

イラスト:工藤美和子
(48)観天望気
山では天気の良し悪しが満足度の決め手だ。一日中雨に降られたのでは、なんのために来たのか分からない。それが午後からすっきりと晴れ上がったら、朝のウンザリ気分は吹っ飛んで、“やったぜベイビー”だ。
そうはいっても、天気図や予報である程度の悪天を覚悟していれば、納得もできる。心の準備があるか無いかは、天気急変への対応にも差が出てくる。予報をうのみにせず、天気図を見て自分で判断できるぐらいの知識は身につけたい。
気をつけたいのは、山の天気は局地的だということ。周りは晴れているのに、自分のいるところだけは霧ということもある。高さでも相当に違う。雲の流れ、形や風の方向、強さを眺めて天候を判断する。「観天望気」という。だが、深い観察力と経験がものをいう。
もうひとつは山の気象の特殊性だ。高度が上がれば気温は下がる。標高1000メートルで6度違う。海岸の0メートルで20度の快適温度なら、高さ1000メートルの山は14度である。着るものが違ってくる。それに風も考えなくてはいけない。風速1メートルで体感温度は1度下がる。
日差しの強い時は標高3000メートルの尾根筋でも、夏ならかなり暑いと感じる。特に行動中で体温が上がっていればなおさらだ。だが、日が落ちてくると気温は急激に下がる。動いていないと、寒い。まして風が吹いていれば、ガタガタ震えるほどになる。加えて雨になったら、疲労凍死もあり得ることを知っておかなければならない。
一番出くわしたくないのが雷だ。夏とは限らない。午後に天候が不安定になると、突然襲ってくる。落雷による死者が出ない年はない。
自分なりに天気の変化を予測しておくことが事故を避けて安全に登山するための基本である。(米倉久邦、2004年2月記)
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