社説・論説

  • 【北海道新聞】

    南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報問題で、稲田朋美防衛相が、陸自が日報を保管していた事実を非公表とする方針を了承していたことが明らかになった。稲田氏はきのう「隠蔽(いんぺい)、非公表を了承したとかいう事実は全くない」と否定したが、報道内容に関する詳しい説明はまだない。仮に防衛省・自衛隊による組織的隠蔽をトップの稲田氏が容認していたとすれば、政治家が文民として実力組織の自衛隊を統制するシビリアンコントロールの根幹に関わる重大な事態となる。日報の隠蔽問題では防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察の結果を近く公表する見通しだ。稲田氏は直ちに公表するよう指示し、自身が問題にどのように関わってきたかについて納得のいく説明をすべきである。防衛省は日報の情報開示請求に対し昨年12月、「陸自で廃棄済み」と不開示を決定した。その後、統合幕僚監部に電子データが保管されていたことが分かったとし、2月7日に内容を公表した。だが、データが実は1月ごろまで陸自にも保管されていたことが3月になって発覚する。稲田氏はこの時点の国会答弁で陸自保管の報告は受けていなかったとし、「防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と述べた。しかし複数の政府関係者によれば稲田氏は2月15日に緊急の幹部会議に出席し、陸自保管の事実の非公表を了承したとされる。その2日前にも陸自幹部から事前に報告を受けていたという。その通りであれば、国会での説明は明白な虚偽答弁になる。そもそも、幹部会議はあったのかどうか、肝心の点について防衛省側の説明は曖昧だ。出席者の1人とされる黒江哲郎事務次官は、会議は「記憶にない」と言い、稲田氏が非公表を了承した事実も「ないと思う」と述べた。説明として不十分である。特別防衛監察の開始から4カ月が過ぎた。稲田氏は当初中間報告を行う意向を示していたが、それもなく通常国会は閉会した。野党の追及を逃れる時間稼ぎをしてきたのなら、国民軽視も甚だしい。稲田氏は東京都議選で「防衛省・自衛隊としてもお願いしたい」と問題発言をするなど、何度も閣僚としての資質が問われてきた。内閣改造で交代も取り沙汰されるが、ここは速やかに説明責任を果たすのが最低限の責務だ。

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  • 【河北新報】

    南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を破棄したとしながら、陸上自衛隊に電子データが保管されていた隠蔽(いんぺい)疑惑で、新たな問題が浮上した。稲田朋美防衛相が2月15日の防衛省最高幹部による緊急会議で、保管の事実を非公表とする幹部からの方針を了承していたという。複数の政府関係者が明らかにした。稲田氏は全面否定しているが、事実ならば、本人の辞任はもちろん、安倍晋三首相の任命責任が厳しく問われるのは言うまでもない。防衛省・自衛隊の組織的な隠蔽工作を稲田氏が容認した形になるだけでなく、一連の経緯について報告を受けていないとした国会答弁が虚偽だったことになるからだ。国民に対する重大な背信行為が指摘されている以上、稲田氏は説明責任を尽くさなければならない。24日に行われる衆院予算委員会集中審議で一連の問題を丁寧に説明し、疑念を晴らすべきだ。防衛省は昨年10月、日報の情報公開を求められ、「破棄済み」として不開示にした。再探索した結果、同12月に統合幕僚監部で電子データが見つかり、その後陸自でも保管されていた事実が発覚した。驚くべきことは防衛省の隠蔽体質だ。緊急会議では陸自のデータは隊員個人が収集したもので公文書に当たらないという理屈で、公表しない方針が決まったという。「今更陸自にあったと言えない」という内部の論理を優先する姿勢の背後にあるのは何なのか。森友学園、加計(かけ)学園問題でも指摘された「安倍1強」政治の弊害が浮き彫りになってくる。日報には昨年7月、南スーダンの首都ジュバで起きた政府軍と反政府勢力との間の大規模な武力衝突について記載があった。憲法上問題になりかねない「戦闘」という言葉を巡って、稲田氏の不安定な答弁が野党から追及された。ここでデータの存在が明るみに出れば、安倍首相の「秘蔵っ子」である稲田氏にさらに傷が付く。批判から遠ざけよう。防衛省内にそんな「壮大な忖度(そんたく)」が働いていたというから、国民不在も甚だしい。内向きの体質にメスを入れ、うみを徹底的に出さなければならない。防衛監察本部による特別防衛監察を実施しているが、自浄作用は到底、期待できそうもない。関係者の処分は当然だとしても、幹部の人心一新が求められる。そもそも、稲田氏の防衛相としての資質に問題があったのは明白だ。東京都議選で不適切な応援演説をしたり、九州北部を襲った豪雨の際に防衛省を一時不在にしたり、物議を再三醸し出してきた。そのたびに安倍首相は更迭に踏み切らず、かばうような姿勢を取ってきた。自衛隊の信頼が揺らいだ今、「お友達内閣」の限界が見えたのではないか。内閣改造の交代では無責任、遅きに失する。

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  • 【東奥日報】

    国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題が国政を揺るがす中、家畜防疫などを担う公務員獣医師が不足している獣医師の偏在問題がクローズアップされている。獣医師は「全体では足りている」というのが農水省や日本獣医師会の見解だが、鳥インフルエンザ対策などの家畜防疫や畜産振興、食の安全を担う公務員獣医師のなり手が少ない。ペットの犬や猫などを扱う民間病院に人材が集中する傾向が強いためだ。加えて人材が大都市圏に偏る地域による偏在も課題とされる。加計学園の獣医学部計画の地元である愛媛県や今治市が、人口減少対策や、四国が獣医学教育の空白地帯であることを理由に、学部新設を10年前から何度も国へ求めてきた経緯は、地方に共通する背景がうかがえ、理解できる。一方で獣医師が増えすぎないよう国が50年以上認めてこなかった獣医学部新設を、こにきて認める根拠がいまだに判然としない。背景に官邸の意向があったとする前文部科学事務次官の証言やそれを裏付けるような数々の文書が存在し、首相の友人が理事長を務める加計学園を前提に手続きが進んだのではないかという疑念が晴れない。この問題を巡り、週明けの衆参両院の予算委員会集中審議に出席する安倍晋三首相は、これらの積み残された疑問に真摯(しんし)に答えるのはもちろんのこと、学部新設で獣医師を増やし、偏在の解消にどうつなげるのか、合わせて展望を示してほしい。偏在問題は、全国有数の畜産県である本県にも影響を及ぼしてきた。鳥インフルエンザ対策など業務が多忙化する中、県の獣医師職員の採用は毎年定員を満たせず追加募集する状況が続く。獣医師職員の数は4月現在155人と10年前に比べ30人減った。県は数年前から、修学資金の支援や初任給の引き上げ、採用試験の会場増設などの確保対策に力を入れてきた。地元北里大学獣医学部(十和田市)との連携強化も進めている。それでも十分な成果に結びついているとは言い難い。自治体間の人材獲得競争が激しい上、学生優位の「売り手市場」で、他業種と同様、地方に人材を引きつける難しさにも苦慮しているようだ。こうした地方の実情も踏まえ、獣医師育成の将来をどう描くのか、本質的な議論を求めたい。

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  • 【デーリー東北】

    民進党混迷辞任覚悟で処方箋示せ(7月20日)民進党は東京都議選での敗北を総括するための「ブロック会議」を終えた。蓮舫代表は「次期衆院選に向けて態勢を整えたい」と続投を宣言したが、旧民主党時代を含め最低の5議席だっただけに、執行部の責任を問う声が少なくなかった。都議選は地方選であるため、代表らの責任は問わないのが通例かもしれない。しかし、学校法人加計学園や森友学園問題での対応のまずさなどから惨敗した自民党への批判票の受け皿になれなかったのは、大きな痛手と言わざるを得ない。地元が東京の蓮舫氏は、大勝した地域政党「都民ファーストの会」を率いた小池百合子東京都知事に秋波を送りながら、選挙協力を実現できなかった。党の主体性を発揮できず、選挙戦略を間違えたのではないか。蓮舫氏は会議での意見を踏まえ、台湾との「二重国籍」問題で、日本国籍を選択したのを裏付ける戸籍謄本などの資料を公表。だが昨秋からの懸案だけに後手に回った感は否めない。確かに、加計学園問題への追及で民進党は中心的役割を果たしたが、最近の世論調査で内閣と自民党の支持率が続落する一方、民進党も低迷している。つまり疑惑追及だけでは政権交代を掲げる党として不十分。安倍政権に対抗できる政策の柱を提示していないことが大きい。例えば原発問題。蓮舫氏は年初から「2030年代原発ゼロ」目標の前倒しを模索したが、最大の支持組織である連合の反発を受け、棚上げしたままだ。執行部の決断力と根回し不足を指摘されても仕方がない。その連合との関係も深刻だ。「残業代ゼロ法案」と反対してきた労働基準法改正案を巡り、連合の神津里季生会長が安倍晋三首相と異例の直接交渉に踏み切った。蓮舫執行部が目指す次期衆院選での共産党との協力にも連合は否定的で、支持基盤も揺らいでいる。さらに都議選後、2人の国会議員が離党届提出や離党検討を表明した。野田佳彦幹事長は解党や分党はせず「解党的出直し」を強調しているが、都民ファーストの会が国政進出を目指すことになれば、同会との連携を狙って民進党内の離党予備軍がさらに増える可能性もある。「厳しく総括し、足りないところを改善したい」と強調した蓮舫氏。25日にも両院議員懇談会を開き総括文書を出す予定だ。政策の対抗軸、今後の野党協力の在り方などについて根本的な〝処方箋〟をまとめ、実現できなければ辞任する覚悟を示す必要があるだろう。

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  • 【秋田魁新報】

    南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田朋美防衛相が2月に行われた防衛省最高幹部による緊急会議で、保管の事実を非公表とするとの方針を幹部から伝えられ、了承していた疑いが浮上した。防衛省・陸自の組織的隠蔽(いんぺい)を容認したもので、複数の政府関係者が明らかにした。この問題に関しては、3月の衆院安全保障委員会で野党が同省と陸自の体質を追及。稲田氏は、陸自で日報を保管していた経緯について「報告は受けていない」とし「徹底的に調査し、改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と答弁していた。非公表の方針を稲田氏が了承していたとすれば、組織的な隠蔽に加担しただけでなく、国会で虚偽の答弁を重ねていたことになり、責任は極めて重大だ。稲田氏は「非公表を了承したという事実は全くない」と否定しているが、疑念を払拭(ふっしょく)するには国民に事実関係を明確に説明しなければならない。南スーダンの首都ジュバで昨年7月に起きた政府軍と反政府勢力の大規模戦闘について記した日報を巡っては、10月に同省に情報公開請求が行われた。12月に「陸自は廃棄済み」として不開示決定したが、統合幕僚監部に電子データで保管されていたことが判明。さらに陸自でも保管されていたが、今年1月下旬に統幕幹部が「今更陸自にあったとは言えない」と指示し、データは消去されたという。今回問題視されているのは、陸自でのデータ確認から約1カ月後の2月15日に行われた緊急会議での稲田氏の対応だ。政府関係者によると、会議は陸自でデータを保管していた事実を公表するかどうか協議するため開催。データは隊員個人が収集したもので公文書に当たらないとされ、「事実を公表する必要はない」との方針を決定した。これについて稲田氏は異議を唱えず、了承したとされる。陸自に日報が保管されていた事実が報道で表面化したのは、会議から1カ月後の3月15日だった。その後の国会審議で稲田氏は、日報保管について省内や陸自から一切報告を受けていないとしたほか、組織的隠蔽の全容を解明するとして特別防衛監察の実施も指示している。稲田氏が非公表方針の決定に関与していたのなら、これまでの国会審議は茶番だったことになる。防衛省・自衛隊を統括する防衛相として国民を欺いたとなれば、信用失墜など組織への影響は計り知れない。稲田氏は事実関係を単に否定するだけでなく、国民が納得できるよう説明を尽くすべきだ。日報を巡る問題では、まだ不透明な部分が多い。24日に開かれる衆院予算委の集中審議に加え、衆院安保委の閉会中審査も早急に行うなど国会として真相究明を進める必要がある。

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  • 【岩手日報】

    「何が悪くて、いまだに仮設暮らしなんだろう。行政のせいか、自分のせいか」「震災後、東北人の礼儀正しさや我慢強さが称賛された。仮設生活に耐えていることも美徳として理解されるのであれば、違和感がある」宅地造成や災害公営住宅の整備、商業施設のオープンなど明るい話題が続く被災地で、仮設住宅の入居者は複雑な思いを抱え続けている。復興の進展に伴い、空室が目立つ仮設団地。阪神大震災では仮設の集約、転居に伴う心身の不調、孤立や孤独死も問題になった。その阪神では発生5年で仮設が解消されたが、東日本の仮設解消の道はなお遠い。本県では先月末時点で1万人超が、みなしを含む仮設に入居している。生活再建格差は、心の復興にも影響を及ぼす。仮設入居者の声に応える生活再建策の充実が求められる。苦しみに共感し、最も困難な人たちと共に歩み続けるという原点がぶれてはならない。岩手大教育学部社会学研究室では2011年から毎年、大槌町仮設住宅入居者調査を実施している。16年の調査結果がまとまり、先月末に町内で報告会を開いた。1408戸を調査し、442人が回答。月収10万円未満が4割を上回るという結果は極めて重い。家族、知人、相談員ら訪問者が減少傾向にあることも気がかりだ。同大の麦倉哲教授は「農山漁村では、現金収入が限られていても、近所付き合いで自然の恵みを物々交換するなどして暮らしを営んできた。そのような生活様式を取り戻していく復興政策が求められるのではないか」と指摘する。収入面など入居者の課題解決に向けたサポートがなければ、仮設退去後に生活困窮のリスクが高まる。年金など限られた収入で暮らせる家賃・住宅施策に加え、住民のつながりづくりを進め、お金を超えた暮らしの豊かさを実現していってほしい。仮設の住環境の向上も、国レベルで取り組むべき大きな課題だ。東日本の仮設住民の各種健康調査からは、住宅の広さや間取り、断熱性や防音性、水はけや交通アクセスなどが、長期的には入居者の心身の健康に大きな影響を与えていることが浮かび上がる。災害規模が巨大であればあるほど、仮設生活も長期化する。仮設建設に際し、必要戸数の早急な整備の必要性はむろんだが、可能な限り生活の質への配慮も求められる。「自分たちのような苦しみを繰り返さないでほしい」。本県の仮設住民が、全国各地で頻発する自然災害の被災者に寄せる強い共感こそ「美徳」と言えよう。その思いに応える仮設整備、復旧復興策であってほしい。(2017.7.20)

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  • 【福島民報】

    【島尾文学の世界】平和を考える契機に(7月20日)今年は本県ゆかりの作家、島尾敏雄の生誕100年に当たり「島尾文学」への関心が高まっている。没後10年を迎えた妻ミホさんとの出会いと愛を描いた映画「海辺の生と死」が今月から公開される。各地で関連行事が催され、原作の本も新たに版を重ねる。戦後72年、文学を通して平和を考える契機としたい。島尾は1917(大正6)年、横浜市に生まれ、父母の出身地である旧小高町を本籍地とした。現在の南相馬市小高区には関係資料を展示している埴谷島尾記念文学資料館がある。太平洋戦争の敗色濃い1944(昭和19)年11月、大学を出て間もない島尾は海軍の特攻艇「震洋」の隊長として奄美群島の加計呂麻[かけろま]島に着任する。爆薬を積んだ小さなベニヤ板のボートで敵艦に体当たりする日を待った。島で国民学校の教員をしていたミホさんと知り合う。死を覚悟する日々の中で引かれ合い、浜辺で逢瀬を重ねる。特攻が発令され、ミホさんは愛する人の後を追うため喪服を着け、短剣を胸に、いつもの浜で待つ。だが、出撃待機中に終戦を迎えた。島尾の小説「島の果て」や「出発は遂に訪れず」には、戦争の冷酷さや極限の状況を生きる苦悩がつづられる。ミホさんも自らの作品集「海辺の生と死」で<この人を死なせるのはいやいやいやいやいやいや>と痛切な心情を表す。今も文庫本で読める。戦争を知らない世代は機会があれば手にとって、当時の若者の心に思いをはせてほしい。戦後、二人は結婚するが、ミホさんは夫の秘密が書かれた日記を見たことで心の安定を失い、昼も夜も夫を責め続けるようになった。救いの見えない日々と、心の奥底でつながる夫婦の姿を書いた島尾の「死の棘[とげ]」は、私小説の傑作として読み継がれている。映画「海辺の生と死」は29日に東京などで公開が始まる。ミホさんがモデルの主人公を演じる満島ひかりさんは、本県のファンに「南の島の話だが、どこか同じところでつながっている」とメッセージを送る。戦争や震災に打ちのめされても、信じる人と古里への敬愛は揺らがない。奄美大島では今月初めに島尾の生誕100年祭が催され、映画が披露された。県内では福島市のフォーラム福島で秋に上映される予定だ。22日からは東京で作家らのトークイベントが催される。戦時下に出会い、激しく命を燃やした島尾夫妻の思いが発信され、県内に足を運ぶ文芸ファンが増えることを期待する。(佐藤克也)

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  • 【福島民友新聞】

    人の手で自然を制御することはできないが、災害は最小限に抑えることはできる。災害時への備えを万全にしておきたい。低気圧の影響で、県内は17日夜から18日にかけて、会津地方を中心に大雨に見舞われた。只見町では18日午前4時すぎから1時間の雨量が88・5ミリを記録し、観測史上最多となった。このため只見、金山の両町は土砂崩れの危険があるとして、合計1871世帯、4350人に避難指示を出した。各地で道路の冠水や土砂崩れが相次いだが、人的被害がなかったのは幸いだった。只見町は全町民に避難指示を出して、避難所への避難を呼び掛けた。避難勧告を経て避難指示を出した2011年の新潟・福島豪雨の際と比べてより早い初動対応は妥当な判断だったといえる。ただ、町の避難指示に従って避難所に身を寄せたのは106人にとどまった。要因としては猛威を振るう雨などに危険を感じた町民が避難をためらったことなどが挙げられる。激しい雨音と雷鳴で広報無線の内容が聞き取れなかったことを指摘する声もあった。同町は、避難した住民が少なかったことから、職員や消防団による避難誘導体制の充実や、広報無線の効果的な避難情報の発信の在り方などについて検討することにしている。詳しく検証して改善すべきところは改め、町民の安全確保に生かしてもらいたい。災害はいつ、どこで起こるか分からない。他の市町村も発令の仕方や伝達方法について再点検し、他山の石としなければならない。人間が災害など想定外の出来事に遭遇した際の心理として「正常化の偏見(正常性バイアス)」がある。危険を知らせる情報に接しても「大事にはなるまい」などと目の前に危険が迫るまで危険を認めない心の働きだ。市町村は災害が起こる可能性がある場合、住民の安全を最優先に避難指示などを発令する。避難した結果、無事であれば「幸運だった」との意識を持ち、いざというときには迷うことなく早め早めに避難行動を取る心構えを日ごろから持つことが肝心だ。例年、梅雨末期には豪雨災害が発生することが多い。これからは台風シーズンもやってくる。避難指示を発令しても山間部や過疎地域では自治体職員や消防がすぐには巡回し切れない場合も予想される。自ら守る「自助」、近隣で助け合う「共助」、そして行政による「公助」。災害時には互いに連携し一体となることで大切な命や財産を守りたい。

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  • 【茨城新聞】

    南スーダンに派遣していた国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題で稲田朋美防衛相が、陸上自衛隊が日報を保管していた事実を非公表にするとの隠蔽(いんぺい)方針を了承していたと複数の政府関係者が明らかにした。稲田氏はその方針の決定後に国会の質疑で、日報保管についての報告はなかったとした上で「防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」と答弁していた。稲田氏は隠蔽の了承を否定しているが、事実だとすれば虚偽答弁の可能性があり、責任は極めて重大だ。防衛相自身の関与は文民統制が機能していたのか深刻な疑義も生じさせる。国会での真相解明を求めたい。PKOの日報問題では「廃棄済み」としたデータが保管されていることが判明するなど説明が二転三転してきた。不都合な事実を隠そうとする組織的な隠蔽体質が露呈したと言えよう。安倍政権は学校法人「森友学園」への国有地格安払い下げ問題や、加計学園の獣医学部新設計画を巡る優遇疑惑などでも情報の積極的な公表を拒んできた。公正な行政の執行には、国民がその適否を判断できる情報の開示が不可欠だ。共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は6月調査より9・1ポイント減の35・8%と2012年の第2次政権発足後最低に下落。不支持の理由として「首相が信頼できない」との回答が51・6%に上った。情報を隠し、説明責任を果たそうとしない政権の姿勢が一因だろう。情報隠蔽が政権の信用を失墜させている現実を安倍晋三首相は厳しく受け止めるべきだ。稲田氏は東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊としてもお願いしたい」と発言するなど不適切な言動が相次ぎ、閣僚としての資質が問われている。8月に予定する内閣改造での「交代」では責任問題があいまいになる。改造前に辞任すべきだ。その前に、24日にも実施される衆院予算委員会での集中審議に加え、衆院安全保障委の閉会中審査を早急に開き、真相究明を進める必要がある。PKO日報問題の本質は、現地の実態を隠そうとしてきた対応にある。陸自部隊が活動する南スーダンの首都ジュバで昨年7月に発生した政府軍と反政府勢力との大規模紛争に関して、日報は「戦闘」と記述していた。防衛省は昨年10月に受理した情報公開請求に対し「陸自で廃棄済み」として不開示を決定したが、統合幕僚監部に電子データで保管されていたことが判明。さらに陸自内部でも保管されていたが非公表としたことが、3月に明らかになった。一連の対応の背景には「戦闘」と認めれば紛争当事者間の停戦合意などのPKO参加5原則に抵触する恐れがあり、実態を隠す意図があったのではないかと指摘される。政府はこの間「武力衝突」という言葉を使い、稲田氏は国会で「法的な意味での『戦闘行為』ではない」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と答弁した。自衛官の安全よりも、国内向けの説明を優先した発言と言えよう。一連の経過にはまだ不明確な点が多い。防衛監察本部が実施している特別防衛監察の結果を早急に発表するとともに、稲田氏の関与について国会できちんと説明すべきだ。(2017.7.20)

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  • 【信濃毎日新聞】

    稲田朋美防衛相にまた重大な疑惑が持ち上がった。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報について、保管の事実を非公表とする方針を了承していたというものだ。事実なら国民への背信行為である。大臣を続ける資格はない。陸上自衛隊部隊が作成した日報は当初「陸自で廃棄済み」とされた。一転、統合幕僚監部での電子データ保管を認め、一部黒塗りで公開したのは2月上旬だ。ところが、3月になって陸自にも保管されていたことが報道で判明、組織的な隠蔽(いんぺい)の疑いが強まった。政府関係者によると、2月中旬に防衛省最高幹部による緊急会議が行われ、陸自に残されていた事実を「公表する必要はない」との方針を決定した。隊員個人が収集したもので公文書に当たらないといった理屈だ。稲田氏は異議を唱えなかったという。会議の2日前にも陸自側から報告を受けていたとされる。組織のトップとして事実関係の公表を指示すべきなのに、不当な判断を容認したことになる。国会で虚偽の説明をした可能性も見過ごせない。陸自でのデータ保管が明るみに出た翌日、衆院の安全保障委員会で「報告はされなかった」と答弁している。「徹底的に調査し、改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」とも述べていた。緊急会議について稲田氏は「隠蔽を了承したとかいう事実は全くない」と否定する。黒江哲郎事務次官も「記憶にない。(防衛相が了承したとの)事実関係はないと思う」としており、政府関係者の証言と食い違っている。本当に報告がなく、承知していなかったとすれば、組織を統率できていなかったことになる。いずれにしても責任は免れない。データの保管や消去、非公表の方針決定にどんな経緯があったのか、事実関係をはっきりさせる必要がある。解明に向け、防衛相直轄の防衛監察本部による特別防衛監察が3月から行われている。速やかに結果を公表するよう求める。すぐに報告書を出せないなら、これまでの調査で分かったことを明らかにすべきである。稲田氏は都議選の応援で自衛隊の政治利用と取れる発言をするなどこれまでも度々、大臣としての資質が疑問視されてきた。安倍晋三首相の任命責任も問われる。来月早々に行う方針の内閣改造で交代が取り沙汰される。退任でうやむやにすることは許されない。(7月20日)

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  • 【新潟日報】

    日報隠蔽「了承」稲田氏の説明が不可欠だ稲田朋美防衛相を巡る新たな問題が浮上した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報を陸上自衛隊が保管していた事実の非公表を、稲田氏が了承していたというのである。本当ならば、防衛省と自衛隊の隠蔽(いんぺい)をトップが容認していたことになり、組織ぐるみが決定的になる。さらに国会答弁がうそだったことにもなる。大臣としての資質や適格性だけでなく、防衛省や実力組織である自衛隊の在り方にも関わる重大な問題である。稲田氏は報道陣に対し「事実は全くない」と否定したが、不十分だ。記者会見などを通じて根拠を示し、説明責任を果たさなければならない。新たな問題は、南スーダンPKO部隊の日報を廃棄したとしながら、陸自が保管していたことに絡むものだ。日報は、情報公開請求に対し防衛省が「陸自は廃棄済み」としていったん不開示を決めた。その後に統合幕僚監部に電子データで保管されていることが分かり、ことし2月に公開した。3月には、日報のデータが陸自にも残っていたことが報道で明らかになった。その後、組織的隠蔽の有無を調べる特別防衛監察が始まっている。稲田氏は、陸自保管が表面化した後の国会答弁でデータ隠蔽の報告はなかったとし、「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と述べていた。しかし2月の防衛省の緊急会議で、幹部から稲田氏へ陸自保管の事実非公表の方針が伝えられ、稲田氏は了承していたという。その直前、陸自側が稲田氏へ保管の報告をしていたことも分かった。事前に非公表の方針を知り、容認していたなら、国会答弁との整合性が全く取れなくなる。稲田氏はこれまでの言動から防衛相としての資質を疑問視され続けている。都議選応援で自衛隊の「政治利用」演説が批判を浴びたのは記憶に新しい。「森友学園」問題では国会答弁の矛盾を問われ、撤回と謝罪に追い込まれた。これらを踏まえれば、「事実は全くない」とする稲田氏の発言にすぐさま納得する国民がどれほどいるだろう。防衛相が隠蔽に加担していたのなら深刻である。さらに見過ごしにできないのは、背景に安倍晋三首相「1強」政治への「忖度(そんたく)」が指摘されていることだ。稲田氏は安倍首相の側近として知られる。それだけに、稲田氏に傷がつくことへの防衛省側の危機感があったとされる。陸自で「廃棄済み」とした日報が一転保管されていたことを明らかにすれば、トップである稲田氏への批判が一層強まるのは間違いない。こうした事態を回避したい思惑があったというのだ。組織防衛や保身のために非公表を決めたのだとすれば本末転倒であり、言葉を失うばかりである。国民がないがしろにされているに等しい。事は稲田氏個人の問題では済まない。

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  • 【中日新聞】

    小さくなる後ろ姿を見送る思いだ。トランプ政権が発足して二十日で半年。国際舞台から米国の退場が続く。米国第一主義は、目標の「偉大な米国の復活」には逆行することを大統領は悟るべきだ。五月の先進七カ国(G7)首脳会議の討議は一対六、七月の二十カ国・地域(G20)首脳会合は一対十九の構図となった。いずれも米国の孤立である。とりわけ、トランプ氏が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を決めたことで、技術革新を含む温暖化対策の主導権は中国に移る。逆に米国は時流に取り残されかねない。国益を顧みない姿勢は、この二十日に国交回復二周年を迎えた対キューバ政策にも表れた。トランプ氏は六月、オバマ前大統領の融和政策を見直し、制裁を再び強化する方針を打ち出した。オバマ氏はキューバ孤立化政策は「時代遅れだ」として、一九六一年の国交断絶以来の敵対関係を解消し、和解に転じた。関与することでキューバ社会の自己変革を促す戦略だった。これによって両国のヒト、モノ、カネの往来は急増し、観光業をはじめ米企業にも大きな商機をもたらした。トランプ氏はこの流れを逆戻りさせようとしている。キューバとの和解は中南米諸国に歓迎され、米国の中南米外交にも好影響を与えた。ところが、トランプ政権誕生後、対米観は中南米でも大幅に悪化した。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが三十七カ国で行った世論調査によると、ブラジルでは二年前は73%の人が米国に好意的だったのが50%に急落。メキシコの場合は30%と、半分以下に減った。中南米では中国の影響力浸透が著しい。「米国の裏庭」とは言えない時代が来るかもしれない。トランプ氏がキューバ政策転換を発表した場所は、大統領選の重要州であるフロリダだ。カストロ体制に反感を抱き、融和に反対するキューバ系移民を前に演説した。支持つなぎとめが狙いだったのは明白である。パリ協定離脱も支持基盤の炭鉱労働者向けの政策だ。トランプ氏は一貫して自分の支持層だけに顔を向けている。万人の指導者の姿ではない。国際社会は米国抜きの秩序を模索し始めた。自国の存在感が急速に薄れていくこと、それが米国自身の損失であることをトランプ氏は自覚してほしい。

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  • 【北國新聞】

    河北潟干拓地の農業認知度高めブランド確立を河北潟干拓地の農産物のブランド化に向けて、金沢、かほく、津幡、内灘の2市2町の連携による取り組みが本格化してきた。今年1月に設立したブランド化推進連絡会が核となってホームページを開設するとともに、新たにリーフレットを作成するなど、情報発信を強めている。河北潟干拓地では、約1100ヘクタールの農地で287戸の農家が営農し、園芸作物などを北陸三県や関西を中心に出荷している。ただ、ヒマワリの迷路で知られる「ひまわり村」や、多数の乳牛を飼育している牧場に比べて、農作物の産地としてはなじみが薄いのが実情だろう。連絡会によると、2015年度の生産量は小松菜が約400トン、レンコンが約700トンなど、県内でも有数の産地を形成している。ほかにも枝豆やスイカ、ナシ、ブドウなど、栽培作物は多岐にわたる。まずは、こうした産地としての認知度を高め、河北潟ブランドの確立につなげていきたい。河北潟干拓地は2市2町にまたがるため、これまでは一体的な支援策が講じられてこなかった側面がある。2市2町が一翼を担う連携中枢都市圏の形成によって連携が強まり、生産や販売、6次産業化などで一体的な施策を打ち出す態勢が整った意義は大きい。情報発信に当たっては、北海道を思わせるような河北潟干拓地の特徴も大いにアピールしたい。県都の中心部から車で20分ほどの地に、これだけの広大な農地が広がる光景は他にはない魅力と言えよう。多彩な農作物の収穫体験ツアーをはじめとして、ひまわり村や牧場、果樹園を含めた農業観光を展開すれば、より多くの人に足を運んでもらえるのではないか。連絡会は、河北潟干拓地の豊かな自然や広大な農地、多彩な農作物を河北潟の宝物「カタダカラ」のネーミングで売り込みに努めている。生産者に呼び掛けて、河北潟産を前面に打ち出した共通の出荷シールなどの作成も検討してはどうか。共同出荷の促進、野菜や果物と乳製品を組み合わせた新商品の開発なども含めて、自治体と生産者が一体となったブランド化の取り組みを期待したい。

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  • 【福井新聞】

    【論説】「防衛省、自衛隊に改めるべき隠蔽(いんぺい)体質があれば私の責任で改善していきたい」—。南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報をいったんは廃棄したとしながら、陸上自衛隊が電子データで保管していたことが3月に発覚。その際、稲田朋美防衛相が衆院委員会で発した答弁がこれだ。しかし、稲田氏自身が日報非公表の方針を決めた2月15日の緊急会議に出席し了承していたことが明らかになった。事実なら「改めるべき隠蔽体質」のど真ん中にいたことになる。稲田氏は「隠蔽を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は全くない」と真っ向否定している。事実と異なるのならば、明確な根拠を示すなど説明責任を果たすべきだ。防衛監察本部が特別防衛監察を実施していることを理由にした先延ばしは許されない。そもそも特別防衛監察自体は防衛相直轄であり、稲田氏自身が対象とならないため、全容解明の可能性が低いことが指摘されている。2月中旬の通常国会では、陸自とは別の統合幕僚監部内で見つかった日報を巡り与野党の攻防が続いていた。この日報も昨年12月末に見つかっていたが、稲田氏に報告があったのは約1カ月後。野党はシビリアンコントロール(文民統制)の観点から問題視し、稲田氏を「蚊帳の外大臣」と表する批判もあった。稲田氏は当時、この隠蔽問題に加え、日報に記された「戦闘行為」を「武力行使」と言い換えた。そんな状態の中で、防衛省側は陸自で存在していた日報の公表を躊躇(ちゅうちょ)したのだろうが、稲田氏は公表を潔く決断すべきだった。隠蔽了承が事実なら、稲田氏は国会で虚偽の答弁をしていた可能性がある。防衛省幹部による「大臣コントロール」といった状況ではなかったのか。問題の本質は、PKO参加5原則に抵触する恐れがあるため、現地の実態を隠す意図があったとの指摘もある。稲田氏も自衛官の安全よりも国内向けの説明を優先するような発言に終始していた。共同通信社が15、16日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は前回6月より9・1ポイント減の35・8%、不支持率は10・0ポイント増え53・1%となり、支持と不支持が逆転した。他の報道機関の調査では、支持率が30%を下回る結果もある。情報を隠し、説明責任を尽くさない政権の姿勢にも起因していることは明らかだ。稲田氏は地元選出の衆院議員とあって、森友学園問題や都議選での「自衛隊としてもお願いしたい」発言など、これまでの数々の軽率な言動に県民の多くが危うさを感じてきたはずだ。24、25日にそれぞれ開かれる衆参両院の予算委員会での集中審議では、稲田氏の隠蔽問題が浮上した以上、真相究明を進める必要がある。予算委への出席に同意した安倍晋三首相はかねて「真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と強調してきた。稲田氏も真摯に対応してもらいたい。 

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  • 【京都新聞】

    南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を巡り、稲田朋美防衛相が日報を非公表にすることを了承していた疑惑が浮上した。稲田氏は通常国会で、陸上自衛隊が日報を廃棄したとしながら実際には保管していたことについて「報告を受けていない」と答弁し「隠蔽(いんぺい)体質があれば私の責任で改善する」と述べていた。疑惑が事実なら答弁は虚偽だったことになる。国民にうそをつく人物は実力組織のトップとして最もふさわしくない。稲田氏は疑惑を否定しているが、議事録など資料をもとに詳細に説明するべきだ。日報問題は、現地部隊の日報についてジャーナリストから情報公開請求を受けたことがきっかけになった。防衛省は一度は「廃棄済み」として不開示決定にしたが、その後省内に電子データで保管されていたことが分かり公開した。さらにその直後、陸自内部にも日報のデータが残っていたことが報道で明るみに出た。稲田氏はこの間の経緯について「報告を受けていない」と関与を否定。防衛省トップとして特別防衛監察を指示していた。だが実際は違ったようだ。陸自の日報データの取り扱いを話し合う防衛省最高幹部の会議があり、稲田氏は幹部らの非公表方針を了承したという。その2日前にも陸自からデータ保管の事実について説明を受けていたという。なぜこのような事態になったのか。稲田氏は自身の発言などを巡り野党から批判を受けていた。日報問題でさらに窮地に立つ稲田氏に防衛省幹部らが「配慮」し、稲田氏がこれを受け入れたという。稲田氏は安倍晋三首相の「秘蔵っ子」とされている。防衛省、自衛隊は安倍政権に忖度(そんたく)したと批判されても仕方がないだろう。防衛省と自衛隊の隠蔽体質は度々指摘されてきた。護衛艦乗組員の自殺問題ではいじめの事実を示す文書の隠蔽が明らかになった。防衛相は国民の代表として官僚や自衛隊幹部を統制する立場にある。稲田氏は幹部らに公開を指示すべきだった。稲田氏の大臣の資質にはすでに赤信号がともっている。森友問題で国会答弁を撤回し謝罪。東京都議選では自衛隊を政治利用するかの発言で批判を浴びた。国会の予算委員会集中審議が24日にも予定される。稲田氏はもちろん、任命責任が問われる安倍首相にも丁寧な説明が求められる。

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  • 【神戸新聞】

    稲田朋美防衛相の新たな問題が発覚した。「廃棄した」とされた南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報が陸上自衛隊内で保管されていた案件で、保管の事実を非公表とする方針を幹部から説明され、了承していたというのである。稲田氏は、日報保管が明るみに出た後の国会で「報告はされなかったということだ」と自身の関与を否定していた。本当は聞いていたのであれば、虚偽の答弁をしたことになる。稲田氏は「非公表を了承したような事実はない」と否定している。しかし、複数の政府関係者が、会議で異議を唱えず了承したとしている。大臣として組織的な隠蔽(いんぺい)を容認したとの疑いは深まるばかりだ。日報には、昨年7月に南スーダンの首都で起きた政府軍と反政府勢力の衝突が記載され、派遣部隊が「戦闘」に巻き込まれる恐れに言及するなど、当時の緊迫した状況を伝えている。その部分の情報開示請求に対し、防衛省は昨年12月、「廃棄済み」を理由に不開示を決定した。しかし再調査を求められ、「範囲を広げて探した結果、別の部署で見つかった」として、今年2月に一部を公表した。表向きは、統合幕僚監部で電子データが確認されたためという。実際は陸自でも発見されたが、そのことは内密にされた。ところが3月に陸自での保管が発覚し、情報隠しの疑いが浮上した。稲田氏は不正を調査する「特別防衛監察」を指示したが、一方で2月15日の会議で「今更あったとは言えない」とする防衛省・陸自の方針を了承したと指摘されている。組織の体面を優先した情報隠しの容認が事実なら、国民への背信行為というしかない。これまでも稲田氏の大臣としての統率力には疑問符が付けられていた。東京都議選の応援演説でも「防衛省・自衛隊としてお願いしたい」と自衛隊の政治利用と取れる発言を行い、厳しく批判されたばかりである。防衛省・自衛隊は組織の体質を徹底的に見直すべきだが、その前に防衛相の資質と、安倍晋三首相の任命責任が問われる。首相は内閣改造による首のすげ替えでお茶を濁さず、即座に稲田氏の更迭を判断すべきだ。

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  • 【奈良新聞】

    注目された奈良市長選は予想通りの大激戦となり、現職の仲川元庸氏が前生駒市長の山下真氏らを僅差で破り3選を果たした。投票率は参院選と同時だった前回を大きく下回ったが、市民は仲川氏の続投を選択した。選挙期間中、市民に約束したことをどう実行していくか、これからが本番だ。選挙中、仲川氏は2期8年の実績を訴えてきた。評価された面もあろうが、この8年間をみると市政運営が、けっして順調だったといえない。何を期待されたのか、その勝因の一つをみると、仲川氏をかつぎ出し、過去2回の選挙で支援してきた民進党(当時・民主党)との決別がある。民進党の呪縛から解き放たれたことで、支持の輪が拡大し、保守層に大きな広がりをみせた。仲川氏にとって、まさに「ゼロからのスタート」といえるほど、今回の選挙は大きな意味を持つものとなった。県都であること。しかも古都・奈良というわが国を代表する伝統ある街の首長だ。若かったこともあり、当初は「古いものはすべて否定する」という手法が目についた。市政を築いてきた先人たちの遺産や伝統を尊重しながら、直すべきところは直しながら、時代を先取りした新たな施策を展開すべきだ。新旧住民が混在する奈良市だからこそ、伝統を重んじ、新しさを取り入れてほしい。同時に行われた市議選で新旧交代が進んだ。どのような会派構成になるか注目される。両輪といわれる議会対応を、今度こそしっかり取り組んでほしい。同じく選挙で選ばれた議会を敵視するのではなく、ともに歩んでいく姿勢が求められる。議会対応がまずければ、どんなによい政策も前に進まない。この8年間で学んだことだ。また日々の業務を推進している市職員との関係、とくにベテランの幹部職員との意志の疎通が大事だ。これまでもやってきたつもりかもしれないが、実態はどうだったか。職員が持っている力を十二分に活用すること、そのことが市政の改革を「加速」させることになる。市民が期待する市政となる。議会との軋轢(あつれき)や職員との関係で、行政がいつもガタガタしていれば、一番の被害者は市民だ。そしてこの選挙戦を通じて、他候補から指摘された政策がある。過半数以上の批判票があったのだから、これも市民の声だ。謙虚に受け止めて、どう取り入れ改善するかという度量が必要だ。3期目の仲川市政に期待し、真摯(しんし)な対応を望む。

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  • 【紀伊民報】

    昨年、世界遺産に追加登録された田辺市・闘鶏神社の例大祭「田辺祭」が24、25日に営まれる。紀州三大祭りの一つであり、400年以上の歴史を重ねる祭りである。8地区が繰り出す笠鉾(かさほこ)や衣笠(きぬがさ)の巡行、稚児が主役となる流鏑馬(やぶさめ)などに加え、24日夜、笠鉾と衣笠が旧会津橋の上で引きそろい、提灯の明かりが会津川の川面に映る場面は幻想的だ。今年は旧会津橋以外に、25日夜にも、闘鶏神社前の宮路通りで笠鉾と衣笠を引きそろえる。世界遺産の登録を受けた新たな試みである。この祭りを全国に売り出す好機にしたい。一方で、祭りの主役を務める地区では年々、担い手と運営費の確保が困難になっている。ある地区では「少子高齢化で住民が少なくなり、人材集めが難しい」、別の地区では「費用のほとんどを地区で負担しており、運営が大変」などの声が聞かれる。その対策として、笠鉾の引き手を地域外から募ったり、祭りに興味を持った大学生や外国人の手を借りたりする地区もある。運営費に関しては、笠鉾や衣笠を出す地区と田辺商工会議所などでつくる「田辺笠鉾協賛会」が、市の補助金や集めた協賛金を各地区に配分。市も本年度、協賛会に約400万円の補助金を出した。引きそろえを増やした分の費用として、例年の額に約150万円を追加したのだ。世界遺産登録を機に、祭りを観光イベントとして盛り上げる費用であり、来年度以降も続ける予定という。しかし、市を代表する観光イベントというには、少々物足りない。弁慶まつりに646万円、イルカふれあい事業に150万円という補助金の額を並べると、田辺祭だけを特別扱いできないということだろうが、この祭りを全国に売り出すというのなら、もう一工夫あってもよいのではないか。その中で保存や継承に向けた新しい動きもある。市は本年度から6年かけて祭りを映像に記録し、お囃子(はやし)を録音する。神社や田辺祭保存会などと実行委員会をつくり、本年度は文化庁からの補助を受けて進める。将来的に、祭りを国指定の文化財にすることを目指す。これによって、口伝や写真が中心だった保存の試みを広げてほしい。近年、県内を訪れる観光客は増えている。田辺市でも熊野古道を中心に観光客が増え、とりわけ外国からの客が多くなった。そうした動きを背景に、伝統の田辺祭を市を代表する観光資源としても、大いに盛り上げていきたい。市と担い手の地区が協力し、来場者を増やすことを考えるのである。(1)観光客が祭りに参加できる観光ツアーを企画する(2)有料の観覧席を設ける(3)地区ごとに衣装を整え、担い手に有料で貸与する——そんな工夫をすれば、運営費集めにもつながるのではないか。世界遺産への登録は、田辺祭の保存や継承について、官と民が知恵を出す好機でもある。(F)

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  • 【山陽新聞】

    政府と連合が、労働界から反対が強かった一部の専門職を残業代支払いなどの労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の導入で合意した。連合はこれまで「残業代ゼロ法案」だとして強く反対してきたが、健康確保措置を強化するよう労働基準法改正案を修正する方向で一致した。連合の方針転換で、法案は秋の臨時国会で働き方改革関連法案と一括審議され、成立する見通しが出てきた。突然の容認について連合の神津里季生会長は「(制度を)撤回させるのが望ましいが、現実を考えた時に健康管理をここまでやってほしいという思いがある」としている。しかし、労基法改正案は2015年4月に閣議決定され、連合や民進党など野党の反対で2年以上も国会審議が先送りされてきた法案だ。唐突感は否めない。連合としては「安倍1強」の政治状況の下、少しでも労働者に有利な条件を法案に盛り込ませたいという狙いなのだろう。「テロ等準備罪」などの与野党対決法案が、巨大与党の数の力で何度も押し切られたこともあっての判断と思われる。だが、電通事件などで「過労死」が社会問題としても大きくクローズアップされている。政府が進める長時間労働是正の「働き方改革」とも整合性が取れておらず、過労死遺族が反発するのも当然だ。連合の判断は流れに逆行しているのではないか。新制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発などの専門職が対象となる。仕事の成果に応じた賃金にすることで、政府は「時間に縛られず効率的に働ける」などとしている。修正案は休日確保を義務付けるほか、終業から始業の間に一定の休息を設ける「勤務間インターバル」や、連続2週間の休日取得—などから働き過ぎ防止策を労使に選ばせる内容になるという。ただ、連合が支持する民進党には困惑が広がっているようだ。連合会長と安倍晋三首相のトップ会談で合意が行われたことで、これまでの共同歩調から、突然蚊帳の外に置かれる格好になった。野党共闘などを巡っての両者の溝がさらに深まる可能性がある。傘下の労組から異例の反対声明が出るなど、連合内部にも批判の声がある。修正方針を確認するため、きのう予定されていた政府や経団連との3者トップ会談は、連合内部の調整がつかないことから延期された。今後、十分な理解が得られるかどうかは不透明と言えよう。いったん労働時間規制の適用除外が一部にでも導入されれば、将来なし崩し的に対象が拡大するのでは、との懸念も拭えない。過労死やうつ病など労働者に犠牲を強いてきたこれまでの日本の過酷な労働環境を抜本的に見直す。連合はそのことを、いま一度再認識すべきであろう。

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  • 【中国新聞】

    PKO日報隠蔽防衛相は辞任すべきだ2017/7/20組織的な隠蔽(いんぺい)をただす立場の大臣が加担した格好だ。国会でも事実と異なる答弁を重ねていたことになる。稲田朋美防衛相は即刻辞任すべきではないか。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田氏は、保管の事実を非公表とする方針を伝えられて了承した。防衛省最高幹部による2月15日の緊急会議でのことだ。その2日前にも、陸自幕僚監部の幹部から日報の電子データが保管されていたという報告を受けていた。いずれも、複数の政府関係者が明らかにした。これまでの稲田氏の国会答弁や、説明とは全く異なっている。稲田氏自身はきのう、「隠蔽を了承したとかいう事実は全くない」と否定した。ならば陸自のケースを公表しなかった経緯や理由を説明する必要がある。統合幕僚監部に続き、陸自にも保管されていたことは1月に発覚した。統幕でのデータ保管は2月に公表したが、陸自での保管は3月に報道されるまで隠していた。非公表にしておく判断に、稲田氏は関わらなかったのだろうか。本人が言うように関与していなかったとしたら、大臣として省や自衛隊を把握できていなかったといえよう。ガバナンス(統治)やシビリアンコントロールの点で大臣失格ではないか。この問題では、防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を進めている。近く公表される結果が待たれるが、第三者機関ではない身内の調査だけに、全容解明ができるのか不安が残る。稲田氏は、職責の重みをどれほど感じているのだろう。今月6日昼、九州北部の豪雨で福岡、大分両県に特別警報が出て自衛隊が約1600人態勢で救助活動などに当たっていたのに、1時間余り「政務」を理由に防衛省を離れた。危機管理を軽視しているとしか思えない。重責を担う自覚に欠けている。国内外とも多くの懸案を抱えているのが防衛相である。東アジアを見れば、自制を求める国際社会の声を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮、中国やロシアをにらんだ日米関係などの課題がある。国内では九州北部の豪雨をはじめ自然災害への対応や備えも求められる。責任を持って対応する気が稲田氏にあるのか、疑問だ。安倍晋三首相の「秘蔵っ子」といわれるように、重要ポストが次々あてがわれてきた。「将来の首相候補として頑張ってほしい」と持ち上げられたほどだ。そんな首相の任命責任も問わねばなるまい。これまでも、稲田氏の言動は再三問題になってきた。都議選の応援演説で「自衛隊としてもお願いしたい」と政治利用するかのような発言をしたことは、とりわけ深刻だった。歴史的な自民党惨敗や、内閣支持率の続落の一因にもなった。森友学園問題を巡っては、事実と異なる国会答弁をした。参院予算委員会で「(森友側の)顧問弁護士だったということはない。裁判を行ったこともない」と言い切ったが、後に答弁を撤回し、謝罪した。資質や能力については今分かったことではない。本人が辞意を表明しなくても、安倍首相は8月上旬の内閣改造まで引っ張らず即座に罷免すべきだ。

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  • 【山陰中央新報】

    PKO日報問題/情報の開示が不可欠だ南スーダンに派遣していた国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題で稲田朋美防衛相が、陸上自衛隊が日報を保管していた事実を非公表にするとの隠蔽(いんぺい)方針を了承していたと複数の政府関係者が明らかにした。稲田氏はその方針の決定後に国会の質疑で、日報保管についての報告はなかったとした上で「防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」と答弁していた。稲田氏は隠蔽の了承を否定しているが、国会で虚偽の答弁をしていた可能性があり、責任は極めて重大だ。防衛相自身の関与は文民統制が機能していたのか深刻な疑義も生じさせる。国会での真相解明を求めたい。PKOの日報問題では「廃棄済み」としたデータが保管されていることが判明するなど説明が二転三転してきた。不都合な事実を隠そうとする組織的な隠蔽体質が露呈したと言えないか。共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査によると、内閣支持率は6月調査より9.1ポイント減の35.8%と2012年の第2次政権発足後最低に下落。不支持の理由として「首相が信頼できない」との回答が51.6%に上った。情報隠蔽が政権の信用を失墜させている現実を反映したものだと受け止めるべきだ。公正な行政の執行には、国民がその適否を判断できる情報の開示が不可欠であり、政府は信頼回復に努めなければならない。稲田氏は東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊としてもお願いしたい」と発言するなど不適切な言動が相次ぎ、閣僚としての資質が問われている。8月に予定されている内閣改造を前に、責任論の浮上は避けられないだろう。24日にも実施される衆院予算委員会での集中審議に加え、衆院安全保障委の閉会中審査を早急に開き、真相究明を進める必要もある。PKO日報問題は、現地の実態を隠そうとしてきた対応から派生した。陸自部隊が活動する南スーダンの首都ジュバで昨年7月に発生した政府軍と反政府勢力との大規模紛争に関して、日報は「戦闘」と記述していた。防衛省は昨年10月に受理した情報公開請求に対し「陸自で廃棄済み」として不開示を決定したが、統合幕僚監部に電子データで保管されていたことが判明。さらに陸自内部でも保管されていたが非公表としたことが、3月に明らかになった。一連の対応の背景には「戦闘」と認めれば紛争当事者間の停戦合意などのPKO参加5原則に抵触する恐れがあり、実態を隠す意図があったのではないかと指摘される。政府はこの間「武力衝突」という言葉を使い、稲田氏は国会で「法的な意味での『戦闘行為』ではない」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と答弁した。自衛官の安全よりも、国内向けの説明を優先した発言と言えよう。一連の経過にはまだ不明確な点が多い。防衛監察本部が実施している特別防衛監察の結果を早急に発表するとともに、稲田氏の関与については国会できちんとした説明が必要だ。2017年7月20日

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  • 【愛媛新聞】

    8カ国・地域が参加する北太平洋漁業委員会(NPFC)の国際会合で、日本が提案したサンマの国・地域別漁獲枠の新設は合意に至らず、決裂した。乱獲による資源枯渇が懸念される中、日本政府は参加国の理解を得られるデータを示し、持続可能なサンマ漁の確立を急がなければならない。枠の新設では、中国は資源減少の認識すら受け入れず、韓国とロシアは時期尚早として反対した。最大級の漁獲量がある日本は、来年の会合で漁獲枠という実効性の高い保護策で合意に導く責務がある。北太平洋西側のサンマ資源量について、日本は2003年の502万㌧が16年には178万㌧に減ったと推定する。だが、漁獲量の低迷は海流変化など自然条件の影響との指摘もある。枠新設協議をスタートさせるためには、高度な科学的根拠を示すことが欠かせない。日本のサンマ漁獲量は長く年20万〜30万㌧程度で推移していたが、15、16年は11万㌧台に低迷。一方、日本近海への回遊に先回りして漁をする台湾や中国は急増している。日本が示した今回の枠は現実と乖離(かいり)し、強引だと言わざるを得ない。割当枠が24.2万㌧と最大の日本、19.1万㌧の台湾は近年の実績でみると余裕があるが、4.7万㌧の中国は削減を迫られる。各国を説得できる材料が十分そろわないまま枠を示し、「縛りを受けたくない」と言い切った中国などの猛反発を受けたことで、交渉はより困難になった。準備不足と稚拙な交渉を猛省しなければならない。数少ない成果は、中国などの遠洋漁業国が1年に限り、自国の漁船許可数の増加禁止で一致したことだ。ただ、許可外の操業が横行すれば効果はない。中国にはNPFCでの漁船数の取り決めを破った前例があり、実効性は疑わしい。水産庁も「違法船対策や科学的情報で、中国を攻めないといけない」と強調する。ただ、日本は違法操業を一方的に批判できる立場でもない。資源の急減を受け、国際合意した太平洋クロマグロの小型魚漁獲では上限を突破。ニホンウナギは中国などと養殖の制限で合意したが、稚魚のシラスの国内採捕の45%に密漁など違法取引の疑いがあり、十分な資源管理ができているとは言えない。このような実態では、対外交渉で日本の主張が受け入れられるはずもない。合意事項の順守は、国際社会で信頼を得る絶対の条件であることを、水産関係者は肝に銘じる必要がある。漁獲規制には各国の利害が絡むが、資源減少はすべての関係国にとって不利益だ。マグロやウナギのように、絶滅が危惧されてから対応を本格化させたのでは遅い。サンマの漁獲国は資源が危機的ではない現段階で規制をかけることが、枯渇を防ぐ大切な一歩と自覚し、自国の利害を超え、国際的な枠組みづくりに協調しなければならない。

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  • 【徳島新聞】

    稲田朋美防衛相に、大臣としての資質が問われる問題がまた明らかになった。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら、陸上自衛隊が保管していたのを巡って、日報のデータを非公表にするとの方針を了承していたという。誤った方針を正すべき最高責任者としての自覚を著しく欠いていると言わざるを得ない。防衛相の辞任を求める声が強まるのも当然であり、稲田氏は説明を尽くさなければならない。複数の政府関係者によると、稲田氏が非公表を了承したとされるのは、2月15日、防衛省で開かれた緊急会議である。その席上、情報公開請求に対して「廃棄済み」とした日報が陸自に電子データで残されていたことについて、事実関係を公表するかどうか対応を協議した。陸自は1月17日、岡部俊哉陸上幕僚長に保管されていたことを報告し、公表の準備を始めた。しかし、陸自のデータは隊員個人が収集したもので、公文書に当たらないなどとして、「事実を公表する必要はない」との方針を決定。稲田氏は異議を唱えず、了承したとされる。さらに、非公表の方針を決めた緊急会議の2日前にも、陸自側から電子データが保管されていた事実などについて報告を受けていたという。防衛省・自衛隊の組織的隠(いん)蔽(ぺい)を容認した形であり、あってはならないことだ。国民を欺くものであり、到底見過ごすことはできない。憂慮すべきは、稲田氏がその後の国会で、一連の経緯の報告を受けていないとし「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と答弁していることだ。唯一の軍事的組織である自衛隊で隠蔽があり、大臣が虚偽の答弁をしたのなら、極めて深刻な事態である。稲田氏といえば、不適切な発言を繰り返し、与野党から問題視されてきた。3月には、大阪市の学校法人「森友学園」の原告代理人として出廷したことを示す裁判記録が判明し、国会答弁との矛盾を問う報道陣に「記憶にない」などと釈明したが、結局、答弁撤回と謝罪に追い込まれた。記憶に新しいのは、東京都議選での応援演説である。自民党候補の集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言し、自衛隊の政治利用と批判を浴びた。それでもなお安倍晋三首相は続投を指示していた。閣僚としての資質に欠けた稲田氏を、その任にとどまらせていることには首をかしげざるを得ない。防衛省内からさえ「かばいきれない」という声が上がっている。安倍内閣の支持率は急落しているが、稲田氏への対応次第では国民の信頼をさらに失うことになる。

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  • 【高知新聞】

    トランプ米大統領の就任から、きょうで半年になる。米国の大統領はその発言や行動はもちろん、一挙手一投足が注目される。米国は冷戦終結後、唯一の超大国となり世界に与える影響力は今も絶大だ。それではトランプ氏がこの半年、大国のリーダーにふさわしい責任を果たしてきたのか。残念ながらノーといわざるを得ない。米メディアの世論調査によるとトランプ氏の支持率は36%で、就任半年では第2次世界大戦後の歴代大統領の中で最低という。不支持率は58%に上る。トランプ氏は「米国第一」を掲げ、重工業が衰退したラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれる地域を支持基盤に、大統領の座に上り詰めた。国益の追求は、どの国の指導者でも目指すことだろう。しかしトランプ氏の「米国第一」には、傲慢(ごうまん)ともいえる独善性が見て取れる。内向き志向が強く、貿易では保護主義を取る。国際協調にも後ろ向きだ。トランプ氏は就任早々、イスラム圏7カ国からの入国を禁止する大統領令に署名した。現在は6カ国からの入国が制限されているが、下級審は「違憲」と判断し、連邦最高裁も憲法判断は示していない。移民の国である米国の、建国の理念を否定する排他主義といえる。現在でもトランプ支持派と反対派のデモなどが絶えず、国内分断の要因となっている。国際社会との関係でも、思慮を欠いたような無責任な行動が目立つ。環太平洋連携協定(TPP)、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からも離脱を表明した。トランプ政権は、オバマ前政権の政策を否定することに躍起になっているかのようだ。医療保険制度改革(オバマケア)を改廃して代替法案をつくったものの国民に不評で、与党共和党に造反者が出て可決の見通しは立っていない。政権に批判的なメディアとの対立も続いている。批判にも謙虚に耳を傾けることは民主主義の基本であり、ツイッターで罵倒の言葉を並べ立てても国民の心には響くまい。トランプ氏が連邦捜査局(FBI)長官を電撃解任したことも、民主主義への理解度を疑わせるものだった。三権分立や司法の独立について、どう考えているのか。半年を経てもトランプ政権の幹部人事は、固まっていないポストが多数あるとされる。家族や腹心を要職に据えたことが裏目に出ているのではないか。次期駐日大使にウィリアム・ハガティ氏がようやく承認されたのは、先週になってである。世論調査の数字を見ても、トランプ政権が国民や世界に与えた失望は希望よりもはるかに大きい。そして失望を招いているのは、ほかならぬトランプ氏自身だ。米国の威信は回復できるのだろうか。米国の大統領にふさわしい、威厳と指導力の有無にかかっている。

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  • 【西日本新聞】

    南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報問題で、新たな疑惑が浮上した。稲田朋美防衛相が2月15日に開かれた防衛省最高幹部の緊急会議で、日報保管の事実を隠蔽(いんぺい)する方針を幹部から伝えられ、了承していたというのだ。複数の政府関係者が明らかにしたとされる。この日報は現地で起きた大規模武力衝突を隊員が「戦闘」と記録した重要な文書である。防衛省は日報について当初「破棄済み」と存在を否定したが、後になって統合幕僚監部と陸上自衛隊で保管していたことが判明した。関係者によると、このうち陸自の日報データ保管が判明した時点で、幹部が会議を開いて事実関係を公表するか対応を協議した。幹部らは「公表の必要なし」との方針を決定、出席していた稲田氏も異議を唱えなかったという。稲田氏はその後の国会で、防衛省の隠蔽行為への関与を問われると「(自分には)報告はされなかった」ときっぱり否定している。もし「会議で了承」の疑惑が事実だとすれば、稲田氏は組織的な隠蔽に加担した上に、国会で虚偽答弁をしたことになる。職責に背き、国民の信頼を裏切る行為だといわざるを得ない。稲田氏が防衛省トップの任に値するかどうか、厳しく問われるべきである。稲田氏はこの新たな疑惑について「事実は全くない」と全面的に否定している。しかし事案の重大性を鑑みれば、衆院予算委員会の閉会中審査など公の場で、稲田氏と防衛省幹部から直接事実関係をただすべきである。日報隠蔽問題については、稲田氏が主導して省内の特別防衛監察を実施し、近く結果を公表する見通しとなっていた。稲田氏自身が疑惑の当事者となれば、監察の信頼性にも疑問符がつく。安倍晋三政権は8月上旬にも内閣改造に踏み切るとみられる。稲田氏が辞任すれば政権への打撃となるため、改造まで稲田氏を守り通し、穏便な交代を図る構えだ。しかし、疑惑をうやむやにしたままの逃げ切りなど許されない。=2017/07/20付西日本新聞朝刊=

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  • 【宮崎日日新聞】

    ◆働き方改革への教訓にせよ◆広告大手電通の違法残業事件で、労働基準法違反罪で法人としての電通を略式起訴した検察の処分について東京簡裁は「不相当」と判断し、正式裁判を開くことを決めた。非公開の書面審理による略式手続きとは異なり、悲惨な過労自殺につながった違法残業の認識や労務管理の実態をただされることになる。簡裁は理由を明らかにしていないが、本社だけでも6千人の社員がいる巨大企業で起きた新入社員の過労自殺の経緯や背景は複雑で、書面のみでは事実関係を十分に解明できないと判断したようだ。悲劇への経緯が不明事件をきっかけに長時間労働への社会の関心が高まり、働き方改革を加速させたことも重くみたのだろう。違法残業事件で企業が略式起訴されると、略式手続きを経て罰金刑を科すのが通例になっている。ただ多くの場合、誰がどのように違法残業を指示し、どこまで違法性を認識していたかなど自殺や過労死に至る詳しい経緯は明らかにならない。悲劇が繰り返される中、正式裁判に踏み出した今回の簡裁決定の意義は大きい。2015年4月に電通に入社した高橋まつりさんは、その年12月に都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。労働基準監督署は翌年9月に「うつ病発症前1カ月の残業は約105時間」とし、長時間労働が自殺の原因と認定。検察当局は今月、労働基準法違反の罪で電通を略式起訴する一方、高橋さんの上司らを起訴猶予とした。過去に長時間労働で摘発された靴販売店や量販店などのケースでも法人が略式起訴され、幹部らは起訴猶予となっており今回、そうした前例を踏襲したのだろう。一方、電通事件をきっかけに加重労働に関心が高まる中、労働基準法違反で略式起訴されたファミリーレストランの運営会社など2社について今年3月、大阪簡裁は相次ぎ「略式不相当」と判断した。東京簡裁の決定はこの流れに沿ったともいえよう。企業体質にまで迫れ電通事件が正式裁判になっても、検察側は略式起訴した際と同じ罰金刑を求めるとみられる。結論が変わらないなら、わざわざ公判を開く必要はないという考え方もあるかもしれない。しかし長時間労働だけが問題なのではない。高橋さんが会員制交流サイト(SNS)などに残していた訴えには、上司のパワハラをうかがわせる記述もあった。違法残業の背景にある企業体質にまで踏み込んだ実態解明が求められており、正式裁判では被告人質問などを通じ、詳しく明らかになるよう期待したい。政府が働き方改革の旗を振る中、企業への視線は格段に厳しくなっており、各企業は規模に関わりなく、社員の健康や安全が重要な経営課題であることを肝に銘じ、改革に取り組む必要がある。

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  • 【佐賀新聞】

    PKO日報問題信用失墜させる情報隠蔽2017年07月20日09時08分南スーダンに派遣していた国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題で稲田朋美防衛相が、陸上自衛隊が日報を保管していた事実を非公表にするとの隠蔽(いんぺい)方針を了承していたと複数の政府関係者が明らかにした。稲田氏はその方針の決定後に国会の質疑で、日報保管についての報告はなかったとした上で「防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」と答弁していた。稲田氏は隠蔽の了承を否定しているが、国会で虚偽の答弁をしていた可能性があり、責任は極めて重大だ。防衛相自身の関与は文民統制が機能していたのか深刻な疑義も生じさせる。国会での真相解明を求めたい。PKOの日報問題では「廃棄済み」としたデータが保管されていることが判明するなど説明が二転三転してきた。不都合な事実を隠そうとする組織的な隠蔽体質が露呈したと言えよう。安倍政権は学校法人「森友学園」への国有地格安払い下げ問題や、加計(かけ)学園の獣医学部新設計画を巡る優遇疑惑などでも情報の積極的な公表を拒んできた。公正な行政の執行には、国民がその適否を判断できる情報の開示が不可欠だ。共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は6月調査より9・1ポイント減の35・8%と2012年の第2次政権発足後最低に下落。不支持の理由として「首相が信頼できない」との回答が51・6%に上った。情報を隠し、説明責任を果たそうとしない政権の姿勢が一因だろう。情報隠蔽が政権の信用を失墜させている現実を安倍晋三首相は厳しく受け止めるべきだ。稲田氏は東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊としてもお願いしたい」と発言するなど不適切な言動が相次ぎ、閣僚としての資質が問われている。8月に予定する内閣改造での「交代」では責任問題があいまいになる。改造前に辞任すべきだ。その前に、24日に実施される衆院予算委員会での集中審議に加え、衆院安全保障委の閉会中審査を早急に開き、真相究明を進める必要がある。PKO日報問題の本質は、現地の実態を隠そうとしてきた対応にある。陸自部隊が活動する南スーダンの首都ジュバで昨年7月に発生した政府軍と反政府勢力との大規模紛争に関して、日報は「戦闘」と記述していた。防衛省は昨年10月に受理した情報公開請求に対し「陸自で廃棄済み」として不開示を決定したが、統合幕僚監部に電子データで保管されていたことが判明。さらに陸自内部でも保管されていたが非公表としたことが、3月に明らかになった。一連の対応の背景には「戦闘」と認めれば紛争当事者間の停戦合意などのPKO参加5原則に抵触する恐れがあり、実態を隠す意図があったのではないかと指摘される。政府はこの間「武力衝突」という言葉を使い、稲田氏は国会で「法的な意味での『戦闘行為』ではない」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と答弁した。自衛官の安全よりも、国内向けの説明を優先した発言と言えよう。一連の経過にはまだ不明確な点が多い。防衛監察本部が実施している特別防衛監察の結果を早急に発表するとともに、稲田氏の関与について国会できちんと説明すべきだ。(共同通信・川上高志)

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  • 【南日本新聞】

    2020年国民体育大会の鹿児島県開催が正式決定した。1972年の太陽国体以来、48年ぶり2度目となる。大会期間は20年10月3日から13日までの11日間だ。鹿児島市の県立鴨池陸上競技場で開会式が行われ、正式37競技が県内各地で実施される。参加する選手・役員らは約2万2000人に上る。国内最大の総合スポーツ大会である。県民挙げて盛り上げ、地域活性化につなげたい。この年は東京五輪・パラリンピックが開かれる。直後の鹿児島国体は、五輪選手やメダリストの出場も見込まれ、例年の国体以上に注目が集まるはずだ。三反園訓知事は「全国に渦巻いた興奮や感動を鹿児島で引き継ぐような国体にしたい」と意気込む。「燃ゆる感動かごしま国体」の愛称のように、多くの人の胸に残る大会になればいい。そのためにはあと3年余り、万全の準備をすることが重要である。大会への課題を整理したい。競技施設の整備や、競技役員やボランティアの養成は急務だ。競技施設は各地で改修が始まっている。太陽国体との違いは、新設される常設施設が一つもないことだ。69会場のうち11会場は仮設で対応する。大型施設の新設は、建設費だけでなく維持費もかさむ。既存施設を有効活用するのは、大会の簡素化を進める国体改革の流れとも合致しよう。開会、閉会式も過剰な演出は必要ない。鹿児島らしいアスリート第一の式典へ知恵を絞りたい。大会の盛り上がりに欠かせないのが地元勢の活躍だ。鹿児島は48年ぶりの総合優勝を目指す。ただ現状は厳しい。昨年の岩手国体は32位で、目標の10位台に遠く及ばなかった。中高生らの底上げを図り、県勢一丸で大きな目標に向かって突き進むことが欠かせない。県は、大学を卒業する有力選手らと県内企業のマッチングを進めている。肝心なのは国体を機に鹿児島のスポーツ界を盛り上げる機運を根付かせることだ。これまでの国体では、地元総合優勝にこだわるあまり、なりふり構わぬ選手集めが問題視されることもあった。一過性の競技力強化に終わらせず、競技団体を中心に中長期的視点に立った人材育成を進める必要がある。鹿児島国体の正式決定に伴い、全国障害者スポーツ大会の鹿児島初開催も決まった。近く合同の実行委員会が発足する。連携を強化し相乗効果を生み出したい。

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  • 【琉球新報】

    辞任だけでは済まない。稲田朋美防衛相は即刻辞職し、国会から去るべきだ。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を陸上自衛隊が隠蔽(いんぺい)していた問題に、稲田氏が加担していたことが分かった。稲田氏は2月の防衛省最高幹部の緊急会議で、保管の事実を非公表とするとの方針を幹部から伝えられ、了承していた。その2日前にも、陸自側から日報の電子データが保管されていた事実などの報告を受けていた。稲田氏は「隠蔽を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は全くない」と否定している。だが、複数の政府関係者が稲田氏が了承した事実を明らかにしている。言い逃れは許されない。緊急会議では、陸自の電子データは隊員個人が収集したもので、公文書に当たらないなどとした上で「事実を公表する必要はない」との方針を決定した。本来なら稲田氏は日報隠しに異を唱え、正さねばならない。だが、防衛相の果たすべき役割、国民に対する責任を放棄したのである。稲田氏は国会審議で、陸自では発見できなかったとの答弁を繰り返していた。非公表とすることで、国会での追及を回避する思惑があったはずだ。稲田氏自身にも根深い隠蔽体質があったと断じるほかない。信じ難いのはその後の国会答弁である。3月の衆院安全保障委員会で、稲田氏は一連の隠蔽行為の報告の有無について「報告はされなかったということだ」と否定し「徹底的に調査し、隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と述べた。だが、稲田氏は1カ月前に2回にわたり報告を受け、隠蔽を容認していたのである。防衛省は、稲田氏が昨年12月に電子データの再捜索を指示し、統幕内で見つかったと説明してきた。稲田氏の責任回避を意図した印象操作だったことは明らかだ。安倍政権は「稲田氏が捜すように指示した結果、見つかった」とし、稲田氏の指導力による問題解決を強調することで収拾を図ろうとした。この「筋書き」は欺瞞(ぎまん)に満ちている。稲田氏は何ら指導力を発揮していなかったどころか、日報隠しに関わったのである。稲田氏はこれまでも、大臣としての資質が疑われる言動を繰り返してきた。その最たるものが東京都議選応援演説である。自民党候補の集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と、自衛隊を政治利用した。そして今回判明した隠蔽了承である。稲田氏には議員たる資格は、もはやない。安倍晋三首相の任命責任は重大だ。内閣改造まで稲田氏を防衛相に居座らせることは許されない。だが、菅義偉官房長官は「今後とも誠実に職務に当たってほしい」と述べている。安倍政権に自浄能力はない。衆院を解散し、国民に信を問うべきだ。

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  • 【沖縄タイムス】

    報道が事実なら、稲田朋美防衛相は防衛省・自衛隊の組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)を了承し、国会でも虚偽答弁を重ねたことになる。内閣改造で本人を辞めさせれば済むというような軽い話ではない。共同通信社が報じたのは、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊部隊の日報を巡る問題である。一連の経過はこうだ。昨年9月、フリージャーナリストが日報の情報開示を請求したのに対し、防衛省は同12月、「(陸自が)廃棄していた」として不開示を決定した。その後、統合幕僚監部に日報の電子データが残っていたことが判明。今年1月には、廃棄されたはずの陸自にもデータが保管されていたことが分かった。統幕でみつかった日報データは2月に一部黒塗りで公表された。陸自のデータについては、隊員個人が収集したもので公文書に当たらない、と判断。「事実を公表する必要はない」との方針を決め、データは消去された。2月15日、稲田防衛相や黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長ら最高幹部が出席し、緊急会議が開かれた。その席上、陸自に保管されていた事実を非公表とする方針が幹部から伝えられ、稲田氏も了承したのだという。稲田氏は「隠蔽を了承したとか非公表を了承したとかいう事実は全くない」と報道を完全否定している。ならば国会は、会議に参加した関係者を招致し、真相を徹底究明すべきだ。■■3月16日の衆院安全保障委員会で、稲田氏は、一連の経緯の報告を受けていない、と主張。「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と答弁していた。報道が事実なら稲田氏は、組織的隠ぺいに加担したことによってシビリアンコントロール(文民統制)を空洞化させ、国会での虚偽答弁によって国民を欺いたことになる。稲田氏は、2月15日の緊急会議の2日前にも、電子データが保管されていた事実などについて、陸自側から報告を受けていたという。日報問題については現在、防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を実施しているが、ここまで疑惑が深まった以上、防衛監察本部だけに真相究明をまかせるわけにはいかない。内閣改造で稲田氏を交代させるだけなら、単なるトカゲの尻尾切りである。問われるべきは、任命権者である安倍晋三首相本人の説明責任だ。■■この国の政治は、安倍官邸のおごりと、官邸の顔色ばかりうかがう官僚の過剰な忖度(そんたく)と、木で鼻をくくったような国会答弁に満ちている。安倍首相の答弁姿勢や菅義偉官房長官の会見での説明姿勢は、国民の疑問に正面から向き合い、丁寧に答えているとはとても言えない。官僚も然り。安倍内閣に対する支持率の急落は国民の怒りの表れである。「加計学園」問題と「日報隠蔽」問題は、国会が本来の監視機能を発揮し、権力の専横をただすことができるかどうかの試金石である。

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