

イラスト:工藤美和子
(35)特徴や機能を正確に伝えて
新しい素材を使った衣服などの登山用品の登場には正直、目を見張る。各メーカーの研究開発競争の結果でもあるが、商品の宣伝には誇張もあるのではという声がある。日大文理学部の講師で日本山岳会科学委員会のメンバー、工学博士の織方郁映さんは「うそではないが誇大宣伝ではないか。特徴や機能を正確に伝えていない」という。
例えば、汗を吸って発熱するから暖かいという繊維の宣伝があるが、織方博士は「外気が非常に乾燥しているという特殊な条件下でわずかな発熱が観測されるが、雨や雪が降っていて湿度が高く寒い屋外では発熱を感じることは難しいでしょう。それに発熱の効果は一過性でしかない」とおっしゃる。
そうした衣類を着て暖かいというのは、むしろ繊維の構造による断熱性が高いためだ。「断熱性が高いから暖かいと説明すべきなのに、汗を吸って暖かいと宣伝することで、特殊な機能の繊維というような印象を与え過大な期待を抱かせてしまう」と博士は手厳しい。
「寒いときは吸湿・発熱、暑いときは放湿・冷却」とうたって「着るエアコン」と宣伝したり、「寒いとき暖かく、暑いとき涼しい温度調節素材」を強調する商品も、その効果は一時的にすぎないという。いずれも科学的根拠はゼロではない。しかし、衣服にそうした効果を出そうと思えば、すごく分厚くて重いものにしないと駄目とか、いろいろな条件が出てくるという。
「科学者の立場から見ると、なぜこのような広告になるのか、理解に苦しみます。先進的な科学用語を織り込んだ難解な説明を読まされると、催眠術にかかったように信じてしまうのでしょうか」という指摘は、メーカーにも消費者にも向けられている。(米倉久邦、2003年11月記)
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