47NEWS >  地域ニュース >  これがイチオシ!地域再生 >  地宝人ネットから

地宝人ネット

 地・宝・人(ち・ほう・じん)ネット 地方が抱える問題を話し合おうと、全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくった。まちづくり団体の代表者や研究者、行政担当者らが参加。「地域再生大賞」の受賞団体からもメンバーを迎え、約100人で構成。名称を「地域再生列島ネット」から改めた。電子メールを中心に意見交換しており、形にとらわれないシンクタンクを目指す。

矢印バックナンバー

≪メディアを生かした活性化策≫ 目的に応じ使い分けを 複合的な活用が役立つ

 地域から情報発信する手段が多彩になってきた。全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくる「地・宝・人(ち・ほう・じん)ネット」は、コミュニティー放送やインターネットなどのメディアを、地域活性化に生かしていく方策を、メンバーの活動や意見交換を通じて考えた。

×  ×  ×

 メディアを生かした活性化策をめぐる「地・宝・人(ち・ほう・じん)ネット」の意見交換では、目的に応じた使い分けが大事との指摘が相次いだ。情報誌や回覧板のような「旧来型」も、地域での情報共有に効果的との声も。それぞれの特性に合わせた発信戦略が重要になりそうだ。

 伊豆哲也(いず・てつや)・まちづくり機構ユマニテさが常務理事は、住民らが地域情報を書くコーナーを設けるなど情報誌をリニューアルしたところ、注目度が増したと説明。高齢者も親しみやすく"紙媒体"の役割は大きいと話す。

 一方、都竹淳也(つづく・じゅんや)・岐阜県総合療育推進室長は、まちづくり活動のボランティア募集などにフェイスブックは役立つと指摘。渡辺達朗(わたなべ・たつろう)・専修大教授も、商店街のイベントで訪れた人の反応を探るにはフェイスブックやツイッターは有効とした。

 多彩になった発信手段の使い分けを促す声も上がった。菊池一俊(きくち・かずとし)・一般社団法人カミスガプロジェクト代表理事(茨城)は、行事を行う場合、効率的な運営にはデジタルな手段、多くの人に知らせるには情報誌などアナログな手段が効果的だとみる。

 コミュニティー放送に携わる高嶋加代子(たかしま・かよこ)・NPO法人遊プロジェクト京都理事長は、インターネットなどを通じ、さまざまな方法で地域情報を送ることが可能になったと指摘。「複合的に活用することが地域活性化に役立つ」と提起した。

 ▽支えは市民ボランティア 地域の放送、人をつなぐ

 瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)の四国側の出発点、愛媛県今治市。「地・宝・人(ち・ほう・じん)ネット」のメンバー、黒田周子(くろだ・しゅうこ)さん(57)は「今治コミュニティ放送」(「FMラ ヂオバリバリ」)をトップとして引っ張ってきた。「地域のニュースを届けたい」との思いに賛同した市民が、手づくりの情報発信を続けている。20131219imabarimap.JPG

 ▽半年で100人

 コミュニティー放送は出力が小さく、放送地域を市区町村単位としているのが特色。1992年に制度化され、都道府県単位のFM放送では難しい地域密着型の番組に力を入れており、約280局が開局している。

 愛媛県では、松山市で進んでいた開局の計画が頓挫。黒田さんは「それなら今治で」と決意。「わが町のラジオは必要」と、周囲に働きかけて実行委員会をつくり、99年5月のしまなみ海道開通式に合わせ、3カ月限定の試験放送にこぎつけた。「電波は市民の連帯感を生む」と手応えを感じ、本格的な準備に入った。

 地元企業や多くの市民の出資を集めて、2002年に開局。24時間年中無休の放送の支えは市民ボランティアだ。番組パーソナリティーは、小学生から高齢者まで多彩な顔触れが交代で務め、登場した市民は半年で約100人になるペースだ。

 毎週金曜日に2時間の生放送を担当する山内(やまうち)ひとみさん(60)は、番組に参加して7年目。「介護で大変な時、送ったメッセージがラジオで読まれ、力をもらった。今度は応援する側に回ろうと思った」と話す。さまざまな人との出会いもあり「少しでも長く続けていきたい」と意気込む。

 ▽外のつながりも

 スタジオで出演する今治コミュニティ放送社長の黒田周子さん(右)=愛媛県今治市
 今年2月には、今治署と災害時の緊急放送で協定を締結。災害時にスタッフがスタジオにたどり着けない場合、警察から情報発信してもらう計画だ。機材を扱う訓練を兼ねて、署員が防犯対策などを話す番組も始めた。

 「地域内の情報発信は形になってきた」。開局10年を超え、黒田さんは振り返る。次の目標は、地域外のネットワークだ。ほかのコミュニティー放送局との番組作りや、インターネット上の配信準備も進める。放送を通して人がつながり「可能性も広がる」ことが、コミュニティー放送の良さという。今治市を盛り上げようと、新たな企画に知恵を絞っている。

外・宝・人

◎外・宝・人

 外国語教育や国際交流のため、政府や自治体、自治体国際化協会は海外の若者を各地へ派遣する「JETプログラム」を行っている。多彩な経験を積んだ人たちを「外・宝・人(がい・ほう・じん)」と名づけ、地域への思いを寄せてもらった。


旅行先の温泉地でくつろぐジェンソン・デオキシンさん=6月、松山市(本人提供)
富山に恋した日々 ジェンソン・デオキシンさん 日本滞在の最後となった今年9月、大好きな前衛美術家、草間弥生さんの展覧会に行った。刺激的な作品を見るうち「失恋」の入り口に立ったように思えた。「素晴らしい恋愛小説は、出会いとその失恋を描く」。そんな言葉を繰り返してみた。目はどんよりとなり、悲しみで胸はいっぱいだった。JETプログラムがくれた日本でのラブストーリーは終わった。

 母国トリニダード・トバゴに帰った10月、就職面接を受けた。神経質になり、うまくいかなかったが「JETのことを」と聞かれたとたん、自信が戻った。明るい笑顔になり、人生で最も素晴らしい経験だと答えた。

赴任した富山県での最初の年は、春の山から流れる水のように生き生きとしていた。学校で写真撮影する朝、早起きして上等のスーツで出かけたのに、カラスのふんで汚され大笑いした。昼休みに庭で村上春樹氏の「スプートニクの恋人」を読んでいて、毛虫に刺されたこともあった。「痛い」と職員室に駆け込むと、教頭先生が手当てをしてくれたことも思い出す。

 母国に戻り「一番に思い出す日本の出来事は」と聞かれる。そのたびに、親切な人々や比べようのなく美しい景色、冬を春にしてしまうほど輝く生徒の笑顔を思い出す。英語教育は最高の仕事だった。ホタルイカで知られる滑川市などで勤務したが、教えた以上に学んだことの方が多かった。 20131219toyamamap.JPG

 素晴らしいラブストーリーは、予期せぬ出来事に動かされるものが多い。富山県に来た5年前には、私が恋に落ちるとは思わなかった。ストーリーはロマンチックでなくシンプルだ。「おはよう」という生徒のあいさつや同僚の優しい心遣い、廊下に響く生徒の笑い声―そうした記憶だ。

 富山での経験は報われない愛かと思うこともある。訪れて恋に落ちた大勢のうちの一人にすぎないとも考えてしまう。しかし「ジェンソン先生、会えなくなり寂しい」というメールを読むと、思いは通じていたんだと考え直す。「きっと、また会える」と。(寄稿)

   ×  ×
 ジェンソン・デオキシン トリニダード・トバゴ出身。大学で環境や自然資源の管理を学び、08~13年、富山県で外国語指導助手として勤務。帰国後、フリーライターとして活躍。30歳。