地域再生大賞

 地方新聞46紙と共同通信社が、合同で本年度創設した。地方の疲弊は深刻だが、打開を目指す取り組みも目立ってきた。こうした活動に取り組む団体を、各新聞社と共同通信社のネットワークを生かして取り上げ、支援することが狙いだ。各新聞社と共同通信社は2009年7月から、合同企画「地域再生」をスタートさせ、さまざまな活性化の試みを紹介。NPO法人代表や首長ら識者と、地域が抱える問題を話し合う「地域再生列島ネット」も合同で立ち上げた。

大賞

  • 静岡県三島市
  • 清流再生が活動の原点 グラウンドワーク三島
グラウンドワーク三島
育成中のミシマバイカモの手入れをする「グラウンドワーク三島」のメンバー=2010年12月、静岡県三島市

 水辺や流れの中に整備された木や石の遊歩道を歩く。澄んだ水に周りの草木が映り込む。静岡県三島市の中心部を流れる源兵衛川(げんべえがわ)。人口約11万人の街の中心部とは思えない風景だ。5月にはホタルが舞い、夏には川遊びの子どもたちでにぎわう。清流を取り戻す取り組みが「グラウンドワーク三島」の原点だった。

 三島市は富士山からの地下水があちこちに湧き出し「水の都」と呼ばれていた。しかし、高度成長期の都市化や工業化の影響で湧水量は減少。生活雑排水の流入で水質も悪化、源兵衛川は「どぶ川」になってしまった。

 同会は1992年に結成。英国で始まり「グラウンドワーク」といわれる住民や行政、企業が協働して地域の環境改善に取り組む運動の日本での先駆的ケースとなった。「子どものころ遊んだ風景を取り戻したかった」と、渡辺豊博(わたなべ・とよひろ)事務局長(60)は振り返る。

 源兵衛川の水質改善や親水公園としての整備に始まり、市内で絶滅した水生植物「ミシマバイカモ」を川に戻す取り組みなど水辺の環境整備を中心に街中カフェや公園づくりなど活動は広がる。

 「右手にスコップ、左手にビール」「議論よりアクション」を合言葉に市民団体や行政、企業と協力関係を築いてきた。渡辺事務局長は「利害が対立してもお互いの限界を理解、尊重し調整を進めることが重要」と話す。

準大賞

  • 兵庫県丹波市
  • 「挫折」が活動に火 県立柏原病院の小児科を守る会
県立柏原病院の小児科を守る会
医師への感謝の手紙をまとめる「県立柏原病院の小児科を守る会」の会員たち=1月、兵庫県丹波市

 「かえって、できることをやろうと燃えました」。丹生裕子(たんじょう・ゆうこ)代表(39)は振り返る。医師不足による地域医療の危機に兵庫県丹波市で2007年、「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」の活動が開始。約5万5千人分の署名を集め県に乗り込んだが、期待した回答は得られなかった。逆に「挫折」が火を付けたという。

 注目されるのは医療崩壊を声高に訴えるのではなく、医師と患者の相互理解に力を入れた点だ。軽症なのに夜間救急を利用する「コンビニ受診」を控えようと呼び掛け、患者側の意識を変えた。07年度の柏原病院小児科の時間外受診者は、前年度から約半減した。

 家庭での診断に役立つ冊子も作り、発行部数は10年末で約4万8千冊に達した。医師に感謝を伝える手紙の運動も広がっている。丹生さんは「地域のみなさんが行動に移し、大きなうねりとなった。受賞は丹波市や兵庫県のみなさんのおかげだ」と喜びを話した。

  • 岡山県倉敷市
  • 暮らしが続く街を提案 倉敷町家トラスト
倉敷町家トラスト
町家の修復・再生活動や電線埋設工事で、暮らしの継続と景観保全との両立を目指す岡山県倉敷市の重要伝統的建造物群保存地区=1月

 江戸時代から昭和初期の町家や商家が立ち並ぶ岡山県倉敷市の中心部。1979年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された。住民らでつくるNPO法人「倉敷町家トラスト」は、町家の修復・再生を通じて、コミュニティーや文化の継承、新しい町家の生活スタイルの提案など意欲的な活動を続けている。

 活動が始まったのは2006年。住人が減り高齢化が進んで空き家や解体される町家が増加、街の変化に危機感を持った建築家やカフェ店主らが結集した。現在の会員は約290人、企業40社。

 07年に初めて再生した民家は、町家ライフが体験できる宿泊施設として人気だ。トラストの仲介で空き家に帆布を使ったかばん店や帽子店が開店するなど、にぎわいの創出にもつながっている。

 中村泰典(なかむら・やすのり)代表理事(59)は「町家で暮らしが続けられるよう新たな『作法』の提案など、若い世代の継承にも尽くしたい」と語っている。

ブロック賞

  • 山形県高畠町
  • <北海道・東北> たかはた共生塾

 長年取り組んできた有機農業の実践を通じて、環境や地域社会の在り方を考えようと地元の農家らが中心となって1990年設立。年に2回、都市住民らが農家に宿泊、農村文化や農作業を体験してもらう「まほろばの里農学校」を開校。食や地域文化などをテーマにした自主講座を年数回開いている。有機農業関係の記録や書籍を収集する「たかはた文庫」も立ち上げた。中川信行塾長は「これからも農業や環境を中心に情報発信をしていきたい」と話している。

  • 群馬県中之条町
  • <関東・甲信越> 伊参スタジオ映画祭実行委員会

 「山の中の小さくて大きい映画祭」。群馬県中之条町で廃校の中学校体育館を会場に、住民有志が2001年から始めた映画祭はそんな合言葉にぴったりだ。映画祭に合わせて「シナリオ大賞」を創設。大賞受賞者に資金助成や町内の撮影などを支援、翌年の映画祭で初公開する仕組みで、監督デビュー作品が海外映画祭で上映される「快挙」も。廃校の木造校舎を映画の撮影拠点に提供、住民がエキストラ役を務めるなど、地域全体が「映画スタジオ」を醸し出している。

  • 三重県多気町
  • <東海・北陸> 三重県立相可高校調理クラブ

 県立高校の食物調理科に学ぶ生徒でつくる「調理クラブ」が、週末だけ営業するレストランが「まごの店」。全国高校料理コンクールで優勝するなど抜群の調理技術で、地元の食材でつくる懐石料理やフランス料理、デザートのケーキなどが評判を呼び、開店前から行列ができるほどの人気になっている。地元特産の伊勢イモ入りうどんといった商品を開発。隣接の農産物販売施設「おばあちゃんの店」の人気商品になるなど、ユニークな活動が地域を明るくしている。

  • 滋賀県近江八幡市
  • <近畿> 碧い びわ湖

 2009年、滋賀県環境生活協同組合の事業を引き継ぐ形で発足したNPO法人。琵琶湖の水質向上を目的に、廃食油を回収してつくったせっけんや再生紙などを製造販売するほか、家庭排水による汚水対策として合併処理浄化槽の普及活動を展開。菜種油によるバイオディーゼル燃料の精製にも取り組み「菜の花プロジェクト」として全国に広がっている。村上悟代表理事は「未来世代と琵琶湖からの声なき声に耳を澄ませ、次なる時代の暮らしと社会の創造に取り組んでいきたいと思います」と話している。

  • 高松市
  • <中国・四国> 高松丸亀町商店街振興組合

 高松市の歴史ある商店街の再開発を行政でなく民間が主導する形で進めている。最大の特徴は「土地の所有権と利用権を分離」(古川康造理事長)した点。地権者の全員が同意した定期借地権を導入し、店舗配置や入居店選定など商店街の新陳代謝が可能になった。郊外型の大型店が相次いで進出した影響で地元の顧客争奪戦が激化する中、人口減や高齢化に対応した新しいまちづくりを目指す。商店街内のマンション建設、医療モール設置など生活機能の整備にも取り組む。

  • 大分県宇佐市
  • <九州・沖縄> 安心院町グリーンツーリズム研究会

 昔ながらの農家に都市住民や修学旅行生らを受け入れ、農村の暮らしを体験してもらう「農村民泊」に取り組む大分県宇佐市のNPO法人。日本グリーンツーリズムの先駆け的な地域として知られ、都市住民との交流で農村活性化を進める。リピーターも多く、最近では韓国など海外からの受け入れも目立つ。団体の活動として、グリーンツーリズムの先進地である欧州への実地研修も続ける。宮田静一会長は「農泊で地元の高齢者、特に女性が元気になっている」と強調する。

特別賞

  • 福島県下郷町
  • 大内宿保存会、大内宿結の会

 かやぶき屋根の建物が道の両側に整然と並ぶ福島県下郷町の大内宿。宿場町の風情を伝え、江戸時代にタイムスリップしたような町並みに触れようと年間120万人に上る観光客が訪れる。1981年に国の重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けたのを機に、49戸、約190人の集落挙げた保存組織が発足した。屋根のふき替え手続きなどを「保存会」が、ふき替え作業に若者中心の「結の会」が当たり、伝統行事の継承や雪祭りを含めたイベントなど多彩な活動を続けている。

  • 山梨県早川町
  • 日本上流文化圏研究所

 山梨県早川町は人口約1300人。森林が面積の?%を占める山深い町だ。高齢化や人口減、ライフスタイルの変化で失われていく山の暮らしを守っていこうと1996年に設立された。地域資源の掘り起こしのため、全町民を紹介するホームページや、100人以上の町民が参加して全?巻のガイドブックを作成。空き家を手打ちそば屋として活用するなど、住民の起業や商品開発も応援する。ほかにも町外からの学生に地域づくりを体験してもらうインターンシップなど、多様な取り組みを行っている。

  • 和歌山県那智勝浦町
  • 色川地域振興推進委員会

 和歌山県那智勝浦町で、県外からの農村移住者の受け入れる活動をしている。発足したのは1991年。3千人もいた地域の人口が減り続け「このままでは地域がなくなってしまう」という危機感からだった。移住者を受け入れるための農業研修や生活体験、農地や住宅のあっせんもする。その結果、現在、430人いる住民の?%が移住者という全国でも珍しい地区になった。約?年前に兵庫県から移り、農業に従事する原和男委員長は「みんな収入が大幅に減っても得るものが大きいと感じている。お金を当てにしない暮らし方です」と話している。

  • 熊本県阿蘇市
  • 阿蘇グリーンストック

 農村、都市、企業、行政の4者が連携し、熊本県・阿蘇の草原を守ろうと設立された財団法人。高齢化や過疎化を受け、草原維持・再生には欠かせない野焼きや、草を刈って防火帯をつくる輪地切りを地元農家と都市住民ボランティアらが協力して推進。草原の放牧を増やすため、牛オーナー制度を導入するなど多彩な活動を展開中だ。2003年には、環境省が全国初の国立公園管理団体に指定。山内康二専務理事は「地域振興と環境保全を進め、阿蘇の緑と水の資源を後世に残したい」と話す。

  • 鹿児島県中種子町
  • 種子島アクションクラブ

 「種子島の暮らしをおもしろくしよう」。そんな思いで鹿児島県中種子町の青年団OBを中心に1996年に発足。人気子供向けテレビ番組のヒーローをもじった「離島戦隊タネガシマン」が登場するマスクプレイ・アクション創作劇で、島では絶大な人気を誇る。フルマスク・キャラクターのヒーローが、高齢化や若者の地域離れといった離島の課題に立ち向かう。脚本、衣装、音楽、演技までその都度創る。方言を生かしたアクション劇から子どもも大人も勇気と元気をもらう。

  • 沖縄県名護市
  • 琉球在来豚アグー保存会

 沖縄県名護市で、地元の県立北部農林高校と連携するなどして、在来の大型黒豚「アグー」の保存活動に取り組んでいる。アグーは絶滅の危機にさらされたが、伝統文化資源の視点から戻し交配で復元。アグーと別種の交配でブランド豚も生み出した。高校の農場では、保存会のメンバー、伊野波彰・実習教諭らの指導の下、生徒たちがアグーなど数十頭を飼育、授業に取り入れている。保存会の島袋正敏会長は「アグー保存の次世代を担う人材育成が課題」と話す。

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