▼コラム
1.「卓上四季」【北海道新聞】 「また昭和フォークか」と苦笑される方がいたら、お許しいただこう。でもきょうは、ぜひこれを引用させてほしい。岡林信康さんの「手紙」という歌▼♪私の好きなみつるさんは/おじいさんからお店をもらい/二人一緒に暮らすんだと/うれしそうに話してたけど—。パートナーの「私」が被差別部落の出身と知り、おじいさんはお店を譲らないと言い出した。彼は結婚できないなら一緒に死のうとまで言ってくれたが、「私」は彼のために身を引く▼1969年の発表当時から本人は多くを語らなかったが、実話を元にしたとも言われる。事実、出自を理由にした就職や結婚の差別は今も絶えない▼こうした差別にも利用されたのが、親の婚姻や血縁関係などの情報が記された戸籍である。被差別部落の住所一覧の冊子と、戸籍を照らし合わせた身元調査も行われてきた▼民進党の蓮舫代表が、二重国籍でないことを証明するため戸籍の写しなどを公開した。党内の要求に応えた形だが、蓮舫氏はもっと慎重に対応すべきではなかったか。外国にルーツを持つ人はたくさんいる。影響力のある人物が戸籍を公開すれば、今後同じようなことがあった際、出自を明らかにするよう迫られる人がいないとも限らない▼何より「私」のような悲しみのない社会をつくらねばならないのに、公党の議員が戸籍公開を求めてはばからない。残念でならない。2017・7・20
2.「河北春秋」【河北新報】 「本当なら、新たな風評でホヤの輸出再開はまた厳しくなる」。石巻市のある漁業者は、14日報じられた川村隆東京電力会長の発言に驚いた。福島第1原発のトリチウム水の処分を巡り、「(海洋放出の)判断はもうしている」と語った問題▼トリチウムは原発の汚染水から除去不能な放射性物質で、未処理の残水はタンクにためられる。それを希釈し海に投棄したいというが、量は約78万トンと途方もない。ホヤは原発事故の影響を今も懸念する韓国の輸入規制が続き、「風評は海外に及ぶ」と漁業者▼処分を巡る論議では、政府の原子力規制委員会幹部は海洋放出案を強く推す。が、漁自粛で試験操業を強いられている福島県漁連は猛反発。同県内の生協関係者からは「海洋放出されるなら、復興支援企画に東北の海産物は入れないで、との反応が西日本からあった」と聞いた▼タンク保管にも限界があり、何らかの方法で解決するほかない。政府は小委員会を設けて処分案を検討中だが、それを飛び越えての東電会長発言は波紋を広げた▼「風評は必ず発生する」と、いわき市が地元の吉野正芳復興相は反対を訴え、内堀雅雄同県知事は不快感を表明。「社の判断でなく、誤解を招いた」と東電は謝罪したが、トップの勇み足で事態は八方ふさがりだ。(2017.7.20)
3.「天地人」【東奥日報】 ゲルマン民族を古代ギリシャ人の末裔(まつえい)とみなす。そんなヒトラーの考えを表現したらしい。フィールドに建つ4本の柱は、古代オリンピアをイメージしていた。ドイツ選手が勝つたびに、10万の観衆は総統にむけてナチス式敬礼をささげたという。『オリンピック全大会』(武田薫、朝日選書)がナチス政権下のベルリン五輪を描く。オリンピアから開催地までの聖火リレーは、1936(昭和11)年のきょう、この大会からはじまった演出という。ギリシャから北へ、ブルガリア、ユーゴスラビア、ハンガリー、オーストリア、チェコスロバキアを経由して、3075人のランナーが聖火をはこんだ。復興への願いをこめて、東日本大震災の被災地をかけぬける「未来(あした)への道1000km縦断リレー2017」が24日、県観光物産館「アスパム」をスタートする。2020東京五輪開幕のちょうど3年前にあたる。大震災の記憶を風化させまいとはじまったイベントは、ことしで5回目となる。東京・両国国技館のゴールまで15日間、およそ150区間を、ランニングや自転車でつなぐという。ベルリン五輪の3年後、ドイツはポーランドに侵攻した。そのコースは、聖火リレーの逆をたどったのである。のちに、ルートの綿密な調査は、軍の巧妙な戦略だったのではないかと取りざたされる。隠された狙いがあった。
4.「天鐘」【デーリー東北】 天鐘(7月20日)太平洋戦争の帰趨(きすう)を決したと言われる昭和19年10月の台湾沖空中戦。サイパンを陥落した米海軍空母機動部隊を日本軍の航空部隊が台湾沖で迎撃、大本営は「空母19隻、戦艦4隻等を撃沈。敵部隊を殲滅(せんめつ)」と大戦果を発表した▼国民は大勝利に沸き返った。戦果が事実ならだが—。迎撃は夜で戦況の確認は困難だったのに、「沈んだはずだ」の報告がどんどん膨らみ米軍の艦船を超える隻数に▼ところが実際の被害は巡洋艦2隻に航空機だけで、一方の日本軍は虎の子の航空機約3百機を失った。部隊殲滅どころか空母7隻は健在で、あやふやな情報をただ足し算した結果の戦果は全くの「誤認」であった▼疑問を呈す参謀もいたが訂正は受け入れられず、レイテ決戦は誤認を基に作戦を変更して大敗北を喫した。大本営は誤りを確認したが訂正せず、握りつぶしてしまった(半藤一利氏談『昭和の名将と愚将』)▼南スーダンPKO部隊の「日報」を防衛省の黒江哲郎事務次官が隠蔽、稲田朋美防衛相がこれを容認していたことが分かった。不都合な事実を隠し、致命的な結果を招いた73年前と同じ図式の繰り返しではないか▼一握りの幹部が自分の立場を守ろうと不都合な事実を握りつぶすなら、あの時代と何ら変わらない。派生する事態を稲田氏がいくら厳重に受け止めようが取り返しはつかず、防衛省の最高責任者としてはあまりに軽すぎる。
5.「北斗星」【秋田魁新報】 早朝、自転車で田んぼに向かっていた男性が背後から何者かに抱き付かれた。「自転車がドンと止まったので、誰だ!と声を掛けた。振り向いたらクマだった。びっくりして飛びのいたら、クマも跳ねて行った」▼1986年9月、昭和町大久保(現潟上市)の水田地帯にクマが現れ、通り掛かりの男性に抱き付いた。ここに紹介したのは、当時の紙面に載った男性の証言だ。情景が目に浮かぶ▼その十数分後、近くの田んぼを見回り中の女性がやはり背後からクマに抱き付かれ、頭や手を引っかかれた。「抱き付きグマ」は、その日のうちに猟友会員によって仕留められた。体長140センチの雄だった▼県内のクマ事情に詳しいNPO法人・日本ツキノワグマ研究所理事長の米田(まいた)一彦さん(69)によれば、他県でもクマが人に優しく抱き付いたり、のしかかったりした例がある。若いクマがリンゴなどを食べて腹いっぱいになると、性的に興奮して人間に抱き付くのではないかと推測する▼さきおととい秋田市郊外でサイクリングの男性が子連れのクマに足をかまれてけがをした。子グマは2頭で体長約70センチだったという。米田さんは「親離れの時期が過ぎているのに、いまだ親子で行動するのは異例。子グマが『ここに人がいる』と騒ぐと親が戻って攻撃するので注意してほしい」と話す▼これから秋にかけて若グマたちが里山でちょこまか動き回るという。警戒を怠ってはいけない。妙な気持ちで抱き付かれても困る。
6.「談話室」【山形新聞】 ▼▽上司の100歳を祝うパーティーで、河北町出身の小児科医細谷亮太さんは冗談交じりにスピーチした。上司が挨拶(あいさつ)の時によくハグすることを念頭に置いて。「ハグされる人は“寿命”を吸い取られないようご注意を」▼▽細谷さんの5年前の本紙連載「医人俳人」の一節だ。上司とは聖路加(せいるか)国際病院の名誉院長、18日に105歳で死去した日野原重明さんである。活力は確かに年齢知らず。90歳で出したエッセー「生きかた上手」が大ヒットした後は、細谷さんを急に呼び出して特命を与えた。▼▽「これからは日本も、もっと子どもたちのことを考えないといけない」。大学や国立の施設に負けない外来センターを造ろう、と。細谷さんはすぐ渡米、先進的な病院を視察して、2年後には小児総合医療センターができた(早瀬圭一著「聖路加病院で働くということ」)。▼▽世界的指揮者の小澤征爾さんも若い命を日野原さんに救われた。痩せて十二指腸潰瘍に苦しんだ高校時代、食事療法で治してくれた。日野原さん自身ピアノを弾き、晩年は指揮に挑戦。他にも多彩な趣味から“寿命”を吸い取りつつ、患者や若者を励まし続けた人生だった。
7.「風土計」【岩手日報】 2017.7.20わずか数カ月で東北地方を壊滅させた災厄がやってきたのは、40年前のきょう7月20日のことだった。西村寿行が小説「蒼茫(そうぼう)の大地、滅ぶ」で描いた世界。今を見通していたような展開に驚く▼災厄とは飛蝗(ひこう)(トノサマバッタ)の大群。青森に降下した飛蝗は幅10キロ、長さ20キロにわたって広がり、青々として豊かな大地を食い尽くしていく。あの日、すべてをのみこんだ黒い波のようだ。人間はなすすべがない▼しかし、「棄民」を決断した政府の救済策は、当然のようにおざなりだった。歴史が教えるように、国はまた東北を見捨てたのか。東北6県は「奥州国」として、日本から独立するために立ち上がった▼小説のあちこちで、東日本大震災後の出来事との符合を感じる。たとえば、荒廃した古里を捨てた百万人超の「漂民」。津波と原発事故に追われた現実の避難者はピーク時に40万人を超え、古里に戻れない人は今も多い▼2世代目の飛蝗は関東侵入が必至とみられていたが、方向を変えて日本海で死滅する。「だれの顔にも安堵(あんど)が滲(にじ)み出ていた」。この閣僚たちの思いは「まだ東北で良かった」という言葉を吐いた大臣と変わらない▼小説は大震災後、仙台の出版社荒蝦夷(あらえみし)によって復刻された。一度は滅びた「蒼茫の大地」を取り戻す。こちらの物語は、多くの東北人が書き続けている。
8.「あぶくま抄」【福島民報】 笑顔の夏休み(7月20日)1年で一番うれしい日を尋ねられ、今日と答える小中学生もいるだろう。県内の多くの学校で20日、1学期が終わる。明日から待望の夏休みだ。学校から帰った時の開放感が何歳になっても忘れられない。子どもは心を躍らせ、教室は静まり返るこの夏、18年ぶりに歓声が戻る校舎がある。会津若松市湊町の旧原小。木造平屋の学びやが交流施設「はら笑楽交[しょうがっこう]」に生まれ変わる。卒業生らが地域のにぎわいを取り戻そうと準備を進めてきた。建物の改修がほぼ完了し29日に「開交式」を迎える。施設内の交流スペースを連日開放する。子どもからお年寄りまでが集えるようイベントを企画する。日曜日のみ営業の「カフェはら笑」もある。地元の郷土料理「豆腐もち」や一流シェフ監修のメニューを提供する。調理を担う主婦は「料理の味で笑顔にしてあげたい」と意気込む。廊下に懐かしい看板を掲げた。「あいさつは心のおまじない」。卒業生は原小の合言葉をずっと胸に刻んできた。人と人の心のつながりが母校を再生させる原動力となった。「こんにちは」。笑楽交の門をくぐると、みんなが笑顔になる。子どもも大人もわくわくする季節だ。
9.「編集日記」【福島民友新聞】 司馬遼太郎さんは戦国期と幕末維新期の物語を好んで描いた。読者も登場人物とともに、歴史の大きな変動期を生きているかのように思わせてくれるのが、司馬作品の魅力だろう▼司馬さんは生前の講演で歴史小説を書くために大事なのは史実を詳しく調べることだと述べている。だからといって史実をそのまま書いたのでは面白くはならない。史実が空想や想像を喚起する触媒となり、「化学変化」を起こすことで小説として結実するのだという▼一冊の歴史小説が話題になっている。福島市在住の作家、佐藤巌太郎さんの「会津執権の栄誉」だ。戦国期まで会津を治めた芦名氏の滅亡を描いた力作は史実を丹念に追いながら、迫力あふれる描写で多くの読者をひきつけている▼佐藤さんにとっては単行本デビュー作だが、物語にミステリー的な趣向も盛り込むなど緻密な展開は実に堂に入っている。今回の直木賞は残念ながら逃したが、壮大な人間ドラマを描ききった筆力は、文学界に強烈な印象を放ったはずだ▼佐藤さんは本紙インタビューで、次回は会津藩主の保科正之を主人公に書くと話した。新たな歴史小説の旗手がこれからどんな化学変化を起こしていくのか。目が離せない。
10.「雷鳴抄」【下野新聞】 益子町に「御神酒頂戴式(おみきちょうだいしき)」という江戸時代から続く伝統行事がある。祇園祭の当番引き継ぎの儀式で、夏真っ盛りに羽織袴(はかま)に身を包んだ男たちが、大杯に注がれた熱かんを飲むものだ▼1年365日になぞらえ、杯には3升6合5勺(しゃく)(約6・5リットル)入る。来年の当番町は、10人で3杯飲むのがしきたり。杯に手を触れず、顔を近づけて交代で飲み、最後の1人が手にとって飲み干す▼ここ20年ほどは酒量を調整するようになったが、それでも半端な量ではない。絶えることなく続いて来たのは、歴史の重みなのだろう。その祇園祭に「手筒花火」が加わって今年で13年になる。紙筒に火薬を詰め、手で持って火を付け、夜空に向かって打ち上げる▼筒から噴き上がる火花は10メートルにも達し、オレンジ色の火の粉が雨のように降り注ぐ。人と花火が一体となった勇壮華麗なものだ。町内外から数千人が見物に訪れ、今や益子の看板行事と言える▼もともとは東三河地方を代表する民俗行事。徳川家康(とくがわいえやす)が天下統一の後、花火を上げさせたのが始まりと伝えられる。家康が眠る本県にもその文化を根付かせ、益子に新しい風を吹き込もうと、地元有志が企画した▼定着したのは珍しさもあるが、全国から陶芸家を受け入れてきた懐の深い土地柄故だろう。今年も23日に披露される。一見の価値はある。
11.「いばらき春秋」【茨城新聞】 夏のはしりはホタルだったろうか。子供の頃、近くの水田に出向くと無数の光にあふれていた。うちわで落として持ち帰り、蚊帳の中に放っては小さな命の輝きに見入った▼夏休みは遊び満載だ。クモの巣を巻き取ってセミ捕りを作り、山に入れば樹液の出ているクヌギを蹴飛ばした。カブトムシやクワガタが落ちてくれば大手柄。川をせき止め水浴びもした▼日中の日差しは強かったが、夕暮れは和んだ。キラキラと窓辺に注ぐ木漏れ日に包まれ、つい寝入ってしまった記憶がある。思い出は美化されがちだが、夏は暑さだけではなかった。遊びに心躍らせ、祭りの後のような情感を刻む季節でもあった▼今年は梅雨明け前から猛暑が続いた。水戸の最高気温は7月に入り18日間で14日が30度台。34度超えが4日もある。この時季の平年値は25〜27度台。年によって変動はあるにせよ、かなりの高温続きである▼目を転じれば、毎年のように豪雨被害が相次ぐ。心に残る夏の情景は干上がり、濁流にさらされているように映る。暮らしに夏の試練と苦痛が伴うようになった▼未来へ何を残していくのか。経済や利便性の追求だけでは社会は持たない。普通に暮らせる環境をいかに守っていくか、心したい。(幸)
12.「三山春秋」【上毛新聞】 ▼不遇の幼・青年時代を送った塩原太助。愛馬と別れ、江戸に出て長く炭屋に奉公した後、粉炭に海藻を混ぜた炭団(たどん)で身代を築く。太助はその金を惜しげも無く街道の改修など公のために使った▼富岡製糸場の建設を主唱、銀行をはじめ500を超える会社を立ち上げた渋沢栄一。「日本資本主義の父」として歴史に名を刻む一方、財閥を築かず、日本赤十字社の設立に携わるなど公益にとことんこだわった▼栄一が太助の記念碑建立(1928年除幕)に際し揮毫(きごう)した書が、塩原太助翁記念公園(みなかみ町)の宝物庫で見つかった(10日付本紙)。太助への敬愛と利他の信念を物語る▼栄一は自著で「論語と算盤(そろばん)は甚だ遠くして甚だ近いもの」と論じた。子孫で栄一の研究者、渋沢健氏はその意を「正しい道理の富でなければ永続できない。従って、論語と算盤というかけ離れたものを一致させることが今日の大切な務め」と説く▼企業の環境への配慮、社会的貢献、企業統治を重視して投資する「ESG投資」は2016年の世界運用残高が10兆ドルとなり、2年で38%も増えた▼「背景に資源の枯渇、人権問題といった社会課題が企業の持続可能な成長に深くかかわるようになっていることがある」(健氏)。社会の課題に応えるイノベーションを起こし、公益にこだわった二人を思わずにいられない。
18.「斜面」【信濃毎日新聞】 土石流に流された2階建ての家は1階がつぶれ、基礎がむきだしになっていた。九州北部を襲った豪雨から2週間。西日本新聞の記者が福岡県朝倉市の山あいにある黒川地区に入った。江藤由香理さん(26)ら3人が犠牲になった現場だ◆江藤さんは8月に出産を控え、1歳の友哉ちゃんを連れて母の渕上麗子さん(63)が住む家に里帰りしていた。5日夜、上流の渕上さんの家は一気に流れ出た土砂や流木をまともに受けた。3人は2日後に発見。由香理さんは友哉ちゃんを抱きしめていた◆由香理さんは子どもの成長を写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿していた。最後に投稿したのは被災の当日だ。友哉ちゃんの寝顔の写真に文章が添えてあった。〈すっごい雷、すっごい雨。だけど、全然起きない息子ちん。風邪っぴきさん、明日は保育園行けますよーに〉◆朝倉市の小嶋ユキヱさん(70)は自宅が濁流にのみ込まれ約50キロ離れた有明海で見つかった。JR駅近くで20年うどん屋を営んだ。深夜まで店を開け、時には一品サービスし、おもてなしが良いという筑後地方の方言で「ほとめくうどん屋」と親しまれた◆災害で命が失われるたび日常が突然切り裂かれた人と家族の悲痛に胸が痛む。区切りをつけようと誓っても前は見えないだろう。行方も分からなければ心の嵐はやまないままだ。きのう被災地では黙とうをささげ捜索が再開された。強い真夏の日差しが自衛隊員らの背中に照り付けていた。(7月20日)
19.「日報抄」【新潟日報】 7月20日もう少しゆったり過ごす国でありたい。もし、そう考える首相がいたとしても、経済学者は相談に乗れないそうだ。なにせ経済学は「成長はいいことだ」を根底にしているから、減速の仕方を知らない▼新潟市で先日講演した佐伯啓思(さえきけいし)さんが語っていた。文明論、市場経済論の人である。ブレーキのない経済学の話は、冷戦時代にさかのぼる。米国からしたら、マルクス経済学は思いつきの価値観でしかない。比べて、われわれ米国の競争型経済は科学的である。そうして経済を科学の神髄である数学へと徹底的に置き換えていった▼ところがその数式とて価値観が入り込んでいた。効率的であることはいいことだ、競争はいいことだ、成長はすばらしい。大きくなーれの価値観の先にいまがある▼その限界の先に、と言った方が正解だろうか。新たな進路を見いだせずにいる。今月あった20カ国・地域(G20)首脳会合も「政策を総動員して成長を底上げする」との宣言で終わった▼英国の欧州連合離脱、トランプ大統領の誕生…成長を実感できない国民があれだけの驚きをもたらしても、これまで通りの旗印しかない。数式にもがく世界を連想させる句が本紙おとなプラスの「季のうた」にあった。〈ずるずると空の遠のく蟻(あり)地獄〉安里(やすさと)道子▼はい上がるヒントは、世界と共振する東京より地方にある、と佐伯さんは言う。「数値に表しようのないものを探そう」が第2ヒントであった。探してみますか。経済学に手を差し伸べる新潟学を。
20.「中日春秋」【中日新聞】 トランプ大統領が就任演説で「私たちが守るのは、二つの単純なルールです。米国製品を買い、米国人を雇うということです」と宣言して、半年。いま、米国は「メード・イン・アメリカ・ウイーク」の最中だそうだ▼ホワイトハウスに並べられたギブソン社のギターやキャタピラー社の重機など米国製品を前に、大統領はこう言って拍手を浴びた。「米国の製造業を復活させるということは、富の復活だけではないのです。私たちのプライドをも復活させるのです」▼この言葉にうなずくならば、米国民は大統領の長女イバンカさんの名を冠したブランドの靴は買うべきではないだろう。何しろそれは「メード・イン・チャイナ」なのだ▼「イバンカ・トランプ」ブランドの靴を作る工場では、無給の長時間残業などが当たり前のように行われ、その実態を調べていた人権団体の調査員らが中国当局に逮捕される騒ぎも起きた▼イバンカ・ブランドの服を作るインドネシアの工場では、女性労働者への虐待が横行しているというから、汗を流して働く人々のプライドには、関心がないのだろう▼しかし、「イバンカ・ブランド」は例外ではなかろう。私たちが手にする格安の電化製品や衣服の陰にも、低賃金での過酷な労働が潜んでいるのではないか。そんな疑問から目をそらしたまま、トランプ一家の偽善を笑うわけにはいかぬ。
21.「大観小観」【伊勢新聞】 ▼民進党の蓮舫代表が戸籍謄本の一部を公開した。「政権に強く説明責任を求める立場を勘案した」ためという。勘案を決意したのが代表就任の日ではなく、都議選敗北の日だったというのは、その理由に説得力を持たせるのには遺憾なことだった▼グローバル時代を反映し、日本の各界でも、父母の出身地が外国の日本人が活躍している。目にとまる機会が多いのはスポーツ界だが、ファンである大相撲にたとえると、蓮舫代表の公開ぶりは、元横綱朝青龍や横綱白鵬などが観客の気に入らぬ言動をした時に「モンゴルへ帰れ」とやじられる光景と重なって、胸が痛んだ▼公開に至る直接のきっかけは、都議選後に一部議員から敗北の一因であるかの指摘を受けたことや、総括で批判が相次いだためという。二重国籍の判明は昨年9月。日本国籍選択宣言をした同10月には戸籍公表を拒否している。それから都議選敗北まで、党代表として、今まで以上に国籍を問う視線を感じたのではないか▼蓮舫代表が二重国籍になったのは、日本の国籍法が父系主義で、改正への経過措置の中で日本国籍を取得したからである。指摘されるまで台湾籍を確認しなかったことを陳謝したのは政治家として当然だが、国籍規制緩和の流れの中で、翻弄(ほんろう)された一面がある▼日本人は普段は差別意識をむき出しにすることは少ないが、事が起こると必ず出自を言い出すのは大相撲を見ていても分かる。稀勢の里ブームと言われる最近の相撲人気もその裏返しと言えなくもない▼蓮舫代表の公開が、説得力は弱くてもその説明通りであることを願う。
22.「大自在」【静岡新聞】 2017年7月20日【大自在】(2017/7/2007:40)▼子どもの頃、梅雨明けと聞けば、毎年心が浮き浮きした覚えがある。長雨にようやく別れを告げる安堵[あんど]感と、盛夏到来の喜びが重なった。そんな思いも遠き日の記憶になってきた気がする▼きのう梅雨明けが発表されたが、今年は果たして梅雨があったのかとさえ思えてくる。地球規模の気候変動などで季節の変わり目もかつてのようなメリハリがなくなってきたのかもしれない。漁業も一部に深刻な影響が出ているようだ▼日本沿岸は海水温が上昇し、サンマが寄りつかなくなっているという。小型船による沿岸漁中心の日本と違い、中国や台湾が漁場とするのは主に日本の沿岸から400キロ以上離れた海域。大型船で数カ月通して漁を行い、船上で冷凍する。漁の差は漁獲量に反映され、4年前、台湾が日本を抜き首位に立った▼先ごろ開かれたサンマ漁獲国の話し合いでも乱獲防止へ向け、日本が提案した漁獲枠の新設は合意できず、議論は深まらなかった。日本のサンマ漁は先細りが顕著で、ますます厳しくなりそうだ▼サンマは近年、海外でも人気が高く、安さと味の良さでアジアでの需要が伸びている。昔は七輪を出し、うちわでパタパタやりながらサンマを焼く風景があちこちで見られたことだろう。においは路地から路地へと流れたに違いない▼「さんま、さんま、そが上に青き蜜柑[みかん]の酸[す]をしたたらせて」とは、作家で詩人佐藤春夫の「秋刀魚の歌」の一節である。はらわたの苦味が口中に広がる極上の味が伝わってくる。サンマはいつまでも庶民の味で、と願うばかりだ。
25.「時鐘」【北國新聞】 きょうのコラム『時鐘』2017/07/2001:52突(つ)き詰(つ)めれば「ふるさと教育(きょういく)」に行(い)き着(つ)くのではないか。人間(にんげん)だれしも長所(ちょうしょ)と短所(たんしょ)がある。それを一方(いっぽう)に決(き)めつけて全体像(ぜんたいぞう)とする無謀(むぼう)さを「県民性(けんみんせい)」発言問題(はつげんもんだい)から感(かん)じるのであるふるさと教育とは郷土(きょうど)のプラスとマイナスを正確(せいかく)に学(まな)び、自分(じぶん)と他者(たしゃ)を冷静(れいせい)に比較(ひかく)する能力(のうりょく)を身(み)につける学習(がくしゅう)である。何(なに)が真実(しんじつ)か分(わ)からないまま不確(ふたし)かな情報(じょうほう)が飛(と)び交(か)っている今(いま)こそ、本質(ほんしつ)を見誤(みあやま)らない教育が必要(ひつよう)だろうふるさと教育の原点(げんてん)は明治期(めいじき)の「郷土学(きょうどがく)」にあった。地方(ちほう)の人々(ひとびと)が東京(とうきょう)にあこがれ、世界(せかい)に視野(しや)を広(ひろ)げ始(はじ)めた時(とき)、日本人(にほんじん)は何を基準(きじゅん)にすればいいのか悩(なや)んだ。そこで気(き)づいた。自分が生(う)まれた土地(とち)が価値観(かちかん)の土台(どだい)にあることを自分を大切(たいせつ)にすることは郷土愛(きょうどあい)に等(ひと)しいとも思(おも)った。人(ひと)は恋(こい)をすると相手(あいて)のことをより深(ふか)く知(し)りたくなる。ふるさと愛(あい)も歴史(れきし)や風土(ふうど)、先人(せんじん)の姿(すがた)を知ることで深まる。隣(となり)の県(けん)と何が違(ちが)い、その違いはどこから生まれたのだろう。他者のことを知れば、むやみに人をけなすこともしなくなるふるさと教育ほど奥(おく)が深く、むずかしいものはない。われわれ大人(おとな)も謙虚(けんきょ)に学んでいきたい。
26.「越山若水」【福井新聞】 【越山若水】数字、数学が苦手な人は多い。しかし世の中を論理的に見つめ、正しく把握するには必須の存在だ。しかも注意を怠ると数字の本質を見逃してしまう危険性がある▼経営コンサルタント、小宮一慶さんは「ビジネスマンのための『数字力』養成講座」でこんな事例を取り上げる。病院団体の依頼で満足度調査を行ったという▼質問項目それぞれに7点満点で採点してもらった。すると評価最下位は、大方の予想通り「待ち時間」だった。では待ち時間を短縮すれば問題は解決するのだろうか▼待ち時間を減らすには医師や看護師を増やせばいい。しかし経営を圧迫する。診療時間を減らすのも一考だが、これでは本末転倒である。調査の真の狙いは満足度に影響を及ぼす項目を見つけること▼数字データと満足度の相関を分析すると、最も重要なのは「医師の言葉遣い」「医師・看護師への信頼度」と判明。待ち時間より患者の対応、スタッフの教育がカギだった▼ところで内閣支持率が最低の35%台まで続落した安倍政権。野党からは加計(かけ)学園問題などの追及が勢いづき、数字を前にさぞかし恨めしい気分だろう▼首相自身が出席する閉会中審査では質疑の時間配分や証人・参考人の調整で難航した。しかし信頼回復には時間減らしの義理対応より、懇切丁寧な説明こそが肝心。本質を間違えない「数字力」が試金石となる。
27.「凡語」【京都新聞】 1999年は神奈川県。2000年は秋田県。そして、今年は三重県。さて何だ。答えは、近年南極で生まれた巨大氷山とほぼ同じ面積を持つ都道府県だ▼南極は、降り積もった雪が厚さ2千メートルを超える「氷床」となって大陸を覆っており、自らの重みで海上にはみ出した部分は「棚氷」と呼ばれる。これが割れて海上に出ると氷山になる▼今月中旬、南アメリカ大陸と海をはさんだ場所にある南極半島東側で「ラーセン棚氷」の一部が分離して氷山になった。面積は約5800平方キロ、重さは1兆トンを越えるという。三重県がぷかぷかと太平洋を漂流するさまを想像すると、あまりのスケールの大きさに絶句する▼周囲も大変だ。00年にロス棚氷から割れた氷山「B15」は、面積が約1万1千平方キロもあり、流れ着く先でプランクトンやクジラの成育、ペンギンの繁殖などへの悪影響が心配された▼今回、棚氷が支えていた大陸上の氷塊が海に流れ出す事態になれば、海水面上昇も考えられるという。地球温暖化と関連は不明というが、相次ぐ棚氷の崩壊は南極の気温上昇が原因という専門家もいる。地球温暖化対策はやはり待ったなしだ▼三重県と米国東部のデラウェア州の面積はほぼ同じらしい。「パリ協定」を離脱したトランプ大統領にも教えてあげたい。
28.「正平調」【神戸新聞】 初めて担当した患者の1人は16歳の少女だった。容体が悪くなって「先生、お世話になりました」と言う彼女の耳元で、思わず叫んだ。「しっかりしなさい。死ぬなんてことはない」◆息を引き取った後、若い医師は深く悔いた。死を受け入れた少女の思いにこたえられたのか。「脈をみるより、どうしてもっと彼女の手を握っていてあげなかったのか」◆105歳で亡くなった医師、日野原重明さんが、折に触れて語り、書きとめる体験である。繊細で柔らかい感受性に満ちる青春時代に、どんな難題と向き合い、何を学んだか。それは人生を歩む指針にもなる◆患者が主役の医療を唱え、終末期医療に力を注ぎ、子どもたちへの「いのちの授業」を続けた。看護師教育にも努めた。医療にささげた長い人生は、少女からの宿題に懸命に答えようとする日々だったとも思える◆随筆集「生きかた上手」に印象深いくだりがある。「最後に『ありがとう』と言って死ねるか」と。なぜなら地位や名誉ではなく、「ありがとう」の一言は「残される者の心をも救う、何よりの遺産」だから◆聞くところでは、自宅で家族や知人へ「ありがとう」を伝えたそうだ。いや、日野原さん。残してくれたものを思えば、私たちこそ「ありがとう」だ。2017・7・20
29.「国原譜」【奈良新聞】 夏休み時期で、荷台に旅用バッグを装着したサイクリストを目にする機会が増えた。酷暑の中を走り抜く若い体力はうらやましい。今年5月、自転車活用推進法が施行された。だが、自転車での交通違反の罰則が強化された平成27年の道交法改正と比べて案外知られていない。環境に優しく、災害時に機動的で、健康増進や交通混雑緩和にも寄与する自転車をもっと利用しようとの趣旨。自治体には利用環境改善の計画策定が求められる。具体的には自転車専用道路・通行帯の整備やシェアサイクル施設、自転車競技場の充実などが挙げられる。安全確保とともに自転車への親しみを促す内容だ。県でも全長約600キロの周遊ルートの設定や、自転車利用者に利便性の高いサービスの提供をしている。ただ、一部のコースには子供連れだと安心して走行できない場所もある。法の施行で、自転車利用者の要望が高まれば課題が改善される道筋はできた。一方で利用者側のルール、マナーの順守徹底も必要になるだろう。より幅広い年代で自転車を楽しめるように、法をうまく生かしたい。(智)
30.「水鉄砲」【紀伊民報】 暑さで食欲が落ちるこの季節になると、薬膳料理の達人、程一彦さんを思い出す。二十数年前、連載を依頼したのが縁で知り合い、料理や食材の話をあれこれ教えてもらった。▼とりわけ夏野菜の話が懐かしい。例えば、キュウリは水分が豊富で体を冷やしてくれる。ぬか漬けにすると、米ぬかと乳酸菌が働いてビタミンが増える。食欲がない時には短冊に刻んで油で炒め、少量のラー油としょうゆを垂らすと、ぴりっとして食べやすい——といった具合だ。▼夏野菜の効能は古くから知られている。「トマトが赤くなると、医者の顔が青くなる」「ミョウガは刻んでみそ汁に入れたり、そうめんの薬味にしたりすると、食欲を引き立ててくれる」「夏ばてにはネバネバ野菜。オクラに含まれる成分は免疫力を高め、胃腸の調子を整えてくれる。ネバネバ仲間の山芋と合わせて酢の物にするとよい」。▼野菜だけではない。夏の果実、例えばバレンシアオレンジに含まれるクエン酸は、代謝をよくして疲れを取ってくれるし、ビタミンCは美肌や風邪予防に効果があるという。▼それぞれ紀南の地で採れるものばかり。地元の新鮮な食材を利用して元気を回復したい。程さんも「出来合いの食べ物でも、何らかの手を加えてください。健康面でも精神面でも重要なことです」といっている。▼ひと手間掛ければ、自分だけの料理ができる。手間を惜しまないことが夏ばて防止につながる。(石)
31.「滴一滴」【山陽新聞】 おととい、東京で大きなひょうが降る映像がしきりに流れた。積乱雲などが発達すると、激しい雷雨や突風を伴って降りやすいという。大正期には、直径23センチのひょうが降った記録もあるというから、怖い気象現象の一つだろう▼2週間前に九州北部を襲った豪雨災害では、被災地で仮設住宅の建設が始まった。いまだ行方不明者の捜索も続いている。豪雨による川の氾濫は今年、列島各地で頻発している。梅雨明けしても、突然の気象変化への警戒は怠れまい▼一方、海の向こうでは猛烈な熱波が記録的高温をもたらしている。イランやパキスタン、米カリフォルニア州は50度超となった。高温で揚力が得にくくなり、米では航空機が飛べない事態が相次いだ。思わぬところに温暖化の影響は及ぶものだ▼世界気象機関は、観測史上最も暑い年だった昨年に続き、今年も異常気象の多発を警告している。大雨、干ばつ、竜巻などがいつ、どこで起きてもおかしくない▼世界で温暖化対策が全く進まないと、日本の年平均気温は今世紀末に4・5度上がると気象庁はみる。人類史の未体験ゾーンはあまりに過酷な世界である▼米のドキュメンタリー映画「不都合な真実」が地球環境の危機を訴えたのは約10年前だ。不都合なものは「偽」と言い張り、対策に背を向ける人が今、その国のトップにいる。(2017年07月20日08時00分更新)
32.「天風録」【中国新聞】 暑さと人類2017/7/20猿人も木から下りる—とは一体どれほどの暑さだったのか。はるか昔、アフリカの森林の樹上で暮らしていた人類の祖先は暑さに参った。涼を求めて、地上で生活を始めた可能性があるらしい。京都大の研究員が新説を発表した▲チンパンジーなどの観察で分かった。気温の低い日は木の上で過ごしていたが、乾期は気温が5度以上低い地上にいる時間が増えたという。人類は直立二足歩行をいつ、どのように始めたのか。謎の解明に役立ちそう▲暑くなると木の上で、元気いっぱい声を立てるものもいる。<〓(せみ)たちが梅雨明けまだかと合図待ち>。本紙の時事川柳に1句見つけたきのう、中国地方4県など全国各地で梅雨明けが発表された。週間天気予報に目立った傘のマークもお日さまに▲ずっと晴れや高温が続いていた東京では、もう梅雨は明けたのではないかとの声がしきりだったらしい。でもゲリラ豪雨が目立ったり、ひょうまで降り付けたり。そんな異常気象が夏到来の判断を曇らせたのだろうか▲熱中症になる人が相次ぐ。特に都会のコンクリートジャングルでは、照り返しが強い。高温が夜も続く。夏の日本では、炎天直下歩行を人類は避けるべきだろう。【お断り】〓は「蝉」の異体字ですが、JISコードにないため表示できません。
35.「海潮音」【日本海新聞】 鳥取県内の有権者の反発は確実に強まっている。参院の「1票の格差」是正に伴い、人口の少ない隣接する県の選挙区を統合した「合区」のことだ。昨年7月の参院選で「鳥取・島根」「徳島・高知」の4県は戦後初めて合区で実施された◆それから1年経過したのを機に、本紙は鳥取県内のインターネット会員を対象に意識調査を実施。その結果(16日付本紙参照)、82・4%が合区に反対し、「都道府県単位で代表を選ぶべきだ」「人口比だけを基準とする選挙制度はおかしい」などと異を唱えた◆合区選挙の影響では「候補者に親近感を持てない」が52・4%を占めた。選挙当時、有権者からは「選挙が終われば(当選者)本人の顔を見ることはないだろう」との声が聞かれたが、鳥取県内ではそれが現実となっているようだ◆合区により鳥取県は「全国で唯一県選出代表がいない県」になった。憲法が求める「1票の価値の平等」に基づく人口比例選挙と、合区によって生じた「県民の不都合」をどう捉えればよいのか◆月内には自民党内で合区解消に向けた議論が本格化する運びだ。「2019年参院選までに選挙制度を抜本的に見直す」とした公約は実行されるのか。全国的に見れば合区に対する関心は低い。「小さな県」だからこそ、「声を大にして」意思表示したい。(和)
36.「明窓」【山陰中央新報】 生きかた上手100歳を超えても医師を続け、身をもって「生涯現役」のお手本になった日野原重明さんが105歳の人生に幕を下ろした。明治44年生まれ。ベストセラーになった自著『生きかた上手』を体現したような晩年だっただけに、残念な思いがする▼日野原さんの功績や生涯は改めて触れるまでもないだろう。人間ドックや「生活習慣病」の発想が生まれたのはその一例。ひょうひょうとした口ぶりで教える生き方のヒントや命の意味に、たくさんの人が勇気をもらいファンは多かった▼平均寿命で女性に追い付けない男性には「希望の星」でもあった。女性では、日野原さんの翌年に文化勲章を受けた作家・瀬戸内寂聴さんの95歳や、同じく作家で93歳の佐藤愛子さんらが、まだ現役の活躍を続ける。男性で思い当たるのは99歳の中曽根康弘元首相だが、発言力を含めた現役は大手新聞の渡辺恒雄主筆の91歳くらい▼どうやら鍵を握るのは「多忙な日々を送ること」のようだ。日野原さんは、100歳を過ぎても年100回もの講演や執筆をこなしたという。定年を境に「毎日が日曜日」という生き方では健康寿命によくないらしい▼75歳以上の元気な人たちの参加を得て2000年に設立した「新老人の会」の発足式で日野原さんは、こう呼び掛けたそうだ。「75歳を過ぎてから第3の人生が始まる。今までしたことのないことをやってみよう」▼人生の大詰めをどう過ごすか。まだ間がある人もない人も、考えておきたい「人生の師」からの宿題だ。(己)2017年7月20日
33.「四季風」【山口新聞】 6選に執着する知事、禅譲を諦めて出馬に動く出納長、そこに「副知事擁立」の奇策で割り込む大物衆院議員—▼山口支社時代の取材で、今も記憶に鮮烈な1996年夏の山口県知事選である。8カ月に及ぶ前哨戦は、最大与党自民が揺れに揺れ、5期20年間権勢を振るった知事が引退を余儀なくされるなど、県政界に激震が走った選挙だった▼その大物衆院議員が先月、90歳で亡くなった吹田愰さん。新進党の選対会議後、ぶら下がり取材をしていたら、突然「副知事を擁立する」と。断られるのを見越したうえでの発言は、その後、擁立失敗の責任を取る形で自らの出馬につながっていく▼さらに自民党本部の推薦に動く出納長派の県議や国会議員を相手に、古巣の自民人脈を味方に付け対抗。推薦を仕切る党本部幹事長代理から「勝てる候補ではない」と一蹴された出納長は、異例の県連推薦に追い込まれるのである▼田布施町長、県会議長を経て、岸信介元首相の後を継ぎ衆院議員6期、自治相を歴任した。豪腕な政治スタイルが県政界を牛耳かねない怖さと映り、知事選で返り討ちにあったのはご承知の通り。まさに吹田さんらしい、昭和のにおいがする政治家だった。(宮)
37.「地軸」【愛媛新聞】 「野球で言えば、私の人生は九回だが、これから一番大事な人生が始まる」。そう語ったとき、御年95歳。続けて「延長十五回ぐらいまで、子どものためにやりたい」—言葉通り、長く濃い「いのちの時間」を存分に生ききった▲聖路加(せいるか)国際病院の名誉院長、日野原重明さんが105歳で旅立った。明治生まれで戦前から医師を務め、東京大空襲や地下鉄サリン事件の救護に当たり、よど号ハイジャック事件の人質にも。波瀾(はらん)万丈、生涯現役の類いまれな一生▲90歳を超えても執筆、演劇、講演と東奔西走。2年前は安全保障関連法案に「反対」の声を上げた。13年前に聞いた学会講演では「講演予定は10年先まで満杯」「長生きは人に恩返しするチャンス。罪深い人ほど長生きしなきゃ」。ユーモアとエネルギーに感嘆した▲予防からみとりまで命に丸ごと関わり続けた人でもある。「愛するあなた」として患者に寄り添えば「命を上手にランディング(着陸)させられる」—長さだけではない、それぞれの人生への敬意がにじむ▲よど号事件後「人生を誰かのためにささげようと決心した」という。「いのちは一人一人が持つ大切な時間」「時間を誰かのために使うことで生きることが意味を持つ」。子どもたちへの「いのちの授業」に、人生の「延長戦」を惜しみなく費やした▲誰かのために生きた人は、皆の心に永く生き続ける。長い旅路の果ての見事な着陸に、拍手。
38.「鳴潮」【徳島新聞】 子どもを不幸にする一番確実な方法は何か。思想家ルソーの意見はこうである。<それはいつでもなんでも手に入れられるようにしてやることだ>「エミール」岩波文庫では政治不信をあおる一番確実な方法は何か。ルソーさんには恐れ多いが、意見を述べさせてもらえれば、こうである。「資質が疑われる閣僚を重用し続けることだ」。稲田朋美防衛相を巡って、新たな問題が浮上した南スーダンPKO派遣部隊の日報を非公表とする方針を了承していたという。知らぬ存ぜぬで通し「(防衛省・自衛隊に)改めるべき隠蔽(いんぺい)体質があれば私の責任で改善していきたい」とした国会答弁は何だったのかもっとも当人はそんな事実は全くない、と否定している。このやりとりには既視感がある。森友学園のときもそうだった。ただ今回は、記憶違いとか、誤解を招きかねない表現だったとかでは乗り切れそうにはない自衛隊は世界有数の実力組織。防衛省の長がこんなことで、政府の言う安全保障上の危機に対処できるか。国民を欺いたのであれば、取るべき道は一つだ安倍晋三首相の任命責任も問われよう。更迭の機会もあったのに、保守思想で共鳴する秘蔵っ子を甘やかし、それも一因で支持率は急落している。梅雨は明けたが、このままでは来月の内閣改造でも不信の雲を拭えまい。
39.「小社会」【高知新聞】 あす高知市夏季大学で講演する作家の阿川佐和子さんは、お酒もたしなまれるようだ。和食なら日本酒か焼酎、洋食ならワイン、中華の場合は紹興酒。料理に合わせて選ぶようにしているが、それでもやっぱり「最初はビール!」。エッセー「とりあえずビール」に書いている。注文する時の気持ちは、映画「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーンの心境だという。「各国を訪問して一番印象に残った街はどこか」。彼女演じる王女は記者会見で聞かれ、「いずれの国も素晴らしく…」。答えかけて、つかの間の恋に落ちた記者と目が合うと「ローマ。ローマがもっとも印象的でした!」。さすが、うまいことをおっしゃる。キンキンに冷えたビールで喉を潤す。とりわけ最初の1杯は数あるお酒の中でも格別。大方の左党の、そんな思いとぴったり重なる。「リョーマの休日」を掲げる本県も、きのうようやく梅雨が明けた。もっともここ数日、青空が広がり暑さも厳しかった。早朝からのすさまじいせみ時雨に、気象台の発表に先駆けて梅雨明けを実感していた方も多いだろう。〈一杯にとどむるはずの生ビール〉松本あい子。〈缶ビール夜毎(ごと)資源ごみ殖やす〉高田紀元。ビールを一層おいしく感じる季節だが、健康にも家計にも配慮して飲みたいもの。〈麦酒つぐや胸中の子も齢五十〉及川貞。子を戦死させた母の句。独り静かにグラスを傾ける夜もある。7月20日のこよみ。旧暦の閏5月27日に当たります。つちのえさる一白先勝。日の出は5時10分、日の入りは19時14分。月の出は1時52分、月の入りは15時54分、月齢は26.0です。潮は中潮で、満潮は高知港標準で2時22分、潮位174センチと、16時07分、潮位169センチです。干潮は9時18分、潮位36センチと、21時37分、潮位101センチです。7月21日のこよみ。旧暦の閏5月28日に当たります。つちのととり九紫友引。日の出は5時10分、日の入りは19時14分。月の出は2時44分、月の入りは16時59分、月齢は27.0です。潮は中潮で、満潮は高知港標準で3時22分、潮位182センチと、17時05分、潮位181センチです。干潮は10時15分、潮位21センチと、22時37分、潮位97センチです。
40.「春秋」【西日本新聞】 葉っぱのフレディは大きな木の枝で生まれた。周囲にもたくさんの葉っぱたち。同じ形に見えるが、それぞれ個性豊かな仲間と楽しく暮らした。夏には涼しい木陰をつくり人間を喜ばせた▼冬になり葉を散らす北風が吹き付けた。仲間のダニエルは「ぼくたちは葉っぱの仕事をぜんぶやった。だから引っ越すのだよ」と言った。「死ぬということでしょ?」と怖がるフレディにダニエルは答えた。「木も葉っぱもいつかは死ぬ。でも“いのち”は永遠に生きているのだよ」▼枯れ葉になったフレディは雪解けの水に混じり、土に溶け込んで木を育てる力になった。米国の教育学者バスカーリア氏の絵本「葉っぱのフレディ−いのちの旅−」▼物語に感銘を受けた医師がいる。105歳で亡くなった日野原重明さんだ。「巡る命の大切さ」を広く伝えたいと、自ら脚本を書いてミュージカルにした。舞台にも立った▼よく生き、よく老い、よく病み、よく死ぬ−。“生涯現役”医師は常に新しいことに挑戦し健康で豊かな老後の姿を実践で示した。「75歳からは第三の人生」の言葉に励まされた人も多かろう▼「どんな人生でも最期には独りぼっちで死という大海に漕(こ)ぎ出(だ)さなければなりません。人から愛されている、赦(ゆる)されている自分と知っていなければ、漕ぐ手に力が入りませんでしょう」。そう語った日野原さん。穏やかに、巡る命の大海へ漕ぎ出したそうだ。=2017/07/20付西日本新聞朝刊=
41.「くろしお」【宮崎日日新聞】 何が幸いするか分からない。といっても災いを福に転じるには前向き思考と強い精神が必要だ。105歳で亡くなった日野原重明さんは、逆境をプラスに生かす達人だった。医師として音楽の持つ治癒能力に注目し、日本音楽療法学会の理事長を務めた。2012年に宮崎市であった学術大会では、1時間の講演で立ちっぱなし。宗教的な環境で育ったという日野原さんは、講演の中で「グレイス」(恩寵(おんちょう)=神の恵み)について語った。音楽と深く関わるようになったのは小学4年生の時に病気になって休学し、ピアノを習うことができたから。「病気をして失ったようであるけれども私にはグレイスがあった」。教会で結婚式の演奏をし、級友と男声カルテットを組んだ。医師を志したのも生活習慣病予防や終末期医療の充実に力を入れたのも、不幸な体験からのプラス思考だった。聖(せい)路加(るか)国際病院の院長として、地下鉄サリン事件の被害者を多く受け入れられたのも、東京大空襲の体験から非常時に備える態勢を取っていたからだ。この少年もグレイスを見逃さなかったのだろう。全日本アマチュア将棋名人戦県大会で史上最年少優勝した清水将馬五段(14)。将棋を指し始めたきっかけは小学3年生の時、携帯ゲーム機をやりすぎて親に禁じられたのがきっかけとか。不平家にはグレイスは訪れない。または見逃してしまう。今できる何かに熱中することが新たな世界を開く。医師の業績はもちろん、心の姿勢でいかに長い人生を輝かせられるか、身をもってお手本を示した日野原さんの生涯に敬服する。
42.「水や空」【長崎新聞】 本県から生まれた「日本一」「日本初」はいろいろあるが、「日本初の女性大臣」もそうらしい。57年前のきのう7月19日は第1次池田勇人内閣が発足し、長崎市出身の中山マサさんが女性では初めて、厚生相として入閣した日。ゆえに「女性大臣の日」なのだという▲中山さんは1891(明治24)年、英国人の父と日本人の母との間に生まれ、活水女学校を卒業した。教師生活を経て結婚し、戦後は代議士に▲厚生相の在任期間は5カ月ながら、母子家庭への手当支給の法制化に尽くしたりと功績を残した。その仕事っぷりの、いかに精力的だったことか▲と、にわか仕込みの話を並べたのは、近ごろの閣僚の功績どころか過ち、誤りらしき行動が目に余るからだ。まさか「女性大臣の日」にちなんだわけではあるまい。稲田朋美防衛相の無自覚な行動がまた明らかになった▲南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら、実は陸上自衛隊が保管していた。それを非公表とする方針を稲田氏は了承していたという。国会では、報告を受けていないと答えたのに▲失言の域を超え、虚偽答弁までやったのなら、いよいよ閣僚の資質が問われよう。57年前の今ごろは、「日本初」の閣僚の座に背筋を伸ばしたであろう人もいたというのに。(徹)
43.「有明抄」【佐賀新聞】 ポケベル電波再び脚光2017年07月20日05時02分その昔は「電子の鎖」と呼んでいた。どこにいても、容赦なく追いかけてくる「ピーピーピー」という音に縛られていたからだ。ポケットベルのことである◆あれは20代のころ、車で山深い道を走り、取材先を必死に探していた。そこに突然、ポケベルの呼び出し音。あっ緊急事態の発生か。気はあせるが、人里離れた山中で公衆電話などすぐには見つからない。ふもとまで下り、急いで本社に電話すると大したことのない用件。がっくりと肩を落としたことを覚えている◆大手はサービスが終わっているが、まだ展開している会社がある。建物内や地下でもつながりやすいポケベルの特性が見直され、防災面での活用が増えているという。東日本大震災後、ポケベル電波を使った情報提供システムを自治体が導入しだした◆今は携帯電話の一斉送信メールがあっても、携帯を持たないお年寄りもいる。防災行政無線の戸別受信機は、価格が壁になって普及が進んでいない。ポケベル電波を受信できる据え置き型の専用端末は安価で、家庭に文字や音声での緊急情報が届き、避難指示を伝えるのに効果的らしい◆昼夜、追いかけられ、縛られるという負のイメージを脱ぎ捨て、いつでも行政とつながっている−。そんな、もしもの時に正確な情報を得られる「安心の絆」となれば、大歓迎である。(章)
45.「南風録」【南日本新聞】 仕事柄、帰宅が未明になることも少なくない。テレビをつけると、国内の夜景名所の空撮映像が流れているときがある。うっとりするほど美しく、見ていて飽きない。ある人の死を境に、夜景を見る目は変わった。広告大手電通の新入社員で、2年前のクリスマスに自ら命を絶った高橋まつりさんだ。「会社の深夜の仕事が東京の夜景をつくっている」。長時間労働がはびこるあしき慣行を母親に嘆いていた。厚生労働省が発表した2016年度の過労による労災補償状況で、うつ病など精神疾患の労災申請、認定件数はいずれも過去最多だった。20代以下の認定増が著しい。職場で追い込まれ、心を病む若者の姿を想像すると胸が痛む。発症の主な原因は「嫌がらせ、いじめ、暴行」「仕事内容・量の変化」という。過労自殺は未遂を含むと、高橋さんら84人に上る。過労死は107人だった。パワハラや過剰なノルマから救う手はなかったか。「これ以上、頑張って生きている人の夢、希望、人生、命を奪わないでほしい」。高橋さんの母親が寄せたコメントが重い。他の遺族の無念もいかばかりか。人を使い捨てにする悪弊は断ち切らねばならない。電通の違法残業事件は書面審理ではなく、公開の法廷で裁かれることになった。過酷な実態が明らかにされるだろう。花も実もある人生を諦めざるを得なかった思いを無駄にすまい。
46.「金口木舌」【琉球新報】 大勢の人々の真ん中で、おんどりは重い梁(はり)を持ち上げ、羽根のように軽々と運んだ。それを見た娘は叫ぶ。「皆さん、運んでいるのはわらだって分からないの」。途端に魔力は消え、真実を見た人々は魔法使いを追い払う。娘は四つ葉のクローバーを見つけて賢くなっていた▼グリム童話の「梁の木」である。その魔術のような現象が世界中で横行している。偽ニュースだ。広告収入目当ての悪質なものもあり、グーグルなどIT大手は対策に乗り出した▼偽ニュースは日本でも広がっている。「忖度(そんたく)が小中学校の正式科目に」など、明らかにうそと分かる内容もあれば、ある食べ物に「放射線から体を守る効果がある」など一見、信じてしまいそうなものもある▼偽ニュースの問題を世界に認知させた立役者トランプ氏は大統領就任から今日でちょうど半年。いまだに続く暴言や失言の数々が世界中から悪評を買っている▼おかげで情報の真偽を見抜く試みが世界でブームだ。日本でも先月、ファクトチェック団体が発足した。今月上旬には、同様の団体の国際会議がスペインであり、各国の報道関係者らが試みを報告した▼「梁の木」の娘は魔法使いの仕返しに遭う。現実社会でも偽情報との攻防は続くだろう。“魔術”を見抜く“四つ葉のクローバー”を一人一人が身に付けられるかが、大きな決め手だ。
47.「大弦小弦」【沖縄タイムス】 鉄鋼製の扉が激しい銃撃の末、こじ開けられた。自動小銃を持った制服姿の南スーダン兵が、国際機関の外国人職員ら50人が滞在する宿泊施設を急襲。金品を奪い女性を暴行、地元記者1人を射殺した▼浴室に隠れた職員は、電話やメールで国連のPKO派遣団に救助を要請したが、中国やエチオピアの部隊は出動を拒んだ▼2016年7月。首都ジュバは大統領派と反体制派の戦闘で、市民ら数百人が死亡。陸上自衛隊のPKO宿営地内にも流れ弾が着弾した▼陸自部隊は日報で、大規模な戦闘に巻き込まれる可能性や「国連活動の停止」にも言及。日報は、現地自衛官から生命の危険を訴えるものでもあった▼稲田朋美防衛相が2月の防衛省最高幹部による緊急会議で、日報の隠蔽(いんぺい)を了承していたという。稲田氏は日報で「戦闘」が報告されていたが、憲法9条の問題になることを避けるため「武力衝突」という言葉を使い、実態とかけ離れた治安情勢を国会で答弁してきた。速やかに日報が公開されていれば、安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」の付与の判断にも、影響を与えただろう▼稲田氏は東京都議選で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言し、憲法違反と批判を浴びた。文民統制を果たさず自衛隊を政治利用する防衛相に、重い職責を任せることはできない。(知念清張)