

(32)雨具は必ずザックに
山に行くときには雨具は必ずザックに入れていく。これは鉄則である。こんないい天気だから、雨なんて降りっこないと思うのは経験が足りないからだ。使わなければ、それはハッピー。下は晴れていても、上は降っているなんていうのは珍しくない。それが山の天気である。
山の雨は風が付き物だ。ぬれれば、体温を奪われる。加えて風。風速が1メートル増えるごとに、体感温度は1度下がるという。季節や標高にもよるが、疲労凍死の危険はいつでもあると思った方がいい。体をぬらさずに防風にもなる雨具は必携だ。
それも上等がいい。常念岳から蝶ケ岳へのりょう線で夏に風と雨にあった。薄いヤッケしかなく、すぐに中までグスグスになった。寒い。休むと体がガタガタと震える。ひたすら歩いて、蝶ケ岳の小屋でなんとかしのいだが、危なかった。雨具の良しあしは命にかかわると肝に銘ずべし。
ゴアテックスをご存じか。極薄フィルム状の樹脂素材だ。1平方センチ当たりに14億個の微細な穴がある。この穴は水滴の2万分の1という小ささだから、雨を内側に通さない。だが、水蒸気の分子の700倍の大きさだから、汗を外に出してくれる。すぐれものだ。布の間にこのフィルムを挟み込む。
人はじっとしていても1時間に50ccの水蒸気を発散している。軽い運動で500cc、山登りのような激しい運動では1000ccにもなる。内からも外からもぬれるのでは最悪だ。透湿性と防水性を兼ね備えたゴアテックスは、雨具として願ってもない素材である。
この素材は、ゴアテックス社が世界的に特許を取得している商品名だ。その宣伝に一役買う気はないが、いまはこれ以上の機能を持ったものはないという。やむなしだ。(米倉久邦、2003年10月記)
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