ルール運用に「幅」を 駅伝での「失格」に思う

2015/01/20 10:56【共同通信】

                   全国都道府県対抗男子駅伝の4区で力走する埼玉の小山直城。左は静岡の竹下凱、右は熊本の久保和馬(代表撮影)

 全国都道府県対抗男子駅伝の4区で力走する埼玉の小山直城。左は静岡の竹下凱、右は熊本の久保和馬(代表撮影)

 18日、広島で行われた全国都道府県男子駅伝は埼玉県が初優勝したが、駅伝では珍しい「失格」があった。

 愛知県の1区を担当した山藤(愛知高)が、中継点間際で足元がおぼつかなくなり、なかなか中継点に到達できない。

 なんとかタスキを2区の中学生ランナーに渡そうとするのだが、それも届かず、タスキを投げてしまった。

 2区の選手は地面に落ちたタスキを拾って走り出したが、この行為が失格と判定されてしまったのである。

 テレビの映像では一部始終が流されていた。

 駅伝のルールを定めた「日本陸上競技連盟駅伝競走規準(2010年3月修改正)を見てみよう。第2部の第6条の1に「中継」の定義がなされている。

1、たすきの受け渡しは、中継線から進行方向20メートルの間で行う。中継線は幅50ミリの白線とする。

 この規準に則って解釈するならば、タスキを投げたことよりも1区の選手は中継線に到達しておらず、中継が完了しなかったということになるだろう。

 審判員は自分の仕事を果たしたのだ。

 しかし一方で、駅伝はタスキの持つ意味合いが大きく、ファンからすれば「認めてあげればいいのに」という思いが出てくるのも不思議ではない。

 私は駅伝の場合、ルールの運用に「幅」を持たせてもいいのではないか、と思っている。

 今回のようなケースがもう一度起きたならば、選手の健康を第一に考えながらも、中継が成立していなければ、第2走者が中継線に戻ってから、もう一度タスキを渡すように指導をしてもいいと思う。

 つまり、「指導の余地」を残してもいいのではないか、という提案だ。

 なぜなら、400メートルリレーで見られるバトンパスのオーバーゾンや、競泳のリレーでの「引き継ぎ違反」とは、競技のなかでの「中継」の意味合いが違うと考えるからだ。

 トラック、競泳のリレーの場合、その技術も含めての競い合いだからだ。

 駅伝の場合は、何時間のうちの数秒。勝敗への影響度はトラックのリレーに比べれば低く、タスキパスの技術を競うわけではない。

 また、チーム数が多い駅伝では、1区と2区の中継点が大混雑し、転倒する選手をよく見かける。

 「中継線から進行方向に20メートルの間」という規定があるから、混乱を招いているという見方ができなくもない。そのあたりは弾力的な運用の余地を残してもいいのではないか。

 もともとスポーツの世界では、レフェリーや審判員の解釈には幅があるものだ。サッカーでもレフェリーによって反則の判定は変わってくるし、それも競技の一部になっている。

 駅伝には、おおらかな部分があってもいいと思うのだが。

生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル

 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBSのスポーツ番組ではキャスターを務めている。