

イラスト:工藤美和子
(30)速乾性と保湿性で選ぼう
昔ながらの純毛のカッターシャツがどうしても手放せない。愛着がある。いまも大事にタンスに入っている。しかし、これを着る機会はもうほとんどなくなってしまった。真冬の時期に1、2回も使えばいい方だ。保温には申し分ないのだが、汗が飛んでくれない。蒸れてくると、チクチクと肌にあたる気がする。
最近愛用しているのが、肌着と同様にポリエステル100%のシャツだ。メーカーの講釈は小難しく、読んでもよく分からないが、いろいろな種類のポリエステル繊維を組み合わせて布を作る。とにかく着てみると、汗の吸収がよく、それなのにベタベタ感がない。乾きがいいのでやめられない。それでいて、空気を蓄える構造になっているので、保温性も高い。
だが、いまや化学繊維の全盛時代、天然繊維とはもうお別れだというつもりはない。やはりウールの暖かさは抜群だ。絹の肌触りも捨てがたい。最近は、そうした天然繊維とポリエステルを混紡して、双方の特性を生かした製品も出ている。
若いころ、おやじの古いツイードの背広をもらって着ているのが、様になる山男のファッションという時代があった。遠い昔の記憶である。いま振り返ると、よくもあんな山向きでないものに悦に入っていたのだろうかとおかしくなる。登山用の衣類などあっても高かったし、普段に着ているもので代用するのが当たり前の話だった。
そのころに出始めた化学繊維は、ナイロンやビニロン。確かに水をはじいたり防風にはよかったが、汗が蒸れて不快だったし、防水もいまほど完全ではなく、やがてぬれてきて凍った。だからあまりいいイメージがないのだが、古い記憶は捨てなければいけない。実際に触ってみて、着てみて、技術の進歩には目を見張る。(ジャーナリスト米倉久邦、2003年10月)
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