社説・論説

  • 【北海道新聞】

    北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。前週に続く暴挙である。核・ミサイル開発の断念を求める国際社会の声を無視し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長はいつまで挑発を続けるのだろうか。これまでミサイルは朝方に発射することが多かったが、今回は夕刻に踏み切った。いつでも発射できることを誇示する狙いがあるのかもしれない。トランプ米政権は北朝鮮への軍事的圧力を強める一方で、金正恩体制の転換を求めず、条件が整えば米朝対話に乗り出す考えを示している。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権も北朝鮮との対話路線を掲げている。仮に北朝鮮が対話の再開を見据え、交渉を有利に運ぶために瀬踏みしているとしたら大間違いだ。国連安全保障理事会はこの問題で緊急会合を開催する。北朝鮮への制裁を徹底するなど、関係国は厳しい姿勢で臨む必要がある。発射に「成功」したのは新型の中距離弾道ミサイルだ。金氏は実戦配備を承認し、量産化を指示したという。北朝鮮のミサイル開発は一段と加速しており、脅威は増していると言えよう。だが北朝鮮がいくら挑発を続けても、対話への道が開かれることはないと認識すべきである。逆に米国を含む関係国は反発を強め、対話のテーブルは遠のくことになる。北朝鮮も、自国の崩壊につながるような軍事衝突は望んではいまい。核・ミサイル開発にしがみつくのは現体制維持のためで、核開発を放棄した後、政権崩壊したリビアを教訓にしているとされる。先週、北朝鮮のミサイル発射を受けて、国連安保理は北朝鮮を強く非難する報道声明を発表した。中国、ロシアを含む15の全理事国が賛同した。しかし、その後の緊急会合では追加制裁を求める日米と、慎重姿勢の中ロの溝が埋まらず、制裁強化策は打ち出せなかった。それどころか、ロシアが北朝鮮との間で貨客船「万景峰(マンギョンボン)」による定期航路を開設し、足並みの乱れを見せている。北朝鮮を一致して非難しても、中ロが制裁策を徹底せず、抜け穴をつくっていては意味がない。今後、北朝鮮の経済全体に影響を及ぼす、石油の禁輸などの追加制裁も検討されることになろう。とはいえ、圧力だけで北朝鮮が核・ミサイル開発をやめないことはこれまでの経緯からも明らかだ。制裁を徹底しながら、対話に取り込む努力が求められる。

    トップへ戻る

  • 【河北新報】

    生徒は、教諭の体罰におびえていたという。心に負った傷はどれほど深かったか。信じ難い事実に言葉を失う。文部科学省がきのう、仙台市の奥山恵美子市長、大越裕光教育長を呼んで指導した。青葉区で先月下旬、いじめを訴えて自殺した中学2年男子(13)がその前日、男性教諭から頭を拳でたたかれる体罰を受けていた。1月には、別の女性教諭からも口を粘着テープでふさがれるという信じ難い行為をされていた。校長は、これらの重大な事実を自殺から20日間以上たって別の生徒の保護者からの通報で知ったという。決定的な失態と言わざるを得ない。体罰は学校教育法で禁じられている児童、生徒への暴力である。体罰といじめが同じ生徒の身に降りかかり、死に追いやられた可能性がある。逆に、今回のことで、学校運営の陰に折り重なっている深刻な悪弊が見えてきた。体罰を行った2人の教諭は男子生徒の自殺についての個別の聞き取り調査の際、校長に報告していなかった。男性教諭は頭をたたいた行為について「管理職に報告するほどのことではないと判断した」と釈明しているという。しかし、翌日の自殺との関連に思い至らなかったとは考えられない。包み隠さず事実を話すべきだった。保身を指摘されても仕方あるまい。同市教委は、2教諭の怠慢を厳しく指弾している。ただ一連の対応で、学校が校内を掌握する統治機能は十分なのか甚だ疑問だ。コントロールが効いていない中でのアンケート調査や聞き取りでは意味がないのではないか。見過ごせないのは、別の保護者の関係者が「(男性教師が)男子生徒の頭を日常的にたたいていたと聞いた」と証言し、市教委もきのう「他の生徒に体罰をしていた」と市議会に報告したことだ。体罰の常習化などはもってのほかだが、ある程度の力の行使を容認するような雰囲気が校内に浸透していなかっただろうか。身体的な痛みや恐怖で生徒を抑えつける体罰は何の役にも立たないことは、現場の教師が一番よく知っているはずだ。いじめとともに徹底的な検証が不可欠だ。体罰禁止などの指導徹底を求める文科省の通知では「体罰は、力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為の連鎖を生む恐れがある」と指摘している。男子生徒の自殺も、教諭らの体罰が、それを日ごろ見聞きしていた生徒のいじめを誘発し、逃げ場のない所まで生徒を追い詰めたのではないか。その最後の引き金が体罰だったとしたら救われない。保護者や市民の学校現場への不信感はピークに達している。市教委、学校は早急に第三者による調査委員会を立ち上げ、自殺の原因究明と、体質改善に歩みだすべきだ。

    トップへ戻る

  • 【東奥日報】

    東京一極集中是正に関する政府の有識者会議は、東京23区で大学の定員増を認めないとする中間報告をまとめた。政府は6月に示す経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させ、来年の通常国会への関連法案提出も検討する。地方から大都市に移るタイミングは人生で二つある。一つは高校を卒業して進学や就職をする時、もう一つは大学を出て就職する時だ。地方に若者の希望する仕事が乏しいことなどが、都会に出る大きな要因とされる。少子化によって現在約120万人の18歳人口は今後、全国で急速に減っていく。その状況で東京の学生数に上限を設けたとしても、地方の若者の減少が止められないのは明らかである。一極集中の是正をうたうのであれば、地方での雇用創出とセットになった実効性のある施策が不可欠だろう。有識者会議は今後、詳細や導入時期を検討し、12月に最終報告をまとめる予定だ。地方創生を掲げる政府は、東京五輪を開く2020年には東京圏への転入者を抑え、反対に転出者を増やして「転入超過」を解消するとしている。これを実現する目玉策として東京23区からの本社機能移転を促す税制優遇などを導入した。だが、この2年間で移った企業はあまりなく、東京圏に本社を移す企業の数の方が大幅に上回った。16年の転入超過は11万7868人に上る。政府は目標を達成するため施策の上乗せを迫られている。目標達成には地方に雇用をさらに移すことが肝要だ。まず国が政府関係機関の移転を率先して進めるのは言うまでもない。京都に移る文化庁に加えて、目に見える成果をさらに積み上げるべきだ。地方にある中核企業を伸ばすことも重要だ。経営者と学生との交流やインターンシップの機会を増やし、認知度を高めて優秀な人材を確保できるようにする。地方大学の個性的な取り組みを後押しする施策も強化すべきである。若者が地方を選び、そこに住み続けられるための施策の総動員が待たれている。東京の大学側には、地方に積極的に出ることも求めたい。大学のサテライトキャンパスを置くなど、東京と地方との学生の交流を活発化させてほしい。都会の学生が地方での生活を経験することで、地方移住の一つのきっかけにもなるだろう。

    トップへ戻る

  • 【デーリー東北】

    イラン大統領選周辺国との対立解消を(5月23日)中東の大国、イランの大統領選は穏健派のロウハニ師が再選された。保守強硬派候補との一騎打ちを制しての勝利だが、その前途は多難だ。対外的には反イランのトランプ米政権が立ちはだかり、国内的には保守派からの強い圧力にさらされているからだ。そのかじ取りは1期目以上に難しいものになるだろう。今回の選挙の評価はロウハニ政権の国際協調路線が国民の信任を受けたということに尽きる。政権は一昨年、保守派の反対を押し切り、核開発の抑制と引き換えに経済制裁を解除する核合意を欧米などと結んだ。昨年初めに制裁が解除され、落ち込んでいた原油の輸出は倍増、経済成長率も急上昇した。欧米の企業との商契約が増え、外国製品も市場に出回るようになった。何よりもイラン国内の空気が明るくなった。国民はロウハニ師のこうした国際協調、開放路線に信任を与え、保守強硬派の強権政治に逆戻りすることを拒否した。しかし一方で、制裁解除の恩恵は庶民にはほとんど行き渡っていないのが現実だ。貧困層の生活は改善せず、若者の失業率は30%にも及ぶ。今回、保守強硬派の候補が善戦したのはこうした人たちが支持したためだ。制裁解除の効果が上がらない大きな要因は米国独自の制裁が依然、国際的に効力を発揮しているからだ。とりわけ「中東混迷の源はイラン」(米当局者)とするトランプ政権はイランの弾道ミサイル実験に追加制裁を科すなど対決姿勢をあらわにし、イラン包囲網を構築しようとしている。米国はイランが内戦の続くシリアのアサド政権やイエメンでクーデターを起こした一派を支援し、中東でシーア派革命輸出を図っているとの懸念を強めている。トランプ政権の姿勢を見る限り、イランと米国の関係改善は不可能に近い。だが、イランが国際社会に完全に復帰するには、平和と融和を希求する言動を示し続けることが不可欠だ。そのためにはまず、周辺諸国との対立を解消する努力が必要だ。特にペルシャ湾を挟んだ石油大国、サウジアラビアとの国交回復をまず目指さなければなるまい。両国は昨年1月に断交し、関係は悪化し続けている。そこでこの関係改善に日本が橋渡しの役割を担うよう求めたい。日本はイラン、サウジ双方に独自のパイプを持つ。安倍晋三首相はロウハニ師に再選の祝辞を贈ったが、エネルギー資源の安定確保のためにも一肌脱ぐ価値は十分ある。

    トップへ戻る

  • 【秋田魁新報】

    能代市の県立大木材高度加工研究所(木高研)が、強度に優れた木質建材として注目される「クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT)」の生産拡大と普及を目指して技術開発に力を入れている。国産材活用や林業活性化に向けて国がCLT生産を後押しする中、本県も市場ニーズをつかんで秋田杉の需要拡大につなげたい。木材はこれまで主に柱や梁(はり)など「線材」として建築に使われてきた。CLTは1枚に組んだ板を繊維の向きが交差するよう何層にも重ねたパネル部材で、壁などとして面で建物を支える。コンクリート並みの強度を持ちながら重さは約6分の1と軽く、断熱や耐火性も高い。日本CLT協会(東京)によると、CLTは中・高層の建物も木造化することで環境負荷の低減に寄与しようと1990年代に欧州で開発された。集合住宅や商業施設建設などで普及が進んでおり、工期短縮のメリットもあるという。日本国内では、2010年ごろからCLT導入を見据えた取り組みがスタート。CLTの建築基準が制定された昨年は「普及元年」と位置付けられ、20年の東京五輪・パラリンピック関連施設での活用が見込まれている。こうした流れに本県も乗り遅れないようにしたい。ただ、事業化には課題もある。CLTパネルは大型サイズで長さ12メートル、幅3メートル、厚さ30センチ以上になるが、製造には10億円以上の大型プレス機を導入する必要がある。大型パネルを製造できる工場は国内に数カ所しかなく、県内はゼロ。国産材を使った場合の1立方メートル当たりの単価は鉄筋コンクリートの約2倍の15万円で、製造コストの低減も不可欠だ。そうした中で、木高研は大型プレス機に頼らなくて済む独自製法を開発した。長さ2メートル、幅1メートル程度のCLTパネルの両端に凹凸を施し、複数を組み合わせることで強度を保ちながら大型化できるものだ。県内企業でも既存のプレス機で対応可能といい、県の委託事業として能代市の企業が生産体制を整えた。この製法を生かそうと木高研は土木分野に着目。老朽化した橋を架け替える際、コンクリート床をCLTにして軽量化を図れば橋脚の補強が不要となり、総工費が抑えられるという。木高研は今年3月に床をCLTにした橋を仙北市田沢湖の県有林内に国内で初めて設置、耐久性や防水性を検証している。国内に長さ2メートル以上の橋は70万カ所以上あるとされ、県も小型パネルの需要調査を実施するなどして企業を支援する方針だ。国は24年度までにCLTの年間生産量を現在の約10倍となる50万立方メートルとする目標を掲げ、企業に対し設備費の一部を助成している。県内では伐期を迎えた秋田杉の需要開拓が課題となっているだけに、木高研の技術活用を軸にCLTの事業化を官民共同で検討したい。

    トップへ戻る

  • 【岩手日報】

    相模原市の障害者施設殺傷事件を受けた精神保健福祉法の改正案が先週、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決した。与党は衆院での議論を経て、今国会での成立を目指している。迷走を重ねた参院での審議は、この国で障害者がどれだけ軽んじられているかを如実に示したと言える。厚生労働省は当初、法改正の趣旨を「二度と同様の事件が発生しないよう法整備する」と説明。だが、精神障害者団体などから「精神科医療を治安維持の道具に使うべきではない」との批判が続出し、再発防止に関する文言を説明文書から削除するという異例の措置を取った。削ったはいいが、今度は何のための改正か分からない。法案の中身は措置入院患者の支援強化だが、実質は「監視」強化ではないか。「精神障害者は危険」との偏見が強まるのではないか。障害者の懸念を置き去りにして、与党は参院を通過させた。精神保健福祉法は、精神障害者の社会復帰促進や国民の精神保健の向上を図ることが目的。今回の法改正が、措置入院を含むあらゆる精神障害者が退院後も孤立せず暮らせる地域づくりに寄与するためならば、話は分かる。だが、そうは見えない。19人殺害の罪などで起訴された被告には措置入院歴があり、退院後に所在不明になり凶行に及んだことから、再発防止策として制度見直し論議が急ピッチで進んだ。法案は行政が医療機関と共に、措置入院患者ごとに「退院後支援計画」を策定することなどを盛り込んでいる。趣旨からその文言が削られたとはいえ、これほど重大な事件を、措置の見直しに矮小(わいしょう)化しようとする意図が透けて見える。なぜ事件は起きたのか。何のための法で、なぜ改正するのか。まずは障害者の声に耳を傾ける必要がある。事件が起きた背景にあるのは、貧しい障害者観だ。被告の「障害者はいなくなってしまえ」「障害者は不幸をつくることしかできない」との発言、さらには、被告の言動を称賛する書き込みがネット上で相次いだことが、どれほど障害者を悲しませたことか。貧しい障害者観の背景には貧しい障害者施策がある。長い隔離収容の歴史は、障害者と社会の間に深い分断を生んでしまった。分断を埋めるためには、障害者との地域共生を地道に進める必要がある。障害がある人とない人との接触が日常的になっていけば、「障害者は不幸をつくることしかできない」発言の虚妄を、実感することができるだろう。与党と厚労省は率先して、障害者の声に耳を傾けたらどうか。(2017.5.23)

    トップへ戻る

  • 【福島民報】

    【中小企業家同友会】組織の力を地域基盤に(5月23日)県内の中小企業経営者が良い経営を目指して集う県中小企業家同友会が会員数を伸ばしている。創立40周年を迎えた昨年度末の3月には念願の2000人を突破した(5月1日現在では1940人)。会員一人一人が「生きた経営の字引」の1ページとなり「人が人を呼んでくる」(事務局)流れをつくっている。会員は情報交換や経営に関する会員同士の切瑳琢磨[せっさたくま]の中から、自社が地域で果たすべき役割に気付き、震災復興でも大きな力になった。同友会をはじめ多くの経済団体の組織力をこれからの県全体の産業、経済の成長や地域基盤の強化につなげたい。同会は昭和52年に会員46人で発足した。全国では20番目、東北では宮城県に続いて2番目だった。初代理事長の丹治一郎氏らが時代を切り開く多くの若い経営者を勧誘してきた。現在は全国で北海道、愛知などに次ぐ7番目の会員数となった。活動の柱の一つが経営計画書づくりだ。会社の理念、目標は何なのか。地域や従業員に対してどのように責任を果たすのか。コンサルタントの助言だけではなかなか形にできないが、仲間や先輩との勉強を重ねることで、従業員の前で堂々と発表できる成熟した内容に到達できるという。1700人に達した会員数は東日本大震災で2年連続減少したがすぐに持ち直し、平成27年には1800人、28年には1900人に届いた。苦しみながら顧客に応援され、社員に支えられた震災経験で、会員の経営者は自社が地域のとりでであり、地域そのものであると自覚した。消防団や祭りなど地域の安全や文化を支える中核も地域に根差した中小企業の従業員なのだ。復興への地道な努力が次の会員増につながった。全国や本県で民営事業所数が減少傾向にある中、県内の商工会議所の中には減少傾向にあった会員数が、補助事業に関する助言などを求めて増加している組織もある。危機に際し、各種経済団体のメリットが見直された面もある。少子高齢化や地方経済の縮小が言われる中、各団体は改めて存在意義を捉え直し、会員企業や県全体の成長に結び付けなければならない。23日は県中小企業家同友会の第41期総会が郡山市で開かれる。藤田光夫理事長は「同友会に入って何のために会社を経営しているのか使命に気付く」「仲間や先輩が自身の成功も失敗も全て教えてくれる」と言う。本県経済の成長に重ねて次の会員2500人という目標に向かってほしい。(佐久間順)

    トップへ戻る

  • 【福島民友新聞】

    魚介類に付いている寄生虫「アニサキス」による食中毒の被害報告が増えている。魚介類を生で食べる場合は十分な注意が必要だ。厚生労働省の調べによれば、2007年の6件から16年は20倍超の124件に増加した。県によると県内はここ数年1〜3件で推移していたが、今年は5月21日現在で3件と、昨年1年間の2件を超えるハイペースとなっている。厚労省は件数の増加について、13年から食中毒の発生統計で「アニサキスによる食中毒」の集計を始めたため実態把握が進んだことを理由に挙げている。一方で、厚労省の統計とは別に、国立感染症研究所は年間約7千件が発生していると推計している。魚介類の流通事情が良くなり、冷凍ではなく生の状態で取引されるケースが増えていることも要因と考えられる。今後、アニサキス症が届け出の必要な食中毒であるという認識が広がれば被害報告数はさらに増えるものとみられる。アニサキスは寄生虫の一種で、幼虫がサバやカツオ、サケ、イカ、サンマなどの内臓に寄生、魚が死ぬと筋肉(身)に移動する。幼虫の長さは2〜3センチで白い糸のように見えるのが特徴だ。寄生した魚を生で食べると、人の胃壁や腸壁をアニサキスが刺すなどしてみぞおちの激しい痛みや腹膜炎症状を引き起こす。吐き気やときに吐血を伴うこともある。専門家によると、放置しても人の体内では数日間で死滅するが、痛みが激しいため、医師の診断を受け、内視鏡で取り除くことが推奨される。内閣府食品安全委員会によれば死亡例は報告されていないが全身性のショックを引き起こすこともある。侮ってはならない。県内では、3月にいわき市で、今月に入ってからは会津若松市と猪苗代町で、各1件ずつ発生している。県は、今月発生した2件がともにスーパーで購入した刺し身が原因だったことから、食品量販店への指導を重点的に行うよう県内の保健所に通知した。厚労省や県によると対策は、魚を十分に加熱するか、マイナス20度以下で24時間以上冷凍することが基本。生で食べる場合は〈1〉新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く〈2〉内臓を生で食べない〈3〉目視でよく確認する—ことが肝心だ。酢で締めたりしょうゆを付けたりしても予防効果はないという。気を付けなければならないのはアニサキスだけではない。気温や湿度が高くなる時期を迎えた。調理前にしっかり手を洗い、調理器具や食器は熱湯や漂白剤で消毒するなど予防策を徹底したい。

    トップへ戻る

  • 【茨城新聞】

    大学で話を聞くと、多くの学生が新聞をあまり読んでいないという。ある有名私立大学の教授は、新聞ばかりでなく、テレビ離れも進んでおり、メールでのやりとりもまれになってきていると指摘する。ネットで好みの情報を得、動画を楽しみ、メールの代わりにLINEやツイッターで情報の交換や拡散、会話的なやりとりをしているのが今どきの学生の一般的な姿である。こうした世界にかなりの時間が費やされ、新聞やテレビなど既存メディアの存在感は薄れる一方だという。ネットは確かに便利で、多様な情報を取得でき、自ら発信することができる。一方で怪しい情報も少なくない。例えば、新聞離れが進む米国では、先の大統領選で偽情報の拡散が大きな問題となった。「ローマ法王がトランプ氏を推薦した」といった偽情報がネットで拡散し、それを信じた有権者が少なくなかったとされる。真偽の分からぬ情報で政治や社会が動くことになりかねない怖さが明らかとなった。ネットは今や若者の社会を席巻している。低年齢化が進み、情報の真偽だけではなく、さまざまな問題が生じている。県教委が昨年12月、県内公立小中高生を対象に行った携帯電話とインターネットの利用調査によると、スマートフォンを中心に高校生の97・6%、中学生の59%、小学5、6年生の34・3%が携帯電話を所有。ゲーム機を含めたネット利用者は高校生95・3%、中学生93・4%、小学5、6年生の87%に上った。平日の利用時間は1日1〜3時間が多く、前回3年前より長時間化傾向にある。休日は平日よりさらに多くの時間を割き、高校生の21・8%、中学生の15%、小学生の8・4%が5時間以上利用と答えている。小学生は動画やゲーム、中学生は動画、音楽、コミュニケーション、高校生はコミュニケーション、情報検索、動画が利用目的の上位を占めた。問題は日常生活への影響である。「勉強をする気になれない」が小中高ともトップを占め、「ネット使用をやめられない」、外出や睡眠時間の減少、疲労感などを挙げる子どもが多かった。ネット依存が強まり、勉強や健康への影響が明らかになってきている。こうして育まれたネットとの関係が大学、社会へとつながっていく。子ども時代に覚えた味はそう簡単には断ち切れまい。スマホ片手にネットの世界で多くの時間を割かれ、新聞やテレビはやはり遠い存在となろう。好みの情報やゲームに埋もれるだけでは、社会性や幅広い物の見方がなかなか身に付かない。将来を担う若者たちが国内外の動静に関心を持たず、正確に理解していないのは国の行方にも影を落とすことになろう。現在、ネットで流されるニュースは、国内では新聞社やテレビ局から提供されているものが多く、裏付け取材を経た情報であり一定の信頼性は保たれている。それ以外にもネットの世界では無数の情報が個人や企業から発信されており、偽情報や犯罪に関わるようなサイトもある。ネットに依存する社会では、その情報を見極める目がますます重要性を増す。利用者の低年齢化はネット教育の低年齢化も必要となる。同時に、国民が物事を判断するための正確で信頼できる情報をいかに提供するか。既存メディアにとっても大きな課題である。

    トップへ戻る

  • 【信濃毎日新聞】

    安倍晋三首相がラジオ番組の収録で、自民党の改憲案を年内にまとめる考えを明らかにした。憲法記念日に合わせ民間の改憲促進会合に自民党総裁として寄せたビデオメッセージを思い出す。内容は、▽東京五輪が開催される2020年の新憲法施行を目指す▽戦争放棄と戦力不保持を定めた9条の規定を残したまま、新たに自衛隊の存在を明記する—が柱だった。今度はラジオを通じて党内に改憲プロセスの加速を促し、国民にもアピールした形である。政治家が国会の外で国政についての考えを述べることは珍しくない。街頭演説で訴えている姿をよく見かける。ただ、首相による一連の発言には首をかしげる。国会が開会中で、しかも改憲項目を絞り込むための衆参の憲法審査会が審議を進めている最中だからだ。そんな中で首相が改憲案取りまとめの時期や20年施行、自衛隊明記を一方的に示すことは、改憲は国会が発議するとの憲法規定に照らしても疑問が残る。憲法記念日のメッセージに民進など野党は反発。先日開いた審査会では野党委員が発言の撤回を求めている。首相は国会では「この場には総理として立っている」との奇妙な理屈で説明を拒み、読売新聞のインタビュー記事を「熟読していただきたい」と述べた。国会軽視と野党が怒るのも無理はない。自民党でいま党憲法改正推進本部の体制見直しが進んでいる。改憲案をまとめる新しい組織を立ち上げる方向だ。党内論議は今後ますます首相主導になりそうだ。首相の復古的な情念を反映した改憲案にならないか、心配だ。ビデオメッセージについて首相は、総裁としての発言であり問題はないとの考えを示している。その言葉には同意できない。首相が改憲を主導する中では審査会の自民党委員の発言が縛られ、議論は硬直化する。首相がこの調子で旗を振り続けると、曲がりなりにも与野党合意の下にスタートした審査会の基盤は崩壊するだろう。行き着く先は、自民、公明、日本維新の会の「改憲勢力」による数の力での発議にならないか。憲法を巡る論議の展開に、国民はこれまで以上に注意深い目を注がなければならない。(5月23日)

    トップへ戻る

  • 【新潟日報】

    続く「北」の挑発日韓関係の修復が急務だ北朝鮮がまたも弾道ミサイルを発射した。前回の発射から1週間、今年に入って8回目となる。国際社会は平和的解決を模索している。それをあざ笑うかのような度重なる挑発である。北朝鮮の脅威にきちんと対処し、圧力を強化して対話につなげるためにも、日韓の関係修復を急がなくてはならない。北朝鮮の中央通信は発射について、新型の中距離弾道ミサイル「北極星2」の実戦配備に向けた「最終発射実験」を行い、「成功した」と報じた。「北極星2」は、液体燃料より事前準備時間が短い固体燃料エンジンを使った、新たな系列のミサイルだ。事前探知や迎撃が難しく、射程は日本全土を収める2千キロ以上とされる。一方で1週間前に発射されたのは、液体燃料の新開発のエンジンを使っているとみられ、飛行距離は4千キロを超え米国のグアムを射程に収める可能性がある。2発のミサイルは発射場所が異なり、時間も前回は朝、今回は夕方と異なっている。北朝鮮軍は部隊間で開発を競わせ、多種多様なミサイルをさまざまな状況から発射し安定度を上げようとしているとみられる。今回のミサイルが実戦配備されれば、日本全土が射程に収まり、安全保障上の重大な脅威となる。挑発に乗ることなく、北朝鮮が核やミサイル開発を続けることは北朝鮮の安全保障や繁栄にはつながらないということを、国際社会が結束して働きかけ、圧力を強める必要がある。北朝鮮は、攻撃能力を誇示し、発足したばかりの文在寅(ムンジェイン)政権を揺さぶり、南北関係の主導権を握ろうとしているとの見方がある。日韓が対立すれば対北朝鮮包囲網に穴があき、北朝鮮を利することにつながりかねない。日韓が緊密に連携していくためには、早期に日韓首脳会談を開催することが求められる。日本政府は、安倍晋三首相と文大統領との会談を遅くとも7月中に開催する方針を固めた。それ以前の文氏来日を模索する動きもあるが、慰安婦問題が横たわり困難が予想される。文氏は大統領選の期間中、慰安婦問題の最終解決を確認した日韓合意の無効化と再交渉を訴えていたからだ。文氏の背後には韓国世論が控える。日本側はその点も考慮し、北の脅威に対抗するため早期の首脳会談を実現してもらいたい。慰安婦問題については切り分け、別に丁寧な交渉を行う判断もあろう。文大統領の特使として日本を訪れた韓国の国会議員は、両首脳が頻繁に往来する「シャトル外交」の復活を提案した。シャトル外交は2004年に開始することで合意したが、6年前に当時の李明博(イミョンバク)大統領が訪日したのを最後に途絶えている。未来志向の日韓関係を築くためにも、復活するべきだろう。北朝鮮が挑発を繰り返す現実を見据え、情報共有や戦略構築に向けあらゆるレベルで外交関係を密にしていく努力を重ねてほしい。

    トップへ戻る

  • 【中日新聞】

    育てられない子を匿名で預かる民間の慈恵病院(熊本市)の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が始まって十年。望まない妊娠などで追い詰められた女性と子どもの命を救う場をどう増やすか。「こうのとりのゆりかご」はドイツの病院で行われている事業にならい、育てられない赤ちゃんを匿名で預かる国内唯一の施設として二〇〇七年五月に開設された。市の発表によると、この十年間で百三十人が預けられ、大半は生後一カ月未満の新生児だ。預ける理由で多いのは、貧困や未婚、世間体の問題など。妊娠を知った後に父親である男性と連絡が取れなくなったなど、パートナーに問題がある場合も少なくない。母親の年齢は二十代が35%と最も多く、三十代が23%、十代も約12%と少なくない。苦境に立たされて妊婦検診も受けず、病院に行けないまま自宅出産したケースも多い。暴力が絡んだ妊娠もある。浮かんでくるのはだれにも助けを求められず孤立した姿である。一方で、命を守られずに亡くなっていく子どもがいる。厚生労働省がまとめている調査によると、生後二十四時間以内に虐待でなくなった乳児は二〇一四年度までの十二年間で計百十三人に上る。匿名で預かる事業には「安易な子育て放棄を助長する」などの批判もあるが、追い詰められた母親にとって、ゆりかごが、子どもの命を守るための緊急避難先になってきたのは動かせない事実だ。ゆりかごには、熊本だけでなく、九州各地や北海道や関東、関西からも新幹線などに乗って預けに来る人がいた。だが、生後まもない子どもを連れて長距離を移動するのは母子ともに危険が伴う。慈恵病院には年間六千五百件以上妊娠に関する電話相談が寄せられる。関西地区からの相談も多く、熊本の病院だけに任せきりにしていてはいけないと、神戸市内の助産院では妊娠出産で悩む人からの相談を二十四時間受け付ける窓口設置が進められている。国もようやく産科のある病院や、貧困やドメスティックバイオレンス(DV)被害者を支える団体などに専門家を置いて女性たちの支援を始めた。慈恵病院では児童相談所と協力して実親を調査したり、特別養子縁組制度につないだりもしている。子どもにとって最善の利益は何か。困難にある女性たちが将来を見通せるようになるために、支援はどうあるべきなのか、知恵を絞っていきたい。

    トップへ戻る

  • 【北國新聞】

    ミサイル防衛次期中期防の前倒し検討を北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が日に日に増大している。金正恩朝鮮労働党委員長は、最終発射実験に成功したとされる新型中距離弾道ミサイル「北極星2」の実戦配備を承認し、量産化を指示したという。日本政府は、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃する新たな防衛システムの導入を検討しているが、具体的協議を急ぐ必要性がさらに高まっている。現在の防衛装備品調達は、2014〜18年度の中期防衛力整備計画(中期防)に基づいて行われている。新システムの配備を急ぐとなれば、次期中期防(5年間)の策定、実施を前倒しすることも検討せざるを得ない。防衛省の現在の弾道ミサイル迎撃システムは、ミサイルをレーダーで探知し、海上自衛隊イージス艦の迎撃ミサイル(SM3)と、地上配備の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の二段構えで対応することになっている。が、北朝鮮は複数のミサイルの同時発射や、「ロフテッド」といわれる高高度の軌道に発射できる能力などを獲得したとみられ、自衛隊の今のシステムでは迎撃が困難な状況になりつつある。こうした事態に対応する新たな防衛システムとして、政府は1基約1250億円の高高度防衛ミサイル(THAAD)よりも、既にイージス艦に配備されている迎撃システムを地上に配備する「イージス・アショア」(1基約800億円)の導入を優先的に検討する方針といわれる。これら現行の中期防に盛り込まれていない迎撃システムの早期導入には、次期中期防の策定を早めることは無論、防衛予算増額に対する国民の理解促進が不可欠であり、高度な政治判断を要する。防衛省は一方で、06年度から海上配備型迎撃ミサイルの開発を米国と共同で進めている。イージス艦に搭載されているSM3の改良型で、最大射高は現在の約2倍の1千キロを超え、ロフテッド軌道のミサイル迎撃も可能という。防衛省は17年度に開発を終え、21年度ごろの配備をめざしている。新たな防衛システム導入の判断を的確に行うには、北朝鮮の核・ミサイル開発の実態、能力をより正確に分析する必要もある。

    トップへ戻る

  • 【福井新聞】

    【論説】コミュニティーサイトをきっかけに犯罪に巻き込まれた18歳未満の子どもが昨年、最多となる1736人に上った。統計を取り始めた2008年に比べ倍以上の増加だ。スマートフォン(スマホ)の普及が背景にあるが、子どもを守るため、警察庁やサイト運営業者などの官民連携に加え、家庭での一層の取り組みを求めたい。警察庁のまとめによると、サイトにアクセスした端末はスマホが86・9%を占めた。被害者の大半が女性で、罪種としては、淫行など青少年保護育成条例違反が最多で、児童ポルノ、児童買春など。加害者に会った理由では、援助交際などの金品目的、性的関係目的、交遊目的を挙げた。被害者が多かったサイトは、ツイッターやLINEといった複数交流系で、面識のない者同士がつながるチャット系は減った。03年の規制法施行以降、出会い系サイトによる被害は減少している。悪質サイトへの接続を制限するフィルタリングについては「利用なし」が9割近くあり、これでは“野放し”状態だ。保護者には子どもが利用できる範囲をフィルタリングで設定するよう努めてもらいたい。学校でのインターネット利用法の学習に関しては、被害者の半数が「覚えていない」としている。教育現場でも啓発に努めているだろうが、やはり、子どもたちの記憶に残る啓発活動が必要だ。警察庁は、サイト業者などに18歳未満が大人と交流できないよう規制する「ゾーニング」の導入を求めている。また、年度内にも事業者などでつくる協議会を設けるとしている。事業者側も真摯(しんし)に向き合い、対策を取ってほしい。内閣府が実施した16年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」の概要によると、スマホを持つ割合は、小学生で27%、中学生で51%。高校生は94%とほとんどの生徒が所有している。スマホ、パソコンなどを含めたインターネットの平均利用時間は、小学生93分、中学生138分、高校生207分と、これも年齢が上がるにつれ増えている。高校生の20%が「5時間以上」と回答。これでは自ら犯罪に巻き込まれるようなものだ。利用に関して「ルールを決めている」という保護者が80%なのに対して、子どもの方は65%とギャップがある。高校生にいたっては保護者70%に対して子どもが51%とその差は大きい。スマホやパソコンは、今やなくてはならないツールだが、犯罪被害のほか依存症やいじめといった問題の温床にもなっている。家庭でいま一度、話し合う機会を持ってほしい。

    トップへ戻る

  • 【京都新聞】

    イラン大統領選で、穏健派の現職ロウハニ大統領が、反米を掲げる保守強硬派のライシ前検事総長との事実上の一騎打ちを制して、再選された。核開発の制限を受け入れ、欧米との協調を重視する路線が承認された格好だ。ロウハニ師は再選後、「イラン国民は世界と関わり合う道を選んだ」と宣言した。中東の大国であるイランの対外政策は世界の安全保障にも影響する。国際社会の一員としての歩みを続けてほしい。イランは2002年に核兵器開発疑惑が表面化して、国際的に孤立。世界有数の産油国にもかかわらず制裁措置で輸出できず、経済的苦境に陥った。13年の大統領選で強硬路線との決別を訴えて当選したロウハニ師は、対話を重視して、15年7月に欧米など6カ国との核合意を実現した。その後、制裁解除による原油輸出の急拡大などで国内総生産(GDP)成長率は11・6%に拡大。外国企業の進出が可能になり、物価高騰も沈静化するなど経済は順調に回復した。制裁下で孤立した時代の苦しい生活や強権政治の復活を懸念する国民の意思が投票に反映されたと言えよう。ただ、当初はロウハニ師の圧勝が予想されたが、保守強硬派は候補を一本化して猛追、得票が4割弱に達したことは無視できない。背景には各国で起きている共通の問題、格差の拡大がある。ロウハニ政権は公共事業を大幅に抑制したこともあり、若年失業率は29・2%と逆に上昇した。経済回復の恩恵は富裕層にとどまって、地方や低所得層に行き渡っていないとの不満が渦巻く。さらに、イラン敵視を公言するトランプ米大統領に対する反感も根強い。ロウハニ師の2期目の政権運営は厳しさを増す。トランプ氏は、核合意を「最悪の取引」と非難して見直しを示唆し、今年1月のイランの中距離弾道ミサイル発射実験を理由に単独制裁で圧力を強めている。イスラム教シーア派が国教のイランはシリアのアサド政権の後ろ盾となり、スンニ派のサウジアラビアなどと敵対関係にある。トランプ氏は初の外遊でサウジやイスラエルを訪問してイランをけん制するが、露骨な敵視政策は中東を不安定化させかねない。イランを再び国際社会から孤立させてはなるまい。日本は制裁解除後、投資協定に署名するなど友好関係を拡大させている。イランと米国、周辺国との関係改善にも協力したい。

    トップへ戻る

  • 【神戸新聞】

    米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加の11カ国による閣僚会合が終わった。米トランプ政権は自国優先を掲げ、TPPから離脱した。日本は残った国だけでの発効を目指したが、閣僚声明を採択したものの、判断時期を11月とするにとどまった。ベトナムやマレーシアなどは慎重姿勢に転じている。自国の市場を開放したのに、米国離脱でメリットが薄れたとみているのだろう。米国抜きで発効を急ぐ日本や豪州などとの温度差の解消は、容易ではない。懸念されるのは、世界で保護主義の主張が強まる中、TPPを巡る混迷がアジアの連携に影を落とすことだ。そうした事態を避けるため、日本は仲介役を果たさねばならない。トランプ政権は、2国間協定を通商戦略の要に据える。国力を背景に、有利な内容を引き出そうという狙いだ。アジアで地域連携の機運がそがれれば、各国に対して個別に協議を持ちかけるだろう。閣僚会合と並行して開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合では、閣僚声明の採択が見送られた。反保護主義の内容に米国が強く反発したという。各国の結束を示すべきではなかったか。日中韓や豪州、インド、東南アジア諸国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合も閉幕した。実現すれば、人口で世界の約半分、GDPで約3割をカバーする規模の大きさだが、各国の主張の隔たりは大きく、実現への道のりはまだ見通せない。アジアの成長を確かなものにするために、各国は連携を強化し、粘り強く交渉を続ける必要がある。一方で自由貿易協定は、国民生活に大きな影響を及ぼす。米国もいったん合意したTPPの内容は多岐にわたるが、政府の説明は十分とはいえない。米国の離脱を受け、合意内容を見直すべきだと主張する参加国もある。日本がさらに譲歩を迫られる可能性も否めない。TPP発効ありきの前のめりの姿勢は禁物だ。政府は、国民生活に与えるプラスとマイナスを冷静に見極めて、今後の交渉に臨まなければならない。

    トップへ戻る

  • 【奈良新聞】

    任期満了に伴う奈良市長選の告示(7月2日)まで1カ月半。今のところ3選を目指す現職の仲川元庸氏と、前生駒市長で弁護士の山下真氏の2人がともに無所属での出馬を表明。自民党や共産党も候補者の擁立を目指しており、どういう構図になるのか、いまだ混とんとしている。水面下の動きが活発だが、もっと目にみえる市民本位の選挙になるよう期待したい。先に出馬の意向を明らかにした山下氏は生駒市長時代の実績をアピール。仲川市政に対しては一定の評価をする一方、「市民が必要とするサービス充実にスピード感がない」と指摘した。一方、仲川氏はこれまでの2期8年で、財政再建などで「大なたを振るった」と実績を強調し、課題の新斎苑(火葬場)整備の完成を見届けるのが責任とした。いわゆる事情通の間で事前にささやかれていた「仲川・山下対決」が現実のものとなったわけだが、ともにボランティア選挙を掲げ、「市民党」を旗印にしており、保守層からは「どう違うのか」との戸惑いとともに「このままでは投票先がない」との不満もあるという。一般市民からみて不可解なのが、国政第1党の自民党だ。民進党県連代表の馬淵澄夫衆院議員が、自民が候補を擁立した場合、「仲川、山下両氏の間で1本化しなければ」と仲川氏出馬会見前の記者懇談会で話したくらい、保守層をつかむ候補者があれば、今回の選挙は自民にとって絶好のチャンスといっていいにもかかわらず、いまだに候補を擁立できていない。県連執行部の指導力不足、とりざたされている党内の内部闘争が原因ではないのか。このままでは党利優先、市民不在との批判も当たっている。自民と「友党関係」にある公明は、市長選で自民が新人を擁立した場合、「自民一本化」「人物本位」を条件に推薦するが、いずれか欠けても自主投票にする方針。自民の本気度をためしているといってもいいだろう。自民にとって不戦敗は許されない。市長選に立候補予定者説明会には、仲川氏、山下氏の陣営のほかに、候補者擁立を模索している自民党と、共産党を含む革新系市民団体、無所属新人の擁立を検討しているという市民有志の計5陣営が出席した。有権者の選択肢が増えるという民主主義の観点からは、5陣営程度の出馬はあっていいのではないか。市民にとって意義のある選挙戦となってほしい。

    トップへ戻る

  • 【紀伊民報】

    18日は博物学者、南方熊楠(1867〜1941)の誕生日。生誕150年とあって、記念行事が各地で催される。田辺市だけでも7月に短歌や俳句の大会、8月に変形菌の国際大会、10月には150周年記念式典がある。これを機に訪れてほしい場所はたくさんある。田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館や白浜町臨海の南方熊楠記念館(本館)と先日完成した新館。本紙に連載中の「ゆかりの地を訪ねて」で紹介するポイントもお薦めだ。田辺市稲成町の高山寺住職で南方熊楠顕彰館の館長でもある曽我部大剛さん(58)は「熊楠の研究分野は多岐にわたるが、そのすべてに共通点がある。異質なものが混ざり合う境界。そこで活性化する何かに、彼はわくわく感を持ち続けた」と解説する。実際、熊楠の研究領域は博物学や民俗学、植物学、生態学など広範囲におよび、それぞれに多くの論文を残した。粘菌類では世界でも有数の研究者である。熊楠の知的探究は、少年期の膨大な読書と筆写から始まった。江戸時代の百科事典「和漢三才図会」を友人宅で暗記。家に戻って、その記憶をたどりながら筆写したという逸話は有名だ。ここから学びたいのは「読むこと」「書くこと」への姿勢である。読んでおしまいではなく、ノートに要点を書き込み、記憶を記録にとどめ、それをさらなる好奇心、探究心に広げた。いまはインターネットで欲しい情報が簡単に手に入る。一方で読書離れが進み、文章を書く機会も減っている。それが考える力や表現力を劣化させているのではないか。子どもたちに、もっと読み書きの時間を与えたい。二つ目は、自然保護の視点である。熊楠は政府が進めた神社合祀(ごうし)に反対し、多くの貴重な森を伐採の危機から救った。それらがいま、地域の宝となった。2004年、世界遺産に登録された「野中の一方杉」で有名な田辺市中辺路町の継桜王子跡。1935年に国の天然記念物に指定され、2015年9月に国立公園となった田辺湾の神島。熊楠が先頭に立って守った13カ所は、同じ年に「南方曼陀羅(まんだら)の風景地」として、国の名勝に指定された。熊楠は1916年、「田辺繁栄の道筋」を示す、こんな文章を牟婁新報に寄稿している。「風景ばかりは田辺が第一。田辺人は風景を利用して土地の繁栄を工夫するがよい。交通が便利になってみよ、必ず風景と空気が第一等の金儲けの種になる」。今、熊楠が守った地に海外からも多くの客が訪れ、地域経済を支えている。彼の先見性とそれがもたらした恩恵は計り知れない。そしてもう一つ。異質なものに対する姿勢を学びたい。万物が複雑に絡み合って成立する「南方マンダラ」は、すべての事象はつながっていると語り掛ける。異質な考えを排除する風潮が強い現代こそ必要な視点であろう。(N)

    トップへ戻る

  • 【山陽新聞】

    親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れる国内唯一の施設「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を熊本市の慈恵病院が開設して今月で10年を迎えた。きのう公表された2016年度分を含め、10年間で預けられた子どもは計130人だった。自宅などで出産し、赤ちゃんを遺棄する悲惨な事例が後を絶たない中、同病院が07年5月に開設した。建物の外側から扉を開け、中の保育器に赤ちゃんを預けるとブザーが鳴り、職員が駆け付けて保護する仕組みである。10年間の状況を分析すると、預けた理由の最多は「生活困窮」、次いで「未婚」「世間体」など。父母らの居住地は31人が不明だが、判明分では北海道や関東など全国各地に及んでいる。中国地方8人、四国地方1人だった。130人のうち8割は生後1カ月未満の新生児で多くが医療機関以外で生まれたとみられる。ゆりかごが命を守る「最後の砦(とりで)」の役割を果たしてきたことは否定できまい。開設当初から「養育放棄を助長する」との批判があったが、実際には預け入れは減少傾向で、16年度は過去最少の5人だった。同病院が24時間体制で事前の相談に力を入れた成果とみられる。16年度は過去最多の6565件の相談を受けた。10年間の相談で、294件の特別養子縁組につながったという。予期せぬ妊娠をした時、自分で育てる環境が整わなければ特別養子縁組という方法がある。実親とは法的関係がなくなり、養父母が戸籍上も実子として育てる制度である。事前相談でこうした選択肢があると知れば、追いつめられる妊婦は減るかもしれない。ゆりかごの開設を機に、国は匿名でも相談を受けるように全国の自治体に通知し、岡山県の「おかやま妊娠・出産サポートセンター」など相談窓口も増えている。必要な人に情報が届くよう、さらに啓発していく必要がある。13年度までにゆりかごに預けられた101人の調査によると29人は特別養子縁組で新たな家庭に引き取られ、30人は乳児院などの施設で育てられていた。匿名で預けた場合、母親の秘密は守られるが、特別養子縁組などの手続きに入るのに時間がかかることも指摘されている。子どもの立場からは出自を知る権利が奪われるという問題もある。海外の事例も参考にしたい。ドイツでは00年にキリスト教団体が匿名で受け入れるゆりかごを設置したが、出自を知る権利を保障するため、14年には「内密出産制度」が導入された。相談機関だけに実名を明かし、医療機関では匿名で出産できる。16歳になった子どもは母親の名前を知ることができるという。どんな制度があれば赤ちゃんの命を守り、健やかに育てる環境をつくれるのか。一民間病院の取り組みで済ませる課題ではあるまい。社会全体で議論を進めていくべきだ。

    トップへ戻る

  • 【中国新聞】

    地方自治法70年分権論議の情熱失うな2017/5/23住民の直接請求権や首長公選制などを定めた地方自治法が施行70年を迎えた。国全体が戦争にひた走った反省に立ち、中央の権力からの地方の自立を目的とした。1947年5月3日に同時施行された憲法とともに戦後日本を形づくったといえる。その地方自治と民主主義が「今日、大変厳しい状況になっている」と訴えるのは、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事である。米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設を巡り、県民は選挙などで「ノー」を突き付けているのに、国が先月、埋め立て作業を始めたことに憤りを示した。沖縄だけの問題ではない。国が地方の頭を押さえ付けるのは自治法の精神に反している。地方が黙認すれば分権改革の歩みを無駄にしかねないからだ。国と地方の関係は99年の法改正でようやく「上下・主従」から「対等・協力」となった。日々の生活では意識しにくいが、自治体が国と同じテーブルで政策論争できる裏付けである。しかし現実はそうなっていない。国がまず姿勢を改めるべきだ。最近、分権を改憲項目にしようとの動きが出てきた。先週の衆院憲法審査会は「国と地方のあり方」がテーマとなった。自民党と日本維新の会が改正の必要性を説いたのは憲法92条である。自治体運営などについて「地方自治の本旨に基づいて法律で定める」としており、両党は自治体が行う「団体自治」と、暮らしに身近な「住民自治」の明文化を求めた。わざわざ改憲せずとも政府や省庁の心構え一つで対応できよう。まずは現憲法下で、地方自治の本旨を体現するのが先だ。今回の憲法審では与党の公明党が慎重な姿勢を示したのに対し、民進党は改憲の必要性に言及した。「地方分権の精神を明示化するため、憲法の加筆修正を視野に入れるべきだ」との訴えだが、民進党は憲法に一体どんなスタンスなのか分かりにくい。改正に反対の共産、社民党などとの「野党共闘」も、これではおぼつかないだろう。姿勢が問われるのは地方の側も同じだ。かつては「闘う知事会」と呼ばれる改革派知事らが分権改革をリードしたが、今はすっかりおとなしくなった。潮目は東日本大震災とされる。復興で大量の「ヒト、モノ、カネ」を投入する国の力を見て、依存体質を強めたのだろうか。道府県と政令指定都市の「二重行政」解消も熱を失い、地方創生にしても補助金をもらうのが目的となっているように映る。地方はもっと独自色を出さねばならない。それには、憲法94条が自治体に認める条例制定権を活用するのが有効だ。イメージしやすいのは広島市が2002年に施行した暴走族追放条例だろう。首長の中でも積極的とされるのが鳥取県の平井伸治知事で、危険ドラッグの成分を特定せず包括規制する全国初めての条例を定めた。ただ憲法94条は「法律の範囲内で」と縛りをかけており、独自の企業税を徴収した神奈川県の試みが頓挫した例もある。これからは逆転の発想が必要だ。国会は、地方を縛る法律ではなく自治の枠組みを広げる法体系を目指すべきだろう。「対等・協力」の国と地方は、じっくり話し合えばいい。政治を動かすためにも、私たちは分権論議の熱を取り戻したい。

    トップへ戻る

  • 【山陰中央新報】

    昨年の米大統領選でトランプ大統領陣営がロシアと共謀して民主党のクリントン候補に損害を与えたのではないか、との疑惑で米司法省は特別検察官を任命して捜査することを決めた。大統領選挙の正当性という米国民主主義の根本に疑問が突きつけられており、展開次第では大統領弾劾に発展する重大事態だ。トランプ大統領はこれ以上の政治混乱を防ぐために、疑惑解明に協力すべきだ。今年1月の就任以来トランプ氏は、民主党、メディア、情報機関を「敵」とする対立型の政権運営を続け、目立った成果を上げていない。政府高官人事も大幅に遅れている。ロシア疑惑の深まりで政権運営がさらに空転し、米国の指導力の一層の低下を招きそうだ。ロシア疑惑は昨年夏、民主党のクリントン氏に不利となるような情報がハッカーに盗まれ公開されたことが発端。調査した米情報機関は今年1月ロシア政府関連組織によるサイバー攻撃との結論を発表、米ロ関係の改善を掲げていたトランプ氏とロシアとの間に何らかの共謀があったのではないか、という疑惑に発展した。トランプ陣営とロシアの共謀の事実は確認されていない。しかし国家安全保障問題担当補佐官を務めたフリン氏が政権発足前に駐米ロシア大使と何度も協議したほか、陣営の関係者がロシア側と接触したことが判明している。この疑惑の捜査を進めていたFBIのコミー長官が5月9日、トランプ氏に解任されたが、その直前にトランプ氏から捜査の終結を求められていたと米メディアは伝えている。FBIに対して捜査の中止を求めることは、司法妨害にあたり弾劾に相当すると宣言した民主党議員も現れた。トランプ氏はコミー氏に、自分が捜査対象でないことの確認も求めたという。捜査に圧力をかけたとみるのが妥当だろう。一連の動きは大統領として適切でない。民主党やメディアはトランプ氏の移民排除の政策や記者会見の軽視、一部メディアを「偽報道機関」と呼ぶ手法などは、民主主義原則の軽視であると批判してきたが、ロシア疑惑の深まりでトランプ氏攻撃を先鋭化させている。トランプ氏はロシア外相との会談で、同盟国から入手した機密情報を伝えたという間違いも重なった。世論調査ではトランプ氏の支持率が38%と就任後最低を記録した。与党共和党支持者でトランプ氏を支持しないとの回答も上昇しており、その政治基盤は揺らいでいる。過去の米大統領の弾劾手続きでは、ウォーターゲート事件でニクソン大統領が任期途中で辞任を余儀なくされ、クリントン大統領が不倫疑惑で弾劾訴追されたが、無罪となった。弾劾手続きが始まれば、捜査当局、議会側と大統領側の駆け引きや対立で長期間にわたり米政治は空転し、国の分断も深まる。北朝鮮の核・ミサイル開発問題や中東情勢など米国の指導力が必要な課題は山積している。トランプ氏は中東・欧州歴訪中だが、政権が不安定化したことで各国とも戸惑っているのが現状だろう。特別検察官の冷静な捜査はもちろんだが、大統領が敵対的な態度を改めて、捜査に協力することが不可欠である。

    トップへ戻る

  • 【愛媛新聞】

    本年度から6年間の、国のがん対策の方向性を示す「第3期がん対策推進基本計画」が、来月にもまとまる。今年はがん対策基本法施行から10年の節目。この間、罹患(りかん)の若年化や医療費の高騰、長期化する治療と生活の両立への支援不足など新たな課題も生じた。次の計画では1、2期の計10年の進捗(しんちょく)状況も踏まえ、いまだ達成できていない全体目標「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」に資する取り組みに注力してもらいたい。第3期計画案の対策の3本柱は「予防」「医療の充実」「がんとの共生」。中でも患者の就労支援やゲノム医療の推進、難治・希少がん対策の強化など、患者からの要望も強かった施策が掲げられた意義は大きい。他方、慎重な取り組みを求めたいのは、75歳以上の高齢患者への抗がん剤治療の指針作り。厚生労働省は、抗がん剤の延命効果や副作用などの実態を大規模調査し、投与しない方が延命や生活の質向上につながる場合は中止を提案するなど、適切な治療法の指針を作り、第3期計画にも盛り込むという。調査を通じ、科学的根拠のある判断基準を確立する重要性は論をまたない。しかし一口に75歳以上といっても個人差、体力差は大きい。年齢だけでの線引きは困難で、してはなるまい。加えて、高額な新薬の登場や高齢患者の急増を受け、医療保険財政への圧迫を減らしたい思惑も背景にあることは想像に難くない。医療費の抑制は重要課題ではあるが、「削減ありき」で議論が進むことを危惧する。NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会の松本陽子理事長は「効果や副作用への患者家族の心配は大きく、十分に情報提供した上で、希望する治療を納得して選べることが大事」とする。指針や「費用対効果」を盾に選択肢を狭め、希望が切り捨てられることのないよう、患者に寄り添った配慮を求めたい。今や働くがん患者は約32万5千人。患者の就労支援は第2期計画から盛り込まれ、今春策定の政府の働き方改革実行計画でもうたわれている。にもかかわらず先日、自民党から看過できない発言が飛び出した。「(がん患者は)働かなくていいんだよ」—受動喫煙防止策を議論した党部会で大西英男衆院議員がやじを飛ばしたという。生きる励みのため、治療費や生活のために働きたいがん患者の「就労のみならず尊厳を否定しかねない」(全国がん患者団体連合会の抗議文)、信じ難い発言である。2人に1人が生涯で一度はがんにかかる時代、決して人ごとではない中「共生」の理念さえ理解しない与党議員に、強い憤りを禁じ得ない。こうした無理解、偏見を社会からなくしていくためにがん対策があり、国の計画がある。そのことを改めて肝に銘じ、がんに限らず病を得ても、誰もが支えられ、希望を持って暮らせる社会を一歩ずつ目指したい。

    トップへ戻る

  • 【徳島新聞】

    ごみ排出ゼロ(ゼロ・ウェイスト)を目指す上勝町で、事業所の取り組みを評価する「ゼロ・ウェイスト認証制度」がスタートした。町は2020年までに焼却・埋め立てごみの排出をゼロに近づける活動を続けている。この理念を広く発信し、事業所の実践を後押しする先進的な制度である。県内外に波及することを期待したい。町のごみゼロ政策を推進するNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが制度を考案。使い捨ておしぼりの廃止や輸送に必要な包装・容器を削減するなどした町内の6飲食店を認証した。認証店舗のマップを作り、店舗に取り組み種類別のステッカーを貼って消費者に周知する。ごみ収集車を持たない上勝町は、13品目45種類に及ぶごみ分別で世界から注目されている。住民がごみをステーションに持ち寄り、細かく分別することで資源化を促進している。ただ、その8割が資源化できている一方、リサイクルできないごみも残る。家庭に持ち込まず、発生自体を抑制することが重要であり、徹底を図る必要がある。認証制度が浸透し、無駄をなくす事業所が増えれば環境問題への関心が高い消費者が、認証店舗を選んで利用することになる。ごみ排出削減への好循環も生まれるだろう。人や社会に配慮した消費行動が消費者には大切だ。「エシカル消費」にはリサイクル品の購入といった環境への配慮も含まれる。認証制度をエシカル消費の後押しにつなげたい。

    トップへ戻る

  • 【高知新聞】

    イラン大統領選は、欧米との対立から協調路線への転換を目指してきた穏健派のロウハニ大統領が再選された。欧米に強硬な保守派ライシ師と事実上の一騎打ちとなったが、国民は協調の継続を選んだ。国際的に孤立した時代に逆戻りしたくないという強い意思であろう。イスラム教シーア派の大国であるイランは、サウジアラビアなどスンニ派の中東諸国とも対立している。サウジとは断交状態にある。ロウハニ政権が国民の望む融和の流れを拡大させ、中東の平和にも貢献する国になることを期待したい。最高指導者ハメネイ師も民意を尊重し、政権を後押しすることが求められる。イランは世界有数の産油国ながら2002年に核兵器開発疑惑が表面化し、国際的に経済制裁を受けるなど孤立してきた。国民生活は困窮し、事態の打開を図ったのが13年に大統領に就任したロウハニ師だった。15年に欧米などと核開発を制限することで合意。制裁は解除され、原油の輸出や外国からの開発投資が加速している。再選はロウハニ路線が国民に受け入れられてきたからこそであろう。選挙戦では、国際協調により社会の穏やかな改革を訴えた。だが、政権に課題は多い。核合意や制裁解除後、国内総生産(GDP)は飛躍的に伸びたが、原油などのエネルギー分野以外は低迷したままだ。若年層の失業率は逆に上昇し、30%近くに達する。ライシ師は選挙戦で、国民生活は改善するどころか、格差が拡大していると批判してきた。保守派や低所得者の不満は大きい。政権は重く受け止めるべきだろう。イランは大統領が行政権を持つものの、司法や軍などを含む国政全般の決定権は最高指導者にある。ハメネイ師は核合意を認めたが、本来、保守派であり、欧米との協調には厳しい姿勢を取る。健康不安がささやかれ、後継者はライシ師が有力ともいわれている。それでも今回の民意は重い。米国にイランを敵視するトランプ政権が誕生した中で協調路線を選択したからだ。トランプ大統領はオバマ前政権の核合意を批判し、イランへの圧力を強めている。初の外遊先にもイランと敵対するサウジやイスラエルを選び、サウジとは約12兆円の武器輸出でも合意した。確かにイラン軍は弾道ミサイルの実験を行ったり、シリア内戦でロシアとともにアサド政権を支援したりと火種をつくってきた。このままでは時計の針は逆回転しかねない。米国もイランも民意を踏まえ、冷静に対話する必要がある。経済制裁の解除後、日本もイランでエネルギー開発などの投資拡大を目指しているが、核合意の順守や中東の安定が大前提だ。政府はイランに対し、国際協調への支援と注文を忘れてはならない。

    トップへ戻る

  • 【西日本新聞】

    九州の主要企業の2017年3月期決算が、ほぼ出そろった。金融機関を除いた57社のうち、前期と比較可能な56社の経常損益は、前期を1ポイント上回る67%の38社で増益または黒字転換となった。増益・黒字転換の割合は、2年連続で6割を超えた。昨年秋までの円高基調や原油安が業績を左右し、熊本地震でも多くの企業で損失や特需などの影響が出ているのが今期の特徴だ。一見すると九州経済は改善傾向にあるようだ。だが、経営環境を取り巻く情勢は国内外とも不安定要素も多く、予断を許さない。製造業は17社中12社が増益で、スマートフォンや電気自動車(EV)関連の受注が好調だった平田機工(熊本市)は過去最高益を記録した。非製造業は39社中26社が増益・黒字転換となり、念願の株式上場を果たしたJR九州(福岡市)は増収増益だった。一方、熊本地震で最大約10万戸の供給が止まった西部ガス(同)や、買い控えなどが響いた岩田屋三越(同)は大幅な減益だった。人手不足の悪影響も、企業の業績に出始めている。オーケー食品工業(福岡県朝倉市)は好調な販売とは裏腹に、人件費の上昇などもあって減益となっている。持ち株会社を除く九州の地方銀行18行の17年3月期決算では、16行が純利益で減益となった。9行が過去最高益となった16年3月期から一転、厳しい決算である。16年2月に日銀がマイナス金利政策を導入してから初の通期決算で、貸出金利息の減少や有価証券の運用益減少に苦しむ銀行が相次いだ。厳しい収益環境は続いており、18年3月期の業績も減益を予想する銀行が多い。熊本地震の復興需要はこれから本格化する見通しだが、地域経済に対する浮揚効果はまだはっきりしない。人口減に伴う人手不足の問題や北朝鮮をはじめとする国際情勢の緊迫化など企業経営を巡る不安定要因は少なくない。リスクを回避して収益を維持できるよう各企業はより一層、経営の安定化に努めてもらいたい。=2017/05/23付西日本新聞朝刊=

    トップへ戻る

  • 【宮崎日日新聞】

    ◆一方的な監視社会を許すな◆自民、公明両党が、衆院法務委員会で、野党の反対を押し切って「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の採決を強行、可決させた。今国会での成立を目指し、23日の衆院本会議でも採決を強行し、衆院通過を図る。審議の場は参院に移ることになるが、犯罪の実行後ではなく計画段階で処罰する改正案を巡っては、捜査当局が、動向を監視する対象が飛躍的に広がり、国民の思想、信条の自由が侵されかねないなどの懸念が解消されていない。空洞化する知る権利情報公開制度が形骸化し、防衛、外交などの分野で、国民の知る権利を制限する特定秘密保護法も運用される中、このまま改正がなされれば国家による一方的な監視社会が始まることになる。拙速な成立は許されない。捜査当局による監視のための手段は既に存在し、強化もされている。電話やメールを傍受する権限を捜査当局に与える通信傍受法だ。昨年、改正され、薬物や銃器、集団密航、組織的殺人の4類型だった対象犯罪に組織性が疑われる詐欺や窃盗など9類型が追加された。さらに傍受への通信事業者ら第三者の立ち合いも必要がなくなり、捜査当局にとって格段に使い勝手が良くなっている。一方、国民の知る権利は空洞化しつつある。2014年12月施行の特定秘密保護法によって防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、国の安全保障に関して重要とされた情報は厳重に保全されることになった。秘密指定の期間は原則最大30年で、内閣の承認によりさらなる延長も可能だ。不都合情報は非公開情報公開制度も深刻な問題を抱えている。01年4月、国の機関が保有する行政文書を原則として公開し、請求権を、外国人を含むすべての人に与える「情報公開法」が施行されたが、個人情報や、国の安全、外交上の不利益になる情報などは非公開を認めるという例外規定を悪用するケースが増えているからだ。「森友学園」の疑惑を追及した国会審議では、「のり弁」と称され、内容がほとんど黒塗りにされた文書が注目を浴びた。このような例は枚挙にいとまがない。さらに審議では財務省による交渉や面会記録などの公文書を短期間に廃棄していたことが問題化している。自治体の情報公開も同様だ。自分たちに都合の悪い情報は、国民の知る権利に反しても公開しないという姿勢が明確だ。このような認識を持つ政権や行政が、国民に対する監視を著しく強める権限を持ったらどうなるのか。他の権利も軽んじられることになるのは必至だ。「自分は悪いことはしないから関係ない」という受け止め方は間違っている。国民一人一人がわが身に起こりうる問題であることを認識してほしい。

    トップへ戻る

  • 【佐賀新聞】

    オスプレイ配備計画「不信感」を受け止めよ2017年05月23日05時00分自衛隊が導入する新型輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する計画をめぐり、防衛省の若宮健嗣副大臣が、山口祥義佐賀県知事らと会談した。防衛省は自らの計画を実現させるために「不退転の決意」で進める構えだが、そこに県民と真摯(しんし)に向き合おうとする姿勢はあるだろうか。沖縄で起きた米軍オスプレイの大破事故について、若宮副大臣は搭乗員の練度不足や、風や乱気流に対する対応が十分ではなかった、などを挙げて「機体の安全性に問題はない」と結論づけた。本当だろうか。米軍がオスプレイを導入したのは2000年代の初めからであり、すでに十分な実績がある。だからこそ、自衛隊も機種選定に当たってオスプレイに決めたのではなかったか。今さら飛行日程の組み方が適切ではなく搭乗員の練度が足りなかった、などと説明されても納得しがたい。しかも、あの事故を防衛省は「墜落」ではなく「不時着」なのだと説明したが、機体はばらばらになり、回収された部品は4月末の時点で1万7千個にものぼる。それでもなお、不時着と言い張るのは無理がないか。事故を矮小化し、現実を直視する姿勢に欠けているのではないか。オスプレイの事故率についても、防衛省は10万飛行時間当たり「2・62件」と数字を上げて、海兵隊全体の事故率(2・63件)を下回っていると説明した。これだけ聞かされれば、あたかも安全性が確保されているかのように見えるが、直近の5年間に限れば、その事故率は3・44件に跳ね上がる。14年以降、ペルシャ湾、米ハワイ、カリフォルニアで深刻な事故が相次いでいるからだ。運用を重ねれば下がるはずの事故率がなぜ逆に上昇しているのか。機体の構造そのものに問題はないのか。その答えもないまま、事故率の数字だけ取り繕うようでは困る。これまでに防衛省は地権者向け説明会を県内4カ所で開いたが、いずれも「反対」の声が大半だった。これに対して防衛省側は「不退転の決意で進めている」と述べたが、強い違和感がある。佐賀空港をめぐっては、建設当時から自衛隊による基地化への懸念が強かった。その懸念を払しょくするため、空港を設置する佐賀県と、予定地の地権者である地元漁協が結んだ「公害防止協定」の覚書付属資料に、自衛隊と共用しない考えがはっきりと記されることになった経緯がある。受け入れるかどうかは、あくまでも地元に委ねられているはずだ。「不退転の決意」という言葉には、地元の意思を尊重するという姿勢がみじんも感じられない。同じ国策では、国営諫早湾干拓事業(長崎県)に関する国の対応も不誠実きわまりない。開門調査を命じる確定判決の実行を引き延ばした末、司法に解決を委ねたのかと思えば、一転して「開門しない」という。そこに漁業者に寄り添おうという姿勢はまったくない。防衛副大臣との会談で、知事や漁協代表が不信感を伝えたのも当然である。防衛省は強引に押し進めるのではなく、まずは真摯(しんし)に地元の不信に向き合い、信頼関係の構築から始めるべきではないか。(古賀史生)

    トップへ戻る

  • 【南日本新聞】

    2019年4月の次期鹿児島県議選に向け、県議会の議員定数等検討委員会が議論を始めた。現行の「21選挙区、定数51」を踏まえて定数や区割りなどを見直し、来年1月ごろまでに結論を取りまとめる方針だ。特例で定数が「1増」の2になっている西之表市・熊毛郡区と日置市区の扱いのほか、総定数削減や1人区解消などが焦点となる。県民に分かりやすいオープンな議論を求めたい。現在の定数は、10年の国勢調査を基にしている。議員1人当たりの人口は約3万3000人だ。西之表市・熊毛郡区は人口約4万5000人で、本来なら定数1だが、11年と15年の選挙は「当分の間」定数2を継続した。離島の特殊性を考慮したためだ。日置市区の場合も、15年の選挙で定数2を維持した。定数1にすれば、議員1人当たりの人口が約5万1000人と最多になるため、鹿児島市・鹿児島郡区(定数17)で1減した分を充てている。こうした手当てはあくまで特例である。定数は人口割りが基本であり、いつまでも認められるものではない。県議会の総定数は西之表市・熊毛郡区を「1増」としているため、条例定数50に対して付則で「当分の間は51」となっている。これも特例の状況だ。検討委が参考にする15年国調をみると、県内人口は5年前より約5万8000人減っている。総定数見直しの議論は避けて通れない。1人区の扱いも論点だ。15年の選挙で1人区は11選挙区のうち5選挙区が無投票となり、11年より二つ増えた。1人区は現職に有利になりやすく、新人は立候補しにくい。立候補の垣根を低くして有権者の「選ぶ権利」を確保するためにも、1人区解消を検討してほしい。こうした議論の際には、「1票の格差」是正を念頭に置かなければならない。気になるのが、議員自らが決めるという従来の手法だ。「同僚議員への配慮」や「身内の甘さ」が見えるようでは、県民の信頼は得られまい。有識者らの意見聴取にとどまらず、第三者委員会の設置が必要ではないか。先般、国会に提出された衆院選の新区割りを決める公職選挙法改正案について、県選出の衆院議員が「選挙区は(議員の)私物ではない」「議員は一時的に選挙区を預かっている」と述べていた。同じことが県議選にも当てはまる。県議会はそうした心構えで、定数や区割りの見直しに臨んでほしい。

    トップへ戻る

  • 【琉球新報】

    沖縄戦の遺骨収集ボランティアを続けている「ガマフヤー」の具志堅隆松代表はこう語る。「遺骨100体のうち名前の分かる遺品が一緒に出てくるのは5体もない」。ほぼ全てが軍人だ。住民は皆無に等しい。住民にとって身元を確認できる手段はDNA鑑定しかない。戦没者遺骨のDNA鑑定を民間人にも行うよう、ガマフヤーが7月にも初めて集団で厚生労働省に申請する。遺族の心情を尊重したもので、国は実現に向けて手法を改善し、主体的に取り組むよう求めたい。沖縄戦は軍人の戦死より住民の犠牲が多い。しかし、その住民はどこで亡くなったのか分からないのが実情だ。本島南部で拾った石を骨壺に入れている遺族も多い。2016年4月に戦没者遺骨収集推進法が施行された。「国の責務」で24年度までに集中的に遺骨収集を進めることが明記されたが、1年たっても厚労省は消極姿勢だ。今年3月、DNA鑑定の対象を「歯だけ」から「四肢骨」まで広げたものの、「個体性があるもの」に限定している。頭蓋骨がなかったり、複数が混ざったりしている遺骨は初めから除外される。沖縄では斜面で遺骨が見つかり、雨で流されている事例も多い。遺族は指一本でも帰るのを待ち望んでいるのに、あまりにも冷淡だ。具志堅さんによると、先進的な米国や韓国では鑑定に回す前に形質人類学者が関わり、複数の遺骨でも分類できるという。骨の一片からでもDNAを抽出している。鑑定を受けられる遺族の範囲を国が狭めているのも問題だ。部隊記録に基づいた関係者に限られ、実質的に軍人・軍属だけになっている。米国、韓国では、希望する遺族は全て受け入れている。高齢化で遺族も減ってきており、速やかに、希望者全員のDNAと見つかった全ての遺骨を照合するのが推進法の本来の精神ではないか。戦争は国家が引き起こし、多くの国民の命を奪った国策の過ちだ。遺骨をわが家に帰すのは当然で、国は最低限の戦争責任を取るべきだ。遺族には時間がない。一人でも多く身元が判明するように、県も、DNA鑑定を受け付ける窓口や制度を設けて協力してはどうか。国には一刻の猶予も許されない。鑑定対象を広げ、運用を抜本的に見直すべきだ。激戦地跡に眠る全ての遺骨を遺族の元に返すという熱意と本気度を見せてほしい。

    トップへ戻る

  • 【沖縄タイムス】

    国家資格の「介護福祉士」を育成する県内四つの専門学校すべてで、定員割れが続いている。介護福祉学科の定員は合わせて160人だが、2017年度は前年度に引き続き5割を切るなど深刻な状況だ。介護現場のリーダーとなる専門職の卵が先細っては老後の安心にも黄信号がともる。介護福祉士は介護職の中でも専門性が高い。高齢者や障がい者の介助、医療的ケア、生活援助などを行う仕事だ。13年度には128人いた介護福祉学科の入学者が17年度には74人にまで落ち込んでいる。定員を半分にした専門学校もあるほどだ。なぜか、理由ははっきりしている。介護職員を取り巻く「低賃金・重労働」という厳しい労働環境が要因である。介護業界が学生らのマイナスイメージを払(ふっ)拭(しょく)することができていないことも関係している。国の処遇改善加算などで介護職の待遇は少しずつ良くなっているが、それでも全産業の平均より月額8〜10万円も低い。さらに県内の介護職は他府県と比べても賃金が低い。介護労働安定センター沖縄支部が実施した15年度の介護労働実態調査によると、介護職員の月額の平均賃金は19万5千円で、全国の平均21万8千円に及ばない。介護職員の「働く上での悩み」は、「人手が足りない」(50・2%)、「仕事内容の割に賃金が低い」(39・9%)と続く。人手が足りないことによるしわ寄せで精神的・肉体的な負担が大きく、その割に、賃金が低いという悪循環に陥っている。■■厚生労働省の推計によると、全国では団塊の世代が75歳以上になる25年度に、253万人に上る介護職員が必要になるが、38万人が不足する恐れがある。沖縄県でも2万2千人の需要に対し、4千人余りが不足するとみられる。超高齢社会の到来で、介護の需要は高まる一方なのに、職員が圧倒的に足りなくなる現実が待っている。介護職員の育成を急がなければならない。県も高校訪問やイベントに取り組む専門学校に予算を補助している。専門学校も独自の奨学金制度を新設するなど学生集めに躍起だ。しかし、高校新卒者の確保は簡単ではない。専門学校4校が連携を強める必要がある。仕事の楽しさや魅力を実際に介護に携わっている職員から具体的に聞く機会を多く設定するのも一案だろう。■■介護労働安定センター沖縄支部の調査によると、介護の仕事を選んだ理由は「働きがいのある仕事だと思ったから」が54・0%と最も高い。超高齢社会では誰もが介護の世話になる可能性がある。介護職を高校生らに「選ばれる職業」にするには、「低賃金・重労働」の現状を改善する必要がある。それが私たちの老後の安心にもつながるからだ。志を高く持った若者の「働きがい」が持続するような介護職の制度設計をするのは、国の責任である。

    トップへ戻る