▼コラム
1.「卓上四季」【北海道新聞】 大手衣料品販売店で買った品物が不良品だと腹を立て、女性客が従業員に土下座を強要した。さらにその様子を自ら撮影してツイッターに上げたことから、ネット上で大きな問題になった。少々昔の出来事だが覚えている人もいるだろう▼こうした迷惑行為は意外と多いらしい。流通業などが加盟する産別労組UAゼンセンが5万人を対象に行った調査では、約7割が迷惑行為を受けた経験があった▼内容(複数回答)は「暴言」27・5%、「同じ内容を繰り返すクレーム」16・3%。「土下座の強要」も1・8%で、半数が「迷惑行為は最近増えている」と感じている▼だが、店側の対応は「謝り続けた」「何もできなかった」が計4割を超えた。有効な手だてがないのが実情で、多くの従業員がストレスを感じているそうだ▼トラブルの際、よく耳にするのが「お客さまは神様だろう」という決まり文句だ。故・三波春夫さんの名言だが誤解されている。三波さんは神前で祈るように雑念を振り払った心にならねば、完璧な芸を見せられないという意味で「お客さまは神様です」と言った(三波春夫オフィシャルサイト)。何をしてもいいということではない▼商売の心構えとして客は大切にしなくてはなるまい。だが、従業員も守る必要がある。企業だけでなく業界や国も協力し、対策を講じてもらいたい。疫病神には、即刻お引き取り願おう。2017・11・24
2.「河北春秋」【河北新報】 夏の長雨や台風の影響が心配された東北地方の稲作は、10月15日現在の作況指数が99で「平年並み」の見通し。コメどころの秋田県は県南部が97の「やや不良」なものの、県全体では99と、大きな落ち込みはなさそうだ▼この時季、県内では新米を使ったきりたんぽ鍋が食卓や宴席に登場する機会が増えてくる。きりたんぽと共に欠かせないのが比内地鶏。歯応えのある肉を味わうだけでなく、ガラでだしを取るため、味の決め手になる▼国内有数の地鶏ながら、生産量は2008年の78万羽から16年は51万羽に減っている。苦戦の要因が価格面。飼育期間が150日と他の地鶏に比べて長く、雌のみを出荷するため、首都圏のもも肉の平均小売価格は名古屋コーチンよりも2割ほど高いという▼一方で、県などが肉を化学的に調べたところ、うま味成分のイノシン酸が他の地鶏の約1.3〜2倍あった。味を強く感じさせるアラキドン酸や疲労回復効果があるとされるカルシノンの含有量も多かった▼比内地鶏のおいしさを知ってもらい、消費拡大につなげようと、県内の旅館やホテルなど10施設でフェアを開催中。きりたんぽ鍋以外にも、大根おろしを使った「雪見鍋」や、しゃぶしゃぶ、すき焼きなどのメニューがそろう。この冬、一度お試しあれ。(2017.11.24)
3.「天地人」【東奥日報】 <メジャー行き武蔵も許す二刀流>。本紙夕刊「世相川柳」にこんな句があった。いま二刀流といえば、投手と打者の両方で活躍してきたプロ野球日本ハムの大谷翔平選手。来季からの米大リーグ挑戦を表明しており、年内に移籍先が決まる見通しだ。歴史を振り返って、多くの日本人が知っている二刀流の使い手は、江戸時代初期の剣術家・宮本武蔵であろう。60回余の勝負をして一度も負けなかったと、自著「五輪書(ごりんのしょ)」に記している。「五輪書」は二刀流についても論じている。その一部を紹介すると、初心の者は太刀・刀を両手に持って稽古するのがほんとうだ。一命を捨てるときは、せっかくの道具を残さず役に立てたいものだ−などといった内容である。これまで二刀流を追求してきた大谷選手は武蔵と同じく、自らの武器である投打の実力を余すところなく発揮したいはずだ。投打両方を追い求めることに、当初は周囲から批判の声も上がった。だが「僕はそれしかやったことがない」ときっぱり。努力を重ねた結果、投打で常識を覆す好成績を収めた。米大リーグで投打の二刀流として知られるのは、714本のホームランを打った国民的英雄ベーブ・ルース選手。投手としても94勝という成績を残した。「現代の武蔵」といえる大谷選手は二刀流にさらに磨きをかけ、日米両国の野球ファンをうならせてほしい。
4.「天鐘」【デーリー東北】 天鐘(11月24日)多くの仕事は、誰かが誰かに発注することで成立する。発注側と受注側の関係でみると、どうしても前者の方が偉く感じてしまうのだが、発注する側にもマナーはあるのではないか▼エッセイストの酒井順子さんが『楽しむマナー』(中央公論新社編、中公文庫)の一編に書いていた。いわく、仕事は自販機にコインを入れてボタンを押せば品物が出てくるのとは訳が違う。人と人との付き合いの中で、最低限の気遣いは必要だろうと▼確かに仕事の依頼から終了まで、発注者が受注者と入念にやり取りしなければ、意図した結果は得られにくい。その中には「やってはいけないこと」の確認も含まれよう▼彼らはどんなやり取りをしていたのだろう。原発から出る「核のゴミ」の最終処分場問題で、候補地選びを進める経産省と原子力発電環境整備機構(NUMO)である。広報業務を委託していた会社が謝礼を持ち掛け学生を意見交換会に動員していた▼いわゆる孫請けの関係という。やらせで人を集めても、理解が深まるはずはない。単なる丸投げならば発注者のマナー違反だし、主催者としての責任は免れようもない▼発覚のきっかけは大学生が上げた疑問の声だった。若者の胸中に芽生えただろう、原子力政策への不信を憂える。本気で候補地を探すなら、委託などせず自ら汗を流すのがよかろう。どうやら発注者の適性は怪しそうだから。
5.「北斗星」【秋田魁新報】 ある男が異世界からの来訪者と出会い、小さな光線銃をもらう。銃が発する光線は強力で、老朽ビルを解体することも、山を崩し宅地にすることもできる。男は増長し、銃の威力をかさに着て世界征服をもくろむようになる▼周囲の一人がそれをいさめると、男は腹を立てて相手に向けて引き金を引く。すると銃は粉々になってしまう。人の役に立つことに使うために作られたもので、殺意を感じ取ると自動的に分解する仕掛けになっていたのだ▼以上はSF作家星新一さんの短編「安全装置」の粗筋である。優れた科学技術を兵器に利用し覇権を握ろうとする者は、いつの時代にもいるものだ。そうした企ては愚かでむなしいことだよ、と星さんの寓話(ぐうわ)は教えている▼人工知能(AI)がさらに発達すれば、この光線銃のような賢い装置が作られるかもしれない。核兵器など大量破壊兵器があふれている現実の世界で、使用が回避されているのは人間の理性という安全装置が働いているためだ▼核・ミサイル開発をやめない北朝鮮を米国は再びテロ支援国家に指定した。北朝鮮は今のところ挑発行為を自制しているが、国際社会が懸念するのは、孤立をいとわぬかの国の指導者に理性を期待できるのかということだ▼今年が没後20年の星さんは千編以上の作品を残し、その結末をハッピーエンドにも、悲惨の極みにも仕立てた。存命なら北朝鮮を巡る現状をどんな寓話にするだろう。めでたい大団円になればいいのだが。
6.「談話室」【山形新聞】 ▼▽2014年大相撲夏場所12日目、横綱鶴竜と関脇豪栄道の両力士による結びの一番でのことだ。勝ち残りで土俵下にいた横綱白鵬関が右手を挙げた。日本相撲協会審判規則では控え力士も物言いをつけることができる。▼▽協議の結果、豪栄道関がまげをつかんだとして鶴竜関は反則勝ちを得た。今回は事情が違った。22日の九州場所11日目、最多勝利記録を持つ大横綱は関脇嘉風関との取組で寄り切られて土が付くなり、土俵下で自ら右手を挙げて立ち合い不成立を訴え、不服の態度を示した。▼▽最高位の立行司で「平成の名行司」とされた第28代木村庄之助=本名後藤悟さん・鶴岡市出身=は1993年の引退を前に「脇役、進行役、誘導役、そして土俵の引き締め役」と自身が担ってきた使命について本紙に語った。行司は身命を賭(と)して勝負の世界に目を光らせる。▼▽そんな立行司が裁く中で立ち合いは成立した。「(式守)伊之助さんが『残った』と言ったので…」。嘉風関は横綱をたまり席まで吹っ飛ばした。上がった軍配は覆らなかった。勝ち名乗りを受けた関脇が花道に下がっても土俵を降りようとしない横綱に品格は失(う)せていた。
7.「風土計」【岩手日報】 2017.11.23シカが日中でさえ大通りを走り抜け、揚げ句は納屋に突っ込む。イノシシは屋敷に飛び込み、田畑を荒らすことも度々だった。「盛岡藩御狩り日記」(遠藤公男著)が描く江戸時代の城下町盛岡の風景▼時計を巻き戻したように、ニホンジカとイノシシが人々の暮らしを脅かす。五葉山周辺に限られていたシカは今や全県に生息域を広げ、これまで「宮城が北限」と言われていたイノシシは岩手でも暴れ始めた▼イノシシは本県では「新顔」だが、捕獲はここ4〜5年で急増した。昨年は狩猟や有害捕獲などで96頭に上る。数とともに問題はその範囲。一関から花巻や雫石などへ北上。沿岸部の陸前高田にも出没している▼「もともといたところに戻っただけかもしれない」。森林総合研究所東北支所の講演会で聞いた。1749年には八戸藩でイノシシが大繁殖し田畑が荒らされ大凶作。「猪(いのしし)ケカジ(飢饉(ききん))」という言葉が生まれた▼縄文時代にはシカと並んで最も普通の哺乳類だった。狩りの安全や子孫繁栄のシンボルとして盛んに土偶に作られた。岩手からイノシシが消えたのは明治時代以降。縄文〜江戸の長さに比べてわずかな時間でしかない▼ただし、「復活」にはそれなりの理由があるはずだ、カノシシ(シカ)とイノシシ。二つの「シシ」は岩手の自然と人の生活を問うているようだ。
8.「あぶくま抄」【福島民報】 ぷかり、ぷかり(11月24日)山形県鶴岡市の日本海沿いに立つ加茂水族館は「クラゲ専門館」だ。国内や外国の海に生息する何種類ものクラゲを展示している。特に、直径5メートルの水槽の中に約2000のミズクラゲが浮かぶクラゲドリームシアターは人気の的。福島県内からも多くのツアー客が訪れる。「クラゲの骨」と言えばあるはずのないもの、極めて珍しいものの例えだ。骨のないクラゲが水中を時に優雅に、時にユーモラスに漂う姿が見る者の心を和ませる。ところがクラゲも顔負けの「骨抜き」事例が先ごろ分かった。厚生労働省の受動喫煙防止対策である。店舗面積が150平方メートル以下なら飲食店での喫煙を認めるとして自民党と調整していることが報じられた。昨年同省が当初示した「30平方メートル以下」からかなり緩和する内容となっている。医師会や患者団体、自民党内からも、より厳しい防止策を求める声があるという。浮遊するクラゲも漂う紫煙も、表す言葉は同じ「ぷかり、ぷかり」だ。ともに心にほっとする「間」をくれるが、煙を嫌う人もいる。対策は東京五輪前の決着を目指すという。子どもたちが大人の喫煙にさらされることのないよう、懸案の漂流だけは御免被りたい。
9.「編集日記」【福島民友新聞】 日本は世界屈指の「トンネル王国」だという。青函トンネル(53.85キロ)は新幹線で通過するだけでも「これは長い」と圧倒されるが、自ら車で走れる道路トンネルも長さ10キロ前後になると「どこまで続くのか」とハンドルを握る手が緊張する▼道路トンネルでは国内5番目に長い新しい栗子トンネルが開通、福島、山形両県の双方から多くの車が行き交う様子は壮観だ。8972メートルの大部分がまっすぐで、壁面は明るく爽快ドライブ。冬将軍も意気消沈だ▼ちなみに長い道路トンネル上位5本のうち関越トンネル(関越道、1万1055メートル)と飛騨トンネル(東海北陸道、1万710メートル)は、栗子と同じく山脈をぶち抜いた。関越は川端康成の小説「雪国」を思い浮かべながらの走りが楽しめる▼飛騨は世界遺産・白川郷の目の前まで一気に連れて行ってくれる。山深い里への観光風景を一変させた、まさに「風穴を開ける」高度な技術は、障壁を乗り越えたいという強い意志がなければ磨かれなかったろう▼本県に対する誤解や無理解は今も、国内外で根強い。これが大きな障壁となって風評を拭いきれないでいる。本県への理解を進めるためのトンネルをぶち抜いて、風穴を開けたい。
10.「雷鳴抄」【下野新聞】 1964年の東京五輪のレスリングで金メダルに輝いた足利市の小幡(おばた)(旧姓上武(うえたけ))洋次郎(ようじろう)さんは、続くメキシコ五輪に肩のけがを押して出場しながらも2連覇を達成した。勝負を通して学んだのは、礼を重んじ、相手を敬う気持ちだという▼小幡さんの出身地、群馬県邑楽町で先日開かれた上武洋次郎杯少年少女レスリング大会。名誉町民でもある金メダリストは「勝ち負けを乗り越え大切なことを学んでください」と、本県を含む11都県から集まった小中学生にエールを送った▼大会は2005年に始まり、今年で13回目。過去の出場者からはインターハイや国体で活躍する選手も現れている。当然、20年の東京五輪に向けた期待も高まる▼「無心一途(いちず)(無心にして一途なり)」。小幡さんが大会プログラムに毎年記している座右の銘である。目標を決めたら、他を犠牲にしてでも無心に突き進む。その結果が五輪連覇であり、数々の激戦からは相手を尊ぶことの大切さも悟った▼東京五輪に向けた環境整備の一つに、受動喫煙対策がある。世界保健機関(WHO)の要請でもあるが、「吸う権利」などを理由に、政府・自民党の動きは鈍い▼対策の根底に思いやりの精神があることは言うまでもない。子どもだけでなく、むしろ大人たちこそが、小幡さんの声に耳を傾けるべきではないか。
11.「いばらき春秋」【茨城新聞】 鹿行地域は南北縦に細長い。国道51号を車で南下し、鉾田市に入ってから鹿嶋市のカシマサッカースタジアムまで45分、そこから神栖市の銚子大橋までさらに45分。合わせて約1時間半の道のりである▼一番北の鉾田市と南の神栖市はそれぞれ先月、今月に市長選があり、市政刷新を訴えた新市長が当選した。いずれも現職が出馬せず新人候補が舌戦を繰り広げ、周辺地域からも注目された選挙戦だった▼鉾田市は農業産出額全国2位、神栖市は農・漁業に加え国内有数の工業地帯を擁する。両市とも特長がある地域だが、課題も少なくない▼鉾田市は人口減少、神栖市は地域医療の再編など基盤的な課題を抱える。それぞれの市長選で争点となった市民交流館や防災アリーナといった公共施設の行方も注目される。新市長の手腕が問われる▼投票率は衆院選同日の鉾田市長選が62・26%、単独の神栖市長選は54・91%。投票しなかった有権者が4〜5割近くいたことになる。市政への関心をさらに高めていくことも地域の課題を解決していく鍵になる▼市長選に限らず、選挙は住民のエネルギーが原動力だ。選挙戦のしこりはすぐには消えないだろうが、新市長にはノーサイドの市政運営で融和を図ってほしい。(利)
12.「三山春秋」【上毛新聞】 ▼切り立つ岩壁が印象的な妙義山系の麓に、記念碑がひっそりとたたずむ。安中市松井田町西野牧の恩賀集落にある碑は1987年、妙義米軍基地計画の中止から33年がたったことを契機に建てられた▼米軍は53年、妙義と浅間山の一帯を演習地とする計画を発表した。演習地は恩賀集落を中心に広範囲にわたり、朝鮮戦争での山岳戦訓練を目的とした施設と言われている▼サンフランシスコ平和条約の発効(52年)により日本の独立が認められて1年。全県的な反対運動へと発展し、54年に計画は中止される。運動にある人物が関わっていたことを最近知った▼高知市出身の平和運動家、西本敦さんは恩賀集落に入り、反対運動の先頭に立った。外部の人間の出入りがあまり多くない土地柄にもかかわらず、地元に住んで古里を守りたい住民に寄り添った▼西本さんは原水爆禁止運動にも身を投じ、58年に広島—東京間の平和行進を始め、「原爆の図」で知られる画家、丸木俊さんとも交流した。しかし、62年に講演会場から佐波東村(現伊勢崎市)の自宅に戻る途中でひき逃げ事故に遭い死去した。38歳の若さだった▼沖縄の米軍基地負担、北朝鮮の核開発や邦人拉致など深刻な問題を抱えている日本。平和を心から愛し、最期まで活動を続けた西本さんなら居ても立ってもいられぬ状況だろう。
18.「斜面」【信濃毎日新聞】 先の大戦で多くのユダヤ人難民を救った元外交官杉原千畝(ちうね)氏の資料をユネスコの世界記憶遺産に—。出身地の岐阜県八百津町が手を挙げたのは2年前のことだった。大きな期待が寄せられていたが、ユネスコは先月末、登録を見送った◆杉原氏は大戦中、バルト海に面した小国リトアニアに赴任した。ナチス・ドイツの迫害から逃れるユダヤ人に日本通過を認めるビザ(査証)を発給し、約6千人を救ったといわれる。近年、この出来事を題材にした映画や舞台作品が相次いで公開された◆ユネスコは登録しなかった理由について明らかにしていない。長年にわたって顕彰や資料収集を行ってきた八百津町をはじめ、関係者の落胆は大きかった。県内にもこの判断に疑問を感じている女性がいる。リトアニア出身の藤井ユーラテさんだ◆13歳のころ授業で杉原氏の人道的な業績を教わり、日本に興味を持った。その後、縁あって長野市の男性と結婚。母国には杉原氏の名を冠した通りや記念碑などがあり、知名度は高いという。それに対し、日本では思ったよりも関心が低いことに驚いた◆来日して15年、世界は不安定化し、命が軽んじられる事件が相次ぐ。日本政府も難民には冷たく、杉原氏の人道主義と程遠い。藤井さんは29日、長野市の城山公民館で杉原氏について話す。「こんな時代だから、日本人にもっと知ってほしい」。どう話せば自分の思いが伝わるか。今、悩みながら講演の準備を進めている。(11月24日)
19.「日報抄」【新潟日報】 11月24日誰もが下を向いて歩いているかのようだ。「ヤギとウサギが食べる草はみな食べてみた」「牛のふんに混じったトウモロコシの粒でも拭いて口に入れた」。韓国の記者、崔淳湖(チェスンホ)さんが北朝鮮から逃れてきた人々に取材し執筆した「脱北者」にそうある▼8年前の出版だ。その後に北朝鮮の事情が好転したか悪化したかは定かでない。ただ今月、軍事境界線を越えて軍人が韓国側へ亡命する際、北朝鮮側から銃弾を浴び、死線をさまよったのは事実である▼昨年1年間に1400人余りが韓国に逃れたとされる。エリート層といわれる人たちの脱出が増えている。2月にクアラルンプール国際空港で起きた金正男氏の毒殺は、そうした人々に対する「警告」との見方がある▼先ほどの「脱北者」に出てくる1人は、「寝て起きれば死体がここかしこに散在していた」と証言した。配給もなく「真っ暗な夜になれば、みな泥棒になる。泥棒できない者は愚か者だ」とまで語った。善悪の感覚がまひしている▼命を懸けて自分の国を出る。凍える川を渡り中国側へ逃げる人たちもいる。撃たれかねない、捕まればむごい収容所が待っている、それでも国境を目指す。悲しいかな、そうした生死の境が新潟のすぐ鼻先にある▼ある少年は亡命理由を聞かれ「長いあいだ苦痛を感じながら死ぬのがいいですか、一発で死ぬのがいいですか」と聞き返したという。いかに生きるか、でなく、いかに死ぬか。人々の頭を「死」の選択で埋める国家がおぞましい。
20.「中日春秋」【中日新聞】 その昔、隠岐島には、こんな習わしがあったという。年貢米を京の御所に送るのが島民の務めだったが、海が荒れ続け、舟が一向に出せぬ年がある。そういう時は風が吹く日に岬に集い、年貢米に火をともす。その煙が宮廷の方角にたなびくのを見て拝むことで、「納税」としたそうだ▼戦前、ある税務官僚はこの風習を「実利的に考えると愚かなことだが、精神的に考えれば誠に心持ちのよい話」だと紹介し、わが国には古(いにしえ)から続く「租税道徳心」があるはずだと納税者に説いたという(日本租税理論学会『税金百名言』)▼さてこちらは「実利的に考えても、精神的に考えても、誠に心持ちの悪い話」である。森友学園への国有地売却を調べていた会計検査院が結果を公表した。百二十二ページの報告書で「根拠が確認できない」といった表現が十回以上も出てくる▼なぜ八億円もの値引きをしたのか。それを検証するために必要な書類が「廃棄」されたり、そもそも「失念」して作られていなかったり▼財務相は「会計検査院で必要とするような文書はきちんと残している」と断言していたが、検査院は「検証を十分に行えない状況」だと厳しく指摘した▼国有地売却の責任者だった財務省理財局長は国税庁長官に栄転し、「租税道徳心」を説く立場に。年貢米ならぬ「道徳心」を焼いた煙が、官邸の方角にたなびいていないか。
21.「大観小観」【伊勢新聞】 ▼満ちれば欠けるは世のならい。組織も、どんなに完全に見えてもよどみは付きもの。不断の見直しが必要だ。県が来年度の部局組織の見直し案を議会に提示した。組織の活性化を促すに違いない▼健康福祉部と、同部の医療対策局、子ども・家庭局の1部2局体制を廃止し、新たに医療保健部と子ども・福祉部の2部制にするという。部局組織名も時世時節。再編のたび部を移るのはかつては「生活」「環境」だった。福祉先進県を掲げたころは部長は3役候補だった「福祉部」だが、徐々に昇格ポストとなり、今や〝漂流部〟か▼「医療保健」にしろ「子ども・福祉」にしろ、見方によっては重複語でくどい気がするが、鈴木英敬知事に言わせれば、心外な見方だろう。「保健」の中でも特に「医療施策」、福祉の中でも特に「子ども施策」を、鈴木県政の重点にしていくという意思表示だと言うかもしれない▼既成の施策の継続を嫌い、何らかのアクセントをつけなければ関心を示さないといわれる知事らしくはある。医療保健部には、福祉部で扱ってきた介護関係を移すのはその証しか、それとも、介護人材確保を「人づくり革命」の柱にあげた安倍晋三首相への追随か▼政権の重点施策を所管から外されて、福祉部のモチベーションはどうか。医療と福祉の間に長年、溝があったのは周知の通り。欧米に比べ日本の障害者数が少ないのは患者を対象外にしてきたからで、特に福祉関係者は医者に対して卑屈になる▼「健康福祉部」になってその溝は縮小傾向だったが、再び分断された。元のもくあみにならないことを。
22.「大自在」【静岡新聞】 2017年11月24日【大自在】(2017/11/2407:52)▼「PISAショック」という聞き慣れない言葉が使われ始めたのは、もう13年も前になる。文部科学省の受けた衝撃は相当だったようだ。「ゆとり教育」路線の転換を加速するきっかけの一つになったともいわれる▼経済協力開発機構(OECD)が実施した学習到達度調査(PISA)のことである。当時の調査結果で日本の高校1年生は前回調査に比べ、数学的応用力が1位から6位、読解力も下がって文科省は世界トップ水準からの脱落を認めざるを得なかった▼長期的な視点が欠かせない教育の問題に一喜一憂するのはどうかとも思うが、成績が上がればうれしいのは自然の感情だろう。今回発表されたPISAの国際順位でみると、日本の高1は参加した52カ国・地域のうちシンガポールに次ぐ堂々の2位だった▼問われたのは「協同問題解決能力」。複数人のチームで問題解決に効果的に取り組むための能力を測定したという。チーム一丸となって、一つのことに取り組むのは日本人の強みと言っていいかもしれない▼「和」を重視する日本人の特性が得点に影響したのではないか、とは専門家の見方だ。いじめや親の所得格差など複雑で困難な問題が噴出している教育現場だけに少しほっとするニュースでもある▼OECDが実施しているのはPISAだけではない。3年前には中学校教員の勤務環境の調査結果を公表。34カ国・地域のうち1週間の仕事時間(部活指導など含む)が突出して長いのは日本だった。PISA2位の陰に多忙先生あり、ではなるまい。
25.「時鐘」【北國新聞】 きょうのコラム『時鐘』2017/11/2401:16例(れい)の語呂合(ごろあ)わせで、きのうは「いい文(ふみ)の日(ひ)」(11・23)でもあった。偉(えら)い作家(さっか)か名(めい)作(さく)が生(う)まれた日(ひ)かと思(おも)ったら、お役所(やくしょ)の旗振(はたふ)りだった40年(ねん)ばかり前(まえ)、当時(とうじ)の郵政省(ゆうせいしょう)が手(て)紙(がみ)の楽(たの)しさを広(ひろ)めようと制定(せいてい)した。背景(はいけい)に、電話(でんわ)の急速(きゅうそく)な普及(ふきゅう)に対(たい)する危機感(ききかん)があった、と手元(てもと)の事典(じてん)にある。その電話もいまは電(でん)子(し)メールに取(と)って代(か)わられた格好(かっこう)で、急激(きゅうげき)な時(じ)代(だい)の流(なが)れのなかで、手紙はすっかり影(かげ)が薄(うす)くなったわが家(や)に「いい文」が届(とど)くことも珍(めずら)しくなった。配達(はいたつ)されるのは、チラシ、広(こう)告(こく)、通販(つうはん)カタログ、請(せい)求(きゅう)書(しょ)などのたぐい。賀(が)状(じょう)を除(のぞ)けば、「郵便受(ゆうびんう)け」を名乗(なの)る資格(しかく)はなさそう。手紙も絶滅(ぜつめつ)危(き)惧種(ぐしゅ)の仲間(なかま)に加(くわ)わるのか仕事柄(しごとがら)、取材(しゅざい)などで世話(せわ)になった人(ひと)には礼状(れいじょう)を出(だ)す。筆(ふで)まめだからでなく、そうしなさい、としつけられたから。相手(あいて)が同年代(どうねんだい)か年配(ねんぱい)の人からは大概(たいがい)、返事(へんじ)の便(たよ)りがある。が、味気(あじけ)ないナシのつぶてを食(く)らうことも増(ふ)えてきた昭和(しょうわ)も遠(とお)くなりにけり、とは居(い)酒(ざか)屋(や)の席(せき)でよく耳(みみ)にするせりふ。平成(へいせい)の世(よ)も、程(ほど)なく去(さ)ってゆく。「いい文」は、ますます遠(とお)くに行(い)ってしまうのだろうか。
26.「越山若水」【福井新聞】 【越山若水】20世紀初頭、米国で「白人はアメリカ・インディアンから何を学んだらいいか」という本が出版された。著者はインディアンと長く生活を共にした心理学者である▼インディアンは男女とも肉体労働が中心の暮らしを喜びとしていた。白人のように仕事の内容には執着せず、競争によるストレスも少なく非常に健康的だった▼その現実を知って、心理学者は米国社会の問題点に思い至った。白人たちは職業の貴賎(きせん)という愚かな価値観に縛られ、競争から生じる精神的な苦痛に疲弊している▼そして作者は書物に次のような大胆な宣言文を記した。「私の息子には、不正な事件を担当する名誉ある弁護士になるよりも、毎日街をきれいにするために働く善良な市街清掃人になることを望む」▼最初は誰もが「善良な弁護士」を目標にする。ところが徐々に報酬や名誉を求め始める。世間も詐欺師の弁護でも無罪を勝ち取った弁護士を「名誉ある弁護士」と評価する▼わが国でも過払い金の返還訴訟で知られる法律事務所が、期間限定をうたった着手金無料キャンペーンを継続し、弁護士会から業務停止処分を受けた▼顧客集めの違法広告は消費者庁もクギを刺していた。事務所は「処分は重すぎる」と反論するが、法を犯すことは弁護士として最大の背徳。「名誉ある弁護士」ではなく「善良な弁護士」へ一から出直しである。
27.「凡語」【京都新聞】 麻には魔よけの霊力が宿る。古来、神道ではそう信じられてきた。3カ月で人の背をはるかに超えるほど伸びる生命力と、人を酔わせる特有の成分に人々は畏敬の念を抱いたのだろう▼素材としての強さから江戸期には彦根藩の「近江上布」など全国各地で織物加工品が普及した。しかし、戦後は大麻取締法で栽培や取り扱いが厳しく制限されて生産者・量とも大幅に減っていく▼貴重な国産麻のしめ縄が今月上旬、京都市上京区の護王神社に飾られた。最大の産地・栃木県の生産者たちによる「日本麻振興会」が、麻の文化や歴史を伝える取り組みの一環として奉納した▼栃木の麻をしめ縄に調製したのは、全国で数少ない技を受け継ぐ中京区の麻の神仏具店「山川」だ。明治期に創業された同店の工房を訪れると、専門職の3人が力の入れ具合と間合いを合わせながら、ねじってより上げる繊細な手作業にいそしんでいた▼国産麻のしめ縄は「上品で深みのある光沢としなやかさがまるで違う」と、4代目の山川由彦さん(70)は話す▼完成した縄を飾る作業は、振興会や山川の人たちに地元の小学生も加わってにぎやかに進められた。神事に続き伝統芸能「今様」も奉納された。日差しに神々しく映える麻のしめ縄は、「ハレ」の祝祭空間にこそふさわしい。
28.「正平調」【神戸新聞】 国内初の高速道路、名神高速の栗東(滋賀県)−尼崎間が開通したのは1963(昭和38)年。初走行の体験を作家の赤瀬川原平さんが書いている◆ハンドルは友人が握った。速度計が100キロに近づくのを固唾(かたず)をのんで見つめていたそうだ。高速を降りた後、友人が「『ふっ…』と肩で息をついたのをはっきりと覚えている」(「昭和の玉手箱」東京書籍)◆おっかなびっくり本線に合流し、ほかの車との間合いを測りながら速度を上げていく。初走行の緊張をいまも思い出す人はいるだろう。というより、忘れてほしくない◆高速道での痛ましい事故のニュースがこのところ絶えない。今週だけでも首都高速で、名神で、阪神高速で、死傷者の出る惨事があった。あろうことか、吐いた息からアルコールが検出されたドライバーもいる◆ビルとビルの間を竜のようにうねり、山野を貫く高速道の総延長は9千キロを超えた。いまこのときも、車はハイスピードで人を、モノを運んでいる。「ふっ…」と気を緩めぬ安全運転をあらためてお願いしたい◆思えば私たちは速さを求め、その実、時間に追われてきた。仕事に暮らし。急げ、急げの大合唱に社会はゆがむ。「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」の標語は車だけの話ではない。2017・11・24
29.「国原譜」【奈良新聞】 きょう24日はブラック・フライデー。感謝祭の翌日は米国でクリスマス商戦が開幕、そろばん勘定が黒字になる金曜だからそう呼ぶのだそうだ。語源には異説もあるようだが、似た表現で株価暴落の日を指すブラック・サースデーなどとは正反対、黒色に景気良さの意味を込めたのが面白い。国内でもハロウィンやネット通販「独身の日」に続く新手のキャンペーンとして定着するのか。きのうは同日を先取りしたセールが県内の大型商業施設であり大勢の買い物客らでにぎわった。世界的に消費者の志向がネット通販に傾く中、苦戦を強いられる実店舗が、客足をつなぎとめるためイベントに依存する面もあるのかもしれない。一方、将来不安から伸び悩む市民の消費意欲を刺激しようと、政府などが取り組むのがプレミアム・フライデー。安倍首相は企業の賃上げ促進にも改めて意欲を示したが、その効果のほどは。丸5年を迎えるアベノミクスの下、企業や商店だけでなく消費者も黒字にあやかれる歳末商戦になれば良いのだが。ついでながら地域活性化のため、買い物はぜひ地元で。(松)
30.「水鉄砲」【紀伊民報】 晩秋の信濃路を車で走った。信州はさすが山の国。全山これ紅葉で、秋を肌で感じる所が多い。霧ケ峰高原が特に良かった。▼この頂上からは、前方に南アルプスと中央アルプスの連山が一望できる。目を転じれば、遠景に冠雪した富士山、近景に八ヶ岳連峰が展開する。明治の文豪・徳冨蘆花は『自然と人生』で「富士、雪を帯ぶ。さやかに雪を帯ぶ。東海の景は富士によりて生き、富士は雪によりて生く」と書いた。それが今、眼前にあるのだ。▼中国では古来、四季を色と重ねて青春、朱夏、白秋、玄冬と呼んだ。色との結び付きに特別な意味はなかったが、白秋は高い天に浮かぶ白雲のイメージを呼ぶ。それも今眼前に展開する。▼秋は人々を思索に駆り立てる。帰途は降りしきる落ち葉に、晩年を迎えた自分の人生を重ね合わせたりもした。これが作家ともなると、その構想力は天空を縦横に飛翔する。最近読んだ水上勉の短編『重い枯れ葉』はこうだ。▼主人公は自宅の庭の枯れ葉をかき集め「その命終えし枯れ葉の軽きこと」と、素直な一句を詠む。その後たまたま送られてきた句集に「散り敷きて庭の枯れ葉の重きこと」という句を見つける。▼同じ枯れ葉を正反対に重いと感じる相手に興味を持ち、調べ始めると、埋もれていた殺人事件が表に出る、という展開だ。後半は作家の創作であり、秋の小景に触発されたその想像力には、凡人はただ脱帽するしかない。(倫)
31.「滴一滴」【山陽新聞】 波平さんの死後に隠れた借金が見つかった。妻のフネさんはどうすればよいのか。長男カツオ君の素行に我慢ならなければ、相続させないように遺言もできる▼アニメ「サザエさん」の家族を例に、相続の制度を解説する「磯野家の相続」という本がある。著者の長谷川裕雅弁護士によると、仕事でも同じ例えで説明すると理解してもらいやすいそうだ▼同じようにサザエさんで介護や社会保障、税といった難しい問題を解説する本もある。誰もが知り、登場人物や関係がすぐに頭に浮かぶ。国民的アニメならではだろう▼その番組のスポンサーを放送開始から48年間続けた東芝が正式に降板を決めた。会社の経営不振と、家電事業からの撤退を進めていることが理由だという▼サザエさんにもかつて最高視聴率39%を出したような勢いはない。それでもアニメ部門1位の常連である。3世代同居、専業主婦、丸刈りの小学生。エアコンも携帯電話もない。そんな「昭和の家庭」は遠くなったが、脚本家の雪室俊一さんは以前の本紙で「一種の時代劇だけど、人間が描けていれば視聴者はついてくる」と語っている▼もし「平成の家庭」が舞台ならどうだろう。実家を離れて暮らすサザエさんは働きたいが、タラちゃんが保育園に入れずに頭を悩ませる。こちらは社会派ドラマの方が似合いそう。(2017年11月24日08時00分更新)
32.「天風録」【中国新聞】 大荒れ九州場所2017/11/24「物言えば唇寒し秋の風」。芭蕉の句は、口は災いのもとと同じ意味で使われるが、人の短所などを突いた後の寒々しい心持ちを詠んだらしい。暦では秋は過ぎたものの大銀杏(おおいちょう)の主に、句の言うところが響くといいのだが▲おとといの結びの一番。軍配は嘉風(よしかぜ)関に上がった。しかし敗れた白鵬関は、転げ落ちた土俵下で「物言い」を審判にする。立ち合いに待ったをかけた、取り直しだと主張したかったか。物言いは審判がするものなのに▲「これは駄目です。いくら不服でも」。アナウンサーがあきれたように実況していた。1分ほどでようやく土俵に戻りはしたが、相手が勝ち名乗りを受ける間も、不満顔で仁王立ち。40回目の賜杯を目指す大横綱とは思えない、往生際の悪さだった▲一方、元横綱は物言わぬと決めたのか。日馬富士関に殴打された貴ノ岩関の師匠、貴乃花親方である。弟子に事情を聴きたいという協会の申し出を拒む。何も言わぬ、言わさぬというかたくなさ。協会との確執の故か▲土俵の内でも外でも横綱の暴力沙汰や失態が相次ぎ、大荒れの九州場所。何とも見苦しい。真相解明のため、品格ある相撲を取り戻すため、さあのこった、のこった。
35.「海潮音」【日本海新聞】 子どもの頃、周りを杉林に囲まれ、山が遊びや学びの場、木の香りの中で育った。ふるさとの山里・智頭町芦津地区。そんな風景が当たり前だった◆その智頭の林業景観が国の重要文化的景観に選ばれた。林業景観としては全国で初めてという。地区の人たちは慶長時代から山での暮らしを大切にし、営々と守ってきた。多くが山で仕事をし、生計を立ててきた。景気が良かった時代は豊かな村だった◆山に育ち、杉に育てられた。登校の途中、トロッコを引いた機関車が煙を吐きながら山に向かう。下校時にはトロッコが木を積んで帰ってくる。村のあちこちに木材が山積みされている。そんな毎日が当たり前だった◆学校林もあり、みんなで杉の木を植える。村中総出でせっせと下刈りをし、枝打ちをする。「木を育てるのは50年、100年の大事業。孫の代のために…」「山で暮らし、そこで生活しながらでないと山は守れない」。祖父にそんな話を聞かされたのを思い出す◆木材価格が低迷、過疎や高齢化も進み、山の管理や手入れもままならない。それでも地区の人たちは必死に守ろうと頑張り、山の神に感謝する祭りも受け継がれている。今、山に再びセラピーなど新たな光が当たろうとしている。いつの間にか紅葉も終わり、やがて山里に厳しく長い冬が訪れる。(寺)
36.「明窓」【山陰中央新報】 干し柿が食べ頃になった2年ぶりに手作りした干し柿が食べ頃になった。10月下旬に軒下につるしてから3週間余り。甘味は十分。先週はまだ中が柔らかめだったが、乾燥が進んで鼈甲(べっこう)色が濃くなり、違った歯応えと味わいが出てきた▼お裾分けでもらった100個余りの柿の皮を、先端を少し残してむくのは手間は手間。夫婦2人で、ほぼ半日仕事になった。むいた柿のへたに残る小枝を、ひもで5個程度ずつ、引っ付かないように結び、さっと熱湯にくぐらせる▼カビを防ぐためなので10秒程度でいいとは聞いたが、念のため30秒にした。前回は、つるした柿を途中でもんだり、カビ除(よ)けに焼酎を吹きかけたりした。今年は見合わせて、雨風が強い日は一時的に、室内に移した▼柿好きの文化人といえば、「柿くへば−」の句で知られる正岡子規が思い浮かぶ。友人の夏目漱石の小説『三四郎』には、子規が、酒樽(さかだる)で渋を抜いた大きな柿を16個も食べたという逸話が出てくる。干し柿はどうだったかまでは定かではないが▼ただ干し柿は、日本人にとっては平安時代から貴重な「甘味」だったようだ。その後、茶の湯の席でも茶菓子に使われ「和生菓子の甘さは干し柿をもって最上とする」ともいう▼特に干し柿の表面につく白い粉は「柿霜(しそう)」と呼ばれる糖分の結晶で、砂糖が普及する江戸後期までは、甘味料として使われたり、喉や咳の薬としても重宝されたりしたらしい。「渋味」を「甘味」に変える魔法を見つけた「食の知恵」に感謝しながらもう一つ味見しよう。(己)2017年11月23日
33.「四季風」【山口新聞】 北風が木の葉を払う、本格的な木枯らしの時候が間もなくだというのに、今年は秋の味覚のひとつサンマを食べていない▼サンマが豊富に揚がる漁港のそばで育ち、焼いたり煮たりしたサンマで、白いご飯を腹いっぱい食べる習慣だったので落ち着かない。本州の西のはずれに住んでも、新鮮なものが手に入るこのごろだが、この秋は勝手が違った。スーパーの鮮魚売り場で銀鱗とお目にかかったかどうか▼「サンマ歴史的凶漁濃厚」という見出しが水産専門誌に踊っていた。10月末現在では前年同期比48%減、このままなら41年ぶりの不漁。遠い漁場と薄い漁、小型化が原因だという▼もうひとつの大衆魚マイワシは、北海道東沖で25年ぶりの豊漁だとこれも専門紙の記事にあった。マイワシは数十年周期で資源量の増減を繰り返すが、5年ほど前から増加傾向にあるのだとか▼海流の蛇行や魚種に特徴的な増減は自然のことだから時を待つとして、取り過ぎなら漁を控えるしかない。大西洋クロマグロは漁獲制限の効果で漁獲枠を増やすという▼きょうは11(いい)月23(つまみ)日、珍味の日とか。珍味「焼きフグ」をかじりながら、どうしたら天然フグが増えるか考えてみよう。(宇)
37.「地軸」【愛媛新聞】 SF映画「ターミネーター」に登場する殺人ロボット。人工知能(AI)を持ち、自らの判断で敵を殺傷する。遠い未来の話ではない。開発の規制を巡る初の国連公式専門家会議が先週、ジュネーブで開かれた▲まだ完成品はないが、米国などが開発を進めているとされる。実戦に投入されれば、自軍兵士の犠牲を減らすことができる。開戦のハードルは下がり、戦争の形態が大きく変わる▲しかし、機械には故障がつきもの。暴走する可能性がある機械に人間の生死を委ねていいのか。「間違い」が起きたときに誰が責任を取るのか。問題があまりにも多すぎる▲ところが、米国やロシアは「試作品もない段階」として規制に反対。日本も民生技術への影響を理由に消極的だ。会議は今後も議論を継続する方針で一致したものの、方向性は見えない▲昨年7月、米ダラスで起きた警官銃撃事件を思い出す。警察がロボットに爆弾を取り付けて遠隔操作、容疑者を殺害した。米国初の事例は「非人道的」と物議を醸した。自律型ロボットができれば、人間の判断さえ介在しなくなる▲第1次世界大戦で使われた化学兵器は、国際条約で完全に禁止されるまでに約80年かかった。広島、長崎に投下された原爆も、25年後の核拡散防止条約まで国際的規制は事実上なかった。殺人ロボットも完成してからの規制では間に合わない。いま歯止めをかけなければ、取り返しがつかなくなる。
38.「鳴潮」【徳島新聞】 魅力的な唇であるために、優しい言葉を使いなさい。愛らしい瞳であるために、人の、よいところを探しなさい−。米国の作家サム・レヴェンソンが、美しさのヒントとして記しているスリムな体形を保つにはどうするか。答えは明快で「飢えた人々と食べ物を分かち合うことだ」。要は内面が大事。それは理解しつつも古今東西、人は美を求めて涙ぐましい努力を続けてきた。これはむしろ称賛すべきことではあるが、今、困った問題が起きているネットや雑誌で「美肌になれる」と紹介された保湿用塗り薬「ヒルドイド」を化粧品代わりにする女性が急増しているという。本来は、やけどやアトピー性皮膚炎などの治療に使う薬である公的医療保険を適用すれば安く入手できるため、化粧品店にでも行く感覚で病院を訪れる人が後を絶たないそうだ。健康保険組合連合会の推計では、美容目的とみられる使用で、年93億円が無駄に支出されている可能性がある。医療保険財政をさらに圧迫しかねない厚生労働省は処方の制限を検討している。そうなれば、不利益を受けるのは本当に薬を必要とする人たちである。抗がん剤や放射線治療のケアに薬が不可欠ながん患者の団体は、使いづらくなることを懸念するレヴェンソンが言う。今のうちと思った、美容目的のあなたには効かない。
39.「小社会」【高知新聞】 鳥取県知事や総務相を務めた早稲田大の片山善博教授はもとは自治省(現総務省)の官僚。霞が関の住人だっただけに、森友・加計問題を巡る後輩たちの国会答弁の乱暴さが腹立たしかったようだ(「世界」8月号)。証拠や資料を一切示さずに「適切に処理した」と言い張る答弁は、官僚がこだわってきたはずの説明責任の観点からは失格だと指摘。各省の官僚たちも「ははーん、これでいいんだな」と得心し、今後は失格答弁で逃げるのではないか、と。昨今の官僚に説明責任へのこだわりがそれほどあると思えないが、森友・加計問題での答弁のひどさは経緯のゆえだろう。国有地の超安値払い下げについて、会計検査院が売却額算定のずさんさなどを指摘したが、これでは説明のしようがあるまい。その検査結果報告にしても、検査の過程で試算していた妥当な値引き額は盛り込まれていない。当事者の財務、国土交通両省が「出さないでほしい」と繰り返し要望したとされる試算額だと、値引きは最大約6億円も過大だったことになる。独立した地位を担保されている会計検査院も、「忖度(そんたく)」から逃れられなかったのだろうか。ある職員の「国民の負託に応えるべく、検査院としてはここが踏ん張りどころだったのに…」という言葉は重い。閣僚や官僚の失格答弁は国会、ひいては国民を軽視する姿勢の表れともいえるだろう。与党も野党も関係ない。11月24日のこよみ。旧暦の10月7日に当たります。きのとう九紫仏滅。日の出は6時45分、日の入りは16時59分。月の出は11時04分、月の入りは21時43分、月齢は5.6です。潮は小潮で、干潮は高知港標準で2時44分、潮位33センチと、15時10分、潮位97センチです。満潮は9時39分、潮位156センチと、20時31分、潮位149センチです。11月25日のこよみ。旧暦の10月8日に当たります。ひのえたつ八白大安。日の出は6時46分、日の入りは16時59分。月の出は11時45分、月の入りは22時37分、月齢は6.6です。潮は小潮で、干潮は高知港標準で3時25分、潮位42センチと、16時09分、潮位101センチです。満潮は10時30分、潮位149センチと、21時19分、潮位138センチです。
40.「春秋」【西日本新聞】 はあっ、と両手に白い息を吹きかける季節になると、手袋の出番。仕事で年中お世話になる人もいよう。きょうは、勤労感謝の日に合わせて日本手袋工業組合が制定した「手袋の日」だ▼同組合がある香川県東かがわ市周辺は、国内の手袋生産量の9割以上を占め、商品の多様さや品質の高さで知られる一大産地。その歴史は今から約130年前に始まった。きっかけは、お坊さんの駆け落ちだった▼1886(明治19)年、白鳥村(現・東かがわ市)の寺の副住職だった両児舜礼(ふたごしゅんれい)は、寺の近くに住んでいた明石タケノと恋に落ち、手に手を取って大阪へ。生活のため、舜礼は托鉢(たくはつ)して回り、タケノはメリヤス製品の賃縫いを始めた▼メリヤス製品の将来性に着目した舜礼は托鉢をやめ、メリヤス手袋の製造に専念した。手袋はよく売れたが、舜礼は92(同25)年に39歳の若さで病死。仕事を手伝っていたいとこの棚次辰吉(たなつぐたつきち)がタケノを助けて事業を拡大させた▼当時、故郷は主要産業の製塩や製糖が安価な輸入品に押されて衰退、活気をなくしていた。辰吉は製塩の仕事を失った人々のために手袋製造所を開設。第1次大戦で世界的に手袋の需要が急増したのを契機に、基幹産業として大きく発展した▼〈手袋の左許(ばか)りなりにける〉(正岡子規)。利き手側を外して、そのまま置き忘れてしまった経験が筆者にも。逸話を知って、もう手袋をなくすまい、と改めて。=2017/11/23付西日本新聞朝刊=
41.「くろしお」【宮崎日日新聞】 お世話になった先輩の若かりし頃の体験である。場所は博多、季節はちょうど今ごろの九州場所中だった。学生仲間と酒を飲んでいてたまたま大関の清國関と相席になった。昔はけんかっ早かったという先輩が何か勘違いしてかちんときた。運動部に所属していて腕っぷしに自信があったこともあり、あろうことか清國関につかみかかろうとした。清國関の方は終始落ち着き払ってぬっと腕を伸ばし先輩の頭を抑え動きを封じたという。日馬富士関が酒席でモンゴルの後輩の貴ノ岩関を暴行した事件の真実はいまだ濃い霧の中にある。日馬富士関は鳥取県警の事情聴取に素手で殴ったことを認めたがビール瓶での殴打は否定。ビール瓶で殴ったとする一部証言と食い違う。一方、なぜ殴ったかという理由。現場となったラウンジで白鵬関に生活態度を注意されていた貴ノ岩関がその話の最中に、知人から連絡が来たとしてスマートフォンを操作したことがきっかけになった。こっちは証言と日馬富士関の警察への説明が一致している。清國関は土俵態度も私生活も立派で立ち合いが乱れていた当時もきっちり両手を下ろしたという。日馬富士関がしこ名を安馬から変える際、伊勢ケ浜部屋の先輩の清國を継承する案もあったというのはそれだけ期待されていたのだろう。頭を抑えられ手足をばたつかせる先輩に清國関はこう言った。「兄ちゃん粋がったらいかんよ」。礼儀知らずの若者を言葉で諭す度量が欲しかった日馬富士関である。以後、わが先輩が二度と酒席で乱れなかったことも付け加えておきたい。
42.「水や空」【長崎新聞】 日常の言い間違いの事例集「金の言いまつがい」(新潮文庫)で見つけた。〈こま犬のように働く〉。拝殿の前に鎮座して魔よけに余念がないのだろうが、さすがにコマネズミほどにあくせく働く感じではない▲職場で座して動かない"こま犬状態"は困りものだが、社会全体「働き方改革」が叫ばれる昨今、コマネズミのように馬車馬のように働き、働かせるのも一考を要する▲では、どうすりゃいいの?そんな悲鳴が聞こえそうである。働き方改革への会社のサポートが不十分だと、部課長クラスの9割超が感じている−。NPO法人の調査でこんな結果が出たと、先日の本紙にある▲上からの指令は続々だろう。部下に有給休暇を取らせなさい。業務を効率化して残業時間を減らしなさい。仕事の密度を高め、質は守って量を減らしなさい。ええ、分かっちゃいますよ、実行してもいますよ...▲そう思っても業務の削減はままならず、サポートも乏しい。現場で働く人の過労が取り沙汰される中、管理職だけがつらいと言う気は全くないが、働き方改革を丸投げされて働き方を見失っては本末転倒だろう▲言い間違いをもう一つ。〈売り言葉に合言葉〉。コマネズミでも馬車馬でもない、これからの働き方とは何だろう。上も下もなく実行すべき合言葉がきっと要る。(徹)
43.「有明抄」【佐賀新聞】 ネコは固体でありながら液体でもあるのか?−。液体とは「容器に合わせて形を変えるもの」。この定義に従えば、ワイングラスや花瓶のような、狭い場所にもぴったりと入り込んでしまえるネコは、液体の要件を満たしている◆そんなユニークな論文を書いたフランスの研究者が、ノーベル賞のパロディー版「イグ・ノーベル賞」の物理学賞を獲得した。本家と違って賞金はないが、今年はなんと10兆ドルが贈られた。これが米ドルだったら気の遠くなる額だが、手渡されたのはアフリカのジンバブエ・ドル。札束ですらなく、たった1枚の紙幣に「0」がずらり◆そのジンバブエが揺れている。英国から独立した1980年から独裁体制を敷いてきたムガベ大統領が、辞任に追い込まれた。御年93歳ながら意気盛ん。第1副大統領を解任し、妻を後継者に据えようとしたところで、さすがに軍が蜂起したという◆賞品になったジンバブエ・ドルは数年前に流通が停止された。通貨の価値が急落して紙切れ同然となる、世界最悪の「ハイパー・インフレ」で経済が大混乱に陥ったからだ。10兆ドルにしても、流通当時のレートで千円にもならない◆冒頭のネコの研究はふざけているわけではなくて、「流動学」という立派な学問なのだとか。ジンバブエの民主化は進むのか、これまた流動的である。(史)
45.「南風録」【南日本新聞】 (11/24付)客を装った商売仲間のことを俗に「さくら」と言う。派手に購買心をあおって、ぱっと姿を消してしまう。そんな様子を桜の散り方になぞらえたらしい。語源は諸説あるようだ。日本俗語大辞典(東京堂出版)は「さくらは策略より出(い)づる詞(ことば)ならんか」と大正時代の文献を引く。なるほど「策略」なら座りがいい。核のごみの最終処分場に関する住民向け意見交換会での出来事である。意見交換会は経済産業省と処分事業を手掛ける原子力発電環境整備機構が主催した。広報業務の委託を受けた企画会社が東京や埼玉など5会場で日当や謝礼を持ち掛け、学生39人を動員していた。金で世論を操ろうとしたに等しい。原発の核燃料を再利用した後に出る放射線量の高い廃棄物が核のごみである。原発事業は国民の理解なしには立ち行かない。処分場が何百年も地下深くに核のごみを留め置くというからなおさらだ。原発を巡ってはあの手この手の策がつきまとった。九州電力が玄海原発(佐賀県)の再稼働を容認する意見の投稿を子会社に呼び掛けたのは記憶に新しい。福島第1原発事故の廃棄物を中間貯蔵する候補地の交渉で、「最後は金目でしょ」と述べたのは時の環境相だ。原発に手を付けた以上、処分場建設は避けて通れない。国や電力会社の責任は重大だ。意見交換を何度繰り返しても国民の信頼がなければあだ花に終わる。
46.「金口木舌」【琉球新報】 全国一を決める試合を取材した記者から報告があった。「レクリエーション性が強いと思っていたが、全く違う」。選手の噴き出す汗や張りつめた雰囲気など、競技の魅力に興奮していた▼愛媛国体のボウリングの話である。ボールの滑り方などレーンは、オイルの種類や時間の経過で変化し選手を悩ませる。技術力だけでなく、一投一投への集中力は、取材した記者の意識を一変させた▼国体監督の下地良信県ボウリング連盟常任理事に聞くと、繊細さを競技の特徴の一つに挙げる。ボウリングの魅力は「目に見えないレーン環境を読む力に、個性が出ること」だという▼米国など海外では、1900年以前から大衆スポーツとして認識されていた。日本では前回東京五輪の直前、63年に初めて全日本選手権が開催された▼国体では比較的新しい競技だ。87年の海邦国体で公開となり、翌88年に成年が正式採用され、89年に少年の部が加わった。沖縄は10万人当たりのボウリング場数が全国トップクラス。ボウリングになじみ深いことが、県勢の強さにも表れている▼愛媛国体で安里秀策選手が男子個人を制し、プロ、アマが集うジャパンオープンでは初優勝し、日本一の称号を手にした。24日に米国で開幕する世界選手権には、安里選手と幸喜将太選手の県勢2人が出場する。世界での躍動によって次代のボウラーも育っていく。
47.「大弦小弦」【沖縄タイムス】 電車が定刻より20秒早く出発し、乗り遅れた客がいなかったとしても、鉄道会社は謝るべきか。東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶ「つくばエクスプレス」の南流山駅で14日に起きた出来事だ▼会社がホームページに出した謝罪文は「定刻9時44分40秒のところ、時刻を十分に確認しないまま、9時44分20秒に発車してしまった」とし、「お客さまには大変ご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」▼クレームがなくとも事実を公表してわびる「誠実さ」と取るか、運休や遅延でもないのにわざわざ謝る「過剰さ」と取るか。時刻表は「9時44分」としか書かれておらず、たとえ乗り遅れても4分後に後続の電車が来た▼対応ぶりは海外メディアでも反響を呼んだ。律義な日本人が称賛される一方、時間厳守が2005年の尼崎JR脱線事故のような悲劇を生みかねないとする指摘もあった。あの事故は、運転士が1分半の遅れを取り戻そうとしたことが一因だった▼会社側によると、謝罪は「20秒」という時間ではなく、乗務員による確認作業の怠慢に対して、という。悪質クレームが社会問題化する昨今、消費者が事業者に求める謝罪の水準は高くなりつつあるとされる▼「顧客至上主義」の行き着く先が、わずかな落ち度も許さない不寛容さなら、息苦しい社会でしかない。(西江昭吾)