社説・論説

  • 【北海道新聞】

    安倍晋三首相が衆院選公約に掲げた「幼児教育・保育の無償化」が迷走している。衆院本会議の代表質問では、制度設計を巡って各党から噴出した疑問に具体的に答えることができず、生煮えぶりを露呈した。無償化は新たな看板政策「人づくり革命」の中で浮上した。具体化の議論に着手した直後に衆院が解散され、にわかに公約の目玉に仕立てられた経緯がある。もちろん無償化自体は望ましいが、安倍政権を含め、歴代政権が課題として取り組んできた待機児童解消が実現されていない。保育サービスを求める全ての保護者のニーズに応えられていないのが現状だ。無償化を論ずる前に、政府は待機児童の解消を確実に進める必要がある。首相は、2020年度までに全ての3〜5歳児の無償化を推進し、0〜2歳児は低所得者に限って無償化する方針だ。そのため、消費税率引き上げで捻出する2兆円の中から、無償化に8千億円、32万人分の保育の受け皿整備に3千億円を配分するとしている。ところが、無償化の対象から、認可外の保育施設を外したため、いきなりつまずいた。質にばらつきのある認可外を推奨しているとみられかねないとの理由だが、保護者の猛反発を受けて撤回を余儀なくされた。現実に、認可外の施設が認可保育所の不足を補っている。政府が、保育所探しに苦労する保護者の実情を本当に理解しているのか、疑われても仕方あるまい。そもそも、一律に無償化すれば、高所得者ほど恩恵が大きくなるため、所得制限を設けるべきだという声は根強い。32万人分の受け皿整備では、7万7千人の保育士が必要になる。政府は、保育士確保のため、賃金引き上げを表明した。保育所の整備が進めば、保育需要もまた増えるだろう。人員確保や、受け皿の整備・運営の負担が膨らむのは避けられない。政府は、2兆円でもなお3千億円が不足するとして、企業の拠出金を引き上げ、企業主導型保育所の整備だけでなく、一般の保育所の運営費も負担するよう求めた。あまりに場当たり的な対応だ。財源には限りがあり、待機児童解消と、無償化を同時に進める余裕があるだろうか。子どもの預け先を確保できない保護者の悩みは切実だ。優先順位を間違えてはいけない。

    トップへ戻る

  • 【河北新報】

    東日本大震災の体験と教訓を生かすべき対象は、足元の地域や国内だけではない。世界には私たちとの連携に期待する多くの人たちがいる。25〜28日に仙台市で初めて開かれる世界防災フォーラム(WBF)は、震災被災地の防災発信の責務を改めて確認する機会になるだろう。WBFは、2015年3月に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議の成果を引き継ぐ定例の国際会議として企画された。スイス・ダボス市開催の国際災害・リスク会議(IDRC)と連携し、交互に隔年で開催される。東北大や仙台市、宮城県などが実行委員会を組織して準備を進め、初回はアジアを中心に40以上の国・地域から政府幹部や専門家、NGO、メディアなどの関係者900人以上が参加する見込みだ。震災から6年8カ月が経過し、風化の懸念が足元でもさらに強まる中、被災地に定期的に世界の防災関係者が集う機会ができた意義は大きい。国際会議の実績を積み重ね、被災地を含む宮城、東北のインバウンド(訪日外国人旅行者)需要拡大のリード役を目指す仙台市の観光戦略上も重要な位置付けになる。国連会議では30年までの世界の防災指針として「仙台防災枠組」が採択された。災害による死亡率や経済損失の大幅削減など七つの目標に向け、各国に一層の投資や教育・啓発の連携を促す内容だ。国際協力機構のまとめによると、この半世紀の間に世界では約280万人の命が奪われ、被害総額は約7300億ドル(約95兆円)に上る。目指す「持続可能な発展」にとって災害リスクは最大の懸念であり、特に災害被害の9割が集中するアジアにおいて、近隣の「防災先進国」日本の復興過程も含めた知見と技術の展開が必要とされている。WBFは英語表記にあえて「BOSAI」を使用し、知見共有の姿勢を前面に打ち出した。女性や障害者、コミュニティーの重視、ビルド・バック・ベター(被災前より災害に強い復興)の推進など震災で確認された視点の掘り下げをはじめ、事前の対策で犠牲や被害の軽減を図る実践的な防災策の集約を目指す。基本的に専門家や関係者向けの議論にはなるが、市民公開のセッションや気軽に参加できる催しも用意された。会場の仙台国際センター周辺では前日祭のほか内閣府など主催の防災推進国民大会、防災産業展も同時開催される。催しの集中開催は相乗効果が期待できる一方、メニューの盛り込みすぎによる消化不良の懸念もある。防災を閉じた世界の議論にとどめないために構えた積極的な仕掛けと捉えるならば、産学官民の協働と多くの市民の参加による盛り上げこそが鍵になる。震災と被災地を世界の防災連携の起点とする機運を高める一歩として、新しい国際会議を息長く育てたい。

    トップへ戻る

  • 【東奥日報】

    教員の指導が原因で子どもが自ら命を絶つケースは「指導死」と呼ばれる。子を失った遺族が提唱した言葉だ。ことし3月、福井県池田町の中学校で2年生の男子生徒が自殺した問題は、指導死の典型と指摘される。文部科学省の調査では、2016年度に自殺した児童生徒は244人。そのうち3人が、教職員との関係で悩みを抱えていたという。福井の生徒もこの中に含まれるとみられる。町の調査委員会は生徒の自殺の原因について「担任、副担任の厳しい指導、叱責(しっせき)にさらされ続けた生徒は孤立感や絶望感を深め、自殺するに至った」と指摘した。子どもたちを導き、健やかに育むべき教員が、子どもを自殺へ追い込むなどあってはならない。指導の範囲を超え、生徒の母親が言うように「教員によるいじめ」と言っても過言ではない。学校への信頼が問われる。再発防止へ向けて対応をしっかり考えてほしい。男子生徒は昨年秋、運営担当だったマラソン大会の準備の遅れを理由に、担任から大声で怒鳴られた。目撃した同級生は、聞いている人が身震いするくらいの大声だったと証言した。また、課題の未提出について、生徒が副担任に説明したところ、「できないなら、やらなくていい」などと責められ、生徒は「やらせてください」と土下座しようとしたという。教員の一人は、生徒の特性に合った指導を考えるよう担任に助言したが、担任は「手加減している」と答えた。驚くのは自殺後の職員会議で担任の叱責が問題とならなかったことだ。調査委の聞き取りでも、ほとんどの教員が重要な問題とはとらえていなかったことが分かった。校長をはじめ学校挙げて生徒に寄り添った対応をすることはなかった。学校の対応に問題があったと言わざるを得ない。叱る必要があっても行き過ぎれば「言葉の暴力」になるという認識が欠けていたのではないか。全国の学校が16年度に認知したいじめは、32万件を超えて過去最多を更新した。青森県でも5千件を超え、前年度の4倍以上となった。今回のような問題で、児童生徒や保護者の信頼を失えば、深刻化するいじめの問題に対する取り組みにも影を落としかねないだろう。そのことを教育現場は肝に銘じてほしい。

    トップへ戻る

  • 【デーリー東北】

    日中首脳会談関係改善へ指導力発揮を(11月24日)安倍晋三首相と中国の習近平国家主席はベトナムで会談し、来年の日中平和友好条約締結40周年に向け、尖閣諸島や南シナ海問題で著しく悪化した両国関係を改善していくことに合意した。だが、海洋対立を巡る日中間の相互不信は根強く、関係修復には一層の信頼醸成が不可欠だ。安倍首相は衆院選大勝後に第4次内閣を発足させ、習氏は共産党大会を経て2期目指導部をスタートさせた。権力基盤を固めた両首脳は指導力を発揮し、関係改善に乗り出すべきだ。首相は会談で、来年を念頭に自らの訪中と習氏の早期来日を提案し、習氏は「首相訪中や往来を重視する」と応じた。北朝鮮の核・ミサイル開発問題についても、非核化を共通目標に連携を深めることで一致した。両首脳は偶発的な衝突の回避を図る海空連絡メカニズムの運用開始への協議を加速し、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」への協力について協議することに合意した。両国は積極的に協議を進め、具体的な成果を生み出してほしい。日中関係は2012年9月の尖閣国有化で著しく悪化。14年11月には関係改善に向けた4項目合意に達したが、その後、中国が南シナ海で大規模な埋め立てを行ったことが問題化して再び関係は冷え込んだ。だが、日中国交正常化45周年の今年、安倍首相が習氏の提唱する「一帯一路」に条件付きで支持を表明したことで流れは変わった。習氏は支持を歓迎し、関係改善を望む日本側の明確なメッセージと受け止めた。しかし、中国の歴史的な台頭と日本の相対的な地位の低下により、日中両国が今後どのような関係を結ぶか、という青写真は描けていない。日本には海洋対立について「中国は力で現状を変えるのか」という警戒があり、中国側には「日本は米国と結託して中国封じ込めを狙うのか」という反発がある。根本的な関係改善のためには、日中がそれぞれ平和主義を貫き、「対立」ではなく「共生」を目指すことを確認しなければならない。「善隣友好」を誓った45年前の日中国交正常化の原点に立ち返ることだ。日中首脳は両国関係悪化を理由として国防力を強化し、自らの政治的な求心力の向上を図ってきた側面がある。結果、国内の世論やメディアの論調が硬化し、関係修復の足かせとなっているのは皮肉なことだ。両首脳は国内のタカ派を抑え、関係改善を推進する重い責任を負っている。

    トップへ戻る

  • 【秋田魁新報】

    横綱日馬富士関が平幕貴ノ岩関に暴行し負傷させた問題が発覚して10日。警察が傷害事件として捜査を進める一方、日本相撲協会危機管理委員会も日馬富士関をはじめ暴行現場にいた力士ら関係者への聞き取り調査を続けている。だが協会による貴ノ岩関の聴取は、師匠の貴乃花親方(元横綱)に拒否され、いまだ実現していない。日馬富士関がビール瓶で殴ったのかどうかも依然はっきりせず、全容解明が急がれる。暴行は、秋巡業中の10月25日夜から26日未明に鳥取市内で開かれた酒席で起きた。横綱白鵬関に生活態度を注意されている最中に貴ノ岩関がスマートフォンを操作しようとしたことに、日馬富士関が激怒し、暴行したとされる。貴乃花親方は10月29日、貴ノ岩関の診断書と共に被害届を鳥取県警に提出した。鳥取県警はこれまで日馬富士関、貴ノ岩関のほか、横綱鶴竜関や関脇照ノ富士関ら暴行現場にいた力士からも任意で事情聴取。年内にも傷害容疑で日馬富士関を書類送検する方針を固めている。日馬富士関は暴行を認めており、逃亡や証拠隠滅の恐れがないとして逮捕はしない方針だという。今回の大きなポイントとなるのが、ビール瓶で殴ったかどうかだ。日馬富士関は「ビール瓶では殴っていない」と否定しており、関係者の証言には食い違いがある。酒の席とはいえ、範を示すべき立場の横綱が暴行し相手をけがさせたこと自体許されるはずはないが、もしもビール瓶で殴っていたとすれば悪質性がより高まることは明白だ。これが起訴、不起訴処分などの司法判断に影響する可能性があるが、日本相撲協会が日馬富士関の処分を決める大きな判断材料になることも間違いない。協会は事実関係を明らかにし、相撲ファンも納得できる公平な判断をしなくてはならない。暴行問題の全容解明に向け、キーパーソンとなっているのが貴乃花親方だ。警察に被害届を出したにもかかわらず協会には一切報告しなかっただけでなく、その後も協会による貴ノ岩関の聴取を拒むなど一連の態度には疑問を持たざるを得ない。警察の捜査を最優先する意向というが、大きな社会問題となっている中、相撲協会に身を置く当事者の一人として責務を果たしているといえるのだろうか。貴乃花親方が協力しなければ問題の長期化は避けられないとの見方もある。長期化すれば八角理事長(元横綱北勝海)ら協会執行部の信頼が大きく揺らぎ、回復した相撲の人気にも影を落とす懸念がある。これまでも相撲協会は不祥事のたびに、組織統治能力の欠如が指摘されてきた。現執行部は貴乃花親方を説得し、早い段階で貴ノ岩関の聴取を実施することが大切だ。全容を明らかにした上で、再発防止策をしっかりと講じる必要がある。

    トップへ戻る

  • 【岩手日報】

    「教育無償化」が国会の主要課題の一つになっている。今年に入ってから大きなテーマとなっており、特に大学など高等教育の無償化論議はにわかに活発化した感がある。響きのよい「無償化」だが、高いハードルがある。将来も財源を確保できるのか、対象をどうするか、などだ。恒久的な制度とするなら、将来不具合が生じないよう設計を吟味する必要がある。性急な導入は禍根を残す。高等教育無償化のきっかけは1月の安倍晋三首相の施政方針演説だ。「誰もが希望すれば高校、専修学校、大学に進学できる環境を整えなければならない」と強調。自民党で特命チームが始動した。背景には、改憲による教育無償化を掲げる日本維新の会との連携を図りたい意向があった。一方で当時の民進党など野党も提唱。衆院選では、与野党挙げて、幼児教育を含め無償化や教育費負担緩和策を掲げた。今、政府が取りまとめを図る「人づくり革命」の政策パッケージは、大学生の支援について、低所得世帯の給付型奨学金と授業料減免の拡充を打ち出している。ただ、幼児教育・保育を含め、2兆円の金額ありきで制度設計が進み、中身の議論は生煮えのまま。また、与党が求める政策との調整をめぐり揺れ動いている。無償化実現の道は簡単ではあるまい。振り返ると、返済不要の給付型奨学金の導入にも時間がかかった。国の制度としての日本学生支援機構の奨学金は貸与型だけだった。しかも有利子が多いこともあり、「借金」が卒業後の重い負担となる。本年度、ようやく一部を対象に給付型が先行実施され、来年度から本格実施に移る。そのような過去を見ると、無償化導入論の盛り上がりには隔世の感がある。もちろん、格差是正のために歓迎すべきことには違いない。ただ、課題はさまざまある。例えば、経営がずさんな一部私大の延命をも支える懸念がある。政府は支援する大学を選別する方針だが、具体的にはどうするのか。地域振興のためには、人口減少が著しい地方で努力する私大を簡単に切り捨ててはなるまい。大学に対する政策も改めて考えなければならない。国立大は法人化後、交付金を削られ続け、運営に影響を来している。肝心の教育充実が図られないなら、学生への支援の効果は低減する。進学の切実な問題に直面する人のために、給付型奨学金拡充は早急に実施すべきだ。その上で総合的な大学政策見直しを図りつつ、制度を着実に構築していってもよいのではないか。(2017.11.23)

    トップへ戻る

  • 【福島民報】

    【いわき産業フェス】新時代の可能性を発信(11月24日)いわき産業フェスタが24日から3日間、いわき市平のJRいわき駅前のいわき産業創造館とその周辺で開かれる。「未来のチカラがいわきを変える」をテーマに、ものづくりの力を技術革新に結び付け、併せて近未来の新エネルギー社会を体感してもらうのが狙いだ。培った技と新たな発想によって広がる地域産業の可能性を県内外に幅広く発信してほしい。いわき市初の産業フェスタは、2つの柱で構成される。24、25日の地域産業イノベーション展・ビジネスマッチングと、25、26日のバッテリーバレーフェスタだ。東日本大震災からの本県の復興を促す国のイノベーションコースト構想と福島新エネ社会構想事業、東京電力福島第一原発の廃炉作業に必要な機材開発などに関わって、地元企業の力を伸ばし、新産業の集積を図るという。イノベーション展には市内や周辺に事業所のある27社が参加する。再生可能エネルギー、ロボット、バッテリー、IoT(モノのインターネット)など次代を担う関連産業、医療・福祉分野で活用される技術、多様な用途が期待される素材や技法を持つ企業がそろう。いわき商工会議所と市などによる実行委員会は、地元企業と首都圏の有力企業の連携を探る商談を目的にするが、市民に地元の素晴らしい企業を知ってほしいとの思いもある。従業員が10人未満でも独創的な実績を評価されている企業も出展する。大学生や高校生らの意欲を刺激し、企業の人材確保に好影響を与える機会となるよう期待したい。バッテリーバレーフェスタでは、試乗会で県内で初めて燃料電池(水素)バスを運行する。他にも次世代自動車の運転や自動運転技術を用いたロボットの実演、搭乗型移動支援ロボットの試乗を行う。小学生らが燃料電池車の仕組みを学んだり、電気自動車を組み立てたりできる場を設け、関心を高めていく。水素バスの運行は、新エネルギー時代を実感させる。3年後の東京五輪・パラリンピックでは、競技会場などの交通手段として導入が予定されている。福島新エネ社会構想で整備する浪江町の製造拠点から供給される水素を使用すれば、本県の復興を国内外に強く印象付けられそうだ。産業フェスタは、決して企業や団体関係者の事業で終わらせてはならない。長年、磨き上げた技術や震災後に必要とされた取り組みを広く理解してもらうことが、地域の力を向上させ、新たな連携につながる。(浅倉哲也)

    トップへ戻る

  • 【福島民友新聞】

    古里復興に向けて高まった機運を世界の隅々に広げてほしい。本県出身者などでつくる海外の各県人会は20〜22日に県内で開かれた第3回在外県人会サミットで、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を目指して国や県、各団体などと連携、協力することを盛り込んだ「ふるさと福島応援行動宣言」を採択した。宣言では、本県で課題となっている〈1〉風評払拭(ふっしょく)〈2〉県産品・産業の振興〈3〉海外と福島との交流促進—の3点をテーマに各県人会が活動していくこととした。県によると、海外には21カ国34の県人会があり、総会員数は約4000人に上る。ブラジルやペルー、ホノルルなど大正時代に設立された歴史の長い会もある一方、シドニーやソウル、バンコクなど震災後に設立された会もある。これら多くの県人会が、それぞれの国で本県の復興を支援することにより、経済や観光などさまざまな面でメリットが期待できる。サミットで生まれたネットワークを最大限に生かし、効果のある取り組みにつなげてもらいたい。海外では特に、本県の正確な情報が得にくいことが課題となっている。そのため宣言にはインターネットの会員制交流サイト(SNS)などを活用し、復興状況や放射線に関する正しい情報を発信していくことを盛り込んだ。各県人会は現地の言葉でSNSに投稿し、本県への理解や、風評の払拭を目指すという。名所や物産などもPRすることで本県への観光に関心を持つ人もいるだろう。多くの人に読んでもらえるようにするため県は、各県人会へのタイムリーな情報提供に努めることが大切だ。海外では和食の人気が高まり、日本酒もブームになっている。こうした動きを県産品の輸出増につなげていくことも必要だ。宣言では、各国のイベントで県産品や郷土料理などをPRすることも決めた。これまでにもロンドン県人会が英国の国会議事堂で県産日本酒を紹介したり、ブラジル県人会が現地で喜多方ラーメンを提供するイベントを開いたりして、大きな反響があった例もある。県内の企業や農家が海外に販路を広げようとしたとき、各国の事情に精通した県人会は力強い味方になる。各企業や業界団体が県人会との連携をより深め、海外での商機拡大を図ることが重要だ。サミットでは参加者らが古里の良さを再認識し、復興の後押しを誓った。本県ゆかりの海外在住者と県民が手を携え、「チームふくしま」として再興を前進させたい。

    トップへ戻る

  • 【茨城新聞】

    ドイツのボンで開かれていた気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)は、難航した議論の後に、地球温暖化防止のためのパリ協定を2020年から実施するための詳細ルールに関する決議などを採択して閉幕した。パリ協定を実効あるものにするには18年末までにルールの交渉をまとめる必要があるにもかかわらず各国の意見の隔たりは大きく、残された時間は少ない。先進国の一員として日本も交渉の前進に貢献することが求められているのだが、官民ともに温暖化対策の遅ればかりが目立つ会議となった。これ以上、世界の流れから置いて行かれないよう、強力な政治のリーダーシップが求められる。会議の直接の議題ではなかったが、COP23で目立ったのは、化石燃料の中で最も二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭の利用を、温暖化対策の観点から廃絶しようとの動きが発展途上国を含めて急速に進んでいるとの現実だ。少し前まで石炭火力発電に多くを依存していた英国などを含む27の国と地方政府が「脱石炭連盟」を発足させることを発表し、大きな注目を浴びたのが好例だ。そんな中、大規模なものを含めて国内で40基を超える石炭火力発電所の新設計画を抱え、「効率が高い発電所なら排出削減に貢献できる」としてアジア諸国の石炭火力発電所建設に投資や援助を行い続ける日本の姿勢に厳しい目が注がれた。「排出削減に消極的な国だ」との認識が広がれば、国際交渉の中での日本の立場は悪化し、その意見に耳を傾ける国は少なくなる。各国で排出規制が進めば、石炭への投資が無駄なものとなる可能性も高い。日本も可能な限り早期の脱石炭にかじを切るべきだ。代わりに台頭しているのが再生可能エネルギーだ。COP23の会場では、すべての電力を再生可能エネルギーにすることを宣言した各国約90の大企業が加盟する国際組織のイベントも開かれた。だが、これに加わる日本企業はわずか2社だ。温暖化対策を進める上での重要な手法は、排出量取引や炭素税などCO2の排出に課金をして排出削減を促す「カーボンプライシング(炭素価格付け)」政策だ。中国が年内にも国内の排出量取引市場を発足させると明らかにするなど、カーボンプライシングが世界標準となりつつあることを印象づける会議だった。だが、日本国内では産業界の一部の反対で、実現のめどは立っていない。本筋の交渉では、途上国が温室効果ガスの排出量を正確に計測できるよう支援すると打ち出したことが評価されはしたが、多くの議題で消極姿勢が目立ち、交渉の前進に貢献したとは言い難い。世界の取り組みに引けを取らないよう、地球温暖化問題の解決に率先して取り組もうとの姿勢が、安倍晋三首相には決定的に欠けている。しかも「温暖化は内閣の最重要課題だ」と言うのだから、これは受け入れがたい。このままでは、パリ協定の採択以降、急速に進み始めた世界の温暖化対策と日本の政策のギャップがさらに広がり、国際社会での日本の存在感は薄れ、企業は大きなビジネスチャンスを失うことになる。政策決定者は猛省し、社会と経済の転換に向け思い切った政策の導入を急ぐべきだ。

    トップへ戻る

  • 【信濃毎日新聞】

    東京の介護付き有料老人ホームに入所していた83歳の男性を殺害した疑いで、ホームの元職員が逮捕された。昨年には、川崎市の老人ホームでも入所者3人を投げ落として殺害した疑いで当時の職員が逮捕されている。なぜ続発するのか。個人の資質の問題にとどめず、背景を検証し、共有化することが必要だ。東京の事件で元職員は夜勤中に部屋で男性の首を絞め、湯を張った浴槽に顔をつけるなどして窒息死させた疑いが持たれている。男性はパーキンソン病を患い、足腰が不自由だった。調べに対し、元職員は「何度も粗相で布団などを汚され、いいかげんにしろと思ってやった」と容疑を認めているという。川崎の事件でも元職員は「3人とも手がかかる人だった」と供述している。入所者が粗相をし、思うように動けないのは当然で、それゆえの介護のはずだ。暴発する要因はどこにあるのか。介護や看護などの仕事は「感情労働」と呼ばれる。利用者らを支援する際、どんなに不快なことでも、業務上適切な感情をつくり出すことが求められる。介護職員の経験がある新潟医療福祉大教授の吉田輝美さんは、感情労働の技術を上げるため▽コミュニケーション能力を高める訓練プログラムを組む▽職員が傷ついた時、上司や同僚たちが精神的に支援する態勢を整える—などを挙げる。問題は、そうした対策を進める余裕が今の施設にあるかだ。介護報酬の改定で職員の月給はやや上がったが依然、全産業平均を9万円近く下回る。慢性的な人手不足は解消されず、職員1人にかかる負担は大きい。夜勤も頻繁に回ってくる。疲れやストレスをため込み、やりがいを失うと、思い通りにならないことへの暴言や暴力になって表れやすい—。吉田さんが指摘する悪循環だ。厚生労働省は高齢者虐待防止法に基づき毎年、実態調査をしている。今年発表の2015年度分で介護施設職員による虐待は408件。過去最多を更新した。これは氷山の一角だろう。発生要因別では「教育・知識・介護技術の問題」が最も多く、次に「ストレスや感情コントロールの問題」となっている。重要なのは、なぜ教育が行き届かず、ストレスを生んでいるのかを分析し、改善することだ。調査しただけでは再発防止につながらない。(11月24日)

    トップへ戻る

  • 【新潟日報】

    核ごみ意見交換謝礼動員で透ける無責任経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)が開いた原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場を巡る意見交換会で、NUMOの広報業務の受託企業が学生に謝礼を持ち掛け、参加させていた。動員は5都府県で計39人で、さらに広がる可能性もある。核のごみがたまり続ける中、NUMOや経産省の無責任な対応に強い疑問を抱く。最終処分地の選定は極めて重要だ。その理解を深めるための会合に謝礼を約束して参加者を集めていたことは国民の原子力政策への不信を改めて強めた。徹底した再調査が求められる。意見交換会は、7月に経産省が最終処分場の候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表したことを受け10月に始まった。福島を除く46都道府県で開催を予定する。11月6日にさいたま市で開かれた会合で、男子大学生が「参加すれば1万円もらえると聞いた。動員はおかしい」と発言したことから発覚した。86人の参加者のうち学生12人全てが謝礼を約束した動員だった。東京の企画会社が1万円の日当を持ち掛け、大学生に参加者集めを指示していた。愛知や兵庫など4都府県では計27人が動員された。サークルの活動場所の貸与や印刷費の提供といった形で1人5千円相当の謝礼を約束していた。NUMOは国に対し定期的に理解活動の進捗(しんちょく)状況を説明する必要があり、成果を求められることが背景にあったと指摘されている。事実なら国民不在の内向き体質と言うほかない。発覚直後、NUMO幹部は委託先企業に謝礼による動員をしないよう指示したと強調し、自身が被害者であるかのような釈明に終始した。当初は動員学生を自ら調査せず事態を収束しようとした。経産省は「運営は役割分担」と説明し、責任回避の姿勢を見せた。当事者意識の薄さは理解に苦しむ。原子力行政を巡っては、過去にも住民説明会に電力会社が社員を動員するなどの問題が繰り返されてきた。2011年には九州電力玄海原発の再稼働を巡り、政府が主催し放映したテレビ番組に九電社員が子会社社員に賛成意見のメールを送るよう指示した「やらせメール問題」が発覚した。処分地の選定は大きな困難が伴うのが現実だ。東京電力柏崎刈羽原発が立地する本県の米山隆一知事は、原発を抱え一定の社会的責任を果たしているとして、受け入れ拒否の姿勢を鮮明にしている。日本の原子力政策は「トイレなきマンション」と批判される。最終処分地が決まらないままでの原発再稼働は、行き場のない核のごみをさらに増やすことにほかならない。処分地選定に責任を持つ経産省やNUMOには粘り強く丁寧に説明していく姿勢が要る。不公正な方法で世論を恣意(しい)的に形成しようとしても国民の信頼は得られない。

    トップへ戻る

  • 【中日新聞】

    森友学園への国有地売却問題で、会計検査院が「十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を国会に報告した。なぜ根拠不十分なまま行政手続きが進んだのか。今度は国会が追及する番だ。検査院は参議院の要請を受け、三月から売却額の妥当性などを調べてきた。「根拠不十分」という検査結果は、これまで「法令に基づき適切に処理した」としてきた政府の説明と矛盾する。税金の無駄遣いをチェックする独立機関から疑義が突きつけられたわけである。政府も国会も深刻に受け止めねばならぬ。ごみ撤去費用として値引きされた約八億円をめぐり、検査院は、値引き額が最大約六億円過大だったと試算していたとされる。具体的な金額が報告書に盛り込まれなかったのは、ごみ処分単価に関する資料などが破棄され、正確な算定が困難だったためとみられる。検査院は「妥当性の検証が行えぬ状況」と文書管理の問題点も指摘、改善を求めた。不明朗な文書管理の背景に何があったのか。森友学園問題をめぐっては、大阪地検が籠池泰典前理事長と妻を詐欺罪などで起訴するとともに、値引きに関与した近畿財務局長らについても背任容疑での刑事告発を受けて捜査している。その捜査とは別に、国会も疑惑の解明に努めねばならぬことは言うまでもない。問題の土地をめぐり、財務省などは「適正な売却だった」と繰り返してきたが、近畿財務局の担当者が学園側に買い取り価格を打診していた疑惑も発覚し、世の不信感は広がる一方である。籠池夫妻と財務局側とのやりとりを記録したとされる音声データも明るみに出た。土地がダイオキシンに汚染されていた、などとして籠池夫妻が激しく抗議し、執拗(しつよう)に値引きを要求していた様子がうかがえる。言われるがままに値引き交渉が進んだのだろうか。普通の民間人が役所と話をする場合、「根拠が不十分」なまま手続きが進むことはありえない。安倍首相は先の衆院選に向けたテレビの党首討論で籠池前理事長を「詐欺を働く人物」「妻もだまされた」と突き放したが、それでもって、昭恵夫人付きの政府職員が財務省と学園側との間で連絡役をしていた事実が消えるわけではない。特別扱いが、行政手続きをゆがめたのではないか。行政のチェックは、国会の役目だ。責任を持って「根拠不十分」の実態を解明してほしい。

    トップへ戻る

  • 【北國新聞】

    GAP認証取得東京五輪に県産の食材を2020年東京五輪・パラリンピックでは、期間中に1500万食が選手や関係者に提供される。日本の食文化を世界にアピールし、輸出拡大につなげる絶好の機会であり、石川県や富山県産の食材を使ってもらうための工夫や仕掛けが必要になってくる。だが、その前に解決すべき課題がある。欧州などで常識となっている農産物の認証取得制度の普及が日本では大幅に遅れており、食材の安全性を国際的に認めてもらう手段がない。現状のままでは自国開催の五輪で日本産の食材があまり使われず、国際認証規格を持つ海外の農場からの輸入品が多くを占めることになりかねない。東京五輪の大会組織委員会は国際認証規格「グローバルGAP」や日本独自の規格「JGAP」などの取得を義務付ける調達基準案を公表している。グローバルGAPを取得している農家・団体は全国で約400、JGAPは約4千にとどまり、石川県内では、どちらかの要件を満たす農場は4カ所、富山県では8カ所しかない。欧州発のグローバルGAP認証は、生産者の数が世界124カ国、約16万件に達している。農産物の輸出拡大に不可欠な規格であり、石川、富山両県でも東京五輪への県産の食材納入を目指し、取得を後押ししてほしい。GAP取得には、申請や生産管理の手続きなどが複雑な上、JGAPで10万円程度の費用がかかる。生産者をその気にさせるには自治体やJAの支援が必要だ。石川県とJAは、GAPの普及に向け、県内の全17JAと5農林総合事務所に「認定指導員」を配置し、GAP取得を目指す生産者を支援する態勢を整える。富山県はGAPの取得に必要な費用の補助などを行う方針である。福島県の場合、JGAPより取得しすい独自の認証「県GAP」を創設し、2020年度に県産農産物の出荷販売数量の半分以上を、GAP取得生産者の産品で占める目標を掲げている。五輪の大会組織委はこうした都道府県単位のGAPも認める方向という。石川県や富山県でも福島県の取り組みが参考になりそうだ。

    トップへ戻る

  • 【福井新聞】

    【論説】福井市朝宮町の丘陵で奈良時代末〜平安時代前半のものとみられる大規模な山林寺院跡が発見された。古代の北陸3県の主な山林寺院跡と比べても最大級とみられ、専門機関と連携した本格調査による全容解明が待たれる。日野川左岸に面した標高約130メートルの丘陵で、字名は「大社(おおやしろ)」。「朝宮大社遺跡」と呼ばれ、かつて神社があったとの伝承が地元集落に残る。日本考古学協会の埋蔵文化財保護対策委員古川登さん=同市=による今秋までの調査で、頂上から尾根の広い範囲に人工的な平たん面が20面以上確認された。標高72メートル付近では本堂下に前庭が広がっていることを示す、古代の山寺に特徴的な形状とともに8世紀末〜10世紀前半の須恵器片が見つかった。大きさは、前庭とみられる部分だけでも約40メートル四方と巨大で、古川さんは「地域の寺の規模を超え、越前国という国レベルで営まれていた可能性がある」と推測する。古代における宗教は国や地域を治めるための大きな役割を担っていたとされるだけに、推論通りなら当時の福井を描く上で重要な遺跡となるだろう。ただ、中世に入ると古代の寺を基礎に、これだけの規模で造成される可能性があると指摘する専門家もいる。一方、古川さんは、中世になると近くの大型寺院・方山真光寺(かたやましんこうじ)跡に移転した可能性があるとみており、解明に向けてさまざまな角度から検証が必要だ。既に夏以降、発見の一報を聞いた研究者が県内外から視察に訪れ、この場所にこれだけの寺院が置かれた理由について活発に推論が交わされている。この丘陵が当時の行政区画の一つ丹生郡の北端に位置し、足羽郡と日野川をはさんで接する地理的条件に注目。疫病など災いが入ってこないよう郡境で祈祷(きとう)する場だったとの見方や、水運との関係が重要との声がある。さらに「朝宮」という地名や、中心部が東側を向いていることなどから、白山遥拝(ようはい)など白山信仰との関連を指摘する研究者もいる。いずれにせよ、謎の解明には専門機関による調査が欠かせない。一方、今回の発見は本堂や前庭と推定される平たん面付近などの林道工事に伴い、須恵器片が出土したのがきっかけだった。遺跡の価値を山林所有者や関係機関に深く知ってもらい、保全に向けた対策を講じていくことも必要だろう。古代の山林寺院は比較的研究が新しい分野であり、未解明の部分が多い。今回、山林寺院が発見された朝宮大社遺跡のほかにも、県内の山中にはいまだ本格調査の網がかかっていない遺跡があると予想される。この発見を研究、保全機運が高まる契機としたい。

    トップへ戻る

  • 【京都新聞】

    重い病気で入院している患者向けの「急性期病床」が削減される見通しになった。政府は来年度から診療報酬の仕組みを抜本的に見直し、ベッド数の削減へ誘導する方針だ。医療費は高齢化に伴い膨らみ続けている。効率的な運用へ向けた改善は理解できる。一方で、手厚い医療、看護が本当に必要な人に提供されない事態は避けねばならない。丁寧な運用が必要だ。急性期病床には現在、患者7人に対し看護師1人が配置されている。制度上、最も手厚い体制だ。診療報酬のうち、患者1人ごとに病院が受け取る入院基本料は、主に医師や看護師の配置を評価して算定されている。このため急性期病床は病院にとって採算性の高い部門になっている。政府は算定方法を見直し、看護師の人数ではなく、手術などの提供した医療実績に応じて報酬を決める方針だ。背景には、比較的軽症の患者が急性期病床に混在している現状がある。制度見直しによって、軽症患者の看護は現在より手厚くなくなる可能性があるが、医療費の自己負担も減少することになる。手厚い看護は本当に重い病気の人に集中させるというわけだ。だが症状の仕分けをどう行うのか。手術以外の提供医療をどう評価するのか、分かりにくい。症状が日々変化する患者もいよう。きめ細かな対応をしてほしい。重症患者向けの病床は現在、全国に約35万4千床あり、政府は医療費増大の原因とみている。だが、ベッド数の総量規制で病院が単価の高い病床の割合を増やした経緯もある。地域医療を支える病院経営に悪影響が出ないよう配慮は必要だろう。団塊の世代が全員75歳以上になる2025年に向け、政府は急性期病床を削減し、リハビリや在宅医療の受け皿や担い手を増やす方針を打ち出している。都道府県が作成した「地域医療構想」によると、2025年までに全国の病院のベッド数は11・6%、約15万6千床減る見通しだ。ほかにも、高齢者が長期入院する医療保険適用型の療養病床のうち約6万6千床を23年度末までに廃止する。新しい「介護医療院」へ転換を促して医療費を抑える方針だ。医療費抑制と医療の在宅化は急速に進んでいる。一方で地方では介護の担い手不足などが深刻だ。地域の事情に合わせた運用を求めたい。

    トップへ戻る

  • 【神戸新聞】

    税金に対する意識が甘すぎるのではないか。会計検査院の2016年度決算検査報告で、国や政府出資法人などの税金の無駄遣いや不適切な経理が423件、874億円に上った。過去10年ではもっとも少ないというが、決して小さな金額ではない。法令違反や不適切な予算執行と認定した「不当事項」は333件、137億円に達した。東日本大震災からの復興事業では、文部科学、農林水産など5省が余った予算計20億円を復興特別会計に戻さず、一般会計に入れていた。財源が適切に確保されない恐れがあり、復興に支障が出かねない。東京電力福島第1原発事故で初期対応に当たった作業員らの被ばく線量を調べる研究は、データが十分に集まらず事業が頓挫した。にもかかわらず、関連システムの保守契約を続け、1億2千万円が不当と指摘された。コスト意識の欠如にはあきれるばかりだ。また日本年金機構は、国民年金保険料や延滞金が未納なのに督促しなかったり、財産の差し押さえを怠ったりしていた。この結果、2億1500万円分が消滅時効期間を過ぎ、徴収できなくなっていた。「消えた年金記録」問題など、年金機構は前身の社会保険庁時代から幾度も不祥事が起きている。9月には元公務員の配偶者ら10万人以上に598億円もの年金未払いが分かったばかりだ。ずさんな体質が一向に改善されないのは、危機感が足りないからではないか。厚生労働省では、第2次世界大戦で戦死した戦没者の遺骨を海外で収集する事業で、経費の水増しが見つかった。前渡し金で支払ったにもかかわらず、現地の車両代などを水増しして領収書を作るよう旅行会社へ指示していた。国と地方の借金は1千兆円を超えている。消費税増税の実施が予定される中、税に対する国民の視線は極めて厳しい。国や自治体は指摘を十分に受け止め、再発防止や制度の改善に努めなくてはならない。貴重な税金を使っているという意識を高めなければ、信頼が失われ国の根幹がゆらぎかねないことを自覚すべきだ。

    トップへ戻る

  • 【奈良新聞】

    台風21号の接近などによる10月下旬の大雨で、県内は住宅や道路、農地などで総額約162億円に達する被害を受けたことが県の調べで分かった。これは今月6日時点の取りまとめより約30億円増えており、時間の経過とともに精査が進み、甚大な被害の全体像が明らかになってきている。ただ県の集計に民家の被害額などは含まれておらず、実態はさらに深刻だ。一方、被害の発生当初から数日間は市町村などによる状況の把握、対応に遅れも指摘され、一部地域で被災住民の間に不満の声が高まった。山間部など容易に確認作業が進まない事情はあるせよ、1週間後には次の台風22号が接近、県内は再び土砂災害の危険にさらされており、改めて行政の初動体制の強化が求められる。県によると、全壊した住宅の戸数も当初の集計より多い4棟と分かった。半壊したのは3棟。また浸水被害は床上119棟、床下387棟。道路や河川など土木関係の被害額は約118億円。農業被害も五條市の柿畑などで広がっている。農業被害については国が台風21号を激甚災害に指定、地域を特定せずに補助対象とする方針を示しているが、公共土木や中小企業の被害は対象とならない見通し。県はさらに詳細な調査を行った上で、道路や河川の復旧工事に必要な費用を予算化、12月県会に諮るとしている。また、併せて県は庁内に「土砂崩壊対策検討委員会」を設置。今月10日に開いた初会合では、生駒市西松ケ丘▽三郷町東信貴ケ丘▽吉野町楢井—の3カ所の被災地について、現状を確認するとともに今後の対策を協議した。年内にも復旧対策を終えたいとしており、現場の取り組みを整理して、本年度内には土砂崩壊対策の「基本方針」もまとめる方針。同検討委員会は部局横断のメンバーで構成しており、いわゆる縦割り行政が陥りがちな対策の遅延を排し、速やかな対策実施に期待する。加えて高度な専門性や技術を要する復旧作業については、県と市町村の役割分担にも旧弊を持ち込まず、実効性を確保し、機動的に対処する「奈良モデル」の取り組みも必要だ。暮らしの安全を守るには、危険箇所の補修など災害に強い地域づくりを進めるのはもちろん、防災意識の啓発、緊急時の避難誘導など多岐にわたる行政の役割が求められるが、住民の信頼に応えるには、迅速な災害復旧こそ欠かせない。

    トップへ戻る

  • 【紀伊民報】

    田辺市を初めて訪れた友人や知人は決まって「車を運転する人の交通マナーが悪いね。若い人もお年寄りも」という。それを裏付けるように、田辺署管内では人身事故が前年より増えている。田辺署によると、県内で今年起きた人身事故は10月末現在で2155件(前年同期比270件減)、死者は26人(同4人減)。県全体では年々減少しているが、田辺署管内だけが増えた。同署管内で発生した人身事故は253件(同23件増)。7月末までは165件で前年より1件少なかったが、8月は34件(同12件増)、9月27件(同6件増)、10月27件(同6件増)と増加している。内訳は追突事故が66件と最多。次いで出合い頭の事故が60件、右左折時が29件だった。物損事故も増加傾向にあり、駐車場でバックする車同士が衝突した例も多い。死者は前年同期と同じ2人。だが、その後、上富田町朝来の国道42号で、歩行中の男性(72)が乗用車にはねられて死亡している。田辺市内では、道路交通法違反で検挙される件数も増加傾向にある。若い女性に速度超過の違反が見られるのが近年の特徴という。他にも、車を運転しながら携帯電話をする▽狭い道から一時停止をせずに飛び出す例が多い。横断歩道に歩行者がいても車が停止してくれないので、歩行者が困っている光景もよく見掛ける。シートベルトの着用率は、2016年の調査で田辺市は96・2%。県内平均の98・5%を下回っている。こうした数字を見ていけば、交通ルールを守らない人が多いことが、事故件数の増加に直結していることがうかがえる。運転者は、自身を守り、相手の命を守るためにも法律を順守しなければならないのである。一方、警察の取り締まり状況はどうか。同署の加藤賢治交通課長(48)は「交通課員を総動員し、違反や事故が目立つ早朝や夜間の取り締まりを強化している」という。だが、田辺署の管轄は広い。近畿で一番広い面積を持つ田辺市のほか、みなべ町と上富田町も管轄しており、一路線、一地区に集中しては人員を割けない。取り締まりを増やせば検挙数も増えるが、それが直接、違反の減少率につながらないと嘆く。加藤交通課長は「一番なくしたいのは死亡事故だが、警察だけの努力では及ばない。運転者の安全運転に対する自覚なしには、目的は達成できない。そのためにも、家庭や職場、学校でも常に交通安全の意識を高め、注意し合うことが必要」と話す。「自分だけは大丈夫」「とっさの時には避けられる」といった過信が事故につながる。誰にでも、一瞬の油断があり、事故を起こす可能性は常にあるのだ。ハンドルを握る前から交通マナーを改善しよう。車を利用する人全員が日々、安全運転を意識し、心掛けるしかない。事故を起こしてからでは遅い。(Y)

    トップへ戻る

  • 【山陽新聞】

    指標は記録的な景気の持続的回復ぶりを示しているが、力強さは実感できない。内閣府が発表した7〜9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0・3%の増で、年率換算は...この記事は会員限定です。電子版にご利用登録後、ログインして全文をご覧頂けます。

    トップへ戻る

  • 【中国新聞】

    テロ支援国家再指定手詰まり感は否めない2017/11/24米政府は北朝鮮を「テロ支援国家」として再指定した。一見すると米国の強い姿勢を見せつけたようだが、中国による米朝の「仲裁外交」が不発に終わったことを受けた措置のように映る。つまりは北朝鮮を取り巻く国際社会の手詰まり感を示していると言わざるを得ない。この再指定は、ことし2月にマレーシアで金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄金正男(キムジョンナム)氏が殺害された事件で猛毒の神経剤が使用されたこと、すなわち化学兵器を使ったテロ行為であることが決め手になったもようだ。北朝鮮に拘束されていた米国人大学生が昏睡(こんすい)状態に陥り、6月に解放後、死亡した事件も判断材料に含まれただろう。トランプ大統領にとっては訪日して日本人拉致の非道を再認識したことも、金体制批判を強める結果になったのではないか。北朝鮮のこれらの行いは許し難いものであり、再指定は無理からぬ措置かもしれない。ただし、トランプ氏の「決意」のほどは分かるにしても、外交上どのような腹積もりがあるのか、そこは定かではない。北朝鮮は核・ミサイル実験の実施を9月中旬以降控えている。中国の習近平国家主席の特使が訪朝し、対話の糸口を模索して帰国したばかりでもある。その直後の再指定となれば、中国の外交努力は何のためか、という疑問が浮かんでくる。再指定について中国外務省報道官は「朝鮮半島情勢は複雑で敏感であり、関係各国は緊張緩和に役立つことをするよう望む」と述べた。米国への不快感をにじませてはいるが、その趣旨自体は正論といえよう。ロシアを舞台にした北朝鮮と日本などの外交官の接触も、この秋に行われた。再指定は、これら外交活動が実を結ばないと見切りを付けての決定だろうか。米国は既に制裁を拡大しており、再指定は象徴的な意味合いが強いと思えるが、それだけに北朝鮮があらためて強硬な姿勢に傾く危惧は否めない。北朝鮮はこれを口実に、再び弾道ミサイル発射に踏み切る可能性がある。2カ月間挑発に出ていないが、制裁の効果があってのことではあるまい。日本にも重大な影響を与える軍事衝突の懸念があろう。問題は国民が政策の是非を判断する材料が少な過ぎることだ。安倍晋三首相は再指定を受けて「北朝鮮に対する圧力を強化するものとして歓迎し、支持する」と述べた。「あらゆる手段を使って圧力を最大限にし、北朝鮮から対話を求めてくる状況」をつくると言う。だが、そのための効果的な方法はどうあるべきか。もし北朝鮮が対話を求めてこなければ、軍事介入に一挙に進むのだろうか。こうした点が明らかになっていない。トランプ氏との先の首脳会談で、北朝鮮問題について具体的にどんな議論がなされたかも説明すべきだ。先日起きた北朝鮮軍人の韓国亡命を巡っては、追ってきた北朝鮮兵士が南北軍事境界線を越える「朝鮮戦争休戦協定違反」が発覚した。緊張が高まれば、こうした事件が大規模な衝突に発展しないとも限らない。来年2月には平昌冬季五輪も控えている。日本政府は韓国政府と緊密に連携しつつ、北朝鮮の暴発を押しとどめる外交戦略を明確にしなければなるまい。

    トップへ戻る

  • 【山陰中央新報】

    検査院の森友報告/事実関係の精査が必要だ森友学園への国有地売却で、ごみの撤去費用として8億円余りが値引きされた経緯を巡り、会計検査院は「国によるごみの処分量の見積もりは過大で、根拠が不十分」とする報告書をまとめ、国会に提出した。撤去費の算定に用いられた資料の一部が破棄されていたことなどから、正確な計算ができないとして、適正な撤去費は示していない。「法令に基づき適正に処理」という政府の説明に疑問を突き付けた形だ。単に、算定や文書管理がずさんだったということで済む話ではなくなる。安倍晋三首相の昭恵夫人と森友学園前理事長の籠池泰典被告とのつながりが、国有地売買交渉に大きな影響を及ぼしたとされる疑惑が指摘されているが、これまでの関係者の説明にも釈然としない部分が残る。さらに売買契約を前に財務省近畿財務局の担当者があらかじめ学園側に買い取り可能な金額を尋ねていたとの証言や、籠池被告との間で売買価格を協議していたことをうかがわせる音声記録も明らかになっている。撤去費の算定を基に、きちんと価格が決められたのか、しっかりと事実関係を精査する必要があるだろう。検査院の報告書で終わりではない。首相が繰り返す「丁寧な説明」に向け、政府は報告内容の検証と一連の疑惑解明に取り組むべきだ。森友学園は2015年5月に、小学校用地として大阪府豊中市内の国有地の借地契約を国と締結した。翌16年3月になり、国有地売却を担当する財務省に地中からごみが出たと申告し、買い取りを申し出た。このため財務省からの依頼により、この土地を所有する国土交通省大阪航空局が、ごみの処分量を見積もり、撤去費の算定に当たった。その結果、土地の評価額の9億5千万円から撤去費として8億2千万円を差し引き、1億3千万円で売ったとされる。検査院によると、大阪航空局は以前に現地で試掘を行い、地下埋設物の調査をしたことがあり、これを基に敷地全体でごみが47.1%の割合で混入しているとみなし、ごみの処分量を算出していた。しかし試掘でごみが出ていない地点もあるのに、そのデータは反映されておらず、計算をやり直すと、処分量は大幅に圧縮されたという。さらに16年3月、近畿財務局の担当者が買い取り可能な金額の上限を尋ね、学園側は1億6千万円と答えたとされる。その年5月には、籠池被告が「ゼロ円に極めて近い形で払い下げを」と迫り、財務局側が「1億3千万円を下回る金額は提示できない」とするなどとした音声記録が残されている。ほかに財務省幹部が籠池被告に当初の借地契約について「特例」と説明した音声記録もあるが、国会では関係者から「適正な価格で売った」と繰り返された。学園側との面会・交渉記録を廃棄したとして説明がされず、事前協議の指摘に対しては、「あらかじめ価格について申し上げることはない」との答弁も残っている。こうした一連の経過が「適正な処理」だったのか、さらなる検証が必要だろう。2017年11月23日

    トップへ戻る

  • 【愛媛新聞】

    8億円の値引きにはっきりと疑義が突きつけられた。学校法人「森友学園」への国有地売却問題で会計検査院は、国による売却額の算定がずさんだったとの検査結果報告を国会に提出。値引きの根拠とされたごみ処分量が、過大に見積もられている可能性を指摘した。国はこれまで、売却価格は適正だと主張し続けてきた。報告は、その信ぴょう性を根底から揺るがしている。安倍晋三首相は行政府のトップとして今度こそ徹底解明を指示し、説明を尽くさなければならない。首相は野党が求める第三者を交えた調査委員会設置を拒否して「会計検査院が調査する」と繰り返し、説明を逃れてきた。結果が示された以上、うやむやにすることは許されない。来週からの衆参両院予算委員会の質疑は、検証への新たな一歩と肝に銘じてもらいたい。売却に関わった財務省や国土交通省の説明責任は重い。報告はごみの量を国の推計の3〜7割と試算した。そもそも、民間の専門機関でなく国交省大阪航空局が推計するという対応がきわめて異例で、不自然だった。佐川宣寿前理財局長はこれまで森友との交渉記録について、支払いが終わっていないにもかかわらず「廃棄した」とし、職員への調査を拒否。職員と籠池泰典前理事長との音声データが公になっても「本人かどうか全く分からない」と突っぱねてきた。その後、国税庁長官に「栄転」し、今回もコメントを出していない。部署を離れたという理由は通用せず、このままでは国民は納得できない。当事者たる自らが経過をたどり直し、証言しなければならない。核心はなぜこのような不可解な値引きがされたかだ。首相の妻、昭恵氏が国有地に建つ予定だった小学校の名誉校長に一時就任した時期と、「想定外の値引き」で「神風が吹いた」(籠池氏)時期は重なっている。行政側が忖度(そんたく)した疑惑は、さらに深まったと言わざるを得ず、背景に切り込む必要がある。会計検査院には捜査権限がないとはいえ、動機や妥当な値引き額に踏み込めなかった。報告の最終段階前の案ではごみ撤去費の試算額が航空局の見積もりより6億円以上安く記載されていたが、結果的に消えた。検証すべき資料を国が「廃棄」し、証拠不足とするが、財務、国交両省が額を出さないよう要望を繰り返していたという。ここでも何らかの「圧力」が働いたのではとの疑いを禁じ得ない。大阪地検特捜部が財務省近畿財務局職員に対する背任容疑の告発を受けて捜査しており、強制捜査による徹底解明を求めたい。国会も国政調査権を使って関係者の証人喚問をすべきだ。報告が求めた妥当性の検証が行える公文書管理については、早急に取り組まねばならない。文書を捨てたと言い逃れして済むなら、行政はチェック機能を失い、ゆがめられる。「捨てた者勝ち」は断じて許されない。

    トップへ戻る

  • 【徳島新聞】

    自民党の憲法改正推進本部が、「1票の格差」是正に向けて導入された参院選挙区の「合区」を解消するため、衆参両院議員の選挙に関する事項を「法律で定める」とした憲法47条の改正を柱とするたたき台を了承した。たたき台は、2012年の党改憲草案やその後の検討を踏まえた。47条について「各選挙区は人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない」の一文を挿入する。参院選に関しては「改選ごとに各広域的な地方公共団体の区域から少なくとも1人が選出されるよう定めなければならない」という趣旨のただし書きを追加した。昨年の参院選で「徳島・高知」「鳥取・島根」で実施された合区は、候補者と有権者の距離を広げ、投票率低下などの大きな弊害を生んだ。私たちは、地方の切り捨てにつながる合区は廃止すべきだと主張してきた。人口の少ない県も、改選ごとに1人の参院議員を選出できる仕組みが必要である。合区解消は自民党の衆院選の公約の一つであり、取り組みを進めていくのは当然だ。9条への自衛隊明記、緊急事態条項の創設、教育無償化とともに改憲4項目の一つでもある。推進本部は、条文化作業を本格化させ、来年の通常国会で党改憲案の提示を目指す。しかし、19年夏の次期参院選までに憲法を改正し、国民に周知するのは至難の業ではないか。たたき台には、改憲による合区解消を呼び水にして、憲法改正論議に弾みをつける狙いもうかがえる。安倍晋三首相が意欲を見せる9条改正に比べ、国民の抵抗が小さいとみているのだろう。だが、ハードルが高い改憲という手段によらなくても、参院定数増を含めた法律の改正で合区を解消するのが現実的である。参院各会派が選挙制度を議論する専門委員会会合では、与党からも異論が出た。公明党は従来、都道府県単位の選挙区から大選挙区制への変更を求めており、47条の改正には否定的だ。同党の西田実仁参院幹事長は43条の「両議院は全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」との規定と矛盾するとして、疑問を呈した。野党の主張もさまざまだ。民進党からは「参院の在り方を考える根本の議論が必要だ」という意見が出た。希望の党は「選挙制度改革の前に統治機構改革を考える必要がある」との立場を示した。共産党は全国9ブロックでの比例代表制を提案する。地方を中心に人口減が深刻化する状況で、選挙制度の抜本改革が欠かせないことは言うまでもない。とはいえ、合区を解消するためには、憲法改正だけが優れた方策とは言えまい。党利党略や拙速は慎まなければならない。与野党を交えた議論の成熟を待つべきだろう。

    トップへ戻る

  • 【高知新聞】

    野外活動などで方位磁石(磁気コンパス)を使った人は少なくないだろう。「N」が北を指すのは地球に磁場があるからだ。磁場は地球から出る地磁気によってつくられる。いささか紛らわしいが、北極近くに磁石のS極、南極近くに磁石のN極があり、S極に引きつけられてコンパスのNが北を向くわけだ。46億年の地球の歴史で、磁場が誕生したのは27億年前とされる。地球を包み込むような巨大な磁場は、宇宙空間から絶えず降り注ぐ有害な宇宙線を防いでくれる。磁気圏と呼ばれるこの覆いがなければ、人類は生まれていなかっただろう。長い歴史の中でN極とS極は何度も逆転してきた。地球の中心部分にある液状の鉄などの対流が変化して起きたと考えられている。「地磁気の逆転」と呼ばれる現象の痕跡は岩石などに残り、過去360万年の間に11回の逆転があったとされる。最後に逆転したのは77万年前という。その最後の逆転がはっきりと読み取れる地層が千葉県市原市にある。その地層「千葉セクション」には、当時の磁場の状態が残った鉱物のほか、地層が堆積した時代や気候を示す微生物の化石・火山灰も多く含まれているという。国際地質科学連合の作業部会が、この地層について77万〜12万6千年前を代表する地質として認めた。茨城大や国立極地研究所などが申請していたもので、イタリアが申請した2カ所の地層を上回る評価を得たようだ。審査はまだ続くが、正式に認定されれば、地球の歴史を分類する地質年代で現在の「更新世中期」が「チバニアン(千葉時代)」と名付けられることになる。先カンブリア時代に始まり、古生代、中生代の三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と続く地質年代を、地学の授業などで見聞きした人は多いだろう。日本にちなんだ名前が付くのはむろん初めてで、各国の教科書などにも載るに違いない。千葉県民ならずとも喜ばしい出来事だが、四国の地層にも大きな特徴がある。北から南へ、ジュラ紀、白亜紀、古第三紀、新第三紀というように地質年代の古い順に、地層が東西方向に帯状に並んでいる。地球の営みがつくり出した地層だ。世界ジオパークに認定された室戸岬周辺の地形も、巨大地震による隆起という地球の営みが生んだ。私たちは大地の鼓動を身近に聞き、感じることができる環境に暮らしているといってもよい。「チバニアン」の命名によって、地球の歴史や、それを具体的に示す地層、地形などへの関心が高まるに違いない。学習環境などに恵まれている県民もさらに関心を持つ機会にしたい。地球への関心を高め、その営みを理解する。その積み重ねは巨大地震や風水害、火山の噴火などに対する備え、温暖化の防止などにもつながっていくはずだ。

    トップへ戻る

  • 【西日本新聞】

    大手銀行グループが大規模な事業見直しに動き始めている。みずほフィナンシャルグループは今後10年で全従業員の4分の1に当たる1万9千人を減らし、店舗も100店減らす計画を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループも2023年度末までに三菱東京UFJ銀の従業員を6千人削減、三井住友フィナンシャルグループは19年度末までに4千人分の業務量を削減するという。危機感の表れだ。日銀の低金利政策や企業向け融資の伸び悩みで銀行の収益環境は悪化している。金融と情報技術(IT)を融合した金融サービス(フィンテック)の広がりで新興企業が参入、事業環境も厳しくなってきた。そこで窓口業務や事務作業を省力化し、将来はロボットや人工知能(AI)も活用しようという動きだ。時代の趨勢(すうせい)なのだろうが、守りの縮小均衡に陥ることなく、海外事業や投資銀行業務など新たな収益基盤の拡大に挑み、産業育成という使命を全うしてほしい。大手銀行5グループの17年9月中間決算は、傘下銀行の本業のもうけを示す実質業務純益が全社で前年を下回った。超低金利に伴う貸し出し利ざやの縮小や、投資信託、保険の販売不振が響いた。事業見直しの背景には融資の利幅や、為替・金融商品販売の手数料などで稼ぐ既存のビジネスモデルが揺らいでいる事情がある。窓口業務はATM(現金自動預払機)やネットバンキングに置き換わる。融資業務もAIが判断し金利も提示する。投資信託の販売も資産運用ロボットが行う−そんな時代がいずれ訪れるだろう。金融業界の周辺では、IT企業の銀行化と、銀行のIT化が同時進行している。銀行はIT企業とともに新収益事業を開拓することが求められる。新興国の成長を取り込む海外事業や、法人顧客への助言・資金調達支援など投資銀行業務の強化も選択肢だ。AIや仮想通貨技術を使ったコスト削減も進めたい。大手行には豊富な人材、情報、資金がある。顧客本位で「次の一手」を考えてほしい。=2017/11/23付西日本新聞朝刊=

    トップへ戻る

  • 【宮崎日日新聞】

    ◆賃上げで内需中心の成長を◆7〜9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比0・3%増、年率換算1・4%増で、約16年ぶりに7四半期連続のプラス成長となった。しかし、内需の両輪の個人消費と設備投資は弱く、輸出の回復に主導された力強さに欠ける景気拡大だ。内需中心の自律的な成長に向けてさらに努力が必要である。期待外れの消費拡大成長率は前期の年率2・6%から大きく低下した。個人消費は前期比0・5%減と7四半期ぶりに減少し、設備投資は0・2%増と伸び悩んだ。公共投資も補正予算の執行の一巡で2・5%減、住宅投資も0・9%減と減少に転じ、内需全体は実質GDPを0・2%押し下げた。半面、世界経済の好調を追い風に輸出が1・5%増と伸び、内需の不振を補った。最近の景気拡大は高度成長期の「いざなぎ景気」の57カ月を抜き、戦後2位の長さとなったとみられるが、平均成長率が年1・4%と低い中で個人消費の低調が続き、好景気の実感は乏しい。最も心配なのは、GDPの6割を占める個人消費の落ち込みだ。前期は0・7%増と高い伸びを示し、長期低迷から脱出するかと思われたが、マイナスに転落した。8月の天候不順が影響したとみられるが、個人消費の基調はまだまだ弱い。設備投資も前期の0・5%増から伸びが鈍化した。内需のけん引役が不在の中で、外需の拡大に支えられた輸出増で成長を実現した形だ。日本経済が内需中心の持続的な成長の経路に復帰し、デフレ脱却を実現するための最大の鍵が、個人消費の拡大であることは明らかだが、期待外れが続いている。要因は、雇用が改善され人手不足が強まっているのに、賃金が思ったほど上昇しないことである。財政の拡張も視野に個人消費低迷の原因は社会保障の財政基盤の未整備による将来不安だという説があるが、説得力がない。2014年4月に消費税率を8%に引き上げた後は、不安が解消されるどころか個人消費が急激に冷え込み、その後も完全には回復していない。低迷のそもそもの主犯は消費税増税だ。内需が盛り上がらないままひ弱な成長が長期間続くこともあり得る。海外には米国と欧州の金融政策の「出口戦略」、中国経済の減速懸念などのリスクがあり、19年10月には消費税率の10%への引き上げを控える。経済の好循環がつくれない状況でそうした不確実性の打撃を受ければ、景気が失速する恐れすらある。日銀が金融緩和を継続することはもちろん、政府は状況に応じて迅速に追加経済対策を発動できる構えをとっておくべきではないか。最も重要な手段は財政の拡張だ。アベノミクスは金融政策偏重で、財政政策は初期を除いて抑制を維持してきた。企業には過去最高の利益を、積極的な賃上げと設備投資に振り向けるよう求めたい。

    トップへ戻る

  • 【佐賀新聞】

    今後6年間、国のがん対策の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」が閣議決定された。がんの予防に力を入れていることが大きな特徴だが、がんになっても、自分らしく生きていける地域共生社会の実現もうたっている。そこに「緩和ケア」が位置づけられ、がんと診断された時から始めることが一層強められている。身体的、精神的な痛みを和らげる緩和ケアの重要性は年々増している。がんは、いまや「死に直結する病気」ではなくなってきているものの、患者の心身の負担はまだ重いと言わざるを得ない。緩和ケアは終末期だけと思われがちだが、本当は診断された時からのケアが大切である。完治が望める場合でも、治療後の再発不安への心のケアや、生活の質(QOL)の維持、向上などの支援が必要だ。完治が期待できない場合、主治医が緩和ケア病棟への移動を勧めると、「見放された」と感じるケースもある。緩和医療に移るタイミングが難しいとされ、このつなぐ体制が機能していないとの指摘がある。今後も医師、看護師などスタッフ全体の力量アップとともに、一人一人の患者と相対する時間をゆっくり持てるような体制づくりも求められる。患者側も、忙しい医療スタッフに、相談したり尋ねるのをためらうのではなく、不安感や疑問点を気軽に投げかけ、返してもらう。双方で信頼を築き上げていければ、患者も家族も救われる。ひいては良い医療にもつながる。県内では、佐賀大学医学部附属病院▽県医療センター好生館〓唐津赤十字病院〓国立病院機構嬉野医療センターの四つが、がん診療連携拠点病院になっており、それぞれに緩和ケアチームが設置されている。厚生労働省は2008年から緩和ケア研修会を開くなど、医師の技能向上に取り組んできた。佐賀県では16年度までに医師762人、看護師などを含めると1436人が研修を受けている。これらは拠点病院の医療スタッフが中心で、地域を含めると、まだ十分な数は養成できていない。緩和ケア病棟があるのは、好生館(佐賀市、15床)〓河畔病院(唐津市、18床)〓西田病院(伊万里市、20床)〓なゆたの森病院(佐賀市、20床)の四つ。全体で73床という数は、人口対比でみると全国平均より、若干多いという。しかし、最近は延命を望む人ばかりではなく、痛みを和らげ、穏やかな日常を希望する患者は増えている。緩和ケア病棟への入院を望みながら、多くが地域の一般病院で亡くなっている現状を踏まえれば、まだ不足感がある。誰もが希望した時点で、専門病棟を利用できる環境が望まれる。そうできれば患者、家族も安心し、落ち着いた療養生活を送れる。一方で、緩和ケアチームについては、組織体制こそ整備されつつあるものの、ケアの質の評価にまでは至っていないのが現状だ。医師と看護師だけでなく、ソーシャルワーカーやリハビリなどケアにかかわるスタッフの育成充実も忘れてはいけない。緩和ケアとは悩む家族への支援も含む。人にやさしい医療がその本質といえる。地域全体でケアの力を上げる取り組みが急がれる。(横尾章)

    トップへ戻る

  • 【南日本新聞】

    [天文館の再開発]街づくりは市民参加で(11/24付)県都の核にふさわしい街づくりのために、知恵の絞りどころである。鹿児島市天文館のタカプラが、来年2月に閉館することになった。天文館電停の目の前にあるファッションビルは、待ち合わせ場所として市民に親しまれてきた。今後は閉館、解体後の再開発の行方に関心が集まるに違いない。一帯の地権者らでつくる再開発準備組合は、15階建て(高さ約60メートル)のビル建設を計画している。1〜6階は店舗や事務所、7〜15階はホテルという青写真を描き、2020年秋の完成を目指す。JR鹿児島中央駅周辺のにぎわいや郊外型ショッピングモールの人気に押されぎみの天文館地区にとって、起死回生の大型計画といえよう。利用者が愛着を持てるような施設を目指してほしい。タカプラ前と山形屋前の交差点には、市電軌道をまたぐアーケードの建設計画も浮上している。こちらも20年秋ごろの完成予定だ。周辺の通り会やタカプラ、山形屋を含む企業などが準備委員会をつくり、規模やデザインを協議している。商店主が「街が動く今こそ新たなランドマークを」と意気込むのは、タカプラ跡の再開発を機に地区の再浮揚を図る狙いの表れだろう。ただ、どちらも多額の資金を必要とする。タカプラ跡の再開発ビルは総事業費約151億円で、少なくとも60億円程度は国や県、市からの補助金を充てる見込みだ。アーケードは5〜6億円かかるとみられ、費用の捻出方法は準備委員会で協議する。再開発ビルには公金がつぎ込まれる。投資効果を厳しく試算した上で、計画を進める責務があることを忘れてはならない。15年の国勢調査で、県の人口は戦後初めて170万人を割り込んだ。増加を続けてきた鹿児島市も初めて減少に転じた。今後増加する要素は見当たらず、小売業の経営環境は楽観できない。東京や福岡などの大都市では、大型複合ビルの建設をはじめとする再開発が進んでいる。こうした先進地の成功例と失敗例の両方から学ぶことが重要だ。鹿児島の特性も考え合わせて、回遊性の高い街づくりの方向性を見定めたい。県外、海外からの誘客も視野に入れる必要がある。市民、県民が一層親しみを持てる天文館にするためには、まず再開発計画の透明性を確保すべきだ。中学生や高校生など若者を含む幅広い層から意見や注文を聞く場を設けるのも一案だろう。少しでも多くの人が関われる街づくりを期待したい。

    トップへ戻る

  • 【琉球新報】

    県内高校の卒業者が大学・短大に進学する割合は2016年度に39・2%で全国(54・7%)とは15・5ポイントの開きがある。だが進学率が25・2%だった復帰直後の1973年度と比べれば、県内の高校生が進学する割合は14ポイントも上昇している。学ぶ意欲が高まった現れだが、離島県ならではの課題は多く残されている。その一つが世帯収入に占める教育費の割合の高さだ。沖縄振興開発金融公庫が発表した16年度の国の教育ローン利用状況調査によると、年収200万円未満の世帯では教育支出が106・0%に上る。離島居住者に限れば、年収200万円未満世帯の教育支出は世帯収入の115・9%にもなる。教育費が家計を圧迫する状況が調査からは見てとれる。学びたい子ども、学ばせたい保護者の意思を尊重するには、金利優遇などにとどまらず、返済不要な奨学金の拡充といった官民を挙げた支援策が求められている。沖縄公庫が手掛ける国の教育ローンは、ここ数年融資額、件数とも過去最高を更新している。県内の進学意欲の高まりもあるが、沖縄公庫が離島居住者を対象に金利を引き下げる制度や、ひとり親世帯の金利を優遇する制度を創設したことも寄与している。保護者にとっては、借りやすい環境はできたといえる。だが総務省が発表した最新の県民所得(14年度)で、沖縄は1人当たり212万9千円で全国最下位となっている。全国平均の305万7千円と比べれば、約7割しかない。もともと所得が少ない上に教育費への支出が重なれば、進学を諦める事例も出てくる恐れがある。沖縄公庫の分析では世帯年収が高いほど県外への進学率も高くなり、世帯年収が進路に影響を与えることもうかがえるという。さらに「家庭の経済状況や居住地域によって学生の教育環境が制約されることのないよう各方面の支援拡充を期待したい」と指摘している。全ての人に学ぶ権利があり、文化的な生活を営む権利があることは憲法で保障されている。個人の意欲や能力があるのに、家庭の経済状況や生まれた場所によって学ぶ権利が制限されることは本来あってはならないことだ。沖縄に限らず、離島を抱える他の県でも同様の状況があると考えられる。離島居住者や低所得層にとって、教育支出はわが子、未来への投資といえる。常に学ぶ場への門戸は開いておくべきだ。政府の「人生100年時代構想」は「子供たちの誰もが経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会」の実現を掲げている。国家100年の計は教育にある。教育の根幹は人づくりだ。国の未来を担う人材を経済的な事情で埋もれさせてはならない。全ての人が平等に学べる制度設計を望む。

    トップへ戻る

  • 【沖縄タイムス】

    学校法人「森友学園」(大阪府)への国有地売却問題を調査していた会計検査院が、売却地のごみ撤去費用として8億円以上も値引きしたのは過大で、根拠不十分とする報告書をまとめ、国会に提出した。「法令に基づき適正に処理」という政府の説明に、改めて大きな疑問を突き付けた意味は大きい。根拠不明瞭のまま、国民の共有財産である国有地の大安売りが、なぜまかり通ったのか。異例の売却となった核心は何なのか。検査院の報告書でも疑惑は未解明のまま残っている。行政のトップとして、安倍晋三首相には真相の究明と説明の義務、責任がある。国会も引き続き政府をただしていかなければならない。森友学園は2015年5月、小学校用地として大阪府豊中市内の国有地の借地契約を国と締結した。しかし、同学園は16年3月に、国有地の処分を担う財務省に対し、国有地の地中からごみが出たと申し立て、買い取りの交渉を始めた。財務省は、土地を所有する国土交通省大阪航空局に、ごみの処分量の見積もりを依頼し、撤去費を算定した。土地は、鑑定価格の9億5600万円から、ごみ撤去費として8億2千万円を値引きし、1億3400万円で売却された。なぜ9割近くも値引きされたのか。大阪航空局は、過去の試掘調査の結果や工事業者が撮影した写真などを基に、ごみがある深さや敷地全体のごみの混入率を計算し、ごみの量や処分費を算出したという。だが、検査院は、その見積もり自体に疑問を呈した。■■報告書では、業者の写真ではごみのある深さを確認できず、試掘でごみが出ていない地点もあるのに、ごみ混入率の計算に反映されていないことなどを挙げ、処分量算出の根拠を確認できなかったと指摘している。ごみの処分費の単価が妥当かを示す資料もなかった。検査院は、実際の処分量は国の推計から最大で7割少なかった可能性があるとしている。報告書には盛り込まれなかったが、検査の過程で値引き額は最大約6億円が過大だと試算していた。国が処分費の算定に用いた資料や売却に関する交渉の文書が破棄されていたため、売却額が適切か検証することができなかった。文書管理のずさんさは重大な問題だ。政府は「適正な処理」と胸を張っていた。だが、適正かどうかを検証できない中、そう繰り返してきた姿勢は厳しく問われるべきである。■■算定や文書管理がずさんだったということで済む問題ではない。安倍首相の昭恵夫人が建設予定だった小学校の名誉校長を務めていたことなど、夫人と学園とのつながりが官僚の忖度(そんたく)を引き起こし、売買交渉に影響したのではないのか。国会は、来週から始まる衆参の予算委員会で、解明に当たらなければならない。そのためには、昭恵夫人や国会で適正処理と強調していた当時の財務省理財局長で現国税庁長官の佐川宣寿氏らの国会招致は不可欠だ。

    トップへ戻る