

イラスト:工藤美和子
(36)装備の機能と限界を知る
登山というのは、スポーツの中ではかなり特殊である。時として過酷な気象条件のもとで、激しい運動を強いられる。極寒で汗をかき、すぐに衣服を替えることもできない。それだけに装備の良しあしが命にかかわることもある。装備の機能と限界をよく知っていることも、大事である。
ゴアテックスという世界的特許商品の優れた防水・透湿機能にはすでに触れた。それでもやはり外気温や着ているものによってその効果は大きく違う。日本山岳会の科学委員、織方郁映工学博士はゴアテックスの湿気を外に出すスピードと発汗量との関係を試算してみた。その結果を紹介しよう。
激しい登山をしているときに、人はどれくらいの汗をかくのだろうか。山本正嘉・国立鹿屋体育大学助教授の著書「登山の運動生理学百科」によると、体重60キロの人の脱水速度は1時間あたり300cc。そのうち呼吸で出す分が40%で、汗は1時間に180ccだ。これをもとに計算をしてみると、肌着に直接ゴアテックスの雨具を着ると、発汗速度より透湿速度の方が速くて、汗をかいても雨具の内部は十分な乾燥状態に保たれる。
しかし、肌着の上にシャツを着た場合には、雨具の内側にやや結露ができる。さらに防寒着の上に雨具となると、相当の結露が予想されるという結論だ。つまり防寒着プラス雨具で快適にいようとすれば、あまり動かない方がいい。行動時には、外気の状況も考えて雨具の内側に着るものを調節することが必要になる。雨は防げても汗でびっしょりでは困る。
新素材もいいが、せっかくの機能をうまく活用できるかどうかは、使う人の判断次第ということをしっかり頭に入れておくのが大事だ。(米倉久邦、2003年11月記)
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