

イラスト:工藤美和子
(29)おろそかにできない下着
靴とザックがそろったら、いよいよ着るものだ。おろそかにできないのが、下着である。どうせ汗はかくし、汚れるからなんでもいいと思ってはいけない。
若いころ、汗をかくなら綿の肌着が一番と教えられた。よく水分を吸い取ってくれるからだ。山ではこの常識はもう通用しない。むしろ、綿は避けた方がいいというのが常識。乾きが悪いからである。登山は運動量が多い。真冬でもかなりの汗をかく。夏ともなればなおさらだ。だが、一休みとなると、今度は風が吹く。平地より温度は低い。かいた汗が一気に体を冷やす。これでは体力を消耗するばかり。「寒い、寒い」で済めばいいが、場合によっては大事にいたりかねない。
サッカーやジムで大汗をかいてもすぐに着替えられるから、綿シャツでも問題はない。しかし、山ではそうはいかない。その日の行程が終わるまでは、着たきりすずめで歩かなければならない。体力も耐久力も落ちてきている中高年には、特に肌着をおろそかにできない。普段とは違う登山専用のアンダーウエアを用意したい。
水分を速く多く吸収しすぐに放散してくれる。そんな素材として、いまはポリエステルが主役だ。どれぐらい差があるかは、綿100%とポリエステル100%の製品を洗濯機で脱水した後に比べればよく分かる。ポリはすぐにも着られそうなほどだ。
化学繊維は安くて大量生産できるが、体にやさしいのは天然繊維と教えられたことが頭に染み付いている。もう、そうではない。化学の生み出した素材は着心地も性能もうんとアップしている。しかも軽い。着てみれば格段の差が分かる。快適と安全を身に着けるのが賢い。(ジャーナリスト米倉久邦、2003年10月記)
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