社説・論説

  • 【北海道新聞】

    高橋はるみ知事が4期目の折り返しを迎えた。北海道新聞が今月行った全道世論調査では、支持率が68%に上り、2003年4月の就任以来最高となった。ただ、その理由は「目立った失策がない」「人柄が信頼できる」「イメージが良い」が上位に並ぶ。これまでと同様の傾向だ。裏返せば、無難ではあるが物足りなさも否めない14年間だったとは言えまいか。知事は道民のリーダーである。それがいつまでもイメージ中心に評価されるのでは、国にとっての「重宝な知事」となってしまいかねない。道民のために強く主張する知事の姿を見たい。知事は4期目に当たり「人口減少・危機突破」を掲げ、婚活支援や、第2子以降の保育料無料化などに取り組んでいる。しかし、人口減は止まらず、道外への転出超過は昨年まで4年連続して都道府県別で最多だ。子育て対策はもちろん必要だが、若い人たちがそれぞれの住む地域で働くことができるよう、北海道全体の底上げを図ることが重要だ。総花的ではなく思い切った政策も示してほしい。道内の交通網維持も重要課題に浮上している。JR北海道は昨秋、路線の半分を「単独では維持困難」と公表したが、知事は当初「国に支援を要請する」などと深い関与を避けるような発言をしていた。鉄路がなくなるとまちは大きく変わる。道は空路、陸路を含めた北海道全体の交通ネットワークの将来像を描かなければならない。最近はJR問題で「道がより主体的な役割を果たす」と積極的な発言もしている。道は地域とJRとの話し合いに加わって、議論をリードするべきである。気になるのは、北海道電力泊原発の再稼働問題だ。知事はいまだに態度を明確にせず、地元同意の範囲に関しても「国が責任を持って明らかにするべきだ」と繰り返している。全道世論調査では、地元同意の範囲は「知事が示すべきだ」が最多だった。国任せの姿勢は、原子力を「過渡的なエネルギー」と位置づけた省エネルギー・新エネルギー促進条例を持つ自治体のトップに似つかわしくない。道政史上、4期目に入ったのは高橋知事だけである。もはや問われるのは結果だ。それを忘れないでもらいたい。

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  • 【河北新報】

    昨年11月22日、福島県沖で起きたマグニチュード(M)7.4の地震では、発生直後に「津波注意報」が出された宮城県沿岸が、後で「警報」に切り替わるという心もとない予報になった。原因となった海底断層が特異なタイプだったということだが、気象庁には東日本大震災でも初報の段階で、地震と津波の規模をかなり小さく見積もったあしき前例がある。あの時の苦い経験を教訓にすれば、津波に対してはどれほど力を入れても入れすぎということはない。予報精度を高めることが、今後も切実に求められている。福島県沖の地震の際、気象庁は発生3分後に福島県に津波警報、宮城、岩手県などに注意報を出したが、仙台港で1.44メートルの最大の津波を観測し、地震から2時間10分後に宮城は警報に切り替わった。予想される津波の高さが1〜3メートルなら警報、0.2〜1メートルなら注意報になる。到達前ならまだしも、到達後に「後出し」で替えては予報の信頼性にも響きかねない。気象庁が検証したところ、過小予報になった理由は「反射波」。福島県沿岸に到達した津波が跳ね返って仙台湾に向かったからだという。問題はなぜ反射波が大きくなったかだが、海底地形や断層の向きが影響したらしい。気象庁の説明では「地震を起こした断層は長さ20キロ、幅10キロ程度だが、北東−南西の向きよりもっと東寄りに傾いていた。この向きだと、仙台湾への反射波は断層が南北に伸びる場合より大きくなることが分かった」という。東北の太平洋側の海底断層はおおむね南北に伸び、地震は断層面が押し合ってずれる逆断層タイプが多い。ところが昨年11月の地震は断層が東西方向に近い上、引っ張り合ってずれる正断層だった。この辺で起きる大きな地震としてはかなり珍しく、過去のデータを基にした現在のシステムでは正確な予報が難しかったという。心配なのは、こうした正断層タイプの地震が増えていること。「大震災によって、地下に加わる力の方向が変わった可能性もある」と気象庁の専門家は指摘する。気象庁が取り組むべきは、大震災の前後で地殻がどう変化したかの解明ではないか。これまでの地震の常識が通用しなくなったら、正確な津波予報も困難になっていく。大震災で気象庁の第1報は「M7.9」だった。測定データに加え、将来起きると予想された宮城県沖地震の「連動型」(M8程度)と推測したことも判断に影響した。ところが実際ははるかに大きなM9。放出エネルギーは数十分の1という致命的な過小評価で、津波も同様に小さく見積もる結果になった。6年前を忘れず、最大限の努力を注ぐ必要がある。M9の超巨大地震の余波は全く計り知れない。

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  • 【東奥日報】

    安倍内閣の政務三役や自民党幹部による不用意な言動が止まらない。今月に入ってからだけでも今村雅弘復興相の東京電力福島第1原発事故に伴う自主避難者対応を巡る無配慮な発言や、山本幸三地方創生担当相の文化財保護などに絡む事実誤認的な発言が続き、18日には中川俊直衆院議員が女性問題で経済産業政務官を辞任した。また、自民党幹部では古屋圭司選対委員長が、沖縄県うるま市長選に立候補した野党系候補の公約に関して「市民への詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術」と自身のフェイスブック(FB)で批判していたことが表面化した。閣僚や自民党幹部の言葉が原発事故の被害に苦しむ福島県や、基地問題を抱える沖縄県の住民に対して向けられているのは憂慮すべきことだろう。さらに問題なのは、一連の失言が、森友学園問題などを巡る稲田朋美防衛相の答弁や「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案審議での金田勝年法相の迷走が政治問題化した後に起きている点だ。安倍政権全体のおごり、緩みを批判する声が上がっている。2013年参院選、14年衆院選に続いて勝利を収めた昨年夏の参院選後には、次のようなことがあった。昨年9月、臨時国会冒頭の衆院本会議で、安倍晋三首相が、自衛隊員らをたたえるために所信表明演説を中断して拍手、多くの自民党議員がこれに応えて、一斉に起立し拍手するという一幕があった。大島理森議長が着席を促した。その翌月には、山本有二農相が佐藤勉衆院議院運営委員長のパーティーで、環太平洋連携協定(TPP)承認案について「強行採決するかどうかは佐藤氏が決める」と言及した。さらに後日、山本氏は自身のこの発言について「冗談を言ったら(閣僚を)首になりそうになった」と軽口をたたいた。一連の出来事が、「自民一強」のおごりの表れと指摘されても仕方がない。おごりがあったとしても、反省があれば、自らを律することはできるが、相次ぐ失言からは反省どころか、おごりへの無自覚さすらうかがわせる。おごりという言葉だけでは、片づけられない深刻な状態なのではないだろうか。

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  • 【デーリー東北】

    福島避難者いじめ気持ち理解し支え合おう(4月24日)文部科学省が、東京電力福島第1原発事故を受けて福島県から県内外に避難した小中学生、高校生らに対するいじめの調査結果を公表した。2016年度までに計199件、うち加害者側が東日本大震災や原発事故に言及したと認められたのは13件もあった。青森県内の公立学校では、16年度まで計4件、うち震災などが関連するのは15年度以前の1件が確認された。他県の事案が報道でクローズアップされ、全国的に波紋を広げた問題だが、青森でも起きていた。同じく震災で被災した県の住民として助け合うべき存在であるはずなのに、このような事案が起こっていたのはとても悲しい。数の多寡は問題ではあるまい。「福島へ帰れ」「放射能が付くから近づくな」。人格とは関係のない部分に向けられた言葉は子どもの心を深く傷つけたはずだ。「福島から来たというだけで、なぜこんな思いをしなければならないのか」。受けた子たちはそう感じたことだろう。子ども同士の世界で起きた話かもしれないが、将来を担う世代を見守り育てる立場の私たちは、青森でも責め苦を負わせてしまった、という事実をきちんと受け止めるべきだ。原発事故以降、福島県民は皆、自身や家族の安心を最優先に考えて動いたはずだ。その結果、県民の間にさまざまな環境や感情の差が生まれてしまったのかもしれない。ただ、各人の行動は、それぞれが将来を見据えた判断に基づくものであって、誰も簡単に否定できる類いのものではなかろう。福島からの避難者に対するいじめは、なぜ起きてしまったのか。それは、一人一人が原発事故とその影響、さらに福島の現状について、正しく認識できていないからではないか。大人は直接介在していないかもしれないが、子どもたちが大人たちの身勝手な言葉を純粋に信じて、巻き込まれてしまったと考えることはできないか。「早く普通の生活に戻りたい」。福島の浜通り在住の男性は言う。被災という厳しい現実を、周囲の大人が身近な問題として理解に努めなくては、福島県民の生活は元に戻らない。青森県教委によると、福島から青森に避難し、県内の公立学校などに通う幼児や児童・生徒は、昨年5月現在で81人に上る。震災から6年1カ月が過ぎた。真の復興を目指せるように、この子たちを青森の地で健やかに育もう。そのために、いま一度福島の人々に寄り添い、気持ちを理解して支え合おう。

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  • 【秋田魁新報】

    世界の花火師や研究者が一堂に会する第16回国際花火シンポジウムがあす24日から6日間、大仙市で開かれる。日本を含む37カ国の約400人が参加し、花火の研究発表や討論、各国の花火の打ち上げなどが行われる。国際花火シンポジウム協会(本部カナダ)が1992年から2年に1回程度、世界各地で開いている。日本開催は、2005年に大津市で開かれて以来12年ぶり2回目だ。90回を数える「大曲の花火」(全国花火競技大会)で知られる大仙市にとって日本の花火を世界にアピールする好機だ。世界の花火の最前線に触れるとともに、「花火のまち」の国際的な知名度を高めたい。大曲の花火には、毎年70万人以上が見物に訪れている。このブランド力を生かして産業や文化など多様な分野で地域を活性化させようと市と大曲商工会議所、市商工会は14年に花火産業構想を策定。花火工場新設や人材の育成、海外からの誘客などの目標を掲げた。シンポ開催もその一環だ。期間中は大曲市民会館で発表や討論が行われるほか、「大曲の花火春の章『世界の花火日本の花火』」も開かれ、国内の26社、カナダやスペイン、中国などの海外7社が1日計7千発の花火を打ち上げる。シンポと花火の打ち上げは、世界の最新技術を吸収する機会になるほか、精巧な日本の花火と世界各国の華やかな花火の違いを確認できそうだ。大曲が育んだ「花火文化」に、一層の厚みを加えてもらいたい。特に期待するのは、大曲の花火の知名度アップだ。多くの大曲の花火師たちも「春の章」本番に向けて意気込んでいる。世界の研究者らに大曲の花火の魅力をじかに伝える意味は大きい。花火に対する感想をインターネットなどで発信している関係者もおり、これらの発信や「春の章」を訪れた人々へのアピールを通じ、大曲の花火の評価がさらに高まるのではないだろうか。市は14年度に1032人だった外国人宿泊客を19年度に2千人にまで増やす目標を掲げている。シンポをインバウンド(訪日外国人客)の増加につなげる契機にもしたい。地元ではWi−Fi(ワイファイ)環境整備、市民対象の英会話講座、宿泊施設の英語案内など受け入れの準備が進められており、外国人客を受け入れる態勢が今後、充実することは間違いない。訪問地の評価は、会った人々の印象で決まるのも事実だ。市民も、ぬくもりのある触れ合いで世界の人々を迎えよう。構想の中核施設となる花火製造工場が完成し、期間中は参加者らに公開される。安全で芸術性の高い国産花火を国内向けに供給するほか、将来的には海外への輸出も目指しており、シンポを地域の花火産業振興に向けた第一歩としたい。

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  • 【岩手日報】

    「国民の総意」の行方が怪しくなっている。天皇陛下の退位を実現する特例法案で、政府、与党の骨子案は、たたき台とすべき3月の国会見解とずれ始めた。退位をめぐる有識者会議は21日、最終報告をとりまとめて安倍晋三首相に提出した。退位後の呼称(称号)は「上皇」とするほか、皇后さまの呼称として上皇のきさきを意味する「上皇后(じょうこうごう)」の新設を提言した。秋篠宮さまは国民に親しまれてきた宮家当主としての立場の維持が適当とした上で、待遇は皇太子家並みにする。さらに、皇位継承順1位を示す「皇嗣(こうし)」を付けて「秋篠宮皇嗣殿下」などと呼ぶ例を示した。退位に伴う制度設計が固まったことで、国民も新たな皇室のイメージがわいてきた。政府の仕事は、この報告と衆参両院の正副議長がまとめた国会見解を踏まえて特例法案をつくることだ。5月19日ごろの国会提出を目指す。ところが、政府の骨子案は国会見解と隔たりがあると、民進党がかみついた。その一つは法案の名称。骨子案は「天皇陛下の退位に関する皇室典範特例法」だが、国会見解には「陛下」の文字はなかった。現在の陛下一代限りの退位にしたい政権の意図が透けてみえる。与野党は、特例法と皇室典範の抜本改正で割れていた。国会の協議では皇室典範改正と一体のものとして特例法を位置づける形で合意。将来の天皇退位の先例にもなるという考え方で難題に折り合いを付けた経緯がある。国会見解では安定的な皇位継承のために「女性宮家の創設」の検討もうたっていた。しかし、これも骨子案の付帯決議案には盛り込まれていない。民進党はこの点も問題視している。これでは国会での協議は合意のための一時しのぎだったのか、と言われても仕方がない。与野党が互いに譲歩を重ねながら、時間をかけて合意に至った国会の努力を無にすることだ。水面下で修正協議が進められているが、もし政府、与党がこの法案も数の力で押し進めようと考えているのならばとんでもない。与野党の対決法案になれば国民の総意は崩れ、天皇の地位を危うくしてしまう懸念もある。3月の共同通信の世論調査では、退位に関する法整備の在り方として「皇室典範改正で全ての天皇に適用」がなお多い。しかし、一代限定の特例法制定を柱とする国会見解を尊重して、特例法への理解も進んでいる。政府の進め方は国会どころか、議論を見守った国民をも裏切り、自ら「総意」を崩そうとする愚でしかない。(2017.4.24)

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  • 【福島民報】

    【味な冊子】有効活用で広がりを(4月24日)県は今春、ふくしまの味をPRする2種類の冊子を発行した。「新ふくしまのうまいひと皿づくり推進事業」のオリジナルレシピ集と、東京23区内で本県の食材が食べられる店舗のガイドブックだ。ともに食を通じてふるさと福島の魅力を紹介している。東京電力福島第一原発事故による風評の影響が続く本県産食材の普及促進につなげるためにも、せっかく作成した冊子を大いに有効活用してもらいたい。県の「新ふくしまのうまいひと皿づくり推進事業」の料理30品のレシピは先月、お披露目された。原発事故に伴う県産農産物の風評払拭[ふっしょく]を目指し、飲食業や宿泊施設などの関係者で協議会を結成。福島ならではのレシピの開発を昨年9月から進めてきた。レシピ考案には磐城農高(いわき市)の生徒と日本調理技術専門学校(郡山市)の学生が携わった。イカニンジンのかき揚げ、こづゆの餡[あん]かけご飯、ざくざくのミネストローネ風、カツオのたたき南仏風マリネなど、若者らしい発想でアレンジされている。専門家のアドバイスを受けて誕生したレシピには若者たちのふるさとへの熱い思いが隠し味として効いている。レシピ集には完成品のカラー写真と材料、作り方が詳しく掲載されている。一万部作り、飲食業や観光業の団体などで配布している。飲食店や旅館、ホテルなどでメニューとして客に提供されることに期待したい。レシピは「ふくしま6次化情報ステーション」のホームページからもダウンロードできる。ガイドブック「まじうまふくしま!東京の店」は昨年春に初めて発行、好評につき内容を充実させた。郷土料理をはじめ、本県産の野菜や地鶏、そばなどが食べられる店、本県産の地酒を置いている店など昨年より16軒多い56店舗の情報を満載している。6千部作成し、首都圏にある本県関連の企業関係者、各種イベント会場への来場者らに配布している。今も根強い原発事故による風評の被害。対策は大小を問わず、できることから始めることが急務だ。若者たちが考案したレシピをメニューに採用した旅館や飲食店をフォローして広がりを持たせる必要もある。県民にも積極的に売り込んでほしい。各家庭で親子一緒に料理すれば、ふるさとを見直す機会にもなる。東京の店のガイドブックも首都圏の各県人会などとの連携を進めていくことが大切だ。冊子を作って終わりではなく、どう生かしていくか考えていこう。(真田裕久)

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  • 【福島民友新聞】

    本県、そして日本の未来を切り開いていくのは若い力だ。若者の柔軟な発想と、大胆な行動力を地域の活性化に生かしたい。「最初は一過性のブームと言われたが、いまは手応えを感じている。取り組みをさらに広げたい」。福島市・土湯温泉の旅館の後継ぎたちによる町おこし活動「若旦那プロジェクト」を考案したメンバーの一人、渡辺利生さん(28)は自信に満ちた口調で話す。土湯温泉は東日本大震災と原発事故後、風評の影響で宿泊客数が大きく落ち込んだ。そのため渡辺さんらは明るい話題を発信しようと2014年夏、若旦那を大々的に取り上げたフリーマガジンを発行。県内外から注目を浴び、若旦那に会いたいという観光客も出てきた。その後、若旦那プロジェクトは飯坂、高湯、岳の県北3温泉地にも広がり、合同での観光PRなど積極的な活動を展開する。若者ならではの斬新なアイデアが地域振興につながった好例といえよう。地域に眠っている意外な宝を掘り起こすヒントにしたい。若旦那プロジェクトは本年度、県内の若手農業者でつくる一般社団法人「クールアグリ」と連携し、温泉と農業の魅力を併せて発信する取り組みも始める計画だ。クールアグリは農業のイメージアップや、県産農産物のブランド向上を目指し、15年に設立。20〜40代の農家約40人が技術の研さんや、販路拡大に取り組んでいる。震災の経験をバネに自ら立ち上がる若者が増えているのは頼もしい。各団体が交流することで、業種の壁を越えたさまざまな相乗効果を生み出すことも期待できる。被災地の復興加速に向けて汗を流す若者たちも増えてきた。原発事故による避難指示が解除され、住民帰還が進む楢葉町では昨年、若者グループ「ほっつぁれDEいいんかいっ?!」が発足した。メンバーらは避難のため途絶えていた盆踊りなどのイベントや、郷土芸能の復活に取り組む。住民の絆と元気を取り戻そうという輪がさらに広がっていけば、古里再生への後押しとなるはずだ。地域の現状を変えていけるのは、果敢にチャレンジできる「若者」、信念を持って活動に打ち込める「ばか者」、そして外部からの客観的なものの見方ができる「よそ者」の3者といわれる。県は本年度、都市部の学生に県内で仕事や生活を体験してもらう「ふるさとワーキングホリデー」などを行い、若者の移住・定住策を強化する。地方創生の原動力となる若者を受け入れるための取り組みを着実に進めていきたい。

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  • 【茨城新聞】

    住民訴訟制度は、公金の違法な支出などで生じた損害について、地方自治体に対し、賠償を首長や職員に請求させる仕組みだ。行き過ぎた職員待遇や不当な売買契約額などで多くの原告勝訴判決がある。情報公開請求と並んで住民が行政側をただす武器と言える。その原因が軽微な過失の場合には、賠償に限度額を設けて負担を軽くしようという地方自治法改正案が提出された。成立すれば、条例で定める上限額を超えた分が免除されるようになる。背景には、公の事業に絡む賠償は巨額になりがちで、萎縮を招き、健全な行政の仕事を妨げているとの指摘がある。正しい公務に賠償は生じないが、うっかりミスは起きる。他の自治体の誤った先行例に倣って間違えたという話もある。悪意や故意でなく、こうした「同情の余地」があるケースにも容赦なく賠償額を積み上げるのは酷だという意見はあるだろう。ただし、賠償額がペナルティーの体をなさないほど低く抑えられるようなら、公金を扱う責任感や緊張もうせ、お手盛りの救済との非難は免れない。住民訴訟制度に期待される不正の抑止機能は維持しなければならない。上限額の目安として総務省は、会社法が企業トップの賠償責任としている年収の6倍を念頭に置くが、最終的には条例で決めるため自治体の判断に任せる。さらに「返せるだけ返してもらう」とのスタンスで、年収の3年分程度の下限を政令で定め、過度に免除させない考えだ。これを首長の平均年収に当てはめると、知事の賠償額はおおむね1億〜5千万円、市町村長で6千万〜3千万円になる。その妥当性は法案審議で論じられるだろう。同省によると、2005〜15年度に1億円以上の賠償を命じた住民訴訟判決は計11件あった。最高は外郭団体への人件費支出が問われた神戸市長の約55億円。東京都の豊洲市場問題では住民側が、石原慎太郎元知事に用地費約578億円を請求するよう都を訴えている。論議の過程では、過失の度合いが軽微ならば損害賠償をゼロにする意見もあったが、見送られた。日弁連によると、住民訴訟の過失認定は通常事件よりかなり慎重だという。軽いミスが対象外になれば、違法な会計処理の大部分で責任を追及できない恐れがあり、違法行為が是認されたように見える。住民のものである公金を失った結果責任は、割り引いてでも負ってもらうのは当然だ。地方議会の議決で賠償請求権を放棄できる仕組みの扱いも懸案だった。与党会派などが首長らをおもんぱかって議決が乱発されれば、住民訴訟の制度そのものが形骸化するからだ。前述した賠償1億円以上の11件のうち4件で支払い免除が議決されている。改正案は議決に際して監査委員の意見聴取も求めているが、乱用防止には物足りない。少なくとも門前払いに等しい係争中の賠償請求の放棄は制限すべきだ。住民訴訟の見直しに連動して、自治体の不正会計などを未然に防ぐためのリスク評価やチェック強化などの改正も盛り込まれた。自治体の仕事には、できるだけ安価で最大の効果を挙げる「最少経費原則」が課せられている。法律で不正防止を図られる以前に、公金を扱う者の無謬(むびゅう)性が納税の大前提であることは言うまでもない。

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  • 【千葉日報】

    首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の県内区間で、唯一の未開通区間「大栄−横芝」。国は本年度、予算を大幅に増やし、着工も視野に入れる。圏央道に近い一宮町は2020年東京五輪のサーフィン競技の会場。同区間が開通すれば、成田空港への利便性は飛躍的に高まる。国は早期全線開通に向け“アクセル”を踏み込むべきだ。圏央道は茨城、埼玉、東京では全線供用された。本県区間は延長約95キロのうち約8割が開通済み。しかし、大栄−横芝の約18・5キロはいまだ開通目標年次すら示されず、“トンネルの出口”が見えない状況だ。ルート上にある地元は、開通が遅いことに危機感を募らせる。「早期完成なら企業誘致で有利になる。このままでは乗り遅れてしまう」と横芝光町。地方創生に取り組む市町村にとって圏央道は「人口減少を食い止める起爆剤になる」と渇望する。同区間は14年から用地取得が進められている。県によると、16年10月1日時点で用地取得率は5割に達した。併せて、事業区間の約4割の範囲に所在する埋蔵文化財の調査も行われている。こうした中、国土交通省は17年度の予算配分を発表。同区間の用地買収や一部工事費は前年度比2倍の約61億円とし、本体工事は「17年度着工を見込んでいる」とした。道路行政で着工手前までこぎ着けた現状を車の運転にたとえて、スピード感が出る3速に相当するという。路線調査の1速、用地取得の取っ掛かりの2速からギアが一段階上がった格好。県は「予算倍増で用地取得の進ちょくに期待。17年度中の着工なら、さらに(事業は)前進する」と歓迎する。今後について、千葉国道事務所は「円滑に事業を進め、開通目標年次は見通しが立った段階で確定していく」と説明する。引き続き地権者との交渉を精力的にこなし、全用地取得につなげてほしい。そうなれば、整備は完成への詰めの工程とされる4速に加速する。五輪によって千葉に対する注目度が大きくアップすることは間違いない。その効果を最大限生かすためには圏央道の「輪」が一刻も早くつながるよう努力することが不可欠。実現にはオール千葉の関心事とする取り組みも求められる。

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  • 【信濃毎日新聞】

    南スーダン国連平和維持活動(PKO)に2012年から参加してきた陸上自衛隊部隊の撤収が始まった。国会は5年間の活動を検証し、問題点の議論を尽くすべきだ。派遣が終わるからといって、うやむやにしてはならない。11年に独立した南スーダンの国造りを支援するPKOだ。日本はインフラ整備を担う施設部隊を首都ジュバに派遣してきた。補修した道路は約210キロ、用地造成は約50万平方メートルに及ぶ。政府が撤収を発表したのは3月だ。安倍晋三首相は、施設部隊として派遣が過去最長になったと述べ、活動に「一定の区切りを付けることができると判断した」としていた。なぜ今なのか疑問が残る唐突な決定だった。5月末までに全部隊を引き揚げる。国連南スーダン派遣団(UNMISS)への司令部要員4人の派遣は続ける方針だ。撤収に当たり政府にまず問わねばならないのは、派遣を続けてきたことの是非である。南スーダンは13年12月以降、政府軍と反政府勢力とが内戦状態に陥った。紛争当事者間の停戦合意など、PKO参加の5原則が満たされていたか疑問が拭えない。南スーダンは現在、日本が参加する唯一のPKOだ。政権が「積極的平和主義」を掲げるため、無理を重ねてこなかったか。政府には改めて、現地の情勢についての認識、派遣を続けられると判断した根拠を示すよう求める。関連して、派遣部隊の日報を巡る問題が見過ごせない。廃棄済みとしていた記録が防衛省に残されていた。現地の状況について「戦闘」などの記述があり、政府は釈明に追われた。都合の悪い資料を隠したと疑われても仕方ない。組織的な隠蔽(いんぺい)の有無を防衛監察本部が調べている。稲田朋美防衛相は中間報告をまとめることに否定的な考えを示した。防衛相の統率力も問われる問題だ。途中経過を含め、説明すべきである。派遣部隊には安全保障関連法に基づき「駆け付け警護」などの新任務が付与された。運用開始から4カ月ほどでの撤収だ。安保法の実績作りを狙った印象が強い。政府内にはPKO参加の在り方を見直す動きもある。部隊ではなく、司令部要員を派遣するのが先進国型だ。本来、安保法の審議で掘り下げるべき点だった。新任務の妥当性も問い直す必要がある。(4月24日)

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  • 【新潟日報】

    衆院区割り勧告地方捨てない抜本改革を今回も衆院の区割り改定案で地方の定数が削減されそうだ。1票の格差是正と地方の声を国政に反映させる。その両立が必要だ。地方切り捨てにならない抜本改革を求めたい。衆院選挙区画定審議会(区割り審)は1票の格差を2倍未満にする区割り改定案を安倍晋三首相に勧告した。19都道府県の97選挙区を見直した。小選挙区は定数295が289に、比例代表は180が176となる。最高裁が1票の格差が2倍を超えた2014年など過去3回の衆院選について「違憲状態」と判断したことから、区割り審が2倍未満とする勧告をしたのは当然だ。憲法14条の定めた「法の下の平等」からすると、有権者が選挙で投票する1票の価値は同じでなければならない。格差をどこまで認めるかは憲法に記されていないが最高裁が2倍超を違憲状態としているのは許容する最大限とみるべきだろう。勧告は15年国勢調査に基づく最大格差を1・956倍としたのにとどまらず、20年の見込み人口を考慮した最大格差を1・999倍とした。今後3年間、2倍未満となるよう設計したのは前向きな取り組みといえよう。ただ、問題もはらんでいる。小選挙区で定数を1ずつ減らされるのは青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で、いずれも人口減が進む地方ばかりだ。大地震から1年とまだ復興途上の熊本県では、地元選出の国会議員の数が減ることで、声が届きにくくなり、復興が遅れるのではないか心配する声が出ている。蒲島郁夫知事は「地方の議席が減少すると、地方の声が国政に反映されにくくなる懸念がある」と述べた。被災地の切実な訴えを重く受け止めるべきだ。東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市は改定案で統合される広い選挙区に組み込まれる。市長は20年度までの復興・創生期間内は現行区で行うべきと訴えた。定数減に悩む地方と裏腹に東京都では別々の小選挙区に分割される市区町村が増えた。現行では世田谷など5特別区だったが改定では14特別区と3市が分割される。全国では現行88から105に分割市区町村が増加する。区割り審が昨年12月に原則分割しないとしたにもかかわらず格差是正のため例外を増やしたのだ。分割は有権者の混乱、政治離れにつながり、選挙の円滑な運営を妨げる要因になるとの指摘がある。周知を徹底するなど対策を講じてほしい。今回の改定案には本県は含まれていない。とはいえ地方の人口減、首都圏への集中は止まらない。全体の定数を増やさず格差是正をする限り、本県を含む地方の定数減は避けられない。昨年成立した衆院選挙制度改革関連法では、20年国勢調査結果に基づき、新たな方式による大規模な見直しを行うとしている。いつまでも数年ごとに数合わせをするわけにいかない。比例や小選挙区制の在り方を含め骨太の制度改革をする時期に来ている。

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  • 【中日新聞】

    名古屋市民は「庶民ファーストナゴヤ」を掲げた河村たかし市長の三期目続投を選択した。行政の長として地に足をつけた市政運営と、議会とも是々非々で歩み寄る建設的討論に努力してほしい。当選を決めた河村氏は「税金を一円でも安くし、最高の福祉をお届けする」と決意を語った。河村氏が唱える市民税5%減税や名古屋城天守閣の木造復元の是非などが争点となった選挙で、市民は河村市政の継続を選んだといえる。だが、投票率は36・90%と前回の39・35%を下回り、二〇〇九年の河村氏初当選以降、出直し選を含む四度の選挙で最低となった。投票率の低下は、庶民革命を掲げて八年前にスタートした河村市政への期待度や熱気が下がっていることを示す。河村氏は四選三期目におごることなく、初心に立ち戻って市政に取り組んでほしい。「総理を狙う男」を公言する河村氏が全国的な知名度を持つのは、市民税減税や市長と市議の市民並み報酬など、既得権に切り込む市長として常に政治闘争を仕掛け市民の支持を得てきたからだ。河村氏は代表を務める地域政党「減税日本」と、松井一郎大阪府知事が代表の「大阪維新の会」、小池百合子東京都知事が中心の「都民ファーストの会」との連携でも秋波を送ってきた。確かに市や議会のなれ合い体質にカツを入れ、市民目線で改革してきたことは評価できる。投票前の本紙世論調査で七割超の人が河村市政を「高く評価」「ある程度評価」と回答したのは、こうした突破力に共感したものであろう。一方、この八年を振り返れば河村氏は、行政トップとして丁寧に市職員の意欲を引き出すような行政運営をしてきたとは言い難い。部下だった前副市長が対抗馬に名乗りをあげ選挙戦で「トップダウンで疲弊する職員。思い付きで停滞する行政」と、内から見た河村市政を批判した。耳が痛くとも謙虚に受け止めるべきである。議会との建設的な討論も十分であったとはいえない。世論調査では五割を超える人が「市長も議会も歩み寄るべきだ」と答えた。河村氏は常に「議会で過半数がないから(やりたいことが)できん」とこぼすが、地方自治体は首長と議員が直接住民に選ばれる二元代表制を採用している。もう一方の市民代表である議会をもっと尊重し、粘り強く交渉する努力を求めたい。

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  • 【北國新聞】

    北陸と竹久夢二ゆかりの地で魅力伝えたい金沢市の金沢湯涌夢二館は、大正ロマンを代表する画家、竹久夢二の湯涌温泉滞在100年を記念した特別展を今年度、4回開催する。夢二の資料に関しては、交流のあった立山町出身のジャーナリスト翁(おきな)久(きゅう)允(いん)の書簡が新たに見つかり、富山市の高志の国文学館が未整理の資料の本格調査に乗り出すなど、夢二の足跡に光を当てる取り組みが相次いでいる。夢二の生誕130年となった2014年には「竹久夢二学会」が創設されるなど、今もファンの熱い支持を集め、作品の評価が高まっている夢二の顕彰と研究者育成の動きが広がっている。金沢、北陸から夢二の業績とともに、夢二が愛したゆかりの地の魅力を伝えていきたい。夢二は1917(大正6)年に恋人の彦乃や次男不二彦と湯涌温泉に3週間滞在し、幸せなひとときを過ごしたという。22日から始まった夢二館の特別展は、夢二の美人画や彦乃の作品に焦点を当て、同時代の画家との比較を通じて夢二が中央画壇に与えた影響などを紹介する。四季ごとに特別展を開催し、講演会や夢二の足跡をたどる金沢市内のバスツアーなども企画している。湯涌滞在100年の節目の年であり、夢二と湯涌のつながりの深さを改めてアピールしてほしい。夢二に関する新資料は、翁が夢二を誘って1931(昭和6)年に渡米した際に客船内で夢二の様子を記したもので、夢二が船内で個展を開いたことが書かれていた。渡航時の資料は少なく、高志の国文学館は今年度、この書簡を含め、翁の親族が保管している資料約1万点の調査を進める。交友関係が広かった翁の資料を通じて、夢二をはじめ、他の文化人に関する新発見が期待されている。高志の国文学館は昨年、企画展「夢二の旅—たまき・翁久允とのゆかりにふれつつ」を開催し、夢二館も協力した。夢二の妻・たまきは金沢生まれで、富山市内に墓があり、石川、富山に縁が深い。今後もゆかりの地や関係施設が連携して発信力を高め、夢二ファンや文学・美術愛好者らを多く呼び込みたい。

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  • 【福井新聞】

    【論説】坂井市三国町安島の雄島の海女の素潜り漁と漁獲物の加工技術が、県無形民俗文化財に指定された。安島地区だけでなく全国各地の海女は高齢化と後継者不足の課題を抱え、海女文化の保存・継承は待ったなしだ。県文化財指定を機に先進県の関係者と連携し、海女とその文化を後世に残していってもらいたい。素潜り漁には現在、雄島海女保存会の55人が従事しワカメやウニ、アワビ、ノリなどを捕る。ワカメやウニは自ら加工する技術も持ち、素潜りの技とともに母親やしゅうとめから受け継がれてきた。海女漁の県文化財指定は石川、三重に続き、福井が3番目。漁獲物の加工技術までを含めた指定は全国初だ。背景には全国的な海女文化衰退への危機感がある。石川、三重のほか福井、岩手、宮城、静岡、徳島、鳥取、山口県からなる「全国海女文化保存・振興会議」が、海女の文化財としての位置付けや価値の情報を共有し、海女文化の振興と地域活性化を目指している。福井の現状は深刻だ。安島地区の海女は20年前の155人から3分の1にまで減り、60代は若手と言われるほど高齢化が進む。海女が減り、漁の技術が受け継がれないこともあり、ウニやサザエの漁獲量も減少を続けている。継承の危機は漁だけではない。海女が仕事の合間に作業着の補強や保温用に施した「刺し子」の継承者は絶えて久しい。安島地区に伝わる県無形民俗文化財「なんぼや踊り唄」は海女や保存会によって伝えられていたが、高齢化で数年前から活動を休止。今年に入り地元有志が継承に立ち上がったばかりだ。昨年、韓国・済州島の海女漁が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。日本は振興会議を中心に登録活動を進めたものの同時登録できなかった。政府は国の重要無形文化財などに指定していない海女漁はユネスコに申請できないとし、まず各自治体で県文化財指定などによる保護措置を求めていた。しかし、実際は石川、三重以外は県文化財に指定しておらず、福井以外に新たに指定した自治体はない。「現状は難しい」(徳島)「考えていない」(静岡)と消極的だ。今春、三重県鳥羽・志摩の海女漁の技術がようやく国の重要無形民俗文化財に指定されたばかりで、道のりは遠い。福井県が指定した文化財には保護や継承に向けて補助ができる。映像や文書で漁や加工技術の記録を残すほか、先進県と連携して海女と語る催しや体験ツアーを実施するなど、地元関係者らと早急に安島の海女文化の保存・継承に力を入れてもらいたい。

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  • 【京都新聞】

    天皇陛下の退位に向けて政府が設置した有識者会議が、特例法による一代限りの退位を前提とする最終報告をまとめ、安倍晋三首相に提出した。高齢による公務遂行の不安を表明された陛下のビデオメッセージを契機として、半年間の検討を経て退位へ大きく前進した形だ。法案は来月下旬に国会に提出される。皇室典範には明治の旧典範も含めて退位の規定がなく、約200年の間、退位は行われなかった。戦後の歴代保守政権もこの問題に正面から向き合ってこなかった。主権者である国民の多くが今回の有識者会議に関心を向け、専門家のヒアリングを通じて多様な意見に触れたことだろう。「天皇は宮中で祈るだけで十分」と退位に否定的意見を述べた専門家もあったが、被災地訪問などを含む「平成流」の象徴天皇の姿を、人々がさまざまな角度から見つめ直すきっかけになったと言えよう。最終報告は、退位後の呼称を「上皇」とし、皇后さまには「上皇后」の呼称を新設するとした。象徴としての行為は、全て新天皇に譲ることが適切とした。象徴の二元化を避ける上で妥当である。ただ、報告には物足りない点もある。皇族の減少を「先延ばしのできない課題」としながら、女性宮家の創設などの具体策は示さなかった。現憲法に基づく、あるべき天皇像といった本質論にもほとんど踏み込まなかった。有識者会議は、当初から人選や議論の方向性に首相官邸の意向がにじむものだった。結局、政権の支持基盤である保守派の抵抗の強い皇室典範改正を避け、官邸のシナリオに沿って「一代限り」の特例法という結論を導く役回りを演じた印象が否めない。最終報告の前に、政府・与党が特例法の骨子案と付帯決議案を固めたのも違和感がある。しかも両案には、3月に衆参両院の正副議長の下でまとめた国会見解の趣旨と異なる部分がある。法案名が「一代限り」を強調するかのように変更され、付帯決議案に盛るはずの女性宮家への言及もない。野党との意見調整の経緯を尊重せず、国会を軽視するものだ。「安倍1強」のおごりがここにも表れてはいないか。皇室改革は「国民の総意」で進めるという原則を忘れてはならない。あわせて、今回高まった国民の関心を次へとつなげることも大切だ。安定的な皇位継承、これからの象徴天皇像について議論を深めていく必要がある。

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  • 【神戸新聞】

    神戸の玄関口・三宮が大きく変わろうとしている。阪急電鉄は2021年度完成を目指し、29階建ての「神戸阪急ビル東館」を建設中だ。JR西日本は駅ビルの建て替えを決め、神戸市は25年度に、駅東側にバスターミナルを開業させる。そごう神戸店も建て替えが取り沙汰されている。神戸市は三宮の再整備を重要施策に位置づけている。不動産開発への税優遇が受けられる政府の「特定都市再生緊急整備地域」に指定されたことも、建設の追い風となる。ただ、各事業者が全体の調和を考えず自らの利益優先で動けば、街の良さは失われる。三宮の魅力は、六甲山とミナトに臨むコンパクトな街並みや、個性豊かな店舗群にある。全体のにぎわいを高め、共存共栄に結びつけるため、官民の連携を密にしてもらいたい。市は30年後を目標に、駅から半径500メートルを対象とした三宮再整備の青写真を描いている。車の通行を制限して歩行者優先の空間にし、公共交通を充実させる。並行して新神戸駅から元町、神戸ハーバーランドにかけてもデザインや文化、災害に強いインフラを柱に街並みを整える構想を練る。有識者や若者らの声を反映させた。現在、三宮周辺は、ビルの高さや屋外広告などに法や条例の網がかかる。青写真の具体化には、さらに踏み込んだルールの検討が求められる。元町や北野地区などに点在する歴史的建造物の保存にも、市の積極的な支援が欠かせない。バスターミナル整備では、民間2社が高層ツインビルを核とする市街地再開発事業方式を提案した。市は本年度中に事業手法を決める。人口減が加速する中で、一定の入居率を前提とする再開発方式が妥当かどうか、厳しく見極める必要がある。阪神・淡路大震災では将来を見据え、三宮を含む被災地をゼロからつくり直す復興の重要性が指摘されたが、実際に優先されたのは原状復帰だった。22年を経た今、高齢化や若者の流出、地域経済の再生など、神戸は多くの課題に直面する。それらに対応し、シンボルとして市民が誇れる姿に、三宮が生まれ変わってほしい。

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  • 【奈良新聞】

    「森友問題」の発覚以降、貴重な国会審議の時間が削られ、与野党ともに相当なエネルギーと時間が費やされたが、結局うやむやなまま幕引きされそうな気配。国民のモヤモヤ感は、うっ積している。そこへきて、今週に入ってから政治家の「問題発言」や「身辺問題」による辞職など、不祥事の連鎖が起こっている。山本幸三地方創生担当相の「一番のがんは文化学芸員」発言▽沖縄県うるま市長選の野党系候補の学校給食費無料化を巡る公約について「詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術」とした自民党の古屋圭司選対委員長によるフェイスブックでの批判▽女性問題で経済産業政務官を18日に辞任した、自民党の中川俊直衆院議員の行動—。公明党の山口那津男代表は19日の党会合で、安倍政権の政務三役から不用意な言動が相次いでいることについて、「著しく緊張感を欠いている」として強い不満を表明したそうだが、当然のことだろう。「朝鮮半島情勢が緊迫」と言われながらも、冒頭の一連の国会議員の言動や行動を見ていると緊迫感は薄い。自民党は3月の党大会で、党総裁の任期を「3期9年まで」と正式決定したが、野党のふがいなさもあり、長期安定政権の様相が漂うことも、緊迫感のなさの背景にあるようだ。そんな中、いわゆる「共謀罪」法案が19日に衆院法務委で実質審議入りした。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案である。過去3回廃案になったものを「対テロの看板に付け替えて、国民が反対しにくい状況をつくる」と、その狙いを指摘する法曹関係者もいる。犯罪には「共謀(計画)、予備・準備、未遂、既遂」の各段階があるとされ、日本の刑法は実行後の処罰が原則。未遂より前の段階での処罰は極めて例外的な扱い。一度「例外」を作れば、いつのまにか広がってしまうというのが、世の常ではないか。安倍首相は「東京五輪・パラリンピックを控え、テロ対策は喫緊の課題」として、早期成立に意欲を示している。対する野党は「国民への監視が強まり、社会が萎縮してしまう」と廃案を求めている。首相は「捜査は法令に従って適切に行われるから、一般の人が対象になることはあり得ない」などと答弁しているが、本当に信用していいのかどうか。政府の説明に対して、国民の多くが「捜査機関による乱用の懸念や不安」を持つのではないか。

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  • 【紀伊民報】

    田辺市長選で、現職の真砂充敏氏が無投票で4選された。2005年5月に旧5市町村の合併で誕生した新しい田辺市の市長となって以来、市の基盤をつくり、行財政改革を進めてきた手腕が評価されたのだろう。真砂市政は合併に先立ってまとめた市町村建設計画を基に、世界遺産熊野本宮館、観光センター、市立図書館、学校給食センターなどを整備した。田辺スポーツパークの建設、紀伊半島大水害からの復旧など建設計画になかった課題にも対応した。財政の健全化も進めた。合併直後は19・7%だった実質公債費比率を15年度には9・2%までに改善。市の貯金に当たる基金は合併時の106億円から209億円にまで上積みした。真砂氏は「3期の市政運営を10点満点でいうなら、6点か5・5点。及第点がもらえるかどうか」と採点。今後は新しいまちの未来像を描く必要があるとして「扇ケ浜を核としたまちづくり」「山村の活性化」「未来を開く人材の育成」を重点項目に掲げている。たしかに、いくら実績を上げても、市政は生き物。新たな課題が次々と登場してくる。人口減社会への対応もその一つである。山間部に限らず、市街地でも少子高齢化が進み、空洞化が目立つ。商店街の商品販売額は最近20年間で8割も減少した。外国人を中心に訪れる人は増えているが、それが地域の繁栄には直結していない。そこで真砂氏は、扇ケ浜公園に合気道の開祖・植芝盛平の顕彰施設を含めた新武道館を建設し、闘鶏神社や南方熊楠顕彰館との連動性を高める計画を公表している。しかし、巨額の税金を投入しても、その「器」を生かす政策が伴わなければ意味は半減する。空き物件を改装して新たな価値を加えたり、市庁舎移転後の跡地を活用したりしながら、民間の力も借りて人の集う場をつくる努力が求められる。子育て支援も待ったなしだ。例えば、子どもの医療費については県内の大半の自治体が中学または高校卒業まで無料にしている。しかし、田辺市は入院が中学校卒業まで、通院は就学前までで、他市町村から大きく遅れている。公共交通の整備も急がれる。市民意識調査では、7割近くが「不満」としている。交通手段確保のために、市は年間約2億2千万円の公費を投じているが、効果のほどは検証されていない。こうした点にもメスを入れ、対策を練る必要がある。行政と事業者、市民の3者から知恵を出し、市政に反映させなければならない。市庁舎や道路など主要な公共施設の管理費にも切り込んでいかねばならない。現状でも年間約30億円を支出しているが、その整理や活用にも工夫が必要だ。真砂氏は、今後の4年間を「未来へつながる第一歩」と位置付けている。市民に未来像を示し、それを生かしたまちづくりに突き進んでほしい。4期目ともなれば、存分に力が出せるだろう。(K)

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  • 【山陽新聞】

    政府が進めようとしている受動喫煙対策の行く末が見通せない。自民党内から強い反発が出て、膠着(こうちゃく)状態が続いている。厚生労働省は先月、受動喫煙を防ぐための健康増進法改正案の概要を公表した。学校や病院は敷地内禁煙、大学や官公庁は屋内禁煙とし、飲食店も喫煙室設置は認めるものの、原則禁煙とする。禁止場所で喫煙を繰り返す悪質な違反者や、禁煙場所の明示といった義務を守らない施設の管理者には罰則を設ける。対応の難しい小さなスナック、バーは例外として喫煙を認めた。昨年秋に公表された改正案のたたき台では、飲食店は一律に禁煙としており、客離れなどへの心配に一定の配慮を見せた形だ。自民党内ではこれでも厳しすぎるという意見が強い。飲食業界やたばこ産業の懸念が背景にある。改正案を協議するはずの党の厚生労働部会が開催できず、厚労省が党側に一度も改正の内容を説明できていない。改正案は当初、3月中にも国会提出される見通しだったが、大幅にずれ込み、今国会での成立が危ぶまれている。だが、規制強化をこれ以上、先送りするわけにはいくまい。厚労省の研究では、受動喫煙によって肺がん、心筋梗塞、脳卒中が引き起こされ、国内の死者は年間1万5千人に上ると推計されている。乳幼児突然死症候群とも因果関係があるという。加えて2020年には東京五輪・パラリンピックが開かれる。国際オリンピック委員会(IOC)は、たばこのない五輪を理念に掲げる。近年、五輪を開催した中国、英国、ブラジルなどは屋内禁煙を徹底するため、罰則付きの法規制を導入した。日本も努力が求められよう。そもそも、世界保健機関(WHO)によると、受動喫煙対策を努力義務にとどめている現行の日本の対応状況は、世界でも最低レベルにある。受動喫煙によって吸わない人に多くの健康被害をもたらしている事実に目を向け、対策を前進させるべきだ。厚労省案に対抗して、自民党国会議員約280人が参加する「たばこ議員連盟」は独自の対案をまとめている。飲食店を原則禁煙とせず、禁煙、喫煙、分煙を自由に選択できるようにするという内容だ。学校、病院については敷地内禁煙から緩め、喫煙室の設置を認める。もちろん喫煙者の吸う権利は尊重されるべきだ。しかし、煙が漏れ出している喫煙室は珍しくないなど、分煙対策は不十分と言わざるを得ないのが現状である。吸いたい人の権利を守るためには、まずは吸わない人を煙から守る受動喫煙対策に知恵を絞る必要があろう。国民の健康を守るためである。政府も自民党も膠着状態の打開に向けて努力し、議論をきちんと前へ進めていかねばならない。

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  • 【中国新聞】

    G20財務相会議保護主義拡大どう防ぐ2017/4/24米国ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がおととい閉幕した。保護主義拡大に対抗することや、自由貿易が重要だとの認識が共有できた点は、ひとまず評価できる。というのも、3月の前回会合の共同声明には、米国の強硬な反対で「保護主義に対抗する」との決まり文句が盛り込めなかったからだ。今後、果たして自由貿易を堅持できるのか。保護主義への傾斜を強めるトランプ米政権をはじめ、不安材料は少なくない。世界経済について、国際通貨基金(IMF)は昨年3・1%だった成長率が今年3・5%、来年には3・6%になると予想している。回復基調にあるのは確かなのかもしれない。ただ、楽観は許されまい。自制を求める国際社会を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を巡って緊張が高まり、シリア情勢などのリスクもあるからだ。欧州連合(EU)の先行きにも不安がある。離脱を決めた英国は6月に総選挙を控え、EUとの交渉も難航しそうだ。フランスでは、きょうにも大統領選の決選投票に進む候補2人が決まる。EUに否定的な候補が決選に残れば、EUの結束が揺らぎかねず、金融市場が混乱する事態も懸念されている。ただ、最も高いリスクは、やはりトランプ米政権の保護主義的な政策だろう。巨額の貿易黒字を稼いでいる日本や中国を念頭に、不均衡を是正する必要性を米財務省は訴えている。そうした米国の姿勢が波紋を広げている。IMFの活動方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)がきのう採択した共同声明でも、従来の「反保護主義」の記述は盛り込まなかった。G20財務相会議の声明に倣った形だが、「あらゆる形の保護主義に抵抗する」とした前回のIMFC声明に比べ、後退したのは明らかだろう。「内向き志向の政策を避ける」との記述を入れて米国をけん制し、保護主義への対抗姿勢は何とか保った。しかし自由貿易を尊重するとのメッセージはどこまで届くのだろうか。保護主義をこれ以上広げさせないため、各国は国内の格差解消を目指すべきである。成長から取り残されたと感じる人々の不満を放置すれば、昨年秋の米大統領選で見られたように、自由貿易の否定や排外主義につながりかねないからだ。経済が成長すれば、幅広い人に恩恵を行き渡らせるようにすることが欠かせないはずだ。日本を含めた各国政府は、効果的な再分配策に真剣に取り組んでほしい。踏み込み不足は、為替政策でも見られた。財務相会議は、輸出を増やすため自国通貨を安値にするのは避けるという国際合意を確認した程度にとどまった。「自分の国さえよければいい」との考えに基づく政府による過度な介入は論外だ。7月にはトランプ米大統領が初めて出席し、G20首脳会合が開かれる。自由貿易の尊重で各国の足並みがそろわなければ、G20の枠組み、ひいては世界経済に打撃を与えかねない。日本政府こそ、米国にしっかり主張すべきだろう。食料安保の観点から農産物への特別な配慮は必要だろうが、自由貿易堅持の原則の中で、国際協調を模索しなければならない。

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  • 【山陰中央新報】

    天皇陛下の退位を巡り、政府の有識者会議が最終報告をまとめた。衆参両院の正副議長が先に各党派から意見を聞き取り、与野党の合意を経て安倍晋三首相に提出した国会見解を踏まえ、特例法による退位後の陛下の呼称を「上皇」とするのがふさわしいとした。皇后さまは「上皇后(じょうこうごう)」とした上、敬称はそれぞれ「陛下」を用いるという。また新天皇の即位後に皇位継承順1位になる秋篠宮さまの待遇については「皇太子家」並みにするのが適当とするなど退位実現に必要な制度設計はほぼ整った。これを受けて政府は近く特例法案の骨子と要綱を国会に提示。5月中旬に法案を閣議決定し、提出する方向で調整を進めている。しかし、皇位の安定継承という重要な論点が残る。国会見解は政府が「女性宮家の創設等」を速やかに検討すべきだとした。今回の提言も皇族減少を課題として挙げているが、女性宮家など具体策には触れていない。最近明らかになった法案の付帯決議案も同じ書き方になっている。さらに骨子案には、将来の天皇退位の先例となり得ることへの言及もない。ぎりぎりの調整で国会見解に取り入れられた野党の主張が徐々に削られているのが見て取れる。政府、与党は「国会の総意」に立ち返り、いま一度、検討を深める必要があるのではないか。憲法は天皇の地位について「国民の総意」に基づくと定める。退位を巡る法整備で与野党対決が鮮明になれば、皇位は不安定なものになる。早々と陛下一代限りの特例法制定の方針を固めた与党と、皇室典範改正による退位の恒久制度化を主張する民進党との溝をどう埋めるか−が合意形成の最大の焦点になった。また民進党が検討課題に掲げた女性宮家創設についても自民党を支える保守層に根強い反対があった。与党の意向を背景に有識者会議は最初から女性宮家を議論の対象から外し、3カ月余りの議論を経て1月下旬、特例法制定が望ましいとする論点整理を公表した。ただ特例法による退位であっても、将来の先例になるとの考えを示した。これを足場に正副議長による各党派の意見集約が進められ、国会見解には「天皇の地位について定める特例法は、この法律と一体をなす」との典範付則の規定案が明記された。さらに女性宮家創設についても「安定的な皇位継承を確保するため政府が速やかに検討を加えるべきだとの共通認識に至った」とあった。典範付則に特例法の根拠規定を置くことで「先例になり得る」とする一方で「退位は例外的措置」とするなど与野党に配慮した折衷案の色合いが強いが、一定の合意に至った点は評価できる。ただ最終報告にも付帯決議案にも、女性宮家は出てこない。典範付則の根拠規定は骨子案で「天皇陛下の退位に関する特例法は、この法律と一体を成す」となっている。「陛下」の二文字を加えたことで、あくまで陛下一代限りの例外的措置と強調したい意図がにじむ。法案提出に向けた今後の与野党協議では、これまでの見解を軸にした練り直しが必要だろう。

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  • 【愛媛新聞】

    何が何でも成立させる。批判に耳を傾ける気は、最初からない。そんな本音を隠そうともしない政府与党の、強行的な国会運営が続いている。野党も国民も民主主義の瀬戸際に立つ自覚を持ち、本気で廃案を目指さねば必ず禍根を残そう。「心の動き」を罪に問う「共謀罪」が盛り込まれ、過去3度も廃案となった法案が先週、4度目の実質審議に入った。かねて無責任かつ見当外れな答弁を繰り返す金田勝年法相を「隠す」狙いであろう。衆院法務委員会の審議に入るや、法相を補佐する政府参考人として法務省刑事局長の答弁を与党側の賛成多数で認めた。与党が法相に「説明放棄」させ、その上で審議を押し切るための暴挙。到底容認できない。国民の人権を大きく脅かす重大法案を、法相が説明もできないなら即刻辞任すべきである。しかも、そこまで「防御」しながら早くも政府側答弁の不一致や矛盾、疑義が続出している。驚くべきは「一般の人が(共謀罪の捜査の)対象にならないということはない」(盛山正仁法務副大臣)との発言。これまで安倍晋三首相以下、口をそろえて「対象は組織的犯罪集団。一般人が対象になることはあり得ない」と強弁してきたが、あっさりと翻された。刑事局長も「過去の法案と適用対象の範囲は同じ」と説明。「テロ対策は口実」「本質は変わらない」との疑念を裏付けるもので、国民を欺くうそは看過できない。改正案は一見限定的だが「正当な団体でも目的が一変すれば組織的犯罪集団」(法務省)。判断するのは捜査機関で何の歯止めにもならない。運用への懸念に「捜査は適切に行われる」(首相)では答えになるまい。また犯罪の計画段階で処罰されるということは、もっと前から捜査対象になるということ。公権力が「目を付けた」国民の恒常的な監視が前提、と言わざるを得ない。法相も「準備行為が行われる前の段階でも任意捜査は考えられる」と認めた。さらに対象犯罪を676から277に減じたが、「過去の数え方なら300を超す」と追及され、法相は「数え方に一定のルールはない」。取り繕う気もない答弁にあぜんとする。与党全体にまん延する、国会論議や法の整合性を軽視する姿勢を強く危惧する。首相は答弁で「『そもそも』罪を犯すことを目的としている集団でなければならない」と述べて「そもそも」の定義を問題視され、「辞書で調べたら『基本的に』の意味もある。ご存じなかったかもしれないが」と切り返した。だが類語を除き、辞書には載っていない。感情的で根拠薄弱な反撃は謙虚さに欠け、目に余る。現段階で説明のつかない法律が、成立後に適正かつ抑制的に運用されるとは、とても思えない。与党の詭弁(きべん)を許して「権力の武器」を渡してしまえば取り返しがつかない。国会の、存在意義を懸けた奮起を求めたい。

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  • 【徳島新聞】

    お金の貸し借りや商品の売買といった、私たちの生活に身近な契約のルールを定めているのは民法である。明治時代の1896年に制定されて以来、121年間、契約分野は抜本的に改正されたことがない。民法の規定を大幅に見直す改正案が、今国会で成立する見通しとなった。現実の社会とずれてきたルールは、時代に合わせて変える必要がある。難解な条文は分かりやすいように書き換えなければならない。遅きに失した感もあるが、そうした狙いからの大改正は歓迎できる。施行日は公布から3年以内で、2020年ごろになる。政府は、混乱が生じないよう十分に周知を図ることが大切だ。改正される項目は約200に上る。取引に関しては、売り主と客との契約条項を示した「約款」のルールを新設する。今の民法には規定がなく、争いが絶えないからだ。改正案は、約款に合意すれば内容を理解していなくても契約が成立すると定める。半面、客に一方的な不利益を強いる内容は無効とした。例えば、インターネット通販で買った商品に欠陥があっても、約款に「交換はしない」「同意する」と記されていれば交換は難しくなる。「読んでいなかった」という主張は通用しない。しかし「故障していても一切交換しない」といった契約条項は無効で、交換の対象となる。購入者に自己責任を求める一方、売り主の責任放棄も認めない。バランスが取れた常識的な規定といえよう。取引の迅速化が求められる中、定式化した約款はネット通販や銀行、保険、運送など、さまざまな分野で使われている。法的根拠を与え、事業者と利用者双方の立場がより明確になれば、トラブル防止につながるだろう。未払い金や滞納金を請求する権利がなくなる期限(消滅時効)も変更する。現行は10年を原則とし、飲食代は1年、電気料金2年、診療費3年など、業種ごとに長さが異なっているのを、原則5年にする。期限の違いに合理性がなく、分かりにくいとの批判は以前から根強かった。それだけに、統一するメリットは小さくない。このほか、損害賠償額の算定などに使う「法定利率」を引き下げたり、中小企業向け融資の連帯保証人の保護策を強めたりと、見直しの範囲は多岐にわたっている。中には、普通の使い方をしていて傷んだ賃貸住宅の補修費は家主が持つなど、判例で定着した決まり事を明文化するものもある。社会の仕組みや商習慣の変化に沿って法律を変えるのは、国会の仕事である。長年にわたり怠ってきた責任は重い。国会は、改めて自らの役割をしっかりと自覚してもらいたい。

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  • 【高知新聞】

    国土交通省が、赤字バス路線に対する補助の引き下げを検討していることが分かった。対象となるのは、一定の運行回数や輸送実績があり、複数の市町村を走る路線だ。地域の生活に欠かせない場合も多かろう。高知県交通運輸政策課によると、高知県には対象として20の路線がある。国交省は、地方自治体とバス事業者向けの説明会を開いたという。感触を探りながら方針を固めるのかもしれない。ただ、国が補助を引き下げれば、その分は地方が肩代わりするしかないだろう。しわ寄せが及ぶ地方も国と同じく財政状況は厳しい。拙速に結論を出せば、地方の公共交通に影響を与えかねない。慎重に考えるよう国交省に求める。補助は全国一律の仕組みとなっている。収入に占める運行経費の割合を算出した上で行政が補う。運行経費の一定の割合を支援する形ともいえよう。現在は、運行経費の45%を上限として、国と地方が半分ずつ補助している。この上限について国は40%としたい考えだ。収支改善へ事業者の一層の努力を促すことが目的だろう。地方の多くでは乗客減が止まらず、経営環境は厳しさを増していよう。ただしバス運行は営利事業でもある。運行回数や路線など効率化を図り、採算を取る努力は当然求められる。一方、補助金は税金から出される。補助の在り方に関しては常に点検する必要もあろう。国交省には事業者が補助金頼みとなるのを防ぐ狙いもあるとみられる。もっとも、バス路線への補助は住民の生活を守ることが最大の目的ではないのか。乗客が少なく赤字路線であっても、利用する高齢者や学生らにとっては、なくてはならない生活の足である。補助の引き下げは、地方を軽視する姿勢と受け取られても仕方あるまい。収支を改善させれば、従来通りの補助を続けるという。成果に応じて差をつけるアメとムチのような政策といっていい。問題なのは、地方も都市も同じ理屈で収支改善を求めようとする点だ。人口は大都市に集中し、地方は寂れるばかりである。地方のバス事業者が収入を増やすことは極めて難しい。経費削減に努め、相当切り詰めてもいよう。成果を上げるのは困難なのに、国が地方に無理難題を押し付けているようにもみえる。公平性は欠かせないにせよ、都市と地方では全く条件が違う。地方の実情への理解が欠かせない。高齢ドライバーによる事故の増加を受け、公共交通の重要性が見直されている折でもある。運転免許を返納した高齢者はバスなどに頼らざるを得ない。交通手段をどう確保していけばいいか、知恵を出し合う必要がある状況だろう。補助の引き下げは地方の疲弊を助長する恐れもある。地方創生の掛け声にも逆行するのではないか。

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  • 【西日本新聞】

    日銀の黒田東彦総裁が進めてきた大規模な金融緩和「異次元緩和」が、5年目に入った。大量の国債買い入れやマイナス金利の導入など確かに「異次元」ではある。だが、当初の「2年程度で物価上昇率2%」達成の目標は何度も先送りされ、いまだに実現していない。一定の効果もあったが、それ以上に副作用が無視できない。緩和はどこまで続け、手じまいをどう行うのか。市場も国民も出口の見えない政策への説明を求め始めている。日銀は「出口戦略は時期尚早」と口を閉ざすのではなく、指針を示すべきだ。異次元緩和は日銀が金融機関から国債を購入し、市場に大量の資金を供給する政策として2013年4月に始まった。豊富な資金が貸し出しや設備投資に回り、景気を刺激して物価上昇につなげる狙いだった。しかし、物価は約1年後に1%台半ばまで上昇した後は失速する。14年10月に追加緩和を行い、16年2月には緩和を量から金利にも広げるマイナス金利政策を導入した。同9月には、それも手直しして長短金利操作を軸とする政策に枠組みを変更している。この4年、海外経済の回復などもあって円安・株高は進み、企業収益も改善し人手不足で失業率は下がった。ただ、賃金は期待ほど上がらず、消費も低迷している。問題なのは、この間、蓄積されてきた将来リスクだ。国債の大量購入で、日銀の国債保有残高は420兆円を超え、発行残高の4割に達している。超低金利で国の財政規律も緩み、「国の借金」は1千兆円を超えた。マイナス金利は金融機関の収益を圧迫し、年金運用にも悪影響を及ぼしている。この先、日銀が国債の買い入れを減らせば、国債価格は下落して金利が上昇し、金融システムに衝撃を与えるだけでなく、日銀保有国債に巨額の含み損が発生する可能性が高い。黒田総裁の任期は来春までだ。続投・交代を問わず、異次元緩和を総括し、出口を見据えた方向性を提示すべきではないか。それが総裁に課された宿題と考える。=2017/04/24付西日本新聞朝刊=

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  • 【宮崎日日新聞】

    ◆定数増やす議論あっていい◆衆院小選挙区の「0増6減」と「1票の格差」是正のための新たな区割りの改定案を、衆院選挙区画定審議会が安倍晋三首相に勧告した。青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で定数を1減にするとともに、格差を2倍未満に抑えるため区域変更が必要な13都道府県を含め計19都道府県の約100選挙区で区割りを見直す。政府は勧告を反映した公選法改正案を5月の大型連休後に国会に提出。今国会で成立すれば1カ月の周知期間を経て、7月ごろ新たな区割りが施行される見通しだ。地方の声反映すべきただ今回の課題は残る。小選挙区の定数配分は、2020年の国勢調査の結果を踏まえ、新たな配分方法「アダムズ方式」に基づいて再度検討されることになっている。大都市圏への人口集中の流れが止まらない中で、人口比だけを厳格に適用すれば、地方の議員定数はさらに減少していく可能性が大きい。衆院に導入された小選挙区比例代表並立制の選挙が1996年に初めて実施されてから21年が経過し、最近の選挙では、得票率以上の割合の議席が多数を占めた政党に配分される現状がある。地方の声をどう反映させるのかの視点も含め、選挙制度の抜本的な改革の議論に取り組む必要があろう。衆院の「1票の格差」について、最高裁は格差が2倍を超えた2009、12、14年の衆院選を3回連続して「違憲状態」と判断した。これに対し、衆院議長の下に設置された有識者調査会は昨年1月、小選挙区6減、比例代表減の定数10削減と、あらかじめ各都道府県に定数1を割り振る「1人別枠方式」をやめ、人口比をより正確に反映する「アダムズ方式」の採用を答申した。抜本的な改革が必要民進党は10年国勢調査結果を反映させる小選挙区「7増13減」案を提起したが、小選挙区に現職議員を多く抱える自民党はアダムズ方式の適用を20年国勢調査に先送りし当面は「0増6減」とする案を示し、この案が成立した。党利優先で抜本的な見直しから遠ざかったと言えよう。最近の司法は「法の下の平等」を重視し、「1票の格差」の是正に厳格な姿勢を示している。基本原則ではあるが、人口比を貫くだけでいいのかとの視点からの議論は行うべきだ。今回の改定でも多くの市区町村が別々の選挙区に分割される。選挙を身近に感じられなくなる懸念がある。各党が「身を切る改革」として定数削減を主張してきた。しかし有権者の多様な声を吸い上げるには議員定数を増やすという議論もあっていいのではないか。その場合には衆院の役割や機能を再考し、参院の選挙制度も関連させて見直しを検討すべきだ。国会では衆参別々に議論が行われているが、これを統合して抜本的な改革に取り組まない限り、今後も課題は残り続けることになる。

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  • 【佐賀新聞】

    今村復興相会見「質問」は記者の責務2017年04月24日05時00分今村雅弘復興相の会見は、記者会見の重みと記者の責務について改めて考える契機になった。大臣会見は国民に代わって、政府方針や施策をただす重要な機会。政治家の言葉を公にすることで問題点を浮き彫りにし、責任の所在を明らかにしていく。今村復興相の会見ではフリーの記者が厳しく回答を迫った。そこでは当事者に代わって「知るべきこと」「伝えるべきこと」を聞くという記者としての当然の責務を提示した。今村復興相の会見録は、復興庁のホームページに全文が掲載されている。テレビでのやり取りをみると、「売り言葉に買い言葉」のような応酬の結果と捉えた人もいたかもしれない。ネット上では、質問した記者に対して「しつこい」と批判、今村復興相に同情的な声もあった。今村復興相の「激高」の背景には、職務は果たしてきたという自負もあったろう。しかしながら、記者の質問によって、原発事故での自主避難者に対する国の姿勢が図らずも露呈したことは確かだ。福島の人たちは「知りたかった」はずだ。避難者である自分たちへの政府の考え方を。その一番大事なところを、フリー記者は聞いたのだった。記者会見で思い出すのは、1975年10月31日に行われた昭和天皇と日本記者クラブとの会見だ。広島市にある中国放送の記者、秋信利彦氏(故人)が、手を挙げて次のように質問した。「戦争終結にあたって、広島に原爆が投下されたことを、どのように受け止められましたか」すると、昭和天皇は次のように答えた。「遺憾には思っていますが、戦争中であることですから、広島市民に対しては気の毒であるが、やむを得ないことと私は思っています」この会見は従来、宮内記者会だけに絞られていた会見を、ほかの記者にも広げたものだった。予定外の質問に会見場はざわついた。会見が訪米直後のタイミングであったため、原爆に触れるには批判もあったという。だが、とっさの質問でありながら、昭和天皇は体を秋信記者の方に向け、真摯(しんし)に受け答えをした。この会見は翌日の佐賀新聞でも1面トップで報じている。秋信氏は原爆での小頭症児問題を取材していた記者だった。会見時は戦後30年の節目。広島の記者として原爆のことを聞くのは当然のことだったと秋信氏は後に話している。被爆者に代わって、これだけは聞かなければならないという思いが彼を動かしたのだろう。最近、よく「寄り添う」という言葉を耳にする。報道機関にとって寄り添う作業のひとつは聞く機会の限られた当事者に代わって、「聞くべきことを聞き」、「伝えるべきことを伝える」ことだろう。その意味では、今村復興相に迫ったフリー記者も、天皇会見の秋信記者も、思いは同じだったのではないか。全国の新聞社、放送局では新人記者が研修を終え、支局や支社に配属される時期だ。情報管理が進み、取材環境が厳しくなっている今、時には、権力を持つ人たちの「強弁」や「はぐらかし」に遭うだろう。だが、それに立ち向かう気概を持ち、記者としての思いと情熱を持って、人々に寄り添う仕事をしてほしい。(丸田康循)

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  • 【南日本新聞】

    天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議が最終報告をまとめ、安倍晋三首相に提出した。特例法の制定を柱とする国会見解を踏まえ、退位後の呼称(称号)を「上皇」とし、象徴としての行為を全て新天皇に譲るとする内容だ。退位実現に必要な制度設計はほぼ整い、政府は特例法案を来月19日にも提出する方向だ。一方、最終報告は皇族減少対策の必要性に言及したものの、「女性宮家」創設などの具体策には触れなかった。皇族の減少と、陛下が望まれる「象徴天皇の務め」が「安定的に続いていくこと」を考えれば、置き去りにしていい問題ではない。国会見解は、女性宮家の創設を含め、安定的な皇位継承の方策を政府が速やかに検討すべき、と記していた。政府は国会見解を踏まえて法案を検討するべきだ。有識者会議は、昨年8月に陛下が退位の意向をにじませるビデオメッセージを発表されたことを契機に、検討を重ねてきた。ただ、当初から首相官邸の意向を忖度(そんたく)して議論が進められているという指摘があった。中間とりまとめの論点整理は、政府が検討する「一代限りの特例法」を後押しする内容だった。最終報告に「女性宮家」の表現を盛り込まなかったのも、首相の支持基盤である保守層の根強い反対への配慮がうかがえる。最終報告の前に明らかになった政府の特例法案の骨子案と付帯決議案も、国会見解から後退した内容と言わざるを得ない。「女性宮家」創設には触れず、将来の天皇退位の先例となりうることへの言及もない。国会見解は皇室典範の付則に根拠規定を置くことで、「先例となり得る」とする民進党と、「例外的」とする与党が折衷案ながら、合意に至ったはずだ。ところが骨子案は、国会見解で「天皇」だった法案名を「天皇陛下」と変更。陛下一代限りの例外的措置を強調する意図がにじむ。南日本新聞社の県民世論調査では、天皇陛下の退位を巡る法整備について「女性・女系天皇など天皇の在り方を含めた検討」を求める人が43.2%と最も多かった。「皇室典範を改正し、全ての天皇に適用する」との回答も27.3%で、「一代限りの特例法」の22.4%を上回っている。将来を見据え、根本的な議論を求める国民の声であろう。憲法は皇位を「主権の存する日本国民の総意に基く」と定める。国会はこの原則を忘れず論議してもらいたい。

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  • 【琉球新報】

    うるま市民は市政の継続を選択した。「市民協働のまちづくり」を掲げる島袋俊夫氏(64)=自民、公明推薦=が3選を果たした。島袋氏は県内ワーストだった完全失業率を大幅に改善するなど、市民生活の向上などで数々の実績を上げた。それを市民が高く評価した結果である。引き続き市勢発展にまい進してほしい。うるま市は具志川、石川、勝連、与那城の2市2町が合併して13年目に入った。地域間の経済格差の顕在化など、さまざまな課題がある。島袋氏は2期8年の経験で培った行政手腕を発揮し、一つ一つの課題を着実に解決することで、市民の負託に応えてほしい。市の完全失業率は、2010年国勢調査の18・17%から15年国勢調査では7・49%と11ポイント近い改善を遂げた。県内ワーストこそ脱却したものの、依然として11市では最も高い。市民1人当たりの所得は41市町村で38位である。完全失業率の改善、市民所得の向上を図らなければ、市民全体が豊かさを実感することは難しい。島袋氏には、豊富な経験を生かして着実な進展を期待したい。島袋氏が掲げた中城湾港新港地区への企業誘致などは、市民の働く場の増加につながる。市を挙げて粘り強く取り組み、目に見える成果を上げてほしい。旧2市2町の均衡ある発展も大きな課題である。具志川地域と石川地域は人口が増える一方で、勝連地域と与那城地域は人口減少が続いている。島袋氏が政策に挙げた勝連城跡周辺の観光拠点整備や、光ケーブルの整備による新規企業の誘致などをぜひ実現してもらいたい。島袋氏は子育て支援の拡充も市民に約束した。就学前の園児までを対象にした子ども医療費の助成は4月から小中学生までに拡大した。今後も継続する方針である。待機児童対策として18年度までに保育施設24カ所を整備し、児童受け入れ定員を800人に増やす考えだ。いずれも子どものいる家庭にとって大きな支えになる。公約は実現しなければ、意味がない。すぐに実現できずとも着実に前進させ、有権者の負託に応えることが市長の責任である。島袋氏は「掲げた政策を着実に実行、実現する」との姿勢を示している。その姿勢を貫き、重責を全うすることを望みたい。

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  • 【沖縄タイムス】

    うるま市長に自民、公明両党が推薦する現職の島袋俊夫氏が当選した。社民、共産党などが推薦し翁長雄志知事も支援した山内末子氏を破っての3選である。名護市辺野古の新基地建設を巡り政府と県の対立が深まる中、安倍政権と翁長氏がそれぞれ推す候補の一騎打ちは全国的にも注目を集めた。両陣営とも選挙戦で「辺野古」を語ることはなかったが、1月の宮古島、2月の浦添市長選と比べ、「安倍政権」対「オール沖縄」の構図が色濃く表れた選挙でもあった。島袋氏の応援に小泉進次郎衆院議員ら国会議員が駆け付け、山内氏の応援では翁長氏が何度もマイクを握った。過熱した「代理対決」を島袋氏が制し、宮古島、浦添と3連勝したことは、政府与党にとって大きな意味を持つ。直近の知事選や衆院選、参院選で新基地反対の候補が当選した沖縄の民意に対抗するよりどころとなるからだ。国は辺野古違法確認訴訟での勝訴に続き、埋め立て工事で「後戻りのできない現実」をつくり出せば民意も変わってくると見ている。見据えるのは来年の名護市長選、そして知事選である。一方、敗北続きの翁長氏は剣が峰に立たされている。政府は今週にも埋め立て区域を囲む堤防を造る護岸工事に着手する方針で、移設計画は大きな節目を迎える。「オール沖縄」勢力は辺野古と直接関係のない選挙で、その壁を打ち破れない。民意を確認する県民投票の是非でも意見が割れており、辺野古ノーの取り組みは再構築を迫られている。■■「代理対決」が報じられる一方で、うるま市民が重視したのは足元の課題だ。うるま市は人口規模では県内3番目の都市だが、いくつもの指標が示すのは街の閉塞感である。完全失業率7・49%は11市の中では最悪。1人当たり市民所得は168万6千円で県平均の8割に満たない。さらに保育所に入れない待機児童問題が深刻で、貧困対策を含む子育て支援が選挙戦の中心テーマにもなった。島袋氏が強く訴えたのは、待機児童の解消など子育て支援の拡大、中城湾港新港地区への企業誘致など経済の活性化と失業率の改善だ。選挙結果は「実績を踏まえた課題克服」を現市政に委ねるものである。子ども医療費助成の中学校卒業までの拡充や不十分とはいえ失業率の改善などの実績が、行政の継続を求める判断につながったのだろう。■■敗れた山内氏も子育て支援や雇用拡大・失業率の改善を公約に掲げており、その内容は島袋氏の政策と重なる部分が多い。雇用の場をつくり出すことは地域活性化の条件。その鍵は地域に眠る資源の掘り起こしにある。将来を担う子どもたちが最低限享受すべき生活や教育を保障することは行政の責務である。「オール市民」を唱える島袋氏には、保革を超えた課題として力強く取り組んでもらいたい。

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