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第7部 足を守る

「久しぶり」「どこ行くの」。お年寄りの会話が弾むデマンドタクシーの車内=愛媛県四国中央市
【03】

四国中央市 デマンドタク

 「あの人はこの前、入院したんよ」「あらそう。お見舞いに行かんといかんね」。9人乗りワゴン車に乗り合わせた、お年寄りがおしゃべりを楽しんでいる。鉄道や路線バスがない愛媛県四国中央市土居町の天満(てんま)・蕪崎(かぶらさき)地区。住民を対象に2008年1月、四国初の試験運行が始まったデマンドタクシーだ。
 
▽1分間の利用も

 同市は県東端の川之江、伊予三島両市と土居町、新宮村が04年に合併し発足した。行政区域の拡大とともに明らかになったのは「交通格差」だ。公共交通がまったくない地域では、高齢者ら交通弱者をどうするのか。合併前から新たな交通手段の検討を進め、小回りの利くデマンドタクシーを選んだ。
 試験運行は「足の空白地」である天満・蕪崎地区と、旧川之江市の一部地区の計1177世帯3081人を対象に開始。天満・蕪崎地区では週3日午前3便と午後4便、旧川之江市は週2日午前3便と午後2便が、予約者を自宅まで送迎する。運賃は片道300円だ。
 昨年12月の朝、デマンドタクシーが天満地区の山腹を登った。「狭い道やろ。いつも運転手さんに無理を頼むんよ」と、主婦の岸美智子(きし・みちこ)さん(75)はいう。乗車時間は自宅前からわずか1分。「週1回は両親の墓参りをしたいが、上り坂が急すぎて登れん」ためだ。帰りの下りは自分の足で歩く。まさに「住民の足」を地で行くスタイルだ。
 「町内や昔住んでた隣町の知人が乗ってきて、たいてい世間話になるねえ」と話す蕪崎地区の主婦松木冨美子(まつぎ・ふみこ)さん(78)。週1回の通院や買い物などに利用する常連客で、乗車時間も楽しみの一つだ。「以前は、病院までタクシーで片道1500円。年金を倹約したい身には、経済的にも助かる」と低運賃を歓迎する。急ぐ時にはタクシーで出かけ、帰りはデマンドタクシーと使い分ける。
 
 ▽導入でバス廃止

 開始から09年9月までに延べ4600人が利用し、うち70~80代が約9割を占める。市は利用者の声や他の地域からの要望を受け、運行エリアを10年3月から旧新宮村以外の旧3市町地域に拡大することを決めた。ただ、こうした地域は公共交通空白地帯ではなく、一部バス路線の廃止が条件となるケースがある。このため、バス廃止への戸惑いやデマンドタクシーへの不安も漏れる。
 新たな公共交通機関として注目を集めるデマンドタクシー。住民の足として根付くには、ニーズに合わせた見直しが不可欠だ。住民との対話をいかに積み上げていくのか。市の取り組みに、多くの地域が熱い視線を送っている。(愛媛新聞社、文と写真・八島大介)

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一口メモ
デマンド交通

デマンド交通 利用者の呼び出しに応じて運行する交通機関で、全路線で予約対応するケースやバス路線の一部に導入するなどさまざまで、明確な定義はない。国土交通省によると、デマンド交通事業に必要な運輸局の許可を受けた市町村は160を超えている



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