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第8部 農を開く

2009年8月、色づいた「JA伊達みらい」の桃。品質の高さが評判だ=福島県伊達市(JA伊達みらい提供)
【01】

福島 輸出に活路

 「農家個人ではできないことを農協が実践する時代。挑戦と改革が旗印」。「JA伊達みらい」(福島県伊達市)の数又清市(かずまた・せいいち)営農生活部長(54)は力を込める。同JAは2005年から特産の桃を海外へ売り出し、年々輸出量を増やしている。狙いは販路拡大とブランドの確立だ。海外戦略を通じて競争力を強化、地域農業の未来を託す。
 
 ▽国内では競合
 
 JA伊達みらいが事業を展開する県北地方の伊達市、桑折町(こおりまち)、国見町(くにみまち)は「果樹王国ふくしま」を支える一大産地。特産の干し柿「あんぽ柿」やリンゴなどの生産が盛んで、中でも桃の生産量は東北一だ。桑折町と国見町の町花も、もちろん桃。春になると、花が野山を一面ピンク色に染め、まさに桃源郷が現れる。
 地域の象徴として住民から愛される桃。しかし「出荷の最盛期は1週間程度と短く、傷みやすい。しかも、国内の他産地と競合する」(数又部長)問題を抱えていた。そのため、稼ぎ時の8月中旬の国内販売単価は安値傾向が続き、危機感は募っていた。
 突破口は逆転の発想だった。売れる市場を自分たちで新たに作ればいい。「活路を輸出に見いだした」と、数又部長は話す。05年に初めて輸出した先は台湾で、35トンを東京の大田市場を通して船便で送った。
 09年には53トンに増加。現地では品質が評価され、国内よりはるかに高い、1個千円程度で販売され、市場の魅力は大きい。ロシアやシンガポール、タイ、香港、ドバイにも販路を広げ、空路を活用した輸出も展開する。
 
 ▽販売戦略に自信
 
 ただ、輸出量は同JAの年間取扱量約7800トンのうち、まだ1%程度でしかない。一部の組合員からは「本当にもうかるのか」との声もある。しかし、数又部長は「生産者に利益を還元するためには、ブランド化が不可欠」と言い切る。
 背景には、販売戦略で知名度が着実に向上していることへの手応えがある。主力品種「あかつき」の糖度15以上の最高級品「伊達の蜜桃」は東京の百貨店で1キロ1万円で販売されるまでになった。
 実績をテコに、さらなる品質向上を目指す。選果設備を最新型にし、輸出促進に産地で直接検疫を行う「現地検疫」も導入。品評会で優秀な成績を残した生産者だけが出荷できる「究極のブランド商品」も手掛ける。
 福島県農産物流通課の田村完(たむら・かん)課長(55)は「消費者に買ってもらうには何をすべきかを常に考えている」と話す。新たな可能性を模索する挑戦が続く。(福島民友新聞社、文・渡辺哲也)

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一口メモ
福島県の桃

福島県の桃 2007年産の栽培面積は1800ヘクタールで、山梨県に次いで全国2位。他産地との競合を考慮し「あかつき」など晩生種を中心にしながら、早生、中晩生種の導入を全県的に進め、高品質化と出荷時期の拡大を図っている。



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