財政に住民の声反映させるには 自治体、財政情報公開を
地方自治体の財政が厳しさを増している。全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくる「地域再生列島ネット」は「財政に住民の声を反映させるには」をテーマに、第10回意見交換を行った。事業仕分けや地域集会など住民が参加する機会を増やすと同時に、適切な判断ができるように、情報公開が不可欠だとの提言が相次いだ。
▽仕分けにも課題
鳩山政権が看板に掲げる事業仕分けは、予算編成の新手法と注目された。しかし、先行した地方自治体では必ずしも関心が高くない。松田千春(まつだ・ちはる)・滋賀県企画調整課主幹は、作業を公開したが「ほとんど傍聴者はいなかった」といい、原因を「分かりにくさ」とみる。
2006年度から本格的に事業仕分けを始めた岡山市は、経済や労働団体の代表らに加えて、公募した住民が参加するのが特色だ。ただ、これまでに対象となった39事業群のうち廃止は6件、縮小も9件どまりで、改善が13件で最多。事業の是非で激論もあったが、陳情になってしまう場面もあったという。
多田憲一郎(ただ・けんいちろう)・岡山商科大教授は、参加者に財政全体の情報が足りないため、事業の優先順位を判断しにくいと指摘。「わかりやすいマクロ情報が重要」と話す。河内山哲朗(こうちやま・てつろう)・前山口県柳井市長も住民参加型で運営するには「一目で分かる税財政制度」が前提とした。
▽審議会は限界
審議会方式の限界も指摘された。舩木上次(ふなき・じょうじ)・萌木の村社長(山梨)は「参加して述べた意見が反映されたことはほとんどない」と話す。都竹淳也(つづく・じゅんや)・岐阜県商工政策課課長補佐は、少人数の住民と「車座討論会」を重ね計画策定に役立てたと説明。有識者会議より住民の声を聞く機会を積極的に設けるべきだと訴えた。
「入り」の面でも提言があった。沼尾波子(ぬまお・なみこ)・日本大教授は、神奈川県が導入した「水源環境保全税」について、専門家や県民らが事業評価などを行っており「参加型税制」と評価。計画から実施まで、住民がかかわる仕組みが大事とした。
▽住民の目が重要
議会の重要性も指摘された。藤波匠(ふじなみ・たくみ)・日本総合研究所主任研究員は「議会こそ市民参加の場」とし、連続立候補禁止など多くの人が参加できるよう見直しを求めた。沢井安勇(さわい・やすお)・日本防炎協会理事長は「市民議会」を提案。重要案件について住民が大学や研究所と協力して論議し、議会機能を補ってはどうかとした。
税収減などで全自治体の08年度の歳出は1999年度から約12兆円も減った。効率的な配分を進めるには、住民の目が重要となる。西尾真治(にしお・しんじ)・埼玉ローカルマニフェスト推進ネットワーク事務局次長は、住民による案が市の予算に反映された例もあるとし、知恵を出せば「イニシアチブを発揮」できると訴えた。
◎地宝人
「地域再生列島ネット」に参加した多彩な人たちを「地・宝・人(ち・ほう・じん)」と名づけた。その活動と横顔を紹介する。
滞在型観光を目指す坂元英俊・阿蘇地域振興デザインセンター事務局長

「地道な取り組みが、ようやく実ってきた。これからが楽しみ」と、手応えを話す。「世界最大級のカルデラ」で知られる熊本・阿蘇。売り込み役として、多くの人を呼び込もうと知恵を絞る。
専門は農業土木。ダムや排水の計画作りに携わってきた。しかし「自分の手で農村を元気にしたい」と、実行役への転身を決意。熊本県と周辺町村がつくった「阿蘇地域振興デザインセンター」の事務局長公募に参加、2001年就任した。
年間1900万人前後が訪れる人気観光地だが、観光業以外の産業との結び付きは弱いと感じたという。商店街や農業へプラス効果を広げるには、滞在型への転換が不可欠。「最も大事なことはまちづくり」と話す。
路線バスの環状路線化や、名物料理の考案や植樹などによる商店街再生—打ち出すアイデアには、地域全体への目配りが感じられる。「観光客は地図を見ながら歩く。地域の中にいろんな面があることが大事」という。
11年春の九州新幹線鹿児島ルート開通に合わせ「阿蘇カルデラツーリズム博覧会」も計画。ハコモノではなく農村や温泉街など街そのものをパビリオンとし、楽しんでもらうのが特色だ。イベントを探し組み合わせることができるホームページも設け、思い思いに過ごせるよう工夫もこらす。「まだ出発点」と、意欲は尽きない。56歳。
まちづくりに全力投球する東朋治・協働研究所取締役

大手鉄鋼会社を1年で辞め、出身の神戸市長田区で阪神大震災からの復興に取り組む会社に入った。「生まれ育った場所で何かしたいと急に感じた。ものづくりもまちづくりも同じかなと思って」と振り返る。
がれきや仮設住宅が残る中、復興イベントで住民と連携。2001年、商店主らが出資するまちづくり運営会社「神戸ながたTMO」の総括マネジャーに就いた。住民にイベント案を出してもらい、企業や関係機関と調整し資金を手当てし実現に導く。店やマンションが立ち並び、イベントも当たり人通りが増えた。経験を生かして、この春からは地域活性化を請け負う会社に軸足を置く。
自称「まちづくり屋」だが、裏方に徹することへのこだわりが強い。「主役である地域の人がやりたいことを後押しするのが仕事。野球部ならマネジャー」と解説。行政による地域活性化の補助事業も使いこなせる人がいなければ意味がないと訴え「リーダーを発掘し育てることにすべてを惜しまない」と言い切る。
まちづくりを産業として成立させることが夢だ。「行政がしんどくなる中、収益を上げ地域に還元するまちづくりビジネスが注目される」と分析。一般企業並みの給料が出れば、志望する若い人も増えるとみる。
住民らと飲み歩き、意見を交わす。体形が気になるが「まちは夜つくられるんですよ」。35歳。

