地方新聞46紙と共同通信社が、合同で本年度創設した。地方の疲弊は深刻だが、打開を目指す取り組みも目立ってきた。こうした活動に取り組む団体を、各新聞社と共同通信社のネットワークを生かして取り上げ、支援することが狙いだ。各新聞社と共同通信社は2009年7月から、合同企画「地域再生」をスタートさせ、さまざまな活性化の試みを紹介。NPO法人代表や首長ら識者と、地域が抱える問題を話し合う「地域再生列島ネット」も合同で立ち上げた。

「第1回地域再生大賞シンポジウム」

成功へ住民の評価が鍵 次を見据え、熱い論議

「第1回地域再生大賞」の記念シンポジウム

 活性化の取り組みを支援しようと、全国の地方新聞社と共同通信社が設けた「第1回地域再生大賞」の記念シンポジウムが2月25日、東京都内のホテルで開かれた。まちづくりや環境保全、医療—。受賞した団体が取り組む分野は異なるが、古里への思いは重なる。地方の次の時代を見据えた論議は熱を帯びた。

 「広がれ地域の元気」と題した討論には、大賞の「グラウンドワーク三島」(静岡県三島市)の渡辺豊博(わたなべ・とよひろ)事務局長と、準大賞となった「県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会」(兵庫県丹波市)の丹生裕子(たんじょう・ゆうこ)代表、「倉敷町家トラスト」(岡山県倉敷市)の中村泰典(なかむら・やすのり)代表理事の3人が参加。岡本義行(おかもと・よしゆき)選考委員長(法政大大学院政策創造研究科長)ら選考委員と意見を交わした。

 活性化策を軌道に乗せる鍵として浮かび上がったのは「住民の評価」(渡辺氏)だ。環境の変化に合わせ「地域が転換」(岡本氏)し発展に向け、団体が力を発揮するには、関係住民の理解が欠かせない。地域に根を下ろし、協力体制を整えることが重要になる。

 地域にある技術を「再構築し役立てる」(藤波匠(ふじなみ・たくみ)・日本総合研究所主任研究員)ことや「新たな目線で見直す」(逢坂誠二(おおさか・せいじ)・総務政務官)試みも提言された。住む地を見直すことが「地域再生」の第一歩といえそうだ。

成功へ住民の評価が鍵 次を見据え、熱い論議

 シンポジウムでは、受賞団体の代表が活動の難しさやこれからの目標を語る一方、選考委員からは、地域への貢献の広がりに期待が寄せられた。司会は鎌田司(かまた・つかさ)・共同通信社編集委員。

司会の鎌田司・共同通信社編集委員

あん・まくどなるど国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット所長

タレントの大桃美代子氏

藤波匠・日本総合研究所主任研究員

岡本義行・法政大大学院政策創造研究科長

中村泰典・倉敷町家トラスト代表理事

丹生裕子・県立柏原病院の小児科を守る会代表

渡辺豊博・グラウンドワーク三島事務局長

▽考えて実践へ

  —受賞団体のみなさんが、活動にかかわったいきさつは。

 渡辺豊博(わたなべ・とよひろ)・グラウンドワーク三島事務局長 もともとは静岡県庁の職員だった。静岡空港の用地交渉に携わり、平行して活動を始めた。原動力は、古里の環境破壊への思い。行政に行ったり、市民団体と話をしてもなかなか答えが出ないため、新しい運動を始めようとしたのがきっかけだ。

 丹生裕子(たんじょう・ゆうこ)・県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会代表 県に小児科の医者を増やしてほしいと、署名集めをしたが、期待していた結果は得られなかった。それなら、今おられる医者をもっと大切にしようと考えを変えた。地域医療の現状を多くの人に知らせ、住民の立場で私たち自身が何ができるだろうか考えて実践するよう活動している。

 中村泰典(なかむら・やすのり)・倉敷町家トラスト代表理事 37年間、レコード店をやっている。40代半ばにレコード店に飽きて、音楽で何かしたいとコミュニティーFMを立ち上げた。だが、音楽は誰も聞いてくれず、地域の情報に反応してくれた。そこで音楽をやめ、番組をつくり始めた。環境問題を取り上げ、番組をつくろうというのがそもそもだった。

▽地域の評価が重要

 —今後の活動や行政に対する提案を。

 渡辺氏 たゆまない人材育成だ。現場体験型のNPO法人として、三島のモデルを全国モデルにしていきたい。ただ、ボランティア的にやるのではなく「市民会社」なんだと考え、しっかりもうけることも必要だ。NPOは地域の中で住民の評価を受けていることが大事。仲間を増やして、実績を積み重ねて大きな力にしていく。

 丹生氏 住民だけでなく、行政、医療者、企業の立場からできることをお互いに尊重しつつ、一緒にやりましょうというスタイルで地域を盛り上げていきたい。子育て世代向けに医療座談会を開催しており、充実させていきたい。

 中村氏 私たちのキーワードは、まちに明かりをともすこと。「懐かしい未来」をつくっていこうと。行政には、都市計画などに相当制約がかかるが(ひと中心の地域である)ヒューマンスケールのまちをつくるための政策をやってほしい。

▽技術の再構築を

 —選考委員として審査で印象に残ったことは。「地域再生」のため、地域に望むこともあれば。

 藤波匠(ふじなみ・たくみ)・日本総合研究所主任研究員 (多くの団体が)地道だが、着実に地域のために活動していることを再認識した。地方のコミュニティーは高齢化している。行政への期待が大きいが、財源がなく手が打てない状況。地域の方々で解決してもらう以外に考えられない。地域にもともとあった考え方、技術、ネットワークをもう一度再構築して、地域のために役立てていくことが重要だ。

 タレントの大桃美代子(おおもも・みよこ)氏 新潟県の地震復興で農業を始めた。子どもたちと一緒に田植えや生きもの調査などをしていると、地域の人たちが変わってきた。人はモチベーションが変わった時に、いろんなことが起こってくると感じた。モチベーションが高まらないと、イノベーションが起きないと言うが、何かを見つけて自分なりに工夫することが必要だ。

 あん・まくどなるど国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット所長 中央官庁や県庁など行政を無視して、自分たちでやっていくことは大事。と言っても、地方で何かしようとする時には、県庁などがアドバイザー、支援者として必要だ。そのバランスが課題で、チャレンジ。ここに集まったみなさんは、バランスがきちんと取れて活動しており、他地域への刺激、モデルになれると思う。

 岡本義行(おかもと・よしゆき)・法政大大学院政策創造研究科長 海外(の地域活性化の事例)と比べ、何が違うかというと地域がうまく転換していないのが日本の特徴だろう。経済環境が変われば、地域も変わらないといけない。転換をどうやって実現するかが「地域再生」。新しい産業再生のようなものにつながっていくといい。日本の取り組みは多様になってきたが、長期的ビジョンを描ければもっといい。

「意識の自立」が必要 個を大切にし連帯を

講演する傍士銑太・日本経済研究所専務理事

 シンポジウムに先立って「地域主権の国家とは」と題して、日本経済研究所の傍士銑太専務理事が講演した。

 日本が目指す地域主権に必要なのは「自立」だ。権限や財源を得る権利を持つ人たちや「地域再生大賞」を受賞した方々に求められる義務は、意識の自立ではないか。つまり、意識の自立がないと、権限も財源も得る権利はないだろうと思う。

 意識の自立には三つの力がある。一つは自分の地域を誇りに思い、その意識を最大限に外に向け表現するものだ。絵はがきをつくってもいい。ドイツに住んだことがあるが、欧州はどこに行っても絵はがきがあった。

 二つ目は小さい単位を大事にすることだ。小さいものがすべての原点で、個が自立しない限り、集合体も自立できない。三つ目は、そうした小さいものがつながり、力が大きくなることだ。連携ではなく連帯だと思う。

 例えば、各地にプロスポーツが生まれている。サッカーのJリーグでは約30都道府県に約40チームあり、みんなで地域を応援する姿がある。まさにこうした意識が大事だ。

 傍士 銑太氏(ほうじ・せんた)慶大卒。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入り、岡山事務所長などを経て2009年から現職。Jリーグ理事も務める。高知県出身。55歳。

「デメリットをメリットに 新たな目線で再生を

あいさつする逢坂誠二・総務政務官

 シンポジウムに特別ゲストとして参加した逢坂誠二・総務政務官はあいさつで、デメリットを生かす重要さを強調した。

 「地域再生」は今の時代に必要な言葉だ。衰退した過疎の地域などを元気にしていくことが日本全体を元気にしていくことにつながる。地域を考える時に、後ろ向き、否定的にみるのではなく、一見デメリットに思えるところが地域の特色であり、メリットでもある。

 これまでは、地域を見る目線があまりにも画一的ではなかったのか。地域の持つデメリットをメリットに変えられる目線を持つべきだ。ピンチはものを変えていくチャンス。地域を再生していく上で、与えられた条件が何であるかを十分に知ることが大切だ。その条件がデメリットであったとしても、メリットに変わり得る要素を持っている。新たな目線で見直すことが、日本を再生する大きな鍵になる。

 逢坂 誠二氏(おおさか・せいじ)北大卒。北海道ニセコ町長などを経て2005年、衆院議員初当選。首相補佐官を経て10年から総務政務官。北海道出身。51歳。