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国保は破綻に近い 一体改革は中間案、次の議論を

大西秀人・高松市長インタビュー


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 政府・与党がまとめた「社会保障と税の一体改革」について、社会保障政策に詳しい大西秀人高松市長に意見を聴いた。


 ▽認められた地方の役割

 ―改革案をどのように評価するか。

  これから人口減少が進み、少子化超高齢化社会に入っていくのに当たって、社会保障制度をいかに持続していくかが、わが国の最大の課題だ。問題は、財源とマ ンパワーをどう確保するかだ。一体改革で、制度をどう展開するかとりあえず方向性を示し、財源は消費税を中心にして、2015年度には10%に上げて確保 するという枠組みを決定したことは評価している。

 これをいかに国民に納得してもらうかだ。消費税の問題ばかりが取り上げられ、社会保障 制度をどうするのかという議論が十分されていない。政府、与党の考えもはっきり示されていない。その一つの要因は、消費税を10%ありきでセットしたとこ ろにある。社会保障のあるべき姿が十分議論できていない。年金の将来見通しさえ示せないでいる。

 このままの制度でもこれだけ大変にな り、より充実しようと思ったらもっと財源が必要になると明示するべきだ。消費税10%だとこれだけの財源しかないからと社会保障給付を少し抑えるのか、高 福祉を求めてある程度の負担は仕方ないからと10%以降もその時に考えるのか。そういう議論をしないと、本当の意味の一体改革はできない。

 ―その意味では年金制度の抜本改革も同時に検討するべきだった。

 そうだと思うが、それだと10%では多分足らない。

 私が一体改革を評価すると言ったのは、一体で方向性を示し、消費税の枠組みの中で地方の役割も一定程度認めてくれたことだ。地方への財源措置もきちんとされた。

 ―地方の役割が認められ、責任と負担も大きくなるのではないか。

  年金、医療、介護、子育て支援、生活保護の中で、年金以外はほとんど地方が関わっている。現場の事務は市町村がやっている。国の社会保障制度を補完する意 味で、地方が保険料を若干軽減するなどの事業をやって、社会保障制度が成り立っている。社会保障を充実していこうとすれば、マンパワーは現場にしかいない のだから、地方がある程度の権限、財源を持って展開していくべきだ。地方の事業に理解を得て、国と一緒にやっていこうと位置付けられたのは大きな成果だ。

 ▽負担増には限界

 ―高松市が運営する介護保険料、国民健康保険(国保)料は値上げが予定されている。一体改革で市民の理解が得られるのか。

  いや大変だ。例えば介護保険制度は2025年くらいまで見通した上で、介護報酬なども決められた。介護保険料は全国平均4160円(月額)から、今回の改 定で5000円以上になるだろう。高松市は6000円近くになる。それは来年度から3年間の話で、さらに先を見通せばもうひとつ高くなる。その意味では一 体改革は中間案であり、この先を議論するべきだ。

 どんどん膨らむ社会保障費の財源を確保できるのか。それではたまらない、保険料だって引き上げできないということなら、給付を抑えるしかないといった議論をするべきだ。今回は当面の大幅改定としてやらざるを得ない。その次をきちっと考えなければならない。

 ―政府の社会保障審議会部会などで主張してきた低所得者対策は十分取られているか。

 一つは、公費をかなり投入して保険料を軽減する方向性が出ている。もう一つは、介護・医療保険などの社会保障負担について、家計の負担をトータルにとらえる「総合合算制度」も示されている。

 特に総合合算制度をきちんと位置付けてほしい。その上で、低所得者にこれ以上負担を求められず、国保会計などの穴埋めが必要な場合、国の責任でやってもらわなければならない。この点は、今後も主張していく。

  そこを地方負担でやろうとすれば悪循環が起きる。例えば高松市が他市町よりも低所得者対策をやって保険料を安くすれば、どんどん他市町の低所得者が入って くる。高松市民の税金を他市町の低所得者に充てることになる。地方では低所得者対策を本来取れないので、国である程度一律に担ってほしい。

 まだ具体的な予算額は分からないが、総合合算制度と低所得者対策の強化は一体改革の中で位置付けられている。

 ▽深刻なマンパワー不足

 ―介護保険の「地域包括ケア」を構築するには、マンパワーの確保が課題になるのでは。

  お金はどうにかやりくりすればあるかもしれないが、マンパワーはもっと大変だ。2025年には、生産年齢人口(15歳~65歳)に占める介護職員の割合が 今の4倍にならないと賄えない。そもそも人口が減る中で、これだけの雇用が本当に確保できるのか。施設介護や在宅介護、デイサービスなどいろいろなサービ スがある中で、マンパワーをいかに効率的に回していくか考えないといけない。

 介護報酬も安い。マンパワーと財源の二つがはっきりしないと、とてもじゃないけど将来の福祉社会は見通せない。

 ―一体改革は宿題が多い。
 とりあえず2015年に消費税率10%で社会保障はこうなるというところまで決まって、あと10年は見通せない。

 ―人手不足は深刻だ。

 要介護度のランクを認定していても、その人が介護を受けられないという状況が早晩生じるかもしれない。

 ▽国保への国費投入、前倒しで

 ―国保は都道府県単位の事業運営を拡大する方向が打ち出されている。

  はっきり言って、国保自体がもう制度崩壊している。高度成長期に「国民皆保険」ということで、会社員らの健康保険組合(健保組合)などに入れない第一次産 業に従事している人たちを対象に、市町村を保険者として国保を作った。当時市町村単位にしたのは、市町村ごとに医療資源の存在状況が大きく違っていたから だ。病院もないような地域もあり、全国一律の保険料にすることはできなかった。

 その後、健保組合などは使用者が保険料を半分負担するな どしてやってきた。国保の加入者は低所得者が多くなり、失業者、無業者の割合が増えた。保険料はどうしても高くなる。しかも、国保は世帯単位で保険料を支 払う。昔は働く両親がいたが、今は単身世帯やひとり親世帯が多い。

 こういう状況で市町村に保険を運用しろというのは無理だ。国民皆保険 というなら、基本的に国が保険者となって、国民全員を加入者にして全国一律の保険制度を運営するのが望ましい姿だ。国保についてだけでも国が運営する方が いい。そうはいっても地域によって状況は全然違うから、その中間的な在り方として都道府県の役割は位置付けられるべきだ。

 市町村単位の運営は事実上崩れている。例えば高松市と隣接市町の国保保険料が大きく違う理由は説明できない。隣接市町の人たちが自家用車で高松市の病院を受診したりしているのに、住むところによって保険料に大きな差がつくのはおかしい。

 高松市は保険料を抑えてきたが、引き上げざるを得なくなった。それでも、年間20数億円を投入できるだけ財政力があるからまだいい。小さな市町は財政的な余裕はないから保険料はどんどん上がる。国保は破たんに近い状況になっている。

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 ―一体改革の積み残した宿題だ。

  今回は積み残した。一体改革に、国費としてプラス2200億円を国保に入れるとは書いてある。2015年度に消費税率が10%に上がった時にだ。それでは 間に合わない。国費2200億円を前倒しで補てんするべきだし、運営単位は都道県か広域自治体連合かという議論を早めにしなきゃならない。

 ―後期高齢者医療制度の廃止後の在り方は。

 国保が不幸なのは、後期制度の廃止とリンクして議論されていることだ。民主党が「廃止」と言っちゃったものだから。廃止して国保の中の年齢区分として都道府県単位で運営すると言っている。そこから先の議論が進んでない。

 国民皆保険を維持して、国民の健康を守るという理念に立ち返って議論してほしい。

 ▽幼保は「併存」でいい

 ―幼保一元化をどうみる。

 今回の幼保一元化はあまり賛成できない。逆により複雑になるのではないか。厚労省が所管する保育所、文科省の幼稚園が若干残ったまま内閣府の「こども園」ができる。3府省にまたがる。本当にうまくいくの慎重に見極めたい。

 ―窓口となる市町村は大変だ。

  大変だが、こうやれと決められたらやらざるを得ない。高松市は、現実の必要性に迫られて、4月にいくつかこども園をつくる。地域で隣接する幼稚園と保育所 があり、保育所は満杯なのに幼稚園は定数割れ。そもそも3歳~5歳の子どもが、親が就労しているかいないかによって、まったく違う保育や教育を受けるとい うシステムはおかしい。幼保一体化の方向性は正しいと思う。

 高松市は混合クラスを作ってやる。一緒にやるなら、とりあえずは「幼保併存」の形でいいのではないかと割り切っている。

 というのも幼稚園と保育所のニーズは違う。先行して運営しているこども園の経験では、親の考え方や生活形態が異なる。例えば園の行事を平日にやるか土日にやるかでもめる。幼稚園の先生と保育士は待遇が違う。

 国が今回やろうとしているのは親と園が契約を結ぶとか大変複雑だ。

 ▽時間はない。「決める政治」を

 ―社会保障財源について、受益者の金融資産・固定資産に着目するよう主張していた。

 財源は消費税が中心とならざるを得ない。国民に広く薄く負担をしていただく意味で正しいと思う。
 それだけでは偏っている。消費税は低所得者層に対する逆進性が否めない。それをカバーする税制の組み合わせが必要だ。消費税を導入した時に、所得税率などをぐっと引き下げた。経済が活発になって所得が増えても税収が増えないようになった。その二の舞を演じてはだめだ。

 今後どんどん人口が減って所得や消費は伸びない中で財源を確保しようとすれば、ストックの課税を考えざるを得ない。最終的には所得、消費、資産のバランスが取れて、財源が手当てできる税制体系を目指すべきだ。

 消費税ばかりだと低所得者によりしわ寄せが行く。その負担を皆で分かち合うには、高額所得者の特に金融資産だ。何千万円稼いでもわずかしか課税されていない。最近は消費税に血眼になっている。もう少し冷静にならないと。

 ―子ども手当は迷走し、一体改革も着地点が見えない。政権交代後、地方自治体の対応が難しいことが多い。

 子ども手当をどう見込んだらいいのか、来年度予算もまともに組めず困っている。きちんと方針を決めてほしい。「決める政治」を責任をもってやってほしい。

 ―一体改革が頓挫したら、地方の負担は増えていく一方だ。
  やりくりをしなきゃいけなくなる。例えば国保の赤字補てんはやらざるを得ない。こういう経済状況で、保険料だけ上げるわけにはいかない。もちろん修正など はあるだろうが、少なくとも一体改革を議論して、落ち着くところに落ち着かせてほしい。その上で、次を議論して決めていかないと、本当に時間はなくなって いく。

(2012年2月1日)
  ×  ×  ×
 大西秀人(おおにし・ひでと) 1959年香川県生まれ。旧自治省を経て国土庁防災局、北海道財政課長。2007年に高松市長に初当選。社会保障審議会介護保険部会・医療部会の委員として「社会保障と税の一体改革」の議論に参加した。



(47行政ジャーナル)

2012/02/03 14:01 【47行政ジャーナル】


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