第8部 農を開く
まとめ 知恵活用と連携
農業への逆風をはね返し、各地で特産品を育て販路を開く奮闘が続く。共通項は、地域の知恵の活用と業種を超えた連携だ。持ち味を生かした取り組みを育て「点」を「面」に広げれば底上げにつながる。鳩山政権が目指すべきは、地域が競い合える環境づくりだ。
▽巨費投入に疑問
「農林水産行政を新しい段階に導く歴史的意義を持つ」。昨年暮れ、赤松広隆(あかまつ・ひろたか)農相は来年度予算案に満足げだった。目玉は、生産費の赤字を補てんするコメの所得補償制度。経営が安定すれば食料自給率アップにつながり、農家が努力した分は所得が増えるとする。
ただ、対象を限定せず全国一律で巨費を投入する施策に、どれほどの効果があるか疑問との声は多い。元農水省幹部の山下一仁(やました・かずひと)・経済産業研究所上席研究員は「農家票が欲しいだけの政治主導。食糧管理制度時代へ先祖返りだ」と指摘。生産コストの高い小さな兼業農家が温存され、大規模化も停滞するとみる。
月刊誌「農業経営者」の浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)副編集長も「赤字経営を認めれば競争原理が働かない」と批判し、黒字経営か、黒字化計画を提出した赤字農家に限った新たな補助金を提案する。経営規模や作物、販売先は問わずに融資し、5年で黒字化すれば返済は免除する仕組み。創意工夫と経営努力を促す狙いだ。
▽農業は多彩
「地産外商」が注目を集めている。産地で消費する「地産地消」ではなく、大都市や海外を販売先に絞り、産地自ら売り込む戦略だ。昨年夏、地産外商公社を設立した高知県の担当者は「県内は人口減少でじり貧。外に打って出ないと地方に将来はない」と言い切る。
国は2005年の食料・農業・農村基本計画で「地産地消」推進を掲げ、直売所整備を加速した。しかし、一部地域では客が集まらず苦戦中だ。優秀なアイデアでも、すべての地域に有効とは限らない。高知県が取った戦略転換は、実情に照らすことで新たな道が開けることを示している。
大都市での農産物直売や商品開発・販路拡大支援事業は「民間でやればいい」とされ、国の来年度予算案から消えた。しかし、販路確保が簡単でない地方の脆弱(ぜいじゃく)な農家もある。画一的メニューを押しつけながら、一斉に引っ込めてしまうやり方では自立は進まない。
大規模化し大市場へ、少量でも他品種を特定の消費者へ―農業の顔は多彩だ。一律の所得補償ばかりに傾注するのではなく、頑張る地域や農家がそれぞれに腕が振るえる仕組みが必要だ。(共同通信社、文・岡部智也)
農家の現状 農業就業人口は1960年には1454万人を数えたが、2009年は約8割少ない290万人に減った。一方、農業総産出額は84年の11兆7171億円をピークに右肩下がりで、07年は8兆2585億円に落ち込んだ。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「環境とともに」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

