▽ 救いの手か、引き抜きか

2011/04/15 18:00

 これってどう考えたらよいのだろうか。
 東日本大震災で研究施設に被害を受けた日本の科学者や研究者に、海外の研究者仲間や研究機関から支援の手が差し伸べられていて、日本人に限定した研究員ポストのオファーが多数寄せられている、という話だ。海外の研究者の間で自然発生的に盛り上がった動きに、英語圏の科学誌「ネイチャー」が調整役をかって出て、研究員募集情報交換のウェブサイト「日本科学サポートネットワーク」を立ち上げた(http://www.nipponsciencesupport.net)。
 海外の科学者・研究者からの連帯・支援表明はおおむね歓迎されているようだが、大震災につけ込んだヘッドハンティングではないのか、日本の頭脳流出につながりかねないのではないか、と警戒する声もある。
 ネイチャー(電子版)と日本科学サポートネットワークのウェブサイトによると、4月14日現在、世界各国の94の研究機関から234人分の研究ポストの提供が表明されている。一番多いのはドイツの61機関159人で、スイスの5機関23人、フランスの8機関18人がこれに次ぐ。分野別では生物学や生命科学・医学部門が多いが、物理、化学、社会科学など多岐にわたっている。米スタンフォード大学、パリ大学(ソルボンヌ)、ドイツ・フンボルト財団など世界最高レベルの研究・教育機関も名を連ねている。
 ポストだけでなく、研究資金や研究用ネットワーク・サーバーの一時的提供の申し出もある。ネイチャーによると、ドイツ科学アカデミー系の研究機関からは計5百万ユーロ(約6億円)の資金提供のオファーがあった。
 日本人研究者にとっては研究の継続に限れば、この機会に研究場所を海外に求めるのも一つの解決策だ。被害の大きかった仙台にある東北大学では4月末まで全学一斉休講となった。筑波研究学園都市では外国籍の研究員が一斉に帰国してしまい、研究活動が制約されている。首都圏の大学・研究機関は、特に夏以降の電力供給に不安があり、研究継続に障害がでる心配もある。
 とはいえ、ある程度の年齢で経験を積んだ科学者や研究者が日本での研究を中断しておいそれと海外に行くわけにはいかないのも事実。特に家族がいる場合などは簡単ではないだろう。
 可能性があるとすれば若い世代だろう。日本から海外に留学する若者はこの10年、劇的に減少している。この際、チャンスを生かして海外に渡り、見聞を広めて外国の研究者との間で世界レベルのネットワークを作るのもいいかもしれない。
 もっとも、こうした動きに対して警戒する声があるのも事実。ネットワークのホームページには「科学者のヘッドハンティングに賛成できない。頭脳流出に手を貸すもので日本の科学にとってためにならない」との書き込みもあった。
 いずれにせよ、同ホームページには4月14日までに日本から7,727件を超えるアクセスがあった。それだけ関心をもたれている、ということだろう。

(2011年4月15日 今井 克)

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