第6部 子育てを支える
群馬 挑戦
「小児ぜんそくは中学生ぐらいまでに治さないと大人になっても残る可能性があるが、症状が軽いからと我慢して治療を中断するケースもあった。継続して受診する子どもが増えており、治癒率の向上が期待できる」
群馬県高崎市にある小児科医院の男性医師(44)は話す。県内全市町村はことし10月までに、通院医療費無料化の対象を中学卒業までに引き上げた。既に無料としていた入院医療費と合わせ、全域で子どもの医療費無料化が実現。早くも変化をとらえた声が上がる。
▽「政権交代」が契機
ただ、群馬県が「先進県」だったわけではない。長年、市町村への補助対象の上限を通院は2歳、入院は4歳と据え置き。市町村などが引き上げを要望したが、全国を下回る水準が続いた。市町村は独自に取り組んだが、財政力でバラバラ。2007年4月時点で、県内38市町村のうち入院・通院とも中学卒業まで無料は3町村。小学卒業までが12市町村、就学前は14市町村と分かれた。
転機は「政権交代」だった。中学卒業まで無料化を公約に掲げた大沢正明(おおさわ・まさあき)知事が07年7月に就任、事態は動き始めた。実現には約36億円の恒久的な財政負担が必要となるため、県幹部に慎重論もあったものの、大沢知事が押し切った。
所得による対象者の制限も論議となった。いったんは、県が給付要件の導入案を市町村に示した。しかし、市町村が行っていた無料化には所得制限はなく、撤廃を求める声に押され県は導入を見送った。08年4月に入院医療費を、ことし10月に通院医療費も中学卒業までの無料化が始まった。
▽医療現場は好評
「少子化対策や子育て環境整備につながる社会政策。子どもの声が響く活力ある地域づくりにつなげたい」。高橋厚(たかはし・あつし)・県国保援護課長は、都道府県で初めて、子ども医療費の完全無料化に踏み切った成果に期待をかける。「定住者や企業の呼び込みを目指す未来への投資」との位置付けだ。
医師不足で縮小する地域拠点病院が続出しているだけに、無料化で安易な受診が増え医療がパンクしかねないとの懸念もあった。しかし「不要不急な受診が増えた実感はない。むしろ初期の受診がしやすくなり健康増進に効果が大きい」と、医療現場の反応は良好だ。
財政は厳しいが「長期にわたって安定的に維持する制度」として県は、来年度予算編成でも無料化関連予算は「聖域」とする。民主党は政権交代前の政策集に「小児医療の自己負担軽減」を明記した。群馬の挑戦の行方は、国の政策にも大きな影響を与えそうだ。(上毛新聞社、文・多田素生、写真・石田貞之)
子どもの医療費補助 医療費の自己負担軽減のため都道府県は補助制度を導入しており、対象年齢や所得制限の有無で違いがある。ことし4月時点でまとめた厚生労働省の調査では、中学卒業まで入院・通院とも補助しているのは東京で、群馬や神奈川など3県は入院を補助。群馬は10月から通院にも補助を始めた。
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第13回 7月下旬予定

