第8部 農を開く
熊本 米粉メロンパン
熊本県菊池市のスーパーの一角にあるパン製造業「古木家(ふるきや)」(熊本県阿蘇市)泗水(しすい)工場。焼き上がったばかりのメロンパンが並んだ。ちょっと違うのは米粉を使っていること。しかも、発案は高校生。発売から約1年半で27万個を出荷する大ヒットとなり、古木大次郎(ふるき・だいじろう)社長(41)は「ここまで事業をもってこられた」と感慨を込め振り返った。
▽地元企業も支援
県立鹿本(かもと)農業高(山鹿市)の食品加工部が、米粉パンを手掛け始めたのは2004年。県産米の用途を広げ地域の食料自給率も上げたい。農家の厳しさを知る生徒の取り組みに熱が入った。県の特産、メロンとの組み合わせに工夫を重ね、果汁入り白玉団子をパンに包み込むことで、香りと色を残すことに成功した。
「高校生のコメロンパン」を、地元企業も支援した。生徒たちの相談を受け、食品加工企画「阿蘇デリシャス」(阿蘇市)は、商品化に向けグループの古木家と協議。古木社長は「米粉パンは熟成させすぎると硬くなる。調整は難しかった」と話す。別のグループ企業に所属し、テレビ番組で人気のチンパンジー、パンくんの写真を包装紙に使うことも決まった。
販路開拓は、スーパー勤務経験を持つ阿蘇デリシャスの野田謙二(のだ・けんじ)常務(45)が百貨店のバイヤーと折衝。08年8月に地元百貨店で販売すると、1週間で9千個(1個180円)を売り切った。大丸や伊勢丹などにも拡大、使った米粉は計12トンに上る。評判を聞いた量販店から引き合いもあるが、価格競争に巻き込まれたくないと百貨店での販売にこだわる戦略だ。
実践の場は生徒たちが、商品開発での利益計算や商慣行を学ぶ絶好の機会になった。野田常務は「生産者やメーカー、小売りで利益の適正分配ができなければ、事業は長続きしないと教えている」と言う。鹿本農高食品加工部顧問の大倉龍喜(おおくら・りゅうき)教諭(46)は「プロの力で全国販売が果たせた。学習へのプラス効果は大きい」と喜ぶ。学校と企業、農家、それぞれに果実をもたらしつつある。
▽雇用の受け皿に
古木家は泗水工場で09年3月、鹿本農高を卒業した富田耕輔(とみた・こうすけ)さん(18)を新規採用した。在校生は富田さんの指導でパン作りを学ぶ。地域の資源を生かそうと始まった試みは、雇用の受け皿と指導者養成という次のステージに踏み込んだ。
熊本県では昨年、地場製粉会社による九州最大の米粉工場が稼働。小・中学校で週1回、米粉パン給食も始まった。新しい加工食品作りが活発化、米粉に寄せる期待は高まっている。(熊本日日新聞社、文と写真・井村知章)
米粉の活用 年間消費量は2008年度の推計で約9500トン。農林水産省は、小麦の年間輸入量の約1割にあたる50万トン程度を米粉に代替すれば、食料自給率が1・5%上がると試算しており消費拡大を目指し、支援策を打ち出している。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「環境とともに」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

