

イラスト:工藤美和子
(22)靴を選ぶなら午後4時すぎ
30年も前の経験でものを言っては見当外れになる。高校生のとき、最初に手に入れた山靴にはひどい目にあった。底に鉄のびょうが打ってある本格的な重い登山靴。初心者のわたしは悪戦苦闘した。「山をやるならこれぐらいは持ってないと」という半可通の言葉に従ったのが間違いだった。
最新事情に詳しいプロとして、モンベルの渡辺さん(広報)のアドバイスを聞いた。何時ごろ、靴を選びに店に行くかがまず、大事だとプロがいう。いつだってよさそうだが、どうしてなんだろう。朝と夜とでは、足の大きさが違うんだって。むろん、朝が一番小さい。起きて活動しているうちにだんだん大きくなり、夕方が一番大きくなるという。だから午後四時すぎぐらいがベストだ。
最初に、靴下を買う。お試し用の靴下はどの店にも置いてあるが、あの、よれよれで誰が履いたかわからぬものを履く気がしない。水虫でもうつされたら始末が悪い。新品の靴を買うのだから、靴下だって新品にしようではないか。
若いころ、登山靴には厚い靴下の下にもう1枚か2枚を重ね履きしたものだ。その方が暖かいし、足も保護してくれる。だが、いまは1枚で十分だという。せいぜい、汗取り用のごく薄い靴下を履くぐらい。「靴も靴下も昔よりは随分と性能が上がっていますからね」とあっさりいなされた。保温機能もクッション性も向上しているし、重ね履きはかえって血行不良になる恐れがあるという。
確かに山靴といえば毛糸の厚い靴下と決まっていたころとは大違い。純毛のものに交じって蒸れないパイル地や合成繊維製が何種類も並んでいる。真新しい靴下を手に、いっぱい並んだ靴棚の前に立つ。いよいよ本番の登山靴選びに取りかかろう。(米倉久邦、2003年8月記)
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