コラム

  • 【北海道新聞】

    最近公開の映画「殿、利息でござる!」は実在した仙台藩の宿場町が舞台だ。住民は藩命による出費で貧困にあえいでいた▼そこで同志が集まり、千両を藩に貸し出して、利息で町と住民を救う策を思いつく。千両と言えばいまの価値で3億円という。町のためにと、家族で衣類や家財を売り払い、金を工面する者も現れた。原作は歴史家磯田道史さんの著書「無私の日本人」の中の1話である▼金を出せば利息が付くのはまっとうな経済だろう。現代日本をはじめ欧州も、利息どころかマイナス金利を導入しているのとは対照的だ▼伊勢志摩サミットはその世界経済が焦点だった。議長役の安倍晋三首相は、リーマン・ショック前と似た状況にあると言い出した。政府は先日の月例経済報告で、世界の景気について「全体として緩やかに回復している」と公表したばかりだ。なぜ急に判断が変わったのか、首をかしげたのは各国首脳だけではあるまい▼8年前、米国の大手投資銀行が破綻し、その衝撃が世界に広がった。日本でも金融不安の余波で、多くの派遣労働者が雇い止めとなり、路頭に迷った。その再来となるとつい身構えてしまう▼結局、潜在するリスクを消費増税延期の言い訳としたいようだ。漠然と経済危機を言い募るだけでは人騒がせだろう。参院選を有利に戦いたい思惑が裏にあるとすれば無私どころか「私」が先走りすぎている。2016・5・29

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  • 【河北新報】

    以前、兵庫県淡路市の「野島断層保存館」を見学したことがある。野島断層は1995年の阪神大震災を起こした活断層の一つ。施設は地表に現れた断層を140メートルにわたり保存・展示している。地震のすさまじい力に肝を冷やした▼熊本地震を機に、活断層に目が注がれている。同地震は日奈久(ひなぐ)と布田川(ふたがわ)の両断層帯で発生し、震度7を2回観測した。自分や家族の周囲に活断層がないか、気になった人も多いはず▼活断層は全国に2000以上あるという。産業技術総合研究所は、ウェブサイトで独自に編集した活断層データベースを公開している。誰でも断層帯のおおよその位置を、地図で確認できるので便利だ▼断層帯といえば、熊本地震を受けて山形県は先月末、活断層上に県有6施設があると公表した。ところが実際に把握していたのは2014年3月。公表まで住民や自治体に周知せず、防災対策も進めてこなかった。他県に先駆けて調査しながら、2年余りの歳月を無駄にした▼公表当初は施設名を伏せていた。「利用者に不安を与えかねない」という理屈だった。活断層はいつ動くか分からない厄介者。熊本地震が証明している。一度、野島断層保存館に足を運んで、身震いするといい。ガチガチのお役所頭が少しは軟らかくなるかも。(2016.5.29)

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  • 【東奥日報】

    アイドルなどの活動をしていた20歳の女性が、東京で27歳の男に刺される事件が起きて1週間が過ぎた。女性のファンと称する男は、贈り物を送り返されカッとなったという。好きなのに受け入れてもらえず犯行に及んだ−。だとすれば身勝手極まりない。女性のツイッターには1月以降、男からとみられる書き込みが続いた。はじめは応援するような内容だったが、反応がないことにいら立ちを募らせたのか、次第に過激な言葉に変わっていった。「見下されたこと一生忘れない」「スゲー怒っている」「そのうち死ぬ」。心の中に、どす黒いものが広がっていく様子がうかがえる。「死」という言葉が出てくるに至っては、凶行を予告しているかのようだ。女性はさぞ恐ろしかったに違いない。事件をめぐっては警察の不手際が相次ぎ明らかになった。また、アイドルとファンの「距離の近さ」を指摘する声も出ている。小さなライブハウスでのイベントは、アイドルを間近に感じられるため人気がある。アイドル自身がツイッターなどで発信することも多く、ファンとの心理的な距離が縮まっているという。ファンは英語の「ファナティック」という単語を短くした言葉。「ファナティック」は「熱狂者、狂信者」という意味だ。理性を失った「熱狂者」の暴走を止める手はなかったか。

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  • 【デーリー東北】

    天鐘(5月29日)零戦の元操縦士で、今月3日に亡くなった原田要さんは戦争を空から見た人だった。「お国のためにと海軍に入ったが、気づけば世界一、非人道的な人間になってしまった」と語っていた▼晩年まで講演で戦争反対を訴えたのは罪悪感と悔恨の念からだ。「私ほど人をあやめた人間はいません」「殺した兵士の顔はいまだに覚えています」。胸の奥の深い傷とともに生きた戦後だった▼広島に原爆を投下した「エノラ・ゲイ」のポール・ティベッツ機長も空の上から戦争を見た。彼が持ち続けたのは原爆は爆死者の何倍もの命を救ったという確信である。眠れぬ夜などないと豪語していたという▼ただ、別の顔も見せていたらしい。元広島原爆資料館長で被爆者の高橋昭博さんと会い、変形した高橋さんの手を30分間も握り続けた。「上に従うのが軍人の役目。だからこそ戦争は絶対にいけない」とつぶやいたとされる▼彼の本心こそ推し量れぬが、前線で戦った多くの者の心の痛みを思ってみる。それを後世に語る者がいれば、沈黙する兵も。確かなのは戦争は幾万もの悲劇と後悔しか残さないという事実だ▼核や戦争に〝勝利者〟はあるまい。おとといオバマ大統領が献花した原爆死没者慰霊碑には「過ちは繰(くり)返(かえ)しませぬから」と刻まれる。そこに記されない主語は「人類全体」を指すという解釈だ。今、あらためてかみしめる平和の理念である。

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  • 【秋田魁新報】

    本は知らなかった世界について教えてくれる。秋田市出身のバスク文学研究者、金子奈美さんの訳書「ムシェ小さな英雄の物語」(キルメン・ウリベ著、白水社)は、反ナチス運動に身を投じたベルギー人作家の数奇な運命を描いた(全文593文字/残り487文字)

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  • 【山形新聞】

    ▼▽広島の爆心地からわずか1.5キロの民家で被爆したピアノ。間近で見ると、爆風でガラス片の突き刺さった傷が至る所に残っている。だが弾き出した瞬間、その姿からは想像もつかない、優しくも力強い音色が流れた。▼▽戦後70年の昨秋、山形市内の中学校で被爆ピアノの演奏会があった。修復を手掛けた矢川光則さん(被爆2世)が全国各地を巡り、“平和の種”をまき続けている。来場者は原爆から生き延びたと聞いて「音から生命力をもらった」と互いに感想を述べていたのを思い出す。▼▽広島平和記念資料館を訪ねたことがある。原爆投下後の惨状を伝える写真や証言記録などを目にし、胸が詰まり、立ちすくんだ。オバマ米大統領の演説から一夜明けたきのう、平和公園には多くの観光客や修学旅行生が訪れた。人々の目に“歴史的訪問”はどう映ったろう。▼▽オバマ氏の目も気になる。10分間の資料館見学で何を感じたのだろうか。芳名録に署名した後、手製の折り鶴2羽を脇に添えたという。来年1月までの任期を終えたらぜひ再訪を。その時はゆっくり観覧して、長崎にも足を運んで。そして被爆ピアノの音色も聞いてほしい。

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  • 【岩手日報】

    2016.5.29幕末・明治に活躍した一関ゆかりの漢学者大槻磐渓(ばんけい)は、大槻三賢人の1人に数えられながら語られることが少ない。だが「3人の中で一番ユニーク」と指摘する研究者もいる▼本人が作った「塵積成山(じんせきせいざん)」なるスクラップ帳がある。あの「塵(ちり)も積もれば山となる」の意味で日本の名所から世界地図、動物、天文、パズルなど内容は雑多。浮世絵師歌川国芳の妖怪絵を模写したものもある▼「趣味が広く多方面にアンテナを伸ばしている。きちょうめんさもある」と一関市博物館の小岩弘明副館長。32歳で仙台藩に召し抱えられ、学識の高さを買われて多くの大名を含め交遊関係を広げた▼年上の儒学者頼山陽(らいさんよう)から「後来有望」と漢詩を評され、磐渓の門人には勝海舟や海軍副総裁榎本武揚(たけあき)ら幕臣もいた。ペリー来航前から幕府に海防策を献じ、同じ開国論者だった思想家佐久間象山とは特に親しかった▼学者でありながら西洋砲術の免許皆伝を受け、文武両道を究めた。一方、南画家椿椿山(つばきちんざん)と親交が深く、江戸文人画壇の重鎮だった谷文晁(たにぶんちょう)とも交流があった。詩文・書画を楽しむ町中の庶民の会合にも気軽に顔を出したようだ▼こうした多彩な顔を持つ磐渓の交友録にスポットを当てたテーマ展が同博物館で開催中だ。磐渓の父は蘭学者の玄沢(げんたく)で、息子には国語学者の文彦(ふみひこ)がいる。輝く一時代を築いた。

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  • 【福島民報】

    諦めないで(5月29日)息をのむ躍動美には、もろさとはかなさが同居している。サラブレッドは4、500キロある体を4本の細い脚で支えている。一本でも失えば、残る3本に過重な負担が掛かり、存命は難しくなる。一人の競馬ライターが秘話を明かす。20年前に中央競馬でデビューした牝馬シンコウエルメスは調教中に脚を折り死線をさまよった。兄に英国ダービー馬がいる名血を何としても残したかったのだろう。安楽死という選択もあったが、管理した藤沢和雄調教師は諦めなかった。脚にボルトを埋め込む大手術の後、献身的に看護し命をつなぐ。名伯楽の執念が勝った。きょう、83回目を迎えた「競馬の祭典」ダービーが行われる。平成25年に生まれた約6800頭の王者が東京競馬場で決まる。皐月賞を制して臨むディーマジェスティが人気の一角を占める。九死に一生を得て、北海道で母となったシンコウエルメスはその祖母だ。関係者の思いと血のドラマを背負ったディーマジェスティは頂点に立てるだろうか。最後まで投げ出さず踏ん張る大切さを改めて示せるか。困難が続く中、復興を諦めない福島には、この馬に大きな夢を託すファンも多いはずだ。

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  • 【福島民友新聞】

    県の花「ネモトシャクナゲ」は夏の到来を告げる高山植物だ。例年、観光客の目を楽しませる福島市の吾妻連峰・浄土平周辺では、まだつぼみが固く、開花は例年並みの7月ごろの見通しという。既に夏の暑さを実感する市街地とは違い、山の夏は一足飛びとはいかないようだ▼こちらはつぼみを膨らませた「シャクナゲ」だ。先日誕生したばかりの本県初の女子ラグビー7人制チーム「Rosage(ロザージュ)ふくしま」。ロザージュはフランス語でシャクナゲの意味。県の花をチーム名にとった▼女子チームの結成は県ラグビー協会の長年の悲願だった。昨年のW杯の日本男子代表の活躍が追い風となり、関係者の勧誘に応じる女性が増え、発足にこぎ着けた▼17人の選手は、高校生から社会人まで年齢層が幅広い。硬式テニスや柔道の国体選手も加わるなど多才な人材がそろった。ただ、大半はラグビー初心者。週に1度の全体練習では、ボールの奪い方や相手選手の倒し方など、基本技術の習得に懸命だ▼チームの目標は、10月の岩手国体出場。シャクナゲは冬の厳しい寒さに耐え、夏にかれんな花を咲かせる。選手たちが猛練習を重ねた先に大輪の花を咲かせる日を待ちたい。

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  • 【下野新聞】

    県庁裏の塙田トンネルは、県が戦時中に掘った大きな防空壕(ごう)があった場所だ。駆け出し記者だった頃、トンネル建設に伴い防空壕の入り口が取り壊されると聞き、宇都宮市街の防空壕の特集を書いた。戦後45年、1990年のことだ▼それから四半世紀。どう変わったのか改めて見てみたいと、同市内の戦跡を巡るバスツアー「ピースバス」に先日、参加した▼トンネル脇にはピンク色のサツキが咲き誇り、往時の面影はなかった。県庁裏とともに取材した八幡山の防空壕は現存したが、周辺は雑草に覆われ、入り口はふさがれていた▼同市教委の戦災記録保存事業で2000年に調査が行われ、市民に公開すべく整備されたものの、崩落の恐れがあり再び閉じられた。地上戦に備え陸軍地下司令部が置かれるはずだった壕である。歴史を継承する戦跡が見られないのは残念だ▼驚きもあった。軍道だった桜通りの桜並木が伐採されたのは周知の事実だが、県立美術館隣の公園には、師団長が植えた桜が立派な枝ぶりとなって残っていた。軍都だったことをひっそりと伝えている▼バスの主催団体で戦後40年を機に活動を始めた「ピースうつのみや」の佐藤信明(さとうしんめい)事務局長(71)は「ことしが戦後71年ではなく、新たな戦争の“戦前”何年とならないように」と訴える。危機感を共有したい。

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  • 【茨城新聞】

    「果物の王様」とも呼ばれるメロン。栽培の歴史は古く、日本ではメロンの御先祖様ともいえるマクワウリの種子が、2千年前の弥生時代の遺跡から見つかっている▼万葉の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)が離れて暮らす子どもたちを思い詠んだ〈瓜食(は)めば/子ども思ほゆ/栗食めば/まして思はゆ…」の歌の「瓜」はマクワウリとされる▼ご想像の通り、今のようには香り高くも甘くもなかった。おいしいメロンが手頃な値段で食べられるようになったのは戦後のこと。生産量・産出額とも全国一である本県の産地関係者の努力によるところは大きい▼総務省の家計調査や県によると、本県は食べる方でも全国一のメロン好きのようだ。2015年の水戸市のメロン購入額は1世帯当たり3536円で全国平均の3・2倍、2位の秋田市には954円の差をつけ4年連続の1位。1人当たりで見ても1249円と全国平均362円の3・5倍となった▼一方、重い、食べ切れない、生ごみが出るなどの理由から、家庭で食べる機会が減ってもいるようだ。残念でならない▼来月4、5日には第2回全国メロンサミットが鉾田市で開催されるなど、産地や街中ではメロンフェアが目白押し。旬を逃さず、おいしいメロンを楽しみたい。(細)

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  • 【上毛新聞】

    ▼万感の思いを込めたステージに圧倒された。ライブ活動の無期限休止を表明していた高崎市出身のロック歌手、氷室京介さんの最後の公演を23日、東京ドームで見た。5万5千人超の満員の観客も35曲の熱唱を心に刻んだことだろう▼両耳の不調が理由だった。「水の中に潜って歌っている感覚」というほど悩まされていた。同郷のギタリスト、布袋寅泰さんらと結成したロックバンド「BO?WY」で圧倒的な人気を誇り、ソロでもカリスマのような存在だった。走り続けてきた35年のライブ活動が耳に影響したのだろう▼引き際の決断は難しい。プロスポーツ選手がそうだ。全盛期より衰えたが、周囲が「まだやれる」と思う状態で引退する選手もいれば、ぼろぼろに燃え尽きるまで現役にこだわる選手もいる▼氷室さんは満足のいくパフォーマンスができず、ステージに別れを告げたのだろう。「35年間やってきたプロとしての矜持(きょうじ)なんだよ」。観客にこう語り掛けた▼こちらの政治家の矜持はどうなのか。舛添要一都知事のことである。代表を務めていた政治団体の政治資金収支報告書に、家族旅行の宿泊費と私的な飲食費を計上。他にも政治資金の使い道で公私混同疑惑が続出している▼4年後の東京五輪・パラリンピックに向け、求心力の低下は否めない。引き際を考えるべきではないか。

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  • 【千葉日報】

    ▼歴史的な訪問。オバマ大統領の原爆資料館の見学、平和記念公園で原爆慰霊碑に献花した後の演説を、核保有国はどう受け止め?世界はどう変わっていくのか?▼演説後、被災者に歩み寄り握手、言葉を交わし「核兵器のない世界」へ抱き合った“予想外の映像”は多くの人の心に響いた▼被爆者ら県内関係者からの「大きな転機になる」(上野博之さん)「心が伝わった」(生島渉さん)「(被爆者は)肩を抱かれ、胸に詰まったものが取れただろう」(井上勇さん)と好意的な感想が本紙に掲載された▼ご飯も真っ黒に焦げたお弁当箱、焼けただれた三輪車、ボロボロな衣服…核兵器の悲惨さを無言で伝える資料館の展示。見学の感想や象徴的な原爆ドームについて直接語ることはなかったが、「資料館で見たことを思っているような表情」と献花の目から読み取る意見もあった▼終戦を早めたとする「原爆正当化論」が根強い米国内の世論に配慮して、原爆使用の是非に踏み込まなかったとされる指摘があっても、「未来志向」の強い印象がそれを上書きした▼「核兵器のない平和の大切さを感じ、伝えてくれるだろう」(小谷孝子さん)。演説に思いが重なるが、「ようやく核廃絶のスタートラインにたった」(児玉三智子さん)は冷静な視点。願い・訴えた後は、政策で期待に応える有言実行をするのが政治家だ。

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  • 【信濃毎日新聞】

    戦争のない世界にするために小さいことでも何かできないか—。先月、亡くなられた評論家秋山ちえ子さんは1967年、終戦記念日に合わせ童話「かわいそうなぞう」の朗読をラジオ番組で始めた。49年間続いた“仕事の軸”だった◆戦争中、上野動物園で3頭のゾウが餓死させられた実話を基に、戦後間もなく作家の土家由岐雄さんが発表した作品だ。朗読を機に再び出版され、教科書にも載った。その1頭の「花子」にちなんで名付けられたのが先日、69歳で死んだ「はな子」である◆子どもらの「ゾウをください」という手紙が縁で49年、戦後初のゾウとしてタイから来日。インドのネール首相から贈られたもう1頭と分担して各地を回り、「平和の特使」と大歓迎を受けた。当時の本紙にも松本で5千人、長野で4千人が出迎えたとある◆やがて上野から都内の井の頭自然文化園に1頭だけ移されると気性が荒くなった。ある夜、酔ってゾウ舎に忍び込んだ男性を踏み殺し、4年後にも飼育員を死亡させた。鎖につながれて、ストレスから歯が抜け落ちかめなくなった◆特別食を工夫し親身に世話をしたのが飼育員の山川清蔵さんだ。体重が戻るまで8年要したと「父が愛したゾウのはな子」(山川宏治著)にある。国内最高齢での老衰死。自分の人生に重ねて見る人も多いという。波瀾(はらん)万丈は人の身勝手さをも映しているようだ。(5月29日)

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  • 【新潟日報】

    5月29日柿の種は柿の種だけを食べるのが好きだという方もおられようが、やはりピーナツと一緒に食べるのがいいという方が多いのではないだろうか。交互に食べることで、ピーナツのほのかな甘みと、柿の種の辛さがひきたつ。あの2色の取り合わせもいい。つい手が伸びる▼異なる個性が絶妙なハーモニーをかもし出す「柿ピー」は、いつから食べられるようになったのか。東京の帝国ホテルのバーで供されたのが初めてだという説がある▼ホテルが連合国軍総司令部(GHQ)に接収されていた戦後間もないころである。バーで外国人にピーナツを出していたが、費用がかさむ。このため柿の種を混ぜたらどうかという話になったのだという▼作家の村松友視(ともみ)さんが「帝国ホテルの不思議」で紹介している。今では海外でも人気という柿ピーの起源は、外国人相手にウイスキーのおつまみとして出されたことだったという話は興味深い▼物理学者寺田寅彦による「柿の種」という短文集がある。その冒頭に次のように書いている。〈棄(す)てた一粒の柿の種/生えるも生えぬも/甘いも渋いも/畑の土のよしあし〉。軽妙である。この「土」が心を指すか、社会を指すか、ちょっと考えてみたくなる余韻がある▼夏目漱石門下で、「吾輩は猫である」の寒月君、「三四郎」の野々宮さんのモデルといわれる寺田は随筆の名手としても知られる。多くの人に読み継がれる「柿の種」も文系と理系の知識が織りなすハーモニーが人気の秘密かもしれない。【日報抄】2016/05/2908:30

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  • 【中日新聞】

    <ひろい川をみると/かなしみがひろがるのでらくになるようなきがする>。詩人八木重吉の「川」を思い浮かべて、おまえのことを考える。おまえにも「川」のように人の<かなしみ>に耳を傾け、<らくになるようなき>にさせる力があったんじゃないか。アジアゾウの「はな子」である▼二十六日、東京都武蔵野市の井の頭自然文化園で呼吸を止めた。穏やかな最期だったそうでほっとする▼国内最高齢の推定六十九歳。一九四九(昭和二十四)年、タイから来日した戦後最初のゾウである。戦後日本の大半を日本人と暮らしてくれた。世代を超えて、あのゾウと心で会話した人がいるだろう。東京に一時でもいた方なら、あの気難しくも人好きなゾウの思い出があるかもしれない▼焼け跡からの復興。高度成長期やバブル期をくぐって、ちょっとたそがれている今。この国に起きた変化を「はな子」はほめてくれるだろうか。ちょっと自信がない▼人を慰める力の源は順風満帆とはいえない一生のせいかもしれないと想像する。飼育員を死亡させる事故。人間不信に陥った時期もあると聞く。「悲しいのは、あんただけじゃない」。人の寂しさを分かち合い、そう言っていた気がする▼<象が踏んでも壊れない>。あの筆入れのCMに出たのか。あれなら買ってもらったよと笑いそうになる。そしてもういないのかとうつむく。

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  • 【伊勢新聞】

    2016年5月29日(日)▼色白の鈴木英敬知事が写真で見る限り赤銅色に日に焼けていた。伊勢志摩サミット決定一年。特にこの二、三日は戸外でフル活動したからだろう。無事全日程を終えて、まずはご苦労さまでした▼難題山積のサミットと、経済・観光期待に沸く県内との落差に戸惑いもしたが、安倍晋三首相の地元への感謝の言葉に「知事として感極まった」。見方によっては当然の首相の言葉も、鈴木知事としては「感極まる」下地があったということだろう▼安倍首相としては、リーマン・ショック前に似ているとして「危機に陥るリスク」を宣言に盛り込もうとして異論で果たせなかったサミットの成果をどう見ているか。消費税増税延長説が伝わってくる。熊本大震災で白紙になったとされるが、当初は衆院北海道5区補選、サミット、リーマン・ショック並の経済環境で消費税延長の〝三本の矢〟で衆参同日選に打って出るという見方が強かった▼意図通りとはいかなかったが、オバマ米大統領の広島訪問、沖縄県の女性殺害遺棄事件への謝罪で状況は激しく変化した。首相は世論の動きを分析しながら、熊本大震災の見極めに思案投げ首に違いない▼鈴木知事にとっては、サミットは「感極まる」ほど文句なしの大成功。「新たなスタート地点に立ったという気持ちが強い」「サミットはあくまでチャンス」と県のポストサミット戦略の重要性を指摘したが、示唆的でもある▼サミット成功を得点に新たなステージに打って出るにしても、二年半任期を残すことへの県民の反応をどう見極めるか。師弟ともども思案投げ首かもしれない。

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  • 【静岡新聞】

    2016年5月29日【大自在】(2016/5/2907:30)▼週末の夜はSBSテレビ「できしな」が楽しみだ。中谷美紀さん主演ドラマの正式名は「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」。東京で開業医として自立する女性の「婚活」を喜劇仕立てで描く▼人がうらやむ容姿や収入も恋愛の現場では弱点にもなるという皮肉な現実。登場人物が口にする男女の本音は痛烈、身勝手、傲慢[ごうまん]で、滑稽だ。ただ、建前社会を日々生きる身には、どこかすがすがしさも感じさせる▼「増税しないんじゃなくて、できないんです」とでも言いたげな安倍晋三首相の本音は何だろう。「再び延期することはないと断言する」と約束してから1年半。消費税率引き上げを再度先送りする方針を伝えたという▼世界のリーダーを前に唐突に示した「世界経済の現状は2008年のリーマン・ショック直前に匹敵する」との認識。政府の経済報告も、首相の信頼厚い日銀も、景気の回復基調を強調し続けてきたのではなかったか。首相自身1週間前の党首討論では、野党の延期要請をかわしていた▼他国首脳から異論も出た状況認識が正しいとしても、増税延期は有効な策か。低年金者、子育て支援の充実や先進国最悪水準の財政を再建する道筋が不鮮明になる。国民の先行き不安が増し、消費がむしろ冷え込む可能性もある▼「安心」に向けて、介護や保育の担い手の給料を上げ、受け皿も拡充すると打ち上げていたはずだ。財源はどうするのか。参院選前にすがすがしい気持ちになれる話が聞きたい。国民に説明責任を負うのは延期を要請していた野党も同じである。

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  • 【北國新聞】

    きょうのコラム『時鐘』2016/05/2901:12ドイツのメルケル首相(しゅしょう)の夫(おっと)は大学教授(だいがくきょうじゅ)である。先(さき)のサミットに同行(どうこう)して首相配偶者(はいぐうしゃ)として各国首脳夫人(かっこくしゅのうふじん)らと交流(こうりゅう)、日本視察(にほんしさつ)を楽(たの)しんでいたヨワヒム・ザウア氏(し)というが「首相の夫」と呼(よ)ぶ報道(ほうどう)が多(おお)かった。欧州(おうしゅう)には「女王(じょうおう)の夫」と呼ばれる人(ひと)はいるが、名前(なまえ)を呼ばず「首相の夫」とは失礼(しつれい)だろう。が、同(おな)じ配偶者として黒一点(こくいってん)、首脳夫人グループと行動(こうどう)をともにするなど、日本人ならできるだろうか瀬戸内寂聴(せとうちじゃくちょう)さんから聞(き)いた話(はなし)がある。高名(こうめい)な文学者(ぶんがくしゃ)に交(ま)じって外国(がいこく)を訪問(ほうもん)する機会(きかい)があった。男性(だんせい)は夫人同伴(どうはん)。ある文豪(ぶんごう)の奥(おく)さんから「作家○○の妻(つま)」と書(か)いた名刺(めいし)をもらった。「こんな肩書(かたが)きがあるのか」と考(かんが)えさせられた。妻は夫の付属物(ふぞくぶつ)であっていいのか、とサミットではカナダのトルドー首相が人気(にんき)だった。滞在中(たいざいちゅう)に結婚記念日(けっこんきねんび)があり、ソフィ夫人と和風旅館(わふうりょかん)でくつろいだ。どんな重要(じゅうよう)な仕事中(しごとちゅう)でも妻を大事(だいじ)にする。それが欧米(おうべい)ふう「公私(こうし)の峻別(しゅんべつ)」である。時節(じせつ)がらか、費用(ひよう)は自腹(じばら)とあっておかしかったが国(くに)によって異(こと)なる夫婦(ふうふ)、男女観(だんじょかん)がある。それが観察(かんさつ)できたのもサミットのおかげだ。

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  • 【福井新聞】

    【越山若水】麦の秋が来た。福井県は六条大麦の最大産地だから、風の吹くたびあちこちで金波(きんぱ)が騒ぐ。刈り取りが始まって田んぼの主役は交代期。稲の早苗がさわさわそよぐ▼世界の三大穀物といえばコメとトウモロコシ、それに最古の作物といわれる小麦。大麦は雑穀の扱いだ。歴史の長さは同じなのに、何だか不幸な身の上にある▼日本の高度成長が始まる前だった。当時の池田勇人通産相が例の「貧乏人は麦を食え発言」をして大騒ぎになった。これが“大麦差別”を決定づけたかもしれない▼米に大麦を混ぜた麦飯は実際おいしくなかった。けれどこのごろはかなり様子が違う。麦とろご飯などは逸品になりつつある。加工業者や福井の女性有志が頑張っているからだ▼さらに、大麦を炒(い)って碾(ひ)いた昔懐かしい「はったい粉」がある。嶺北では「おちらし粉」と呼び、砂糖と一緒にお湯で練って食べる。新穀が出回る夏からの、いいおやつだった▼若い同僚に話すと「戦時中の食べ物?」とちゃかされた。確かにいまのスイーツとは比べようもなく粗末だった。だが素朴な分だけ妙味があった▼こんな具合である。「はったいの日向(ひなた)臭きをくらひけり日野草城」。干した布団が日向臭くてうれしいように、はったい粉もうれしい。太陽のエネルギーを吸うようだから。「大麦を食べよう」と大声で日本一の産地から言いたい。

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  • 【京都新聞】

    着物の更衣のルールによると、麻や縮(ちぢみ)、絽(ろ)といった透ける薄物をまとうのは7月からだという。だが、昨今の温暖化で、初夏のこの時期、先取りの麻の着物姿に涼を感じる▼織り目が粗く風通しの良い麻だが、古くは一年を通して庶民の衣服だった。木綿に取って代わられたのは江戸時代に入ってから。古代や中世の文書の「布」は麻布を指した▼当然、冬は寒い。糸を通して保温性を高める刺し子の技が、東北に残った。青森県のこぎん刺しや南部菱刺し、山形県の庄内刺し子がある▼庄内の中でも「デザインなら遊佐刺し子」と、先日、京都市内で刺し子展を開いた近藤信子さんに聞いた。定年退職後、「消費ばかりは嫌。ものを作りたい」とふきんから刺し始め、「遊佐刺し子とその歴史」研究会の本を手本に古布に自由に文様を刺すようになった▼本には、庄内平野北端の遊佐町の女性たちが聞き取り調査し、集めた文様や資料が収めてある。作品展や講習会の開催などを通し、「遊佐」の名を全国に知らしめた▼遊佐の山から薪をそりに載せて下ろすとき、男衆が着た法被には美しい文様が施されていた。山の神への畏怖に加え、けがをせず、凍えず家族のもとへ戻るように。もしもの時は誰だか判別できるように。思いの深さが「美」となって表れる。

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  • 【神戸新聞】

    募ったのはこんな研究テーマである。昆虫か小鳥ぐらいの飛行体を実現させる基礎技術。マッハ5以上の極超音速飛行を可能にさせるエンジンの研究◆防衛省の初公募なので話題になった。昨年のことだ。一般向けにも使える基礎研究と断ってはいるが、夢物語のような人工昆虫は戦場を飛ぶかもしれない。そこに16大学が応募したと知り、どうにも落ち着かなくなった◆資金が乏しい大学の研究者に米軍が援助の手を差し出す。先日の紙面にあったリポートだ。この15年間で12の大学と研究機関に約2億円、とある。研究者は資金を得、米軍は成果を手にする。これまたどうにも落ち着かない◆学問と軍事を隔てる壁があいまいになってきた。科学者の代表機関、日本学術会議までが気になる発表をした。軍事目的の科学研究を否定してきた従来の方針を再検討するそうだ。論議はこれからとはいえ、平和の留め金が一つ一つ外れていくようで、不安が募る◆あるときはネズミと言い張り、あるときは鳥と言う。相手次第で自分の身を言い換えて窮地を脱するコウモリの話がイソップにある。生きるための機知を説くのだが、命は守れても信用は失われそうな◆軍事かと問われれば研究だと言い、研究かといえば軍事の影が差す。資金はできても信用を失わないか、懸念する。2016・5・29

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  • 【紀伊民報】

    御坊市内の熊野古道を歩いた際、古道沿いの水路でカメが数十匹も泳いでいるのを見て驚いた。歩いても歩いても、水路にはカメの姿があった。▼顔の赤い模様から、外来のミシシッピアカミミガメと分かった。子ガメは鮮やかな緑色をしているのでミドリガメとも呼ばれる。1950年代から輸入され、縁日の露店でもペットとして売られていた。それが逃げ出したり、持て余した飼い主が放したりしたものが野生化したという。食欲が旺盛で生態系を壊すので「日本のワースト100侵略的外来種」に選定されている。▼この時季、外来の植物でひときわ目を引くのがオオキンケイギクの黄色い花だ。北米原産で繁殖力が強く、一度定着すると他の植物を駆逐してしまう。2006年に特定外来生物に指定され、栽培や移動が禁止されているのに、いまも勢力を広げている。通勤途中に田辺市内で見掛ける群落も年々大きくなっている。▼オオキンケイギクと同様に注意が必要なのがナガミヒナゲシ。ヒナゲシの仲間なので、オレンジ色の花は駆除をためらうほどかわいらしい。だが、1株に15万個もの種をつけるので、駆除の際に少しでも見逃せばあっという間に増えてしまうそうだ。他の植物の生育を妨げる物質を根から出すので農地に入ると厄介だという。▼こういった生物が増え過ぎないよう一斉駆除をしている自治体もある。殺生は忍びないが、早急な対処が必要だ。(長)

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  • 【山陽新聞】

    スキー回転競技で日本人初の冬季五輪メダリストになった猪谷千春さんは、国際オリンピック委員会(IOC)委員を長く務めた。ある時、米国ソルトレーク冬季五輪の招致を目指す現地の関係者から2度にわたって自宅に電話があった▼応対したのは留守番をしていた娘さん。先方は最初の電話が非常識な時間だったことを謝り、おわびに父娘を現地へ招待したいと申し出たという▼その数年後、2002年に同五輪は開催された。招致をめぐって南米などのIOC委員が多額の金を受け取っていたことが露見し、委員6人が追放された。もちろん猪谷さんは招待を受けなかった。応じていれば接待漬けが待っていたのだろうか▼騒動の後、IOCが打ち出したのが、委員による立候補都市の訪問禁止などだ。そのことで、双方の間に入るコンサルタントの存在価値が高まったのは今となっては何とも皮肉だ▼20年の東京五輪招致をめぐりシンガポールのコンサルタント会社に支払われた約2億2千万円が問題になっている。開催地決定でIOC委員に影響力を持つ人物に渡ったのではないかという疑惑である▼招致レースはきれい事ばかりではなかろうが、これほどの大金の使途がうやむやでは済むまい。競技場やエンブレム問題に続くごたごた。“東京ブランド”の失墜はどこまで続くのか。(2016年05月29日08時50分更新)

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  • 【中国新聞】

    ヘリコプターマネー2016/5/29耳をつんざくような、ごう音と強風。おとといヘリコプターで降り立ったオバマ米大統領の話題で広島の街はまだ持ち切りである。原爆慰霊碑の前はきのうも人、人、人…▲訪問自体が歴史的という声もあれば、駆け足で何が分かる、という声もある。評価は当分の間定まるまい。それでも核兵器なき世界へ向け、国際世論に一陣の風を吹かせたことは確かだ▲政界に渦巻く話題は「ヘリコプターマネー」という。定義はあいまいだが、空からお金をばらまくように景気を刺激する策らしい。プレミアム商品券や子育てクーポン…。消費税増税を延期した上で、5兆円を超すお金をちまたにあふれさせる案が浮かび上がった▲「リーマン・ショック前に似た危機だ」。首相はそうあおるが、もし本当なら国民の財布のひもはどこまで緩むだろうか。家電エコポイント制度など、長続きしなかった過去の政策への反省も見えない。国民の不安を、またも置き去りにしたままで▲この国にのしかかる借金の額には、耳をふさぎたくなる。子や孫に先送りしていいはずがない。少々ふらつき始めたアベノミクスというヘリコプターを、安全な場所に早く着陸させてほしいのだが。

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  • 【日本海新聞】

    目標のインターハイに向け、力を出し切る姿が感動を生む。高校生アスリートが最も輝く鳥取県総合体育大会が28日に開幕した。約30競技を3日間の日程でこなすのは、人口が全国最少の鳥取ならでは。他にはない一体感も魅力的だ◆もともと各競技ごとに開かれていたが、高校体育連盟発足後の1966年から合同で行われるようになった。20年前と比べると、参加者数は減ってはいるものの、51回目の今大会も約6000人が出場する県内最大規模のスポーツ大会である◆その中で“全国切符”をつかむのは、わずか1割程度。多くの3年生にとって、敗戦は約2年半続けた部活動の終わりを意味する。県高体連の宇田川貴生理事長は「これで最後という思いが強いから、3年生が活躍する。集大成の大会なんです」◆県総体を境に、学校の雰囲気もがらっと変わるという。3年生は引退後、それまで監督だった教諭との新たな人間関係を築き、次の進路へ歩み出す。部では2年生を中心に新しいチームづくりが始まる。終わりは始まりである◆少子化などの影響で県総体のあり方はこれから大きく変化するだろう。しかし時代がいくら変わろうとも、高体連の深紅のマークが若人の情熱を示す通り、高校生たちの熱い気持ちは変わらない。青春が色あせることもない。(陽)

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  • 【山陰中央新報】

    経済学者の岩井克人東大名誉教授が資本主義をポンコツ車だと言っている(財務省発行・ファイナンス5月号)。放っておけば環境破壊や貧富の格差拡大を招き、大量の失業者を生み出す経済危機を繰り返す。高性能の新車に乗り換えたいところだが、かといって社会主義は廃車同然。やむなく資本主義というポンコツ車を修理しながら、だましだまし乗り続けていく以外にないという▼資本主義がもたらす経済危機に対し、経済学の生みの親であるアダム・スミスなら「放っておけ」と政府の介入を戒め、ポンコツ資本主義の修理屋であるケインズに聞けば、財政出動による危機からの脱出に政府の出番を求めるに違いない▼安倍晋三首相ならどうか。積極財政を唱えるケインズに同調しながら消費増税再延期を考えているようだ。一昨日閉幕した主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済は8年前のリーマン・ショック直前に似ていると危機を強調▼消費増税について聞かれるたびに首相が繰り返していたリーマン・ショック並みの危機という再延期条件。サミットで「本当にそこまで危機か」と疑う一部首脳の声を聞き流すように「危機感を共有した」と踏み込んだ▼リーマン危機で最も打撃を受けたのは日本だったが、そこから這(は)い上がる力も先進国の中で日本の弱さが目立つ▼その回復力を確かにして再延期を避けるのがアベノミクスの狙いだが、日本経済を再生させなければ世界からアベノミクスはポンコツだったとみられかねない。(前)

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  • 【山口新聞】

    わが家で豆苗(とうみょう)の再生栽培を続けている。この豆苗、見た目はカイワレ大根のようだが、エンドウ豆から生えた若い葉や茎を食べる緑黄色野菜。豆や根が付いた状態で売られており、葉などを切って食べた後も根を水につけておくだけで新しい芽が豆から伸びていく▼しかも、入れ物にしているトレイの水を1日1回替えるだけで良いとあって手軽。ちょっとした家庭菜園が室内に誕生した感じだ。結局3週間ほどで5回くらい再収穫でき、炒めものなどにしておいしくいただいた▼栄養価も高く、何度も食べられるリーズナブルさが人気の豆苗だが、次々と育っていく若い葉を摘み取りながらふと連想したのが、近年社会問題化しているブラックバイトなる存在。アルバイトの学生を正社員並みに働かせることで、学業に支障が出たり、体調を崩す学生もいるそうだ▼人材育成に必要な投資をせずに、学生ゆえの立場の弱さに付け込んで彼らの労働力をむさぼり食べ、自らの利益とする図が、豆苗を育てる自分と重なった▼水栽培で育つのは植物くらい。長期的な展望を持って従業員を育てる土壌が企業に存在してこそ、若人はしっかり根を張って大きく成長できるというものだ。(作)

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  • 【愛媛新聞】

    育児がしにくい現状の表れだろうか。先日発表された少子化社会対策白書で、希望する子どもの数より少ないと感じている日本の子育て世代で「今より子どもは増やさない」人が44.6%いた。英国の7.4%などと比べて突出している▲似た数字を中国の統計で見た。36年間続いた「一人っ子政策」が3年前に緩和され、夫婦いずれかが一人っ子なら第2子を持つことが可能になった。ところが、52%の人が「生活水準が低下するので2人目は考えない」と回答。理由として教育費の高騰や不十分な社会福祉政策を挙げた▲夫婦1組に子ども1人しか認めず、超過出生には罰金を科した人口抑制策は多くの弊害を生んだ。罰金を払えず、戸籍のない子ども「黒孩子(ヘイハイズ・闇っ子)」が続出し、その数は政府が認めているだけで1300万人も。学校に通えず、病院の診療も受けられない▲男女比にも著しい偏りができ、結婚適齢期になった世代は「花嫁不足」になった。病気や事故で子どもに先立たれた親たちは老後の生活に不安を抱き、政府に補償などでの救済を求めている▲緩和後も実際の2人目の出生数は5%しか増えず、政府の予想を大きく下回った。今年から全ての夫婦に2人目が認められたが「笛吹けど踊らず」の可能性が高い▲日本の昨年の合計特殊出生率は1.46。政府が掲げる1.8にはかなり遠い。「子どもは国の宝」のはず。それが実感できる社会にしたい。

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  • 【徳島新聞】

    怒らせるのは簡単だ。しかし、笑わせるとなると、これは至難の業である。失笑を買うのはたやすいが、できれば避けて通りたい。上質の笑いを提供したい、と考えはしても、なかなかどうして思い通りに書けるものではない「笑い」を商売にしている人は、よほど大変だろうと想像する。笑わせるのが不得手でも、記者なら何とか店は開ける。第一、新聞コラムを読んで、腹を抱えて笑ってやろうという人もいないから、その点は助かる。芸人ならば、こうはいかない演芸番組「笑点」(四国テレビ、日曜夕)が、放送開始から50年を迎えた。移り変わりの激しい時代を泳ぎ抜き、人気を保ち続けているのはすごい先日、司会を勇退した落語家桂歌丸さんがその秘密を語った。「家族全員でテレビの前で笑える、子どもの耳をふさがなくてもいい番組にしようと皆が心得ていたからですよ」「座布団やって」の大喜利は今も目玉だ。噺(はなし)を心得た人たちでつくる笑いは、昨今の刺激的な笑いと違って、さながら、じわりと効く漢方薬である。つぼをくすぐる優しさが心地いい人を笑顔にする。そこまで広げれば当てはまらない仕事はないだろう。子どもの耳をふさぎたくなる。そんなことばかりが目立つ世の中で、今日の仕事に座布団1枚。ほめ、ほめられる日を重ねていければいい。

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  • 【高知新聞】

    世界が核戦争の深淵(しんえん)をのぞいた1962年のキューバ危機。ソ連がキューバにミサイル基地を造り始めたのに対し、米国防総省はキューバ空爆を主張した。これに待ったをかけたのがケネディ大統領の弟、ロバート・ケネディ司法長官。真珠湾の記憶があるというのに、大統領がこんな作戦に命令を下せるはずがない。米国はそんな国ではなかったはずだ。小さな国に日曜日の朝、奇襲攻撃を加えるようなことはわれわれの伝統にはなかった—。この発言を機に海上封鎖に切り替わったという。米国史研究の第一人者、猿谷要さんの「アメリカよ、美しく年をとれ」に教わった。日本人の胸にずしんと響くエピソードではないか。そのキューバとの国交を昨年回復させたオバマ米大統領。一昨日の広島訪問とともに、新しい時代の訪れを強く印象づけた。「政治的遺産」。あまり好きではない言葉だが、オバマ氏が平和記念公園で被爆者を抱き締めた光景は確かに、長く語り継がれる「遺産」となるかもしれない。よりよい世界を求め続ける人間の、普遍的な意志の表れとして。政治家の一つの言葉、一つの行いは時に人々の心を大きく揺さぶる。今年12月は真珠湾攻撃から75年の節目。オバマ氏の広島訪問を受けて日本もこれまでとは違う行動に踏み出したい。日本には清算できていないアジアでの加害責任もある。負の遺産を引きずったまま美しく年はとれない。5月29日のこよみ。旧暦の4月23日に当たります。かのとゐ六白友引。日の出は4時58分、日の入りは19時09分。月の出は0時04分、月の入りは11時29分、月齢は22.3です。潮は小潮で、干潮は高知港標準で5時11分、潮位92センチと、17時18分、潮位51センチです。満潮は10時37分、潮位141センチの1回です。5月30日のこよみ。旧暦の4月24日に当たります。みずのえね七赤先負。日の出は4時57分、日の入りは19時10分。月の出は0時43分、月の入りは12時32分、月齢は23.3です。潮は小潮で、満潮は高知港標準で0時20分、潮位155センチと、12時09分、潮位137センチです。干潮は6時34分、潮位85センチと、18時33分、潮位59センチです。

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  • 【西日本新聞】

    出張で福岡市に来た男性が、ここではド派手で大きな広告看板が都心でもオーケーなんやね、と驚いていた、とタクシーの運転手さんから聞いた▼その客は京都の人らしかった、という運転手さんの話を思い出しながら屋外広告物事情をネットで調べてみた。京都では、派手で大きなものはもとよりコンビニの外装の色なども規制されていることが分かった▼景観を損なう恐れのある広告物を規制する条例を自治体は持っている。京都の条例は特に厳しい。福岡市が特に緩いわけではないようだが、それにしても何とかならないか、と感じる看板が街の中心部にもある▼守るべき景観をどれだけ持っているか、に関係してくるのだろう。福岡市内には、4年前に創設された福岡県屋外広告景観賞に選ばれた商業施設や商店などがいくつもある▼那珂川の東にある博多部の大博通りの中ほどを、西に入ると昭和のにおいが漂い、東に入ると多くの寺が幾世紀もの歴史を伝える。一帯を「はかた博物館」に見立てて名所旧跡を紹介する電柱歴史案内は第1回県屋外広告景観賞をもらっている。案内にはアインシュタインや竹久夢二も登場する▼那珂川の西の福岡部の都心にも、若者や外国人観光客らのにぎわいに隠れがちながら、歴史と文化がある。「博多とFUKUOKA」と、二つが一つになって響き合うような、そんな屋外広告物が市全体で増えていくといい。=2016/05/29付西日本新聞朝刊=

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  • 【宮崎日日新聞】

    ヒッチハイクで道ばたに立っていたら古いフォルクスワーゲンが止まってくれた。乗り込むと、運転していたのはなんと、南米ウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏だった。質素かつ無防備な暮らしぶりが、このところ本紙も含めて新聞各紙で伝えられるムヒカ氏だ。半端ではなさそうな走行距離の愛車はエンジン不調などの不具合もありそう。特別仕様ではないから衝突事故などに巻き込まれればぺしゃんこになる可能性だってある。想像を膨らませてひとつの夢物語を描いてみよう。時は数年後。米国のある州の田舎の道ばたでヒッチハイクをしていたら古いフォードが止まってくれた。乗り込むと、運転していたのはなんと米国の前大統領バラク・オバマ氏だった。もちろん物々しい警備のシークレットサービスはいない。ハンドルを握るオバマ氏の口は滑らかだ。「思ったよりも早く広島で約束した核廃絶が実現できそうでね」「ほら、核保有国は核兵器なき世界を追求する勇気を持つべきだ、と被爆者の前で誓っただろう」。「覚えてるかい。戦争そのものについての考えを改めなければならないと言ったこと」「紛争やテロ終息に道筋をつけ、もう誰も僕の命を狙おうなんて考えなくなったんで気楽なドライブもできるんだ」。夢物語はこれまで。現実に戻ろう。広島訪問でテレビに映った大統領車のドアは恐ろしく分厚かった。事故どころかロケット弾でも壊れない強度だという。世界一命を狙われる人物とされる大統領の車は頑丈で当然。同様に核廃絶の夢もぺしゃんこにならないよう願いたい。

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  • 【長崎新聞】

    11年前、ニューヨークの国連本部ロビーで開かれた原爆展を取材した時のこと。あの日の惨状を写したパネル展示に言葉を失い、被爆者の証言に熱心に耳を傾ける外国人たちの姿に、割と素直に感動していると「でもね」と話してくれた人がいた▲「ここに来る人は、平和とか戦争とか核兵器廃絶に何かしら関心のある人ばかりですよね」。だから、来場者の反応は好意的で当たり前、と言うのだ▲そんな人々がこんなに驚くのは、世界が「原爆」を何も知らないことの裏返し。私たちはもっと話さなければならない。「必ず最後に言うんです。私ときょう会ったことを一人でも多くの人に話してください、って」▲13歳の時に広島で被爆した大岩孝平さん=東京在住=。現在は日本被団協の代表理事で、一昨日、オバマ米大統領の広島訪問中継で解説役を務めておられた。画面越しの思わぬ再会だった▲大岩さんは、沈痛な表情だったオバマ氏が、しかし慰霊碑に一度も頭を下げなかったこと、核兵器を「減らす」としか言わなかったこと−の二つを残念そうに語った。抑制の利いた冷静な話しぶりは国連でお会いした時と同じだった▲機会があるなら、大統領にもきっとこう言葉を掛けるに違いない。「広島で見たこと、聞いたことを一人でも多くの人に」−と。(智)

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  • 【佐賀新聞】

    語呂合わせ2016年05月29日05時08分1年365日、いろんな記念日がある。きょう5月29日だけでも歌人与謝野晶子の命日「白櫻(おう)忌」のほか、業界団体が数字の語呂合わせで制定した「呉服(ごふく)の日」や「こんにゃくの日」がある◆語呂合わせ好きは旧大蔵省も同じで予算発表で披露した。田中角栄元首相が蔵相だった1964年度は3兆2554億3800万円を「みんなにいい予算や」、翌65年度の3兆6580億8000万円を「365日晴れ晴れ」とした。高度成長期で気前よく、遊び心も許されたのだろう。バブル崩壊後の構造改革や官僚不祥事で不謹慎と考えたのか、97年度から消える◆名前が財務省に変わってからも予算を握り、最強の官庁であるのは変わりない。ただ、金融緩和論者の安倍晋三首相が政権復帰してからは風向きの変化が見える◆首相が伊勢志摩サミットで各国を説き伏せたのは「財政戦略の機動的な実施」。財務省が必死に守ろうとしている来年4月の消費税10%への引き上げも先送りへ外堀は埋まり、“終戦”の感すらある◆首相が成果を胸張るサミット首脳宣言の日付5月27日は「小松菜(こまつな)の日」と同じ。世界経済のリスク回避を理由に大盤振る舞いが始まるが、日本は先進国の中で突出した借金を抱える国でもある。後で「こまったな」と振り返ることがなければいいが。(日)

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  • 【南日本新聞】

    ピンクのじゅうたんを敷き詰めたような、ミヤマキリシマの群落に息をのんだ。霧島市の高千穂河原の古宮址(ふるみやあと)から10分ほど小道を歩くと、突然目の前に現れた。野球場がすっぽり入るほどの広さに、大人の膝ぐらいの低木がひしめいている。御鉢の麓、鹿ケ原と呼ばれる場所だ。新燃岳の5年前の噴火で、分厚い火山灰に覆われて植物が枯れた。そこに新たな命が芽吹いている。鹿も一役買っている。ツツジ類は口に合わないのか、周りの植物を食べるらしい。その隙間にミヤマキリシマが繁殖していくと聞いた。なんともたくましい。花を楽しめるのはあと数日という。ちょうど150年前、ハネムーンで霧島入りした坂本龍馬も、ミヤマキリシマに心を奪われた。高千穂に登った様子を姉に伝えた手紙がある。一面に咲いた花の光景を「化粧をしたようにきれいでした」とつづっている。ミヤマキリシマは、厳しい環境でも生き抜く力を備えている。乾燥に強く、噴火で荒れた山肌など痩せた土地にも根付く。薩長同盟の締結に奔走した龍馬は難しい交渉を重ね、幕府に追われていた。わが身を重ねたかもしれない。龍馬を癒やした霧島の温泉は江戸時代にも知られた名湯である。今年は、熊本地震の影響で観光客が減っているが、温泉街は元気に営業している。ミヤマキリシマのように逆境に耐えれば必ず、結果が出ると信じたい。

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  • 【琉球新報】

    電車に乗っていたイスラム教徒の女性が、かぶったスカーフ「ヒジャブ」をそっと外した。イスラム過激派の思想に傾倒する加害者による立てこもり事件が発生し、反イスラム感情の高まりが懸念されていた時期だった。豪州シドニーでの話である▼乗り合わせた別の女性が、駅で降りたその女性を追い掛け「一緒に歩くからヒジャブを着けて」と声を掛けた。女性は涙を流して声の主を抱き締め、1人で去って行った▼2014年12月、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」にこの話が投稿された。それを機に「私があなたと一緒に乗ります」というハッシュタグ(キーワードで検索できる目印)が付き、国内外で共感の輪が広がった▼凶悪な事件が起きると、誰しも加害者への怒りの感情が湧き起こる。憎悪の矛先が加害者と近い宗教や人種の人たちに向かいがちな中、寄り添う姿勢を見せた女性の勇気は尊い▼米軍属女性遺棄事件後、軍人・軍属を夫に持つ女性やその子どもたちに差別や偏見が広がっていないか懸念する。ただでさえ子どもは髪や肌の色の違いからいじめの対象になりやすい▼最も心配されるのが加害者の家族だ。ある意味加害者の妻子も被害者である。あなたのそばにいる国際結婚をしている友人や外国人らに、豪州の女性のような気持ちで接しよう。彼ら彼女らに罪はないのだから。

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  • 【沖縄タイムス】

    「あぁーおいしい、生き返る」。暑い日、コップ一杯の冷たい水をグイッと飲む。人の口から入る物で、一番うまいのは水だと思う瞬間である。日常生活に水は切っても切れない[大弦小弦]フランス文学者で元東大学長の…▼宮古島市の陸上自衛隊配備計画で、同市地下水審議会学術部会は地下水を汚染する恐れがあり「建設は認めることができない」と市へ報告書を提出。これに下地敏彦市長の指示で市は表現を弱めた形で修正を要求、同部会が拒否したことが明らかになった▼審議会は条例に基づき、設置された。本来なら出された意見は最大限尊重すべきものだ。市長の今回のやり方は、行政のトップとして失格だ▼仮に地下水が汚染されれば、回復するまでに100年以上かかるともいわれる。平たんで川のない宮古島と周辺の島は、飲料水のすべてを地下水に頼っている。水源の保全を第一に考えるのは当然だ▼市は沖縄防衛局が施設配置を修正したため、地下水に影響はなく、審議会はもう開く必要がないとしている。陸自施設建設ありきで手続きを進める構えだが、委員からは「地下水の流れの精査が必要」との声が強い▼宮古住民の命である地下水。汚染は取り返しがつかない。下地市長は、なぜ地下水に影響がないと言えるのか、市民に説明する義務がある。審議会を開かずに結論を急ぐべきではない。(玉寄興也)

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