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第8部 農を開く

古木家の泗水工場。コメロンパンが次々と焼き上がる=熊本県菊池市
【03】

熊本 米粉メロンパン

 熊本県菊池市のスーパーの一角にあるパン製造業「古木家(ふるきや)」(熊本県阿蘇市)泗水(しすい)工場。焼き上がったばかりのメロンパンが並んだ。ちょっと違うのは米粉を使っていること。しかも、発案は高校生。発売から約1年半で27万個を出荷する大ヒットとなり、古木大次郎(ふるき・だいじろう)社長(41)は「ここまで事業をもってこられた」と感慨を込め振り返った。
 
 ▽地元企業も支援
 
 県立鹿本(かもと)農業高(山鹿市)の食品加工部が、米粉パンを手掛け始めたのは2004年。県産米の用途を広げ地域の食料自給率も上げたい。農家の厳しさを知る生徒の取り組みに熱が入った。県の特産、メロンとの組み合わせに工夫を重ね、果汁入り白玉団子をパンに包み込むことで、香りと色を残すことに成功した。
 「高校生のコメロンパン」を、地元企業も支援した。生徒たちの相談を受け、食品加工企画「阿蘇デリシャス」(阿蘇市)は、商品化に向けグループの古木家と協議。古木社長は「米粉パンは熟成させすぎると硬くなる。調整は難しかった」と話す。別のグループ企業に所属し、テレビ番組で人気のチンパンジー、パンくんの写真を包装紙に使うことも決まった。
 販路開拓は、スーパー勤務経験を持つ阿蘇デリシャスの野田謙二(のだ・けんじ)常務(45)が百貨店のバイヤーと折衝。08年8月に地元百貨店で販売すると、1週間で9千個(1個180円)を売り切った。大丸や伊勢丹などにも拡大、使った米粉は計12トンに上る。評判を聞いた量販店から引き合いもあるが、価格競争に巻き込まれたくないと百貨店での販売にこだわる戦略だ。
 実践の場は生徒たちが、商品開発での利益計算や商慣行を学ぶ絶好の機会になった。野田常務は「生産者やメーカー、小売りで利益の適正分配ができなければ、事業は長続きしないと教えている」と言う。鹿本農高食品加工部顧問の大倉龍喜(おおくら・りゅうき)教諭(46)は「プロの力で全国販売が果たせた。学習へのプラス効果は大きい」と喜ぶ。学校と企業、農家、それぞれに果実をもたらしつつある。
 
 ▽雇用の受け皿に
 
 古木家は泗水工場で09年3月、鹿本農高を卒業した富田耕輔(とみた・こうすけ)さん(18)を新規採用した。在校生は富田さんの指導でパン作りを学ぶ。地域の資源を生かそうと始まった試みは、雇用の受け皿と指導者養成という次のステージに踏み込んだ。
 熊本県では昨年、地場製粉会社による九州最大の米粉工場が稼働。小・中学校で週1回、米粉パン給食も始まった。新しい加工食品作りが活発化、米粉に寄せる期待は高まっている。(熊本日日新聞社、文と写真・井村知章)

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一口メモ
米粉の活用

米粉の活用 年間消費量は2008年度の推計で約9500トン。農林水産省は、小麦の年間輸入量の約1割にあたる50万トン程度を米粉に代替すれば、食料自給率が1・5%上がると試算しており消費拡大を目指し、支援策を打ち出している。



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