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TOYOTA 科学のびっくり箱! なぜなにレクチャー in 沖縄

 トヨタ自動車は社会貢献活動の一環として、小学校高学年の児童を対象にした科学工作教室「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー」を1996年から始め、今年で20周年を迎えた。子どもの理科離れも指摘される中、同社の技術者がボランティアの講師となり、モノ作りの大切さや、科学の楽しさを伝えてきた。10月9日(日)に那覇市で行った「ホバークラフト」の教室で、47都道府県すべてでの開催が実現した。

講師から原理の説明を真剣に聞く子どもたち

「スカート」が大切

 「スカートを付けて空気をためる。ここが大事」。子どもたちを前に、ホバークラフトが浮いて動く原理を実験で実演しながら説明する講師。時折「オー」と歓声を上げながら、目を輝かせて聞き入る子どもたち―。

 工作教室の会場となった那覇市若狭公民館のホールに、50人ほどの地元の子どもたちが集まった。講師が、風船を付けてボードの下に空気を送り込むと、ボードは一瞬スロープをすべるがすぐに停止。今度は空気を逃がさないようにボードの周りにスカートを付けると、ボードの下に空気がたまり浮き上がる。

子ども4人が乗っても浮き上がりました

 よりリアルに体験させるために、実際に子ども数人が乗ることのできるボードに、空気を送り込む電気掃除機1台とスカートを付けた装置で実験。子ども4人が乗って試したところ、見事にホールの床を離れて浮き上がった。「動いている」と、子どもたちもびっくりした様子。120キロの重量を掃除機1台で持ち上げることができるという。

 「構造はすごく簡単です。このようにスカートを付けると重い物も浮き上がります。そして浮くと速く移動することができます」と講師。「それでは、これから皆さんにホバークラフトの模型を作ってもらいます」。

 このように約30分間、講師が原理を説明した後、子どもたちは約9人ずつ6グループに分かれて工作開始。トヨタが子どもたち一人一人に用意したオリジナルの工作キットを使い、ボードにビニールのスカートを貼り付け、モーターや電池、プロペラを組み立てていく。それぞれのグループには一人ずつ講師が付き、手順を説明。時折、うまくいかない子どもたちがいれば、手助けしながら進めていく。

20年前はボードの型を切ることから始めました
(1996年9月28日、愛知県刈谷市)

熱中する子どもたち

 講師はトヨタ自動車で働く技術者のボランティア。今回は愛知県豊田市の本社から7人のメンバーが沖縄を訪問。その1人、佐藤重明さん(64)は20年前のこの教室が始まった時に、リーダーを務めていた。「見えて、動いて、原理が理解できるということでホバークラフトを選びました」と振り返る。「工作を始めると熱中する子どもの姿は当時も今も変わらない」と話す。

 車のエンジンの試作に携わってきた佐藤さんは既に退職しているが、今でもチームの手助けをする。これまで忘れられない思い出が幾つかある。工作教室に参加した子どもに後日、別の場所で会って「先生」と呼び掛けられてびっくりしたこと。工作教室の限られた時間では完成できなかった子どもが、家に持ち帰り、佐藤さんとのメールのやりとりを経て完成させ、「将来はトヨタで働きたい」などと親子から感謝の言葉を贈られたこと―。

難しい作業は講師の手助けも

 工作教室は、全国の科学館、博物館や同社の施設などで開催。ホバークラフトのほか、「衝突安全ボディ」「二足歩行型ロボット」「お魚ロボット」「空力ボディ」「もけいひこうき」「からくり自動車」「電力回生自動車」「7色マイコンホタル」など9種類の教室がある。参加費は無料。いずれも、社内のエンジニアら約3万人が加入するトヨタ技術会の有志が講師を務める。

 トヨタのオリジナルプログラムを用意し、過去20年間で全国で計400回以上のレクチャーを行い、延べ3万500人の子どもたちが参加。子どもたちの創意工夫を引き出し、もの作りに取り組む姿勢を育んできた。ホバークラフトも全国各地で年3~4回の教室を行っている。

見事浮き上がりました

実験成功!

 工作開始から約1時間。模型を完成させた子どもたちは、早速ホールの床や舞台の上で走らせてみる。スイッチを入れると、地面に向けて風を送るプロペラと、後ろに向けて風を送る推進役のプロペラが回り出し、フロアすれすれを滑るように動き出す。子どもたちが走っても追いつかないほどのスピードだ。子どもたち全員が実験に成功し、何度も繰り返して自分たちが作り上げた作品を夢中で動かす姿が見られた。

 参加した子どもたちは、ホバークラフトの動く原理を理解できたと口をそろえる。小学4年生の女子児童(9)は「スカートをテープで貼り付けるところが難しかったけど、楽しかった。次はペットボトルを使ったロケットを作りたい」と目を輝かせた。学校の授業でも理科や工作が大好きで、この日は友だちに誘われて参加したという男子児童(10)も「モーターを付けるところが難しかった。今度は水陸両用車作りに挑戦してみたい」と新たな目標を掲げた。

見事浮いて走りました

 現在、5代目のリーダーを務める村田高人さん(53)も、20年前からのメンバーだ。ハイブリッド車の心臓部とも言えるインバーターユニットの開発を手掛ける村田さんによると、最初のころは50人の子どものうち、実際にホバークラフトを走らせることができたのは50人中1~2人だったという。「子どもたちの達成感も大切」ということで、時間内に完成させることができるよう工作キットを改良。だが「マニュアル化が逆に子どもたちのやりたいことを邪魔してしまう」という意見もあり、チーム内でも子どもたちにどこまで自由に作ってもらうか議論することもあるという。

 会場となった若狭公民館は特定非営利活動(NPO)法人「地域サポートわかさ」が運営する。館長の宮城潤さん(44)は以前、トヨタの別の社会貢献活動「トヨタ・子どもとアーティストの出会い」が沖縄で開催された際、トヨタとの縁ができ、今回の工作教室の沖縄開催の話を聞き、「ぜひうちの公民館で」と引き受けたという。宮城さんは「学校で理論は教わっても、このような体験ができる場はあまりない。実践の機会を与えていただきありがたい」と言う。さらに「公民館のつながりで来年度以降、(沖縄県内の)離島でも開催できれば」と話す。

 最後は、近くの若狭海浜公園に全員が集まり記念撮影。地元キャラクターの「花笠マハエちゃん(沖縄観光親善使節)」も飛び入り参加し、花を添えた。10月に入っても、屋外は気温30度に達する沖縄。強い日差しと青い空の下、子どもたちは完成したそれぞれのホバークラフトを掲げ、満足そうな笑顔を浮かべていた。

最後は客船をバックに記念撮影 最後は客船をバックに記念撮影

科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー トヨタのソーシャルアクション「トヨタマゴ」