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<さんさん商店街>新天地で行列取り戻す

02/27 【河北新報】

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 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の商店が集まる「南三陸志津川さんさん商店街」が3月3日、開業する。新たに出店する飲食店「食楽しお彩」店主の後藤一美さん(45)は、真新しい厨房(ちゅうぼう)で再出発の日を待ち望む。 6年ぶりに手にした包丁に胸が高ぶる。後藤さんは今月24日、新しい店に調理道具を運び入れた。その中には震災2カ月後、被災した店の跡地で唯一見つかった柳包丁があった。塩水に漬かって全体がさびていたが、店を始める時のために研ぎ直してもらっていた。 「包丁は料理人にとって片腕。見つかった時、『またお客さんの前に立ちなさい』と背中を押されているようだった」と語る。 後藤さんは町内の中学を卒業後、仙台市の調理師専門学校に通い、すし店などで修行を積んだ。2007年、古里の志津川中心市街地で店を開いた。 手頃な値段で味わえる海鮮料理はすぐに、地元客に受け入れられた。09年に海鮮を取り入れた町名物「キラキラ丼」を周辺の飲食店5店舗でメニュー化した。休日には町外からも客が訪れ、店の前に長い列ができた。 仕事が軌道に乗り始めた頃、津波が襲った。店と海に近い自宅が被災。妊娠8カ月の妻、幼稚園と小学校に通う2人の子どもと志津川小に避難した。店再開のめどが立たない中、避難所で常連客に「料理また作ってよ」と言われ、奮起した。 キッチンカーでの移動販売を始めたのは11年7月。手狭の仮設住宅では調理が難しいだろうと、揚げ物や総菜を取りそろえた。「車で訪ねていくことで、店で待っていては会えない住民と接することができた」と振り返る。仮設商店街には入らず、16年末まで移動販売を続けた。 「お客さんに、この町の名物をいつでも味わってもらいたい」と、新しい店では海鮮丼に加え、町内産タコの切り身を載せた「たこつぼラーメン」やたこ飯を常時、提供する予定だ。 店づくりは6年間の思いを込めた。限られたスペースに畳の小上がりや個室を用意し、くつろげる空間を目指した。商店街の共同トイレとは別に、店内に男女別のトイレも設けた。 「内装費は家1軒分かけた」といい、自宅も再建した後藤さんの肩には大きな負担がのしかかる。それでも「震災後、知名度が上がったさんさん商店街というブランドの助けを借りなければ生き残れない。この地でまた、震災前の行列を取り戻したい」と意気込む。 新商店街は木造平屋6棟に28店舗が入り、うち新規出店は5店ある。各店舗は3日正午に営業を始める。