第10部 財政の挑戦
まとめ 自前の「財布」
地方自治体が共通して抱える悩みは予算編成の不自由さだ。乏しくなる財源の大半と、その使い道を国が握る。独自の税金や無駄のカットなど地方が進める取り組みが、国のさじ加減一つで簡単に吹き飛ばされてしまう実態は否めない。地方分権の実現には、地域の判断と責任でやりくりできる自前の「財布」が大前提となる。
▽頼りは国の差配
2008年度の市町村普通会計決算によると、住民税や固定資産税など地方税が歳入に占める割合は39%。不足分の多くを地方交付税(15%)や補助金など国庫支出金(12%)といった国が握る財源で賄い、歳入の半分以上が交付税という過疎地の自治体も珍しくない。借金返済など義務的経費が一般財源に占める割合を示す経常収支比率は、全体で90%を超えた。
交付税の配分は、国が自治体の地方税収と行政経費の差額を計算して決める。自治体が企業誘致や人口増加に成功し税収が増えれば、減額される仕組みだ。しかも、交付税総額は、国が予算編成に合わせ先に決める。自治体への配分は、その枠内での調整にすぎない。
自治体は、総額決定にも配分方法にも関与できない。このため、配分額は自治体の実際の経費と無関係に増減し「歳出を削ったのに理由なく交付税が減らされた」と、不満は根強い。全国知事会などは06年、国の関与を弱めた「地方共有税」の導入を提案したが、見直しは急務だ。
▽地方も問われる
10年度予算で21兆円に上り、もう一つの柱となる補助金にも国のコントロールがつきまとう。公共事業の場合、道路の構造などに細かなルールがあり、地方の裁量の余地は少ない。国土交通省幹部は「最近は自発的申請が少なく、手を挙げるようせっつくしかない」といい、補助とは名ばかりの現状を明かす。
原口一博(はらぐち・かずひろ)総務相は「ひも付き補助金ではなく、自由に使える財源を増やす」とし、来年度から補助金を「一括交付金」へ段階的に切り替える方針を掲げた。しかし、権限を手放したくない国が重点分野を示し、事前審査で使途に口を挟む仕組みを残す事態も予想され、改革には監視が必要だ。
「一括交付金に期待はあるが、不正経理で地方も信用されていないから」。ある県の東京事務所職員はもらす。各地で発覚した「裏金」の問題は自治体財政のずさんさをさらけ出した。自由と責任は表裏一体だ。自前の「財布」を実現するには、行政や議会、住民の覚悟も問われる。(共同通信社、文・岡部智也)
地方財政の現状 借金返済や社会保障費など義務的経費が一般財源に占める割合を示す経常収支比率は全自治体で92・8%(2008年度)と過去2番目の高水準。地方債など借金残高は08年度末で197兆円。自前の収入が多く09年度の地方交付税がゼロだったのは東京都と151市町村で、人口比率は28%だった。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「環境とともに」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

