交・安保方針が変化するのか、注意深く観察していく必要があろう。7月、安倍晋三首相は習氏の「一帯一路」構想に条件付きで支持を表明し、日中首脳は両国の関係の改善に努力していくことに合意した。党大会後、日中首脳は早期に関係修復の意思を改めて確認し、積極的な対話を行うべきだ。北朝鮮の6回目の核実験や度重なるミサイル発射で、東アジアの緊張が高まる中、トランプ米大統領が11月、日中両国を歴訪する見通しだ。北朝鮮の核兵器開発阻止のためには、米中両国が積極的な役割を発揮することが期待され、米中首脳の連携は極めて重要だ。政治、経済、軍事の総合的な国力を増す中国の動向は、地域と世界の平和と安定を大きく左右する。中国は言行を一致させ、覇権を求めず、国際協調と平和主義を信奉する「新興大国」を目指すべきだ。国内の民主化に向けた政治改革と経済の安定維持も不可欠だ。

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  • 【信濃毎日新聞】

    自民党が憲法9条に自衛隊を明記する案を含め、改憲4項目を衆院選公約に盛り込む方向で検討に入った。4項目について党内の議論はまとまっていない。生煮えの案を書き込むのは政党として無責任すぎる。自民の公約づくりに厳しい目を注ぎ続けなければならない。9条への自衛隊明記は安倍晋三首相が5月の憲法記念日に突然打ち出した。戦争放棄の1項、戦力不保持と交戦権否認の2項はそのままにして、自衛隊の存在を書き込むのだという。自衛隊は安保法制により専守防衛の枠をはみ出る存在になっている。9条に書き込めば戦争放棄の理念は空洞化する。容認できる話ではない。9条以外の改憲項目もそれぞれ問題を抱える。教育無償化は財源確保のめどが付かない。緊急事態条項は政府権限を肥大化させ国民の権利が制約される危険をはらむ。参院選の「合区」解消は国会の在り方の根本に関わる。4項目を巡り自民党内の議論はばらばらの状態だ。特に9条については、戦力不保持、交戦権否認条項の削除をうたっている2012年の自民改憲草案と、首相の憲法記念日メッセージとの整合性を問う声が収まらない。そんな状態の中で、どうやって4項目を選挙公約に書き込もうというのか。保岡興治・党憲法改正推進本部長は「議論の状況を(公約で)紹介したらどうかと思っている」と述べている。無責任な発言だ。公約集に項目を並べておき、選挙で自民が多数を確保したら「国民の信任を得た」として改憲手続きをさらに前に進める—。そんな思惑があるとすれば、有権者軽視も甚だしい。そもそも今は衆院を解散して国民の信を問わなければならない緊急課題は存在しない。本来なら臨時国会で森友・加計問題の審議を重ね、政権の信頼性をたださなければならない場面である。それなのに首相は臨時国会冒頭で解散しようとしている。国政運営が行き詰まっているわけでもないのに議員の首を切るのは、解散権の乱用そのものだ。疑惑隠しと言われても仕方ない。首相は加えて、消費税率を10%に引き上げる際に使途を組み替え教育財源を拡充する案を公約に入れ込もうとしている。借金返済を先送りする人気取り政策だ。本当に国民のことを考える政党はどこか、有権者の眼力が問われるときが間もなくやってくる。(9月21日)

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  • 【新潟日報】

    地価の二極化地域をどう守っていくか需要と供給という経済原則に基づくデータが、人口減少が進む地方の厳しい現状を映し出した。地域の先行きに懸念が募る。安倍政権は「地方創生」を打ち出しているが、実体的な効果は表れていない。国や県は総力を挙げ、地域振興を粘り強く後押ししていかなければならない。ことし7月1日時点の都道府県基準地価が発表された。商業地の全国平均は前年比プラス0・5%で、9年ぶりに下落が止まった前年から上昇幅が拡大した。県内商業地の平均変動率は25年連続の下落となったが、下げ幅は7年連続で改善した。新潟市の商業地は県内唯一の横ばいとなり、26年ぶりにようやく下落に歯止めがかかった。地価の回復傾向にはほっとさせられるが、そうしてばかりもいられない。全国でも県内でも、地価の二極化が進む傾向に変化がうかがえないからだ。商業地では東京、大阪、名古屋の三大都市圏が3・5%の上昇だった。不動産需要の高まりや日本銀行の金融緩和による投資マネーの流入が要因だ。地方でも札幌、仙台、広島、福岡の4市が平均7・9%の高い伸びとなった。地価が高騰する三大都市圏から投資マネーが流れ込んだことが理由だという。一方で、これら4市を除く地方圏では調査地点の7割近くで下落が続いている。金融緩和の恩恵が及んでいる地域が限られることの証明だろう。こうした二極化傾向は地方の中にも見える。4市の地価の上昇率は、それぞれの市がある道や県全体の平均を上回る。本県も同じだ。県内では商業地以外も含めた全用途平均の上昇地点は2桁増となったが、上昇地点はいずれも新潟市だった。山間地や離島は依然下落基調にある。新潟市以外でも下落幅は縮んできてはいるものの、県内の専門家は「下がるところまで下がり、縮小しているにすぎない。世帯数まで減少し、危機的状況の市町村もある」と指摘している。東京への人口一極集中を是正する必要性が叫ばれて久しい。同時に、地方圏の大都市一極集中についても課題として認識する必要があるといえよう。とりわけ、山間地や離島を含む広い県土を有する本県にとっては見過ごせない。新潟市とそれ以外の地域との二極化がさらに進めば、県全体の活力を維持することが難しくなる。大切なのは官民が問題意識を共有し、地域を守り、その魅力を発信する取り組みを地道に積み重ねていくことだ。県内各地で住民がさまざまな知恵と工夫を凝らして多彩なイベントを展開し、地域外からも大勢の人を呼び込んでいる例がある。国や県、市町村にはさらなる積極的な支援を望みたい。来月の衆院選が確実視されている。既に憲法や安全保障、消費税などのテーマに注目が集まっているが、地方や地域の振興も国の将来に関わる重要な問題である。そのことを忘れてはならない。

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  • 【中日新聞】

    紆余(うよ)曲折の末、東芝の半導体子会社の売却先が決まった。大きなハードルを越え再建に向けて前進するが、主力事業の育成、企業統治など課題は山積する。なによりも経営の刷新が不可欠となる。半導体子会社「東芝メモリ」の売却先は二転三転した結果、六月に優先交渉権を与えた日米韓連合で決着した。米投資ファンドを中心に韓国の半導体大手、東芝も含めた日本企業が出資。議決権の過半は日本勢が握り、雇用や技術の流出を防ぐ。米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)との訴訟が続くため政府系ファンドの産業再生機構、日本政策投資銀行は当面、出資を見合わせる。訴訟の行方次第では一連の手続きが白紙に戻るリスクも残るが、一応の結論が出たといえる。東芝はすでに東証一部から二部に格下げとなっている。独占禁止法の審査があるが、二兆円規模の売却益で今期末の債務超過を免れれば、上場廃止による信用急落を回避して再生への一歩を踏み出すことになる。ただ東芝が抱える課題はあまりにも大きい。「解体的出直し」は常套句(じょうとうく)だが収益の柱だった中核事業の白物家電、医療機器、半導体子会社を次々に手放し、原発事業からは撤退した東芝は、すでに解体が進んでいる。残る事業は水道やエレベーター、鉄道など社会インフラ関連、火力や水力発電中心のエネルギー関連など。第四次産業革命といわれる変革の中で、中長期的に競争力を維持強化していけるのかは予断を許さない。東芝再生には何よりも隠蔽(いんぺい)体質の一掃、企業統治や内部管理の強化という経営刷新が重要になる。米国での原発事業の失敗が示す判断の遅れ、海外事業の運営管理や契約など基本的な能力の欠如。不正会計で明らかになった社内の権力闘争と統治、指導力不足。退任した元社長会長が影響力を残す院政や機能しなかった社外取締役制度。決算を巡る監査法人との対立はまだ続いている。指摘しておきたいのは、不正会計が経営陣主導による粉飾決算だったかどうか−その責任を曖昧にしたままでは東芝の病根、隠蔽体質は一掃できないという点だ。刑事告発すべきかどうか、証券取引等監視委員会と検察当局の間での議論は決着していない。結論を見守りたい。

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  • 【北國新聞】

    奥能登国際芸術祭好調な滑り出しに手応え珠洲市で開かれている奥能登国際芸術祭の鑑賞者が着実に増えている。実行委員会の推計では、3日の開幕から16日間で1万5千人を超えた。10月22日の会期末まで1カ月ほどを残して、3万人と設定した目標の半数を達成したのは評価されていい実績である。珠洲市は3年に1度の継続開催を目指している。泉谷満寿裕市長は市議会で「次回開催が現実味を帯びてくる」と答弁した。準備を進めた関係者は好調な滑り出しに確かな手応えを感じているのだろう。奥能登の将来をかけて始まった挑戦が成功を収め、日本有数の芸術祭に成長していってほしい。奥能登国際芸術祭で注目できるのは鑑賞者数の伸びだけではない。多くの人が訪れる様子を見た住民が元気になっていることも大きな成果である。地域を舞台にした芸術祭の成功例として知られる瀬戸内国際芸術祭では住民が積極的に関わっている。その開催を支援する福武財団の事務局長は奥能登国際芸術祭で現場の作業を手伝うお年寄りを見て「この方の笑顔だけでも芸術祭は成功したと思う」と評した。廃止された保育所を利用した会場で弁当を販売した住民は、来場者が喜ぶ姿を見て「頑張ろうという気持ちになった」という。地元の小学生が手書きのパンフレットを配ったことも明るい話題である。人口減少と高齢化に直面する珠洲の人たちに笑顔が広がり、ふるさとに対する誇りが増したのは間違いない。地域によって趣が異なる珠洲の魅力を生かして会場を分散し、地元の住民に参加を求めたことの意味は大きかった。初めての試みに戸惑う市民に対して事前に説明会を開き、作家と交流する場を設けたのも的確な対応となった。芸術祭を継続するためには初回の成果を十分に検証し、課題を把握する必要がある。珠洲市は来場者数や収支だけでは評価しきれないとみて、アンケート調査を実施する。鑑賞者や運営に携わるサポーターに加えて市民も調査の対象とする方針は適切である。市民の間に自信と希望が広がり、地域に活力が生まれていれば開催は成功したと言えるだろう。

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  • 【福井新聞】

    【論説】政府が観光立国の目玉として整備を目指すカジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)。衆院解散の方向となり、実施法案提出は臨時国会から来年の通常国会に先送りする公算だ。政府の有識者会議がまとめた設置、運営ルールは中身が薄く、規制よりいかに推進するか前のめり感が否めない。8月に全国9都市で開いた公聴会でも賛否が分かれた難物だ。政策の良否を国民に問うべきである。IRは全国で2、3カ所の選定が有力視され、雇用増、観光客増などによる地域活性化を期待。経済最優先の安倍政権が成長戦略の一つに位置付け、政府、自民党が国会を延長して3日間で成立させた昨年末のIR整備推進法成立を受けた制度概要によると、IR区域1カ所につき、カジノ施設は一つに限定。国際会議場やホテル、劇場といった施設との一体運営を義務付ける。カジノ収益の一部を国と自治体とで折半して観光振興などに活用するという。カジノ解禁を急ぐのは、2020年の東京五輪で弾みを付け、海外観光客をさらに呼び込む思惑からだ。25年大阪万博誘致構想を掲げる維新の会は候補地の人工島にIR誘致を描く。東京都はじめ横浜、和歌山、佐世保市や北海道、石川県内では能登半島への誘致を目指す動きも出てきた。注目の依存症対策では▽マイナンバーカードで日本人の入場を制限▽入場料徴収▽施設内で現金自動預払機(ATM)の設置を禁止し、クレジットカードの利用は外国人観光客だけ認める−など「世界最高水準のカジノ規制」を盛り込んだという。またカジノ事業は免許更新制で、政府内新設の管理委員会が審査し、暴力団との関係などを調査する仕組みだ。しかし、入場回数の上限や入場料の額など具体的な中身はどうするのか。マイナンバーカードに至っては普及率が1割にも満たないのにどう実効性を持たせるのか。これでは早期成立に向けた環境づくりを急いでいるとしか思えない。公聴会では、専門家からは「IRに客足を奪われ、周辺商店街が衰退した海外の事例もある」として「地域経済には弊害しかない」と断じる意見も出された。法案先送りで選定は遅れそうだが、大型投資が必要な設置条件では明らかに大都市有利。進出をもくろむ海外のカジノ事業者は10〜20社ともされ、国内の大手企業と外国資本のタッグは、経済効果の「一極集中」さえ懸念される。政府は競馬など公営競技の対策強化を図る方針で、警察庁はパチンコの出玉を抑制する風営法施行規則などを決定。パチスロも規制を強めた。これもカジノ解禁で予想される依存症の深刻化に対処するためだ。リスクのあるカジノを実現させた上で「世界最高水準の規制」を行う。まるでマッチポンプのような施策だ。各種世論調査でカジノ解禁反対は6、7割に上る。ここまでして実現を目指す政府、経済界こそ「カジノ依存症」であろう。 

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  • 【京都新聞】

    地価の回復傾向が続いている。国土交通省発表の7月1日時点の基準地価は、商業地が2年連続で上昇、下落の続く住宅地も下げ幅を8年連続で縮小した。このところ東京、大阪、名古屋の三大都市圏で、訪日外国人客の急増に伴うホテル需要が地価を押し上げてきたが、京都でも観光特需が鮮明になった。商業地の上昇率で京都府が都道府県別で全国トップとなり、上位10地点のうち5地点を京都市が占めた。滋賀県は南部の商業地で上昇幅が拡大した。基本的には、地価上昇はデフレ懸念を後退させ、新たな投資や消費の呼び水として期待できよう。一方で、街並みに及ぼす影響や、固定資産税などの住民負担の増加も気にかかる。京都市中心部は新規の事業用地が少なく、建築規制の厳しさもあって、既存の町家を宿泊施設や店舗に転用するケースが相次いでいる。アジアの投資家が民泊や別荘向きのマンションを買い込み、一般市民が購入しにくくなっている側面もあるようだ。実際の収益性に見合わない投機的な取引が広がっていないか。長引く金融緩和が不動産市場をゆがめていないか。かつてのバブルの苦い教訓を思い起こし、政府、日銀、自治体は十分警戒しなければならない。全国一高い東京・銀座の「明治屋銀座ビル」は今回、1990〜91年のバブル絶頂期を上回った。ニセコリゾートに近い北海道#20465;知安町樺山は上昇率28・6%と、住宅地では2年連続の全国1位だった。買い物やスキー目的の外国人客らの増加が背景だが、こうした突出ぶりは注視が必要だ。他県に目を転じると、やはり観光需要や再開発に支えられた地方の中核4市(札幌、仙台、広島、福岡)をけん引役に、それ以外の地方圏でも上昇または下げ幅を縮めた地点が増えた。半面、交通の不便な地域などでは落ち込みが進む。少子高齢化の中、都市と地方の二極化という課題に加え、地方間の格差が広がっている。「地方創生」「東京一極集中の是正」へ、官と民がもっと知恵を出し合いたい。今回注目された伏見稲荷大社の千本鳥居の「集客力」には驚かされるが、どの地域にも人・モノ・投資を呼び込める魅力的な資源はあるはずだ。観光以外の教育、福祉などの面で住みやすさをアピールする手もあろう。訪日客の波が引いても、活力を失わない安定したまちづくりを工夫したい。

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  • 【神戸新聞】

    安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭にも衆院を解散する意向が明らかになり、各党は選挙戦に向けて一斉に走りだした。与党の自民と公明は、一部に候補者調整が残っているものの、態勢を着実に構築している。対する野党は、選挙協力について水面下で進めているとされるが、具体的な協議にはたどり着いていない。最も責任が重いのは野党第1党の民進党だ。国民に政権交代の選択肢を提示しなければ、その存在意義が問われるだろう。民進、共産、自由、社民の野党4党は、幹事長・書記局長会談を開催した。早期解散は国会軽視だとして、政府、与党に抗議する方針でまとまったが、選挙協力は一本化を模索することで一致するにとどまった。背景には、民進の前原誠司代表のスタンスがある。代表選で、共産との連携を見直す意向を表明したためだ。昨年の参院選では、32の改選1人区のうち11選挙区で野党統一候補が競り勝った。共闘すれば一定の効果があることは実証されている。小選挙区制では、野党が候補者を乱立したのでは与党に勝てないことが歴然としている。どのように調整するのか、政治の知恵が求められる。小池百合子東京都知事の側近の若狭勝衆院議員は、民進を離党した細野豪志元環境相と月内に結成する新党から、東京の25小選挙区全てに候補者を擁立する方針だ。しかし新党は、まだ政治理念を明らかにしていない。政権の補完勢力となるのか、野党と協調するのか。早急に旗印をはっきりさせねばならない。都議選で「都民ファーストの会」が圧勝した要因は、自民に代わる受け皿を示した点にあった。このまま衆院選に入れば、有権者がどこに票を投じればいいか、迷うばかりだ。野党は、国民にはっきりと分かる受け皿をつくる必要がある。選挙協力で肝心なのは、結集軸である。自民は憲法9条に自衛隊を明記するなど、憲法改正を公約に盛り込む方向で検討している。最大の政治課題である改憲について、立ち位置を曖昧にしたままでの野党共闘では選択肢になり得ない。

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  • 【奈良新聞】

    7月の県内有効求人倍率で平成元年以降の最高値を更新するなど、県内企業の採用意欲は高い状態を保っている。一方で人手不足感は根強い状況。売り手市場での学生の大企業志向や高卒者にまでおよぶ大企業の囲い込みなどで、中小を中心とする県内企業も人材確保には苦慮しているようだ。大企業ばりの働き方改革も打ち出しにくい中小企業に対応策はあるのか。消極的に映るが、採用がままならないなら現有人員の離職を防ぐ方策を、まず実践すべきだろう。厚生労働省の調べでは、平成21〜25年卒業者の県内事業所での就職3年目までの離職率は、高校生が42・6〜51・5%(全国35・7〜40・9%)、大学生は35・5〜41・0%(同28・8〜32・4%)の範囲で推移。いずれの年も全国平均より数値が高い。「入り」が少なければ「出る」を抑えるのは経営の基本。回り道のようだが、離職を減らす働きやすく魅力ある職場構築への方策が、後につながる近道にも思える。興味引かれる動きがある。経営者でつくる県中小企業家同友会の一部企業では、組織の「人を生かす経営」への原点回帰の行動を始めている。企業内教育の充実や利益が労働者に還元される仕組みづくりなど、就職後に社内で成長できる環境、経営者と労働者が仕事上のパートナーとの視点の形成を図る取り組みだ。もちろんその先には、離職防止と求職者に注目される企業の確立といった思惑がある。もう一つ、県内経済関連団体の関係者、経営者らからよく耳にするのが、県内企業の実力、実績が県民、特に若い層に十分に伝わっていないということ。頑張っていれば自然に伝わるはずとのスタイルは、さまざまな形で情報を入手している若者らにはなじみにくい。むしろ先進的手法も含め多様な方法、機会を捉えて積極的に自社を発信し、学校現場を含む若年層に接近する方法を検討する姿勢が必要だろう。人材不足を高齢者や一時離職中の女性、外国人などに求める方法もある。ただ、事業の将来への継続を考えれば、バランスの取れた年齢構成の組織にしておく視点も忘れてはならない。地道にも見えるが、離職を減らす身の丈に合った働きやすさの実現など、社員が外部に誇れる職場を築くことは人材確保への有効なカードの一つになる。もちろん前述の事例以外にも各企業に応じた魅力づくりの方法があるだろう。もっとも、それにはまずトップの意識改革が不可欠なのは言うまでもない。

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  • 【紀伊民報】

    紀伊半島大水害から6年。被災直後の混乱期を含め、節目の行事の取材などで、すっかりなじみになった被災地だが、訪ねるたびに当時の記憶と恐ろしさがよみがえる。身近な人を亡くしたり、大切なものを失ったりした人たちの悲しさ、つらさは想像もつかない。それでも人々は復興に向けて懸命に歩み続け、希望を持とうとしている。被災地はそんな思いが入り交じる場所だった。30代の記者は深層崩壊が起き、5人が亡くなった田辺市伏菟野を訪れた。崩壊した斜面は2年半前に復旧し、麓では民家が再建され、田畑も再生された。そこを利用し、水害後に遺族も含む地区住民ら4人でつくったグループがキクラゲを栽培している。訪れた時も、4人は作業に追われていたが笑顔で迎えてくれた。その笑顔に「伏菟野を元気にしたい」という思いを強く感じた。代表の打越さとみさん(48)の「この場所で取り組むことにこだわりがある」という言葉が印象深かった。荒れ地にならないようにと始めたグループの活動は復興への軌跡そのものだと思った。別の30代の記者は、田辺市本宮町三越の奥番地区に再建された長命寺の落慶法要を取材した。水害では深層崩壊で起こった土石流が集落を破壊し、だれも住めなくなった。住職の九鬼聖城さん(59)=本宮町切畑=は「廃寺にすると地域の歴史も壊れてしまう。再建なくして災害復興はない」と再建を決意したという。新宮市熊野川町田長の道の駅「瀞峡街道熊野川」ではこの夏、水害時の最高水位を示す表示板が建てられた。地面から8・27メートル。その高さを仰ぎ見て、改めてあの洪水のすさまじさに驚かされた。そこで物産販売所を運営する団体の代表、竹田愛子さん(76)は「ここまで水が来る時もあるんやで、と言い続けていかなね」と話してくれた。犠牲者14人の名前が刻まれた慰霊碑に向かい、自分たちも教訓を伝え続けなければと誓った。50代の記者は、深層崩壊と土石流に見舞われた田辺市熊野を訪れた。今も復旧工事が続くこの現場には被災以来、毎年1度は訪れているが、来るたびに当時のすさまじい状況がよみがえる。それでも復興への歩みは進んでいる。百間山渓谷入り口付近に住民や出身者が今春、サルスベリを約50本植え、そのうちの2本が花を咲かせた。地元の岡田克哉さん(58)は「300本まで増やし、復興のシンボルにしたい」という。出身者の話からは郷里への愛着が伝わってきた。那智勝浦町の那智川流域でも大規模なえん堤工事が続いている。そこに完成した県土砂災害啓発センターへの来訪者は多い。坂口武弘所長(49)は「それだけ災害への関心が高まっている」と話す。災害は時、所を選ばずに発生する。それに備えるためにも、災害の教訓を伝え続けなければならない。それは地域に根を張る新聞の役割でもある。(Y)

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  • 【山陽新聞】

    日本郵便で働く契約社員3人が正社員と同じ手当と休暇を求めた訴訟の判決で、東京地裁が一部の格差を違法と認め、手当の一部に当たる約92万円の支払いを命じた。日本郵便は約20万人の正社員に対し、非正規労働者も約19万人を雇用する大企業である。同社は直ちに控訴したが、判決は同様の格差が存在する企業にも是正を迫るものといえよう。労働契約法は正社員と、雇用期間が定められた契約社員の待遇の「不合理な格差」を禁じている。争点となったのは、どんな待遇の差が「不合理」といえるかだった。契約社員の3人は時給制の契約社員として郵便局で配達や窓口業務などに従事。正社員と仕事内容や労働時間は変わらないのに、正社員に与えられている手当や休暇がないと訴えていた。判決では、原告側が支払いを求めた手当や休暇について正社員との格差の合理性をそれぞれ判断した上で、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇が3人に全くないのは「不合理」と認定した。正社員の年末年始勤務手当の8割、住居手当の6割を3人の損害額と算定し、1人当たり約4万〜50万円の支払いを命じた。一方、夜間特別手当など六つの格差については「不合理と言えない」と指摘した。将来にわたって正社員と同じ待遇を求めた地位確認の請求は退け、理由を「不合理な労働条件の解消は、労使間の交渉結果も踏まえて決定されるべきだ」とした。政府が「働き方改革」の一環で非正規の待遇改善を目指す中、労働契約法に基づく訴訟は各地で起きている。今回の判決をきっかけに格差是正を求める声が強まるのは必至だ。各企業は自社の制度が不合理でないかどうか、見直しを進めなければならない。今回の判決を含めても、どういった格差が「不合理」なのかを判断した例はまだ少ない。政府は働き方改革関連法案の成立後に「同一労働同一賃金」に関するガイドラインを作成するとしており、社会で合意できる基準をより明確にしていくことが必要だ。1990年代後半から増えた非正規労働者は約2千万人に上り、働く人の4割を占める。だが、正社員に対する賃金水準は6割にとどまっており、非正規雇用の増加が個人消費の低迷を招き、さらには結婚や出産を阻み、少子化の要因にもなっていると指摘されている。その待遇改善は、経済の活性化や社会保障の安定にもかかわる問題だ。安倍晋三首相が衆院解散の意向を固めたことで、働き方改革関連法案の臨時国会提出は先送りされる公算が大きい。スケジュールの遅れは避けられないだろうが、非正規労働者の待遇改善は着実に進めなければならない。政府の対応を待つだけでなく、各企業が労使の交渉で是正していく姿勢も求められよう。

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  • 【中国新聞】

    所有者不明の土地地方再生で登記促進を2017/9/21大都市で土地の値段が上がっている。ことしの都道府県地価(基準地価)によると三大都市圏に加え、広島市の商業地でも高い伸びを示した。雇用環境の改善や、宅地購入を促す低金利政策が背景にある。一方で、過疎地域などでは相続時に登記変更されずに放置される「所有者不明の土地」が増えていることにも目を向けねばならない。民間研究機関が今夏まとめた推計によると所有者不明地は全国で約410万ヘクタールに及び、九州の広さを上回る。地籍調査の遅れとともに指摘されてきた問題だが、あらためて驚かされた。人ごとでは済まされない。道路整備や災害復興、再開発事業の支障となっており、固定資産税の徴収が滞っているケースもある。所有者捜しはまた、行政に膨大な手間を強いている。団塊世代からの代替わり時には、さらに深刻化する恐れもある。社会全体の問題として対応すべきで、それには背景や現状を見つめ直す必要があろう。戦後の日本社会が招いた構図といえる。都市への人口流出や農林業の衰退、地方の地価下落が重なり、代々引き継いできた土地への愛着が薄れている。「負動産」という造語をよく見掛けるのも、その表れだろう。不動産登記が任意制なのも大きく影響している。大都市のように資産価値が高ければおのずと事は運ぼう。逆に言えば地価下落が続く過疎地などでは、費用がかかる登記手続きを敬遠する向きが強まる可能性もある。高度成長期からの流れは、1990年代から各地で耕作放棄地や森林の荒廃となって現れ、もはや看過できない状況だ。東日本大震災でも岩手県の高台移設予定地で登記が明治時代のままの土地が見つかり、復興事業が遅れる要因になった。対策が求められていた国がようやく腰を上げた。先週、国土交通省が大学教授らによる有識者会議の初会合を開いた。所有者不明地をこれ以上増やさない策や、放置された土地をどう管理するかを話し合う。年内に結論をまとめ、来年の通常国会に関連法案を出す方針でいる。なぜ急ぐのか。リニア中央新幹線の建設地で所有者不明地が見つかったのも関係していよう。用地買収が遅れれば、開業時期に響く。有識者会議が、一定の条件下では不明地を公共事業に活用できるようにする新たな制度の検討も始めたことにも、リニアを景気浮揚策と期待する政権の意向が垣間見える。慎重な上にも慎重な議論を求めたい。個人の財産権に関わることでもある。「公共の目的にかなう使い方とは何かしっかり説明すべきだ」との意見が、有識者会議で出たのも当然だ。今やるべきは登記の促進策である。罰則付きの義務化は国民合意を得にくい。死亡届が市町村に出された際に無理なく促すことから始めるべきだ。土地所有の税負担などを理由に相続を望まない人に対しては、地元自治体や法人格を持つ自治会などに管理を移す制度を作ったらどうか。所有者捜しには、農林水産省や総務省などが縦割りで管理している土地情報の一元化が有効だろう。何より大事なのは地方の再生である。古里が元気を取り戻せばおのずから登記も進もう。定住や就農の促進など、地に足の着いた取り組みが欠かせない。

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  • 【山陰中央新報】

    中国共産党大会/新指導部を見極めたい5年に1度の中国共産党大会が10月18日に開幕する。トップの習近平総書記(国家主席)が再選され、既に党の「核心」となった習氏への権力集中がさらに進む見通し。大会終了後の第19期中央委員会第1回総会(1中総会)で習氏2期目の新指導部が発足する。習氏は、国内では汚職摘発と政治的引き締めに力を入れ、外向きには海洋権益を拡大し、現代版シルクロード構想「一帯一路」を提唱する大国外交を推進してきた。党大会後、習氏は強権政治をより先鋭化させる可能性もある。日本でも同時期に総選挙を経て新内閣が発足するとみられる。政府は中国新指導部の動向を見極め、入念に対中政策を練るべきだ。党大会で注目されるのは、習氏の権力基盤の強化に関わる指導部人事と党規約の改正だ。党の中枢、政治局常務委員会は、現在7人で構成する。68歳定年制のため、通常であれば、習氏と李克強首相を除く5人が引退し、ポスト習時代を担う「第6世代」の若手が登用される。有力候補として、習氏に近い陳敏爾・重慶市党委書記、栗戦書・党中央弁公庁主任らの名前が挙がる。習氏は党中央軍事委員会人事で軍部掌握も強める構えだ。党規約改正では、習氏の「治国理政」(国政運営)に関する新思想が盛り込まれ、習氏の権威付けが行われるもようだ。人事を巡りさまざまな臆測も流れている。一つは、反腐敗闘争をけん引してきた常務委員、王岐山・党中央規律検査委員会書記の処遇についてだ。習、王両氏は多数の汚職官僚を摘発し、党内で恨みを買った。腹心を失いたくない習氏は、王氏の定年を特例で延長し、常務委員として残すのではないか、との見方だ。このほか、習氏は5年後、慣例を破り3選を狙うとか、総書記の上の「党主席」ポストを復活させ就任するなどの観測も出ている。だが、恣意(しい)的にルールを変えれば権力闘争を招く恐れもあり、先行きは不透明だ。王毅外相は習氏の外交思想の特徴として「平和的発展と民族の復興」「協力と共栄の新型の国際関係をつくり、人類運命共同体を築く」を挙げて平和主義を掲げる一方、東・南シナ海の領有権争いや台湾、香港問題など「核心的な利益」に関わる問題では譲歩しないとの立場を強調した。2期目の習氏の外交・安保方針が変化するのか、注意深く見ていく必要があろう。7月、安倍晋三首相は習氏の「一帯一路」構想に条件付きで支持を表明し、日中首脳は両国の関係の改善に努力していくことに合意した。党大会後、日中首脳は早期に関係修復の意思を改めて確認し、積極的な対話を行うべきだ。北朝鮮の6回目の核実験や度重なるミサイル発射で、東アジアの緊張が高まる中、トランプ米大統領が11月、日中両国を歴訪する見通しだ。北朝鮮の核兵器開発阻止のためには、米中両国が積極的な役割を発揮することが期待され、米中首脳の連携は極めて重要だ。政治、経済、軍事の総合的な国力を増す中国の動向は、地域と世界の平和と安定を大きく左右する。中国は言行を一致させ、覇権を求めず、国際協調と平和主義を守る「新興大国」を目指すべきだ。2017年9月21日

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  • 【愛媛新聞】

    恐れていたことが現実になりつつある。安全保障関連法が成立して2年。日米の防衛協力が強化され、米軍と自衛隊の一体化が進んでいる。自衛隊の活動が政府の恣意(しい)的判断によって左右されることがあってはならない—安保法成立前から本欄で何度も指摘してきた。にもかかわらず、政府は北朝鮮の核・ミサイル開発への対応を口実にして、次々と活動を拡大。しかも、その実態を覆い隠している。安保法はやはり問題が多すぎる。廃止しなければならない。1週間前には、海上自衛隊の補給艦が今年4月以降、日本海で北朝鮮の弾道ミサイル防衛に当たる米イージス艦に洋上補給を実施していることが明らかになった。安保法の施行を受け、改定日米物品役務相互提供協定が発効し、可能になった後方支援。5月には、海自の護衛艦が米補給船を守る「武器等防護」も初めて実施した。いずれも安保法によって大幅に拡大した自衛隊の新しい任務だ。問題なのは、こうした活動を政府が全く公表しないことだ。今回も、菅義偉官房長官は「自衛隊や米軍の運用の詳細が明らかになる恐れがある」として、洋上補給したかどうかも明らかにしていない。国民が何も知らされないまま、米軍との密着度が強まっている。このままでは国民も国会も、政府の判断の是非をチェックできない。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊部隊への「駆け付け警護」は昨年、任務を付与したとの実績だけをつくり、実施されることなく、今年5月に撤収した。しかし、その前に組織的な日報の隠蔽(いんぺい)が行われていたことを忘れてはならない。「戦闘」と書かれていた日報を隠したのは、政府にとって不都合な事実を国民に知らせまいとする意図が明白だ。安倍晋三首相は森友・加計学園問題なども含めて、謝罪の姿勢を見せたものの、政府は今も自衛隊の拡大任務の実態についての説明を拒んでいる。本当に反省しているとは思えない。安保法が拡大解釈される恐れもある。小野寺五典防衛相は北朝鮮が予告した米領グアムへの弾道ミサイル発射計画を巡り、集団的自衛権行使が可能な「存立危機事態」に該当する可能性があると踏み込んだ。海自のイージス艦が弾道ミサイルを迎撃することは、法的に可能だとの認識を示した形。その後、米本土に向かう場合の迎撃もできると表明した。いずれも「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」状況とは到底言えまい。自民党内では、発射直前に拠点を壊滅させる「敵基地攻撃能力」保有論まで出始めている。なし崩し的な軍備増強で、自衛隊のリスクが拡大することを許すわけにはいかない。安保法の是非は、来月の実施が確実な衆院選で、改めて争点にしなければならない。そのためにはまず、政府はすべての情報を開示するべきだ。

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  • 【徳島新聞】

    東京電力福島第1原発で、汚染水対策の切り札として期待される「凍土遮水壁」の全面運用が視野に入った。凍土壁は、1〜4号機を取り囲むように埋めた配管に冷却材を循環させて地中に氷の壁を築き、建屋に流入する地下水を減らす仕組みだ。約1・5キロの凍土壁のうち、建屋西側に残った約7メートルの未凍結部分の凍結作業が数カ月後に完了する。原子炉建屋の地下には、事故で溶融した核燃料に触れた高濃度汚染水がたまっている。汚染水を増やす地下水の流入を食い止め、対策を加速させてほしい。凍土壁の凍結作業は昨年3月末から段階的に行われてきた。原子力規制委員会が慎重な姿勢を取ってきたためだ。全面運用されれば、建屋周囲の地下水位が下がり、建屋内の汚染水の水位と逆転して、汚染水が外に漏れ出す恐れがあると指摘されてきた。東電は、降雨が極端に少ない条件などでも、建屋周辺の井戸「サブドレン」で地下水位を制御して汚染水の漏えいを防げると説明している。万が一にも、建屋から汚染水を流出させることがあってはならない。だが、8月2日には見過ごせない事態が発生した。4号機近くの地下水位が一時低下し、原子炉建屋地下の汚染水と逆転して、汚染水が漏えいする可能性があった。井戸で水位が低下して警報が鳴ったのに、東電が水位計の故障と誤って判断し、現場の確認や規制委への通報も翌日にずれ込んだ。この件に関して、規制委が「起きたことを小さく伝えようとしている。正しく社会に発信できていない」と東電の姿勢を批判したのは当然だ。これまで、東電の隠蔽(いんぺい)体質はたびたび批判されており、規制委の声を真摯(しんし)に受け止めるべきである。凍土壁には約350億円の国費が投じられ、年間十数億円の維持費なども必要だ。大切なのは、費用に見合う効果を挙げることだけではない。東電が安全対策や情報公開を徹底しなければ、国民から信頼される汚染水対策とは言えまい。ほかにも、地下水を高台の井戸でくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」も導入されている。当初、1日400トンだった建屋への地下水の流入量は、6月には約140トンまで減った。東電は100トン以下を目指すとしているが、凍土壁が全面運用されても、どこまで低減できるかは見通せない。汚染水を巡っては重要な課題も残されている。高濃度汚染水は浄化しても、トリチウムを取り除けない。処理された水は敷地内のタンクに大量に保管され、増える一方だ。風評被害を懸念する地元の漁業関係者らは、海への放出に反対しており、最終的な処分のめどは立っていない。政府、東電は、国民の理解を得られる解決策を打ち出してもらいたい。

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  • 【高知新聞】

    安倍自民党は「謙虚」になるのではなかったか。あまりに性急、拙速と言うほかない。自民党が再開した憲法改正議論で、党内の9条改正案のたたき台を10月にも提案する方向が示された。9条改正は次期衆院選の公約にも盛り込まれるとされる。党総裁の安倍首相がことし5月に突然、「改正憲法2020年施行」などの独自案を表明し、改正議論を急がせた。だが、加計(かけ)学園問題などで国民の不信を招き、内閣支持率が急落すると一転、「スケジュールありきではない」と日程に固執しない方向に改めたはずだった。「反省」はどこへ行ったのか。安倍首相の指示を受け、自民党は9条改正や緊急事態条項など4項目を中心に議論を加速させた。その中でも9条改正を優先し、戦争放棄の1項、戦力不保持などの2項を堅持しつつ、自衛隊を明記する—との首相案を軸に据えた。しかし、2項を見直し、自衛隊を「国防軍」とする12年党改憲草案とは隔たりがある。党内には首相案への賛成が多い半面、石破茂元幹事長ら草案支持派の反対が根強い。意見の集約は難しく、党内合意は見通せないのが実情だ。連立政権を組む公明党も特に9条改正では自民党と距離を置く。公明党の山口那津男代表は9条改正は早計だと明言し、前のめりの自民党を強くけん制する。政権内でもまとまっていない。改憲手続きは、国民の意見を幅広くくみ上げながら、与野党で丹念に議論を積み上げ、総意形成に努める作業だ。その場は国会である。一政党が「数の力」を振るって主導権を握り、特定の方向付けをしていく議論であってはならない。まして、同じ党内ですら意見がまとまらない段階で、国会への改正案提示のスケジュールを決めていく。そんな自民党の姿勢は「1強」のおごりの表れであろう。戦後の平和主義を根本的に変質させかねない9条の議論ならばなおさら厳格、真摯(しんし)であるべきだ。「共謀罪」法の強引な国会審議などへの国民批判の高まりに押され、安倍首相は改憲にも低姿勢を見せ、党内議論もトーンダウンした。ところが、支持率が持ち直し、北朝鮮の核・ミサイル問題で国民に不安が広がると、たちまち9条改正へアクセルを踏み込む。あまりに露骨で、民意を軽んじていないか。改憲勢力が衆参両院で3分の2以上のうちに駆け込もうとしているのなら、それは憲法そのものを踏みにじる。東京五輪・パラリンピックの20年を改憲日程とする首相のスケジュール感に国民は納得できるだろうか。安心して暮らせる社会保障制度の構築や格差是正、地域再生などこそ国民が求める優先課題である。その解決策も十分示せないまま、政治権力によって改憲議論を強引に進めることは許されない。厳に慎むよう求める。

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  • 【西日本新聞】

    国土交通省が発表した2017年7月1日時点の基準地価は、商業地の全国平均が前年比プラス0・5%と横ばいから上昇に転じ、住宅地も8年連続で下落幅が縮小した。緩やかな回復といえる。九州7県では、福岡県で商業地・住宅地がともに上昇したほか、熊本県の商業地も熊本地震の復興需要で26年ぶりに上昇した。佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島の5県は商業地・住宅地ともに下落したが、下落幅は縮小している。ここ数年、全国の地価は、三大都市圏(東京、名古屋、大阪)が堅調を維持、地方でも不動産利回りがよい地方中枢都市(札幌、仙台、広島、福岡)はより高い上昇率を示し、それ以外の地方は下落が続く構図となっている。地価の緩やかな回復を面的に広げる政策と、地方で進む地価の二極化に真剣に向き合う必要がある。近年の地価上昇地点には、都市再開発や商業集積の進行▽交通インフラ整備の進展▽観光・リゾートの舞台化−という三つの類型がある。今回はそれに、人手不足による物流施設の立地需要の高まりも加わったのが特徴だ。三つの高速道が交差する九州の物流拠点、佐賀県鳥栖市の工業地や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のインターに近い茨城県五霞(ごか)町の工業地の上昇は、その好例だろう。さらに、地方でも県庁所在地など中心部の地価が持ち直している傾向が目立つ。ただ、地方では人口減や高齢化、産業の衰退、交通アクセスの悪化などで下落する地点も多く、地価の二極化も深刻だ。地方中枢都市の下落地点は6・8%にすぎないが、それ以外の地方の下落地点は70・2%に及ぶ。これらの地域では、若い世代の流出が指摘され、従来型の工場誘致や観光振興などの地域活性化策には限界も指摘される。人口減に伴う空き家の増加が地価下落に拍車をかけるケースも出ている。都市部からの移住促進や交流人口の増加策だけでなく、人口減を前提とした新たな発想に基づく街づくりを考えるときにきている。=2017/09/21付西日本新聞朝刊=

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  • 【宮崎日日新聞】

    ◆過ぎる党利党略許されない◆安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭で衆院を解散、10月下旬に総選挙を行う意向という。党利党略が過ぎる-。最近の安倍政権の行状と日本政界の現状を見ると誰もがそう思うのではないか。学校法人「森友学園」や「加計学園」の真相解明のため野党が憲法に基づいて求めてきた臨時国会召集を約3カ月も拒み続け、さらに北朝鮮が弾道ミサイル発射を強行する緊張下での重大判断だ。野党の混乱突く思惑安倍首相は表向きには意向を明らかにしていないが、背景には野田聖子総務相らを迎えた内閣改造で森友・加計問題で続落した内閣支持率が上向く一方、野党第1党の民進党で離党が続くなど混乱が収まらないという与党にとって有利な状況がある。支持を集める小池百合子東京都知事の側近が立ち上げを進める国政政党の態勢が整わないうちに済ませたいとの思惑もあるだろう。安倍首相は、「10月10日公示、22日投開票」「同17日公示、29日投開票」の2案を念頭に置いているもようだ。10月22日の衆院3補欠選挙を経て「11月解散-12月総選挙」も視野に入れるが、与野党は最短日程を前提に選挙準備に入っている。2014年、準備不足だった当時の民主党の虚を突いた電撃的な解散で安倍首相は大勝を収めている。この成功体験が基になっているのは間違いない。安倍政権は、6月中旬までの通常国会で、森友・加計両学園を巡る問題で追い詰められると、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法に関し、参院法務委員会の採決を省略する「中間報告」と呼ばれる禁じ手を用いて本会議採決を強行、会期末に閉幕させた。解散権は完全自由かその後、新たな事実や疑惑が出てきても臨時国会召集要求には外交や法案準備などを理由に応じなかった。今月の臨時国会の早い段階で解散した場合、森友・加計問題は真相解明からほど遠い状態で国民の審判を受けることになる。自民党の憲法改正草案は国会召集要求を「少数者の権利」として「要求から20日以内に召集」と明記。自らの主張さえも棚に上げ、都合の悪い問題からの逃げ、真実の隠蔽(いんぺい)と言っても過言ではない。他方、民進党は相次ぐ離党者やスキャンダルによる幹事長人事撤回など前原誠司代表の体制になっても迷走が収束しない。また、小池都知事が支援する若狭勝衆院議員が早急に国政政党の旗揚げにこぎ着けることができたとしても選挙準備は極めて不十分だ。そもそも、こうした党利党略が許されるのは首相の解散権が「完全自由」と見なされているからだ。今年3月の衆院憲法審査会では、解散権に何らかの制限を設けるべきだと民進党が問題提起、国会でも議論が始まっている。断行されれば、そんな中での解散となる。私たち有権者はその是非を根本から問い直さなければならない。

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  • 【佐賀新聞】

    老後破産「75歳まで働け」という社会2017年09月21日08時00分「75歳まで働け」という週刊誌の見出しを見るたびに暗澹(あんたん)たる気分になる。65歳を過ぎても働きたいという人が多くを占めるとはいっても、働き続けないと生活を維持できない高齢者の貧困問題が背景にあるからだ。「ゆとりある老後」どころか、死ぬまで働かないと「老後破産」が待っている。そんな社会が到来しつつあるのだろうか。「75歳まで働け」という見出しは、「65歳から高齢者」という定義を見直し、「75歳以上」に引き上げるべきという日本老年学会などの提言が今年初めに出されたことも影響しているだろう。ここで大事なことは、「65歳は知力も体力もまだまだ現役」といった健康水準の話ではなく、現実に65歳以降の高齢者の生活を支えるはずの年金や貯蓄に不安があり、それを補う手段が、個々人の働きにかかっているということを意味する。すでに、内閣府の有識者会議が、年金の受給開始年齢を70歳より後に遅らせることができるよう選択肢を広げる案を提示した。今後も、「原則65歳から」とする現在の受給年齢を引き上げる議論が予想されるだけに、あながち不安をあおっているとは言えない。高齢者の台所事情を、総務省の家計調査でみてみる。夫が65歳以上で妻が60歳以上の「高齢夫婦無職世帯」の家計を5年ごとにみると、2005年は月3・5万円の赤字だが、2010年は4・1万円、2015年は6・2万円と年々赤字幅が膨らんでいる。これは年金収入が減っている上、税金や社会保険料などの「非消費支出」の負担が増しているのが要因だ。一方、貯蓄額はどうか。2人以上世帯のうち、世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄額は平均2385万円だが、中央値は1567万円。中央値の半分にも満たない700万円未満の世帯が全体の30%近くにのぼり、うち、400万円未満は18・6%と5世帯に1世帯を占める。平均額が2500万円近いという数字は、「持てる世帯」が平均を押し上げた結果で、ここには高齢世帯間の格差もみえる。実は、この貯蓄額平均の数字には、男女600万人といわれる「1人暮らしの高齢者」世帯が入っていない。こうした世帯を含めると、貯蓄に大きな不安を残す高齢者世帯はさらに高い割合になる。蓄えは少ない。毎月の赤字は膨らむ—。仮に月5万円の赤字があると、年間60万円となり、10年で累計600万円以上となる。この貴重な貯蓄を食いつぶしても、やがて生活が立ちゆかなくなり、息切れしたように「老後破産」がやってくる—という構図だ。今後は、晩婚化の進行に伴い、子どもが大学を卒業するまでの教育費や家のローン返済が65歳を過ぎても残る世帯が確実に増加する。さらに、非正規労働者で国民年金にしか加入していない人たちが高齢者になっていく社会が来る。長時間の就労のため地域を顧みる余裕を持てない高齢者が増えることも予想される。政府は「1億総活躍社会」を唱える。働く環境整備は必要だ。しかし、高齢者の就労を促し、社会保障費の抑制につなげても、100兆円にのぼる年間支出をさらに増やすようでは増税しても追いつかない。日本社会がこれからどうなっていくのか、根底から議論する機会を持ちたい。(丸田康循)

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  • 【南日本新聞】

    国土交通省は7月1日時点での基準地価を発表した。商業地の全国平均が前年に比べ0.5%のプラスとなり、9年ぶりに下げ止まった前年から上昇幅が拡大した。地方の中核的な4市(札幌、仙台、広島、福岡)が平均7.9%上昇し、三大都市圏の3.5%を大きく上回る高い伸びを示すなど好調だ。一方、地方圏は全体で下げ幅が縮小したものの、7割近くで下落が続いている。都市と地方の二極化が一段と鮮明になり、歯止めがかからない状態だ。格差を是正するには地元企業や自治体が連携し、魅力的なまちづくりを進めるため知恵を絞る必要がある。基準地価は土地取引や固定資産税評価の目安となるものだ。人口の増減や景気動向を反映することから、地域経済の活力を示す指標といえる。都市部の地価が好調な理由はいくつかある。まず、訪日外国人旅行者の増加で、観光地ではホテルや店舗の建設需要が高まっていることが挙げられる。大都市の中心部でオフィスビルや商業施設の再開発が進んでいることも影響している。低金利が続く中、投資マネーが不動産に流れていることも背景にあろう。住宅地は全国平均でマイナス0.6%で、26年連続の下落となったが、下げ幅は縮小した。雇用環境の改善や住宅ローン減税などの影響で、需要が堅調なのが要因とみられる。鹿児島県内でも中心部と地方の格差が目立つ。商業地は県内平均で26年連続下落した半面、鹿児島市が前年から0.3%上昇し、10年ぶりにプラスに転じた。今春、商業施設が開業した与次郎地区は2.3%の伸びを示し、県内で最も高かった。再開発計画がある鹿児島中央駅や天文館一帯もプラス要因に働いた。地価調査鑑定評価員は「長年マイナスが続き、割安感から取引が活発化している」と説明する。住宅地の県平均は20年続けて下落したが、下落幅は7年連続縮小した。その土地の価値の最低水準に近づきつつあるようだ。都市と地方の環境はおのずから異なる。とはいえ、上昇地点には「人・モノ・金」が動く要素が存在すると専門家は指摘する。空き店舗の増加など地方の空洞化は深刻である。重要なのはいかに、自分たちが住む地域の特色を出すかではないか。そのために官民が協力して取り組むことが求められる。

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  • 【琉球新報】

    住民生活への重大な影響を一顧だにしない米軍の姿が改めて浮き彫りになった。夜間・早朝の爆音放置は許されない。安倍政権は自ら約束した「沖縄の負担軽減」を県民が望む形で実現する責任を自覚し、改善すべきだ。沖縄防衛局が米軍嘉手納基地と普天間飛行場で、今年4月から実施している24時間の航空機離着陸調査の結果からも、騒音規制措置(騒音防止協定)が有名無実化していることがはっきりした。嘉手納基地では7月までの4カ月間で、1万8799回の離着陸(タッチ・アンド・ゴーや通過、旋回を含む)があった。そのうち騒音防止協定で飛行が制限されている午後10時から午前6時までの夜間・早朝は647回だった。普天間飛行場では5084回の離着陸があり、夜間・早朝は224回だった。県民生活よりも、訓練を優先する米軍に強く抗議する。だが、騒音防止協定には規制除外のただし書きがあり、何ら実効性がない。抜け道だらけの騒音防止協定に照らせば、米軍は協定を守っていることになる。夜間訓練飛行は「必要な最小限に制限される」などとし「部隊司令官は、できる限り早く夜間の飛行を終了させるよう最大限の努力を払う」としているだけで、米軍は「運用上必要」「努力した」とすれば協定破りにはならないのである。とても「騒音規制」とか「騒音防止」と呼べる協定ではない。看過できないのは、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが普天間飛行場の夜間・早朝の離着陸回数に占める割合の高さである。224回のうち43%に当たる97回はオスプレイである。昨年12月以降、普天間飛行場所属の2機が墜落するなど、オスプレイは住民にとって脅威でもある。即時撤去を強く求める。嘉手納基地では、離着陸総数の35%、3分の1が外来機だったことも許し難い。日米両政府は2011年、周辺地域の負担軽減を名目に、嘉手納基地所属機の訓練移転に合意した。だが訓練移転以上に、嘉手納基地を拠点に訓練する外来機の方が圧倒的に多いのではないか。それが県民の実感である。負担は軽減されることなく、増大しているのは明らかである。今年の沖縄全戦没者追悼式で、安倍晋三首相は「沖縄の方々には長きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいており、この現状は到底是認できるものではない。政府として基地負担軽減のため、一つ一つ確実に結果を出していく決意だ」と述べた。この言葉が本心なら直ちに実行すべきだ。夜間・早朝の米軍機飛行の全面禁止だけでは不十分である。オスプレイの配備撤回、名護市辺野古への新基地建設断念など、県民の重しとなる全ての「基地負担」を軽減ではなく、排除する責任が安倍首相にはある。

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  • 【沖縄タイムス】

    沖縄市のコミュニティーFMから反基地運動をおとしめ、人種差別的と受け止められる発言が流されている。事実に基づかないものであり、看過できない。「オキラジ」で、毎週月曜日に放送されている「沖縄防衛情報局」である。約1時間の番組で、政治活動家ら3人が出演する。番組の基調をなすのは毎回、冒頭に読み上げられる次のような言葉である。「反戦平和運動はそのほとんどが偽物であり革命運動をカムフラージュするもの」。その目的は「沖縄県に中国や北朝鮮のような左翼独裁共産主義体制を打ち立てることにある」何を根拠にこのような主張をするのだろうか。スイスの国連欧州本部で6月に開かれた沖縄の基地反対運動を巡るシンポジウムに出席した弁護士や新聞記者を名指しして、「ほとんど工作員そのもの」(7月17日放送)と発言している。工作員とは具体的に何を意味しているのだろうか。排外主義的な発言も多い。「どうして朝鮮人や中国人は平気でうそをつくのか、ルールを平気で破るのか」(7月31日放送)と人種差別的な発言をし、「彼らは、(日本が)朝鮮半島を植民地にしたといいがかりをつけているが、全くのうそっぱち」(同日放送)と歴史的事実を曲げる。「シュワブゲート前の妨害活動。その中には朝鮮人がいっぱいいる」(9月18日放送)と言うが、本当に現場で確認したのだろうか。沖縄の内部から「沖縄ヘイト」というべき言説が公共の電波を使って流される。憂慮すべき事態だ。■■放送法4条は「報道は事実をまげないですること」をうたっている。同法9条では事実でないことを放送したと訴えがあった場合には、放送局は調査した上で、真実でないと判明したときは訂正または取り消しの放送をしなければならないと規定している。訴えがなくても放送局が真実でない内容とわかったときにも同様の措置をとらなければならない。事実に基づく報道は、放送局と放送人にとっての責務である。と同時に、最も大切にしなければならない倫理だ。それは地上波であっても、コミュニティー放送であっても、変わりはない。オキラジを運営する沖縄ラジオは取材に対し「番組内容については出演者に聞いてほしい」と回答している。免許を受けた放送局としての自覚に欠け、社会的な責務を放棄しているというしかない。■■根拠も示さず、言いたい放題の主張を放送し、それについて説明責任を果たさない。これではデマと変わりがないというべきであり、公共の電波を使用する放送局と放送人にとってあるまじき行為である。沖縄ラジオには、自律的に、放送局に設置が義務付けられている第三者による番組審議機関に放送内容の検証を諮問し、その結果を公表することを求めたい。

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