47NEWS >  地域ニュース >  地域再生 >  地域再生列島ネットから >  意見・提言リスト(第5部) >  意見・提言 - 詳細(第5部)

地域再生列島ネットから

 地方が抱える問題を話し合うため、全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくった。街づくりなどに取り組むNPOの代表者や研究者、行政担当者ら多様な専門を持つ47人で構成する。毎月、テーマを決めてメールで意見交換を進め、インターネット上の「シンクタンク」を目指す。


 【テーマ】文化を地域ビジネスにつなげるには?

田村 亨・室蘭工大教授(北海道)

 地域にふっ着いているものとして「土地」・「自然」・「道路や教育施設などの社会資本」・「伝統・文化・習慣」の4つがあり、この魅力を高めて、他地域や世界中からヒト・モノ・カネ・情報を集めようということ。ここで重要なことは他地域との差別化で、独自性を如何に持たせるかである。EUの農業委員会が行なっている農村活性化(リ-ダ-プロジェクト)はわが国でも役に立つ。大学卒の若い政策立案者が、2-3年農村に住み込んで地域の活性を支援する。日本のような上から目線ではなく、地元農家の人々が考えるお祭りなどの活性化策にプロとしてアドバイスする。地域の起業家を育てることが目的なのである。全てが成功している訳ではない。せっかく派遣されても、地元から発案がなく何もしないで帰ってくることもあるという。このような外部の専門家と地元の発想がうまく結び付けば、地域の魅力は継続的に向上してくるのではなかろうか。 

阿部 欣司・北海道電力地域担当部長

 今年の夏、富良野に泊り、耕作放棄地の開墾・閉鎖したゴルフ場の植樹参加と、演劇専用劇場で、舞台としては倉本聰氏7年ぶりの新作「歸國」を鑑賞した。富良野は自然だけでなく環境・演劇文化の街に変貌している。

 富良野は昭和47年国土計画の進出で、ワールドカップも開かれるスキー場等を備えたこれまでの道内にはなかった格調高いセンス溢れるリゾート地として一躍有名になった。56年からの倉本氏の「北の国から」の放映は、地元の自然と共生した生活・人間愛を謳い、地元農家が必死になって護ってきたラベンダー畑復活の後押しもした。

   地元も倉本氏が主宰する脚本家や俳優を要請する「富良野塾」塾生・OBの活動の場やこの演劇という財産を地元が楽しめるような場として、公設民営の劇場をつくり、演劇活動を下支えしてきた。ロングラン公演の収支は厳しいと聞くが、この演劇は富良野に好いイメージを与えていることに疑いない。

   外部の資本・人が富良野の価値を発掘し、それを地元が理解し受入れ、協力し磨き上げてきたことで今の富良野があると思う。 

吉井 仁美・八戸市立水産科学館館長(青森)

   文化を活かした成功例としては当地の「八戸せんべい汁」が典型的なモデルだと思っています。せんべい汁は八戸地方で昔から食べられている家庭(郷土)料理ですが、せんべい汁を愛する有志の方々が当地の食文化であるせんべい汁で地域おこしをし、今やご当地Bグルメブームの火付け役として、地域経済に大いに貢献しています。この成功のツボは食文化に着目し形を変えずに発信したことと、有志の方々の意識の高さと質の良さにあります。全国各地で地域おこしのために地元名産を使った創作料理が流行しています。創作料理は話題にはなりますが、長く伝え受け継がれてきた食文化には及びません。さらに物がよくてもそれを作る人売る人の意識が大切だと思います。人は何のために働くか?(社会・家族・自分)の為に。この順番を間違えると利害やエゴが露出し自己陶酔の渦に巻き込まれその結果、ビジネスの軌道には乗れません。地域の文化に着目し、適切な距離をもって文化を見つめ、客観的な視野に立ち、発信する。踏まれても、蹴飛ばされても、笑われても本気で発信し続ける。

          結局最後は人の心です。意識改革と人材育成が地域再生の近道であり、その先に(文化でメシが食えるぞ!!)が待っているのではないのでしょうか。 

吉成 信夫・県立児童館いわて子どもの森館長(岩手)

   行政や企業、広告代理店が作為的に文化戦略を盛んに鼓舞したバブル期は今や遠い昔。どうすれば儲かるかから始めようとする発想ではひとを自発的につなぎあう力は湧いてこない。

   宮澤賢治は今から83年前に、農民芸術概論綱要の中で、「無意識即から溢れるものでなければ多く無力か詐偽である」と述べている。土に根差し、これまで連綿と継続してきたふつうの生活の中で育まれてきた無意識の集合としての地域文化をどう再発見し、これに新たな光を当てられるか。ここには飯を喰うヒントが沢山ある。伝統芸能、アートと身体性、半農半X、パーマカルチャー、エコビレッジなどをテーマとした各地で始まっている活動は、過去とつながることで暮らし方を起点にした文化運動へと成長する可能性を有している。

   越後妻有トリエンナーレはあまりにお金がかかりすぎて胡散臭い感じもあるが、アートが地域文化に光を与えるという意味で、地域を巻き込んだ挑戦的な試みであることだけは確かなようだ。 

小山良太・福島大准教授

   今回のテーマは、「文化で、どうしたらメシが食えるか?」ということですが、①何らかの地域文化そのもの、あるいはその延長上の「商品」を交換財として、域際収支を向上させるという方法と②固有の地域文化が育むヒト・モノの存在が様々な活動、取り組み(ビジネスも含む)に結びつくという形態があると思います。

   例えば、7、8月とドイツ南部の農村(黒い森地方:バルトキルヒ)の調査を行なったのですが、そこでは、そもそも伝統的にある地場産業の時計や宝飾業を現在まで継承し地域振興を図っている地域があり、これが前者に該当すると思います。後者に関して、その周辺の農村部では、地元のものは良いものだ、地元のものを消費しよう(食べよう、使おう)というスローシティーの認定を受けており、その延長上に地産地消を推進する活動が展開しています。その典型がマルクト(フランスではマルシェ)という青空市であり、週3回開催され、周辺の農家が中心部で野菜や加工品を販売するという形態をとっています。地域住民の食材費の約60%(統計上の正確な数値ではありません)がマルクトで調達されるとのことです。これは日本と同様に零細な農業が展開されるドイツ南部の中山間地域においては地域農業を維持する役割を果たしています。

   現在日本での地産地消は、運動として、あるいは直売所や特定グループによる「点」としての展開であり、内容もほぼ農産物に限定されます。林業と住宅建設なども含む総合的な地産地消、地域経済システムとしての展開がありうると思います。ドイツのマルクト(全てではありませんが)は地域文化(伝統工芸の保存)をベースとした地域づくりビジョンの上に成立しており、地域文化そのもので飯を食うのではなく、それをベースに飯を食えるシステムを構築していくという方法もあり得ると考えます。

山﨑 美代造・前とちぎインベストメントパートナーズ社長(栃木)

   宇都宮市の「餃子の街宇都宮」のきっかけは、市職員の1990年の「餃子を通して宇都宮野菜をPRする方法」という研究発表に始まる。これを市が取り上げ、PR費用の1部負担、行政と民間双方の広報活動開始。93年には事業者が「宇都宮餃子会」発足。商工会議所が空き店舗対策の国の制度を活用して市内に01年に全国唯一の協同組合餃子会を設立。市内に3直販店、東京池袋に1店舗出店運営する。国の調査資料によると1世帯あたりの87~08年の20年間消費額ランキングは、95年の2位を除き全国連続1位維持し、今や、餃子を食べるため今や年間80万人が宇都宮を訪れる。活動開始から10年間で10倍の売り上げを示す。

   二つ目は、今や広いファン層を持つ佐野市ラーメンの街だ。ルーツは大正初期、中国人が織物の街、佐野市に開店したことに始まる。女工さんの夜食用が中心だったと云われる。それが地域の味覚として引き継がれて来た。本格的に街づくりの核としてとりあげ発展させたのは市と商工会議所の支援で88年に業界有志が集まり「佐野ラーメン会」を結成、一体的活動を展開したことだ。佐野ラーメンの特徴は青竹打ちの製麺の伝統技法による独自の味とコクだ。市の観光客調査によるとラーメン食べ目的客が65%、88年の会発足当初に比べ94には観光客は2倍余。餃子やラーメン文化が地域活性化と地域ブランドを形成している例だ。食文化の外、都市計画の中で栃木市の歴史的遺産蔵を生かした街並み整備と点在する蔵をミニシアターとして活用して名作映画祭の開催などが観光客を急増させた。

   これら共通要素は①足元の文化資源探し②狂人的リーダーと住民、事業者の熱意。そして、それを支える行政、商工団体等の情熱的取り組みがあれば文化で飯が食える。文化の種は育てれば飯になる優良経済材である。 

真淵 智子・伊香保おかめ堂本舗取締役(群馬)

 私が地元旅館の若女将たちと立ち上げた「伊香保おかめ堂本舗」という会社は、まさにソフトを売ることで地元の活性化に努めています。例えば季刊のフリーペーパーを通して地元の芸者さんのお座敷体験を特集して、イベント化したり、文人墨客が多く訪れた歴史ある温泉地であることを利用して、各旅館や作家たちにまつわるエピソードを集めて紹介したり…といった取り組みです。これらは今まで地元生活者にとっては「当たり前のこと」として誰も扱わなかったことであるとともに、旅行雑誌では知りえないネタとして、観光客には珍しく映る地元独自の「文化」と言うことができます。私たちは、このフリーペーパーを製作するにあたって、「当たり前」と思っていたことでも、改めて自ら取材し、私たちの視点を通して加工し、記事を書いています。このことで、自分自身新たな魅力を発見し、郷土愛をさらに深めたり、新たな人材を発掘したり、商品開発に生かしたり、新サービスに結びつけたりすることに成功しています。「文化を飯のタネ」にするには、地元に眠る魅力を「見つけ」、「掘り起こし」、それらを「つなげ」、「伝える」。何か突拍子もないことをどこかとんでもない場所から引っ張ってくる必要はないと思います。私たちが活動を通じて学んだことは、「いま、そこにあるものを磨く」ということだと思います。 

熊倉 浩靖・群馬県立女子大准教授

今回のテーマが、芸術文化活動や文化産業、歴史・文化資産の活用が地域再生にどれほどの効果をもたらしているのかという問いだとすれば、目安はどこにあるのか。そこで労働政策研究・研修機構の68業種分類から映画・娯楽業、放送業、情報サービス業、専門サービス業、学術研究機関、政治・経済・文化団体を選んだところ、70年には145万人で全就業者の2.8%に過ぎなかったが、95年には440万人6.8%と2.5倍に増え2010年は677万人10.5%と推計されている。ここには教員や職人は入らないから日本全体では文化関係でメシを食っている人はかなりの数になる。ここまでなら答えはYESだが、文化関係者の営みが地域に還元され他の職種の人々を支える生きる力になっているかの検証が必要となる。検証の方法が掴めないのが現状かもしれないが、生涯学習論が自己実現希求型から地域力育成型へと転換し、公民館活動が再び注目されているなかに答えの方向があるように思えて仕方ない。 

西尾 真治・埼玉ローカルマニフェスト推進ネットワーク事務局次長

   高尚で取っ付きにくい「文化」ではなく、親しみやすい「アート」、「メシを食う」のではなく、「楽しんで続ける」、と捉え直すことで、地域の活性化につながるヒントがみえてくるのではないだろうか。

 アートは理屈抜きで面白く、誰をも巻き込む力がある。既成の枠を飛び越えて、新しい価値を生み出す力がある。それをまちづくりに生かす。たとえば「エイブルアート」。障害者の芸術活動であるが、福祉政策や文化政策の観点もさることながら、アートを通じて障害者と健常者の垣根が取り払われ、交流が促進される意義がある。アートを切り口にすることで、既存の政策の質を高めたり、分野横断的な政策を展望したりすることができる。

   持続性・発展性という点では、そこに関わる市民が楽しんで取り組むことが重要だ。それが周りに広がり、さらなる市民の参加を生むダイナミズムをつくる。たとえば「ゆるキャラ」や「ご当地キャラ」は、まさに遊び心の産物といえよう。それが結果として外からの注目を集めるとともに、地域の地元意識を高めることにもつながっている。行政が主役になれば停滞する。行政は、市民の遊び心の連鎖を生む工夫を凝らすことが重要となろう。 

沼尾 波子・日大教授

 中国少数民族居住区で地元の方が民族衣装を売り歩く姿を見ながら、文化を切り売りして貨幣収入を得なくてはならない状況に居た堪れなくなったことを思い出した。お金のために文化が利用され、結果として地域の生活文化が解体されていくとすれば残念なことである。

   文化は地域の風土や資源に根ざしつつ、技術とともに磨かれていくことで光るものだ。文化を磨くには、その地域で文化を育む人たちの存在とともに、技術を磨き、継承するしくみも必要となる。文化の価値を評価し、経済的に支える消費者(ときにはパトロン)の存在も案外重要だったりする。

   他方で、技能習得のための教育システムや、生活の安心を支える対人社会サービス供給環境を公的に整えることも必要だろう。文化が磨かれる環境が整い、そこに人々が生活できる社会が整うことが必要で、それを公的に支えうる行財政システムの整備が課題と考える。 

藤波 匠・日本総合研究所主任研究員

   地域おこしにおける、ほんの少数の成功事例と多くの失敗事例。その差はどこに

あるのかと問われると、応えに窮します。多くの場合ほとんど差はありません。

 私たちは時に成功事例に目を奪われ、さも成功の方程式があるように考えがちです。物理学者マークブキャナンは、『歴史は「べき乗則」で動く』の中で、都市の大きさを決めるのに特別な要因などなく、あるのは人口規模が半分になれば、都市の数は約4倍になるという法則だけだといっています。都市に大小を生じる要因を後から探しても、大都市が成長した必然性は見出せないとしています。

           一山あてようと成功事例を真似るより、行政支援を受けながらでも、文化の多様性を守り、育んでいく日々の取り組みが大切だと思います。それにより地域の文化や伝統が保全され、脚光を浴びる日まで伝承されるのです。大切なことは、見出すことではなく、多様な文化や伝統を守り続ける心だと思います。 

沢井 安勇・日本防炎協会理事長

 地方の伝統的な芸術文化や風格ある街並みさらには各地で展開されているユニークで質の高いアート・イベントなどは、いずれも産業化しうる創造的な資源でありコンテンツだと思いますが、まずもって、そうしたコンテンツを生み出すクリエーターの活動や歴史的景観の保全などに賛同しサポートするという地元の支持体制が必要でしょう。それから、地域の広告・マスメディア、観光産業などがそうしたコンテンツを外部に発信し、流通させる活動を展開することで、文化資源が文化産業化する可能性が高まると思います。特に、文化政策的なまちづくり活動と連携した戦略的な観光政策の展開が重要だと思います。地域の住民が地域の文化資源を愛し、その成果を享受した日常生活を営んでいる姿を広く情報発信することが、最も有効な観光宣伝になり、外部から人を呼び寄せるのではないでしょうか。地域の人々に愛されていない活動やまちづくりは観光資源化たりえないのでは。 

田谷 徹郎・千葉県資源循環推進課長

 地域間競争に勝ち抜くためには、「どうしたら飯が食えるか」ではなく、「文化を如何にしてヒト、モノ、カネに結び付けていくか」という発想が必須である。当事者である住民には魅力が見出せず、連綿と受け継がれているだけの文化の中には、外から見ると魅力満載のものが少なくない。それを如何に見出して、ブラッシュアップし、外部に発信していくかが勝負となってくる。そのためには、それぞれの地域で核となる人材を見出し、行政や観光産業を巻き込んだ取組が必要である。

 千葉県では、一地方の祭りを全国から注目されるものに発展させた「佐原の大祭」や、山里のお寺の欄間にある江戸期の「波の伊八」と呼ばれる名工の作品を紹介したところ、首都圏から観光客が殺到した行元寺(いすみ市)の例などがある。大量退職時代を迎え、地域や文化に関心を持つ方が増えていくことが期待される中で、地域文化の魅力に如何に早く気づき、発信していくか、競争であろう。 

白戸 洋・松本大教授(長野)

   文化はそこに住む人々が、地域の宝を磨き、単に個人の教養ではなく、地域全体を高めるものだ。「聴くのは一流、やるのは三流」松本市が市民芸術館建設で揉めた時、ある人がこう表現した。かつて文化は都会からやってくるもの、金を使うもので、人から与えられるものだった。サイトウ記念フェスやスズキメソッドで「楽都」とされる松本でも、市民は主役ではなく「聴衆」だった。しかし、市民自らが演奏者となり音楽を楽しみたいとの中学生の提案による「街角コンサート」が、若者と公民館を主体として毎年夏に開催され、今年で8回目となり、波及して始まった他の青空コンサートとともに、市街地に人が集まり定着した。一方で、それをただ煩いだけ、商売の邪魔だと考える人もいるが、それは傍観者の発想で、自らがそれを活かしてお金に結びつけるしたたかさが足りない。安曇野市では地域ブランドをそこに住む人々やその暮らしそのものとし、生活の文化や知恵に根差し、市民主役のブランド構築を進めている。高い志とともに、菜の花栽培や屋敷林保全による景観形成や特産の黒豆の商品化等で地域の魅力を発信し、したたかに観光など経済活動にもつなげている。文化は自ら創るもの、金を生み出すものである。 

東四柳 史明・金沢学院大教授(石川)

   私はこれまで多くの石川県内の自治体史(市町村史)の編さんに携わってきました。埋もれた史資料を掘り起こし、地域の歴史や文化を叙述する作業のなかで、それぞれの地域の特質や魅力に接する機会を得ました。これまでに全国各地で刊行されている自治体史の資料集や通史には、地域再生の手掛かりとなる情報が豊富に載せられています。しかし専門書的雰囲気の生硬な内容の書物が多いため、それが十分に活用されていないのが現状です。

 地域の再生をはかる上では、ふるさとの歴史を通して、地域に生きる人々が誇りと自信を取り戻すことが肝心です。そのためには楽しみながら貴重な情報源となる自治体史を読み解く創意と工夫が必要です。またそこから得られた歴史.文化情報をもとに、地域に根ざした新しいイベントを企画する一方で、伝統行事の復活や特産物の再発見などにも取り組むことが大切です。歴史を生かした地域の再生には、郷土史に関心の高い人材の輩出が急務です。 

窪田 裕行・福井県政策推進課課長補佐

   「文化でメシが食えるか」というテーマは「文化ではメシが食えない」ことの裏返しであろう。原因の一つは、文化行政を文部科学省の所管としてきた行政の仕組みではないか。

   文化庁との関係で、地方でも一義的には文化が教育委員会の所管となり、教育と文化が結び付けられてしまうことで、文化が聖域に追いやられている。日本は世界を相手に戦える「メシの種」を棚の上に上げてきたのだ。

   「まちづくり」のために地域の魅力を磨き、「カネ」に結び付けて「地域文化」にまで高めている姿を皆さんが紹介されている。しかし、これらの活動で教育委員会が主体的に応援してくれるものは、ほとんどないだろう。

   地方行政も「文化」をいつまでも教育委員会の仕事にはしていない。福井県でも今年「観光営業部」を新設して、博物館を教育委員会から移管した。文化財以外の文化行政を首長部局に移す地方自治体も増えている。

暮らしの糧がコンクリートからソフトに変わるかもしれない今、行政の文化戦略が求められる。新手の地域間競争の始まりである。 

渡辺 英彦・富士宮やきそば学会会長(静岡)

   文化で飯は食えるし、食わなければいけません、まさにそうゆう時代だということです。 私達が取り組んでいる、ご当地グルメでまちおこしの活動がその実例であると考えます。

   実際に、富士宮においては「富士宮やきそば」という地域に根ざした食文化を活用し、 行政予算は使わずとも今や400億とも500億とも言える経済効果を生み出しており、私は完全に本業がシフトした状態で、日々講演、視察対応、企業との商談に追われています。

   真淵さんが仰っているように、地元では当たり前と思われていたことの価値を再発見し、世に認知させていくことは、現在全国的に取り組まれている「地域ブランドづくり」という言葉に置き換えてよいと思いますが、今回のテーマとも重なることですが、お金に繋がらないものは地域ブランドとは言えないと考えた方が良いでしょう。金儲け主義で言っているわけでは決してありません、自己満足で終わらず必ず形にすること、目に見える効果を必ず出すことが重要です。

   そこで私が最も重視していることは、コミュニケーションの問題、情報発信の重要性といったことです。いくらいいものがあっても、一般消費者が認知していないものは無いのと同じです。お金を使わずとも、マスコミをフル活用し、絶えず話題づくりに心がけることで、認知度を高めることが可能です。多くの消費者に情報を伝えなければビジネスには繋がりません。 

   私達は現在「B級ご当地グルメでまちおこし団体協議会」通称「愛Bリーグ」という団体を組織し、毎年「B-1グランプリ」というイベントを主催しておりますが、小さな予算規模で開催地に毎年十万人単位の集客(今年は第4回で秋田県横手市、26万7千人)に成功しており、開催地の経済波及効果は計り知れません。

   自慢話のように聞こえたらもうしわけないのですが、私は自分の地元だけが良ければいいなどとは思っておりません、日本全国で地元文化を飯の種に出来るし、して欲しいと思っています。気持ちが伝われば幸いです。 

都竹 淳也・岐阜県商工政策課課長補佐

 人口減少時代において、地域を維持していくためには、観光で人を呼び、またモノを売り出し、外から所得を稼ぐことが不可欠だが、そこで鍵となるのが「地域独自の文化」だ。

 岐阜県ではこうした考えに基づいて、07年度から「飛騨美濃じまん運動」を始めた。「見つけ出そう、創り出そう、知ってもらおうふるさとのじまん」をキーフレーズに、隠れた地域の自然、食、伝統行事などの地域資源を掘り起こし、「岐阜の宝もの」「じまんの原石」として認定し、売り出している。

 例えば、下呂温泉周辺の「小坂の滝」や、地域料理の「鶏ちゃん」など、これを機に一気に知名度を上げたものも多い。

 それを「所得」につなげるために、農商工連携での土産等の開発支援や、楽天と県の間で包括連携協定を結び、全国・海外への直接販売を促進する取組なども進めている。

 独自の地域資源を追求し、磨き、売り出すことで、地域経済を支えられると信じている。 

松田 千春・滋賀県企画調整課副主幹

   かつて文化不毛の地といわれた滋賀県は、文化の幹線計画に基づき、図書館、文化ホール、博物館を次々に建設し、県民が文化に触れる機会は格段に増えた。しかし、これらの施設が地域を豊かにしたのかどうかは、その施設がまちの中でどのような役割を果たしているのか、地域の発信にどれだけ貢献しているのか、税金で維持し続けるためにも今一度確認する必要がある。

   琵琶湖の北、木之本町にサラダパンという名物がある。小さなパン屋さんの伝統の味が「滋賀ふるさと大使」西川貴教さんらにテレビで繰り返し紹介されたことで、ネット販売で6週間待ちという大人気である。特産品が評判になると、都市でも売られるようになることが多いが、そのことが地方の相対的な価値を下げ、都市の吸引力を高めてしまった。ここでしか見られないもの、味わえないものを守り、育て、発信することが、地域を豊かにし、生き残る力をつけることになると思う。 

東 朋治・神戸ながたTMO総括マネジャー(兵庫)

 10月4日、神戸・新長田地区に鉄人28号等身大(18m)が誕生した。周辺飲食店は常に満席。物販店の売上も伸びている。鉄人グッズのみならず、280円セール商品などもバカ売れ状態が続いている。誕生直後の特需だろうが、賑わいを保つために、小出しで良いので様々な事業展開を継続し、鉄人周辺だけでなく地域全体の回遊性を向上させ、来街者の購買につなげる必要がある。鉄人人気に便乗する商業者、冷めている商業者の間で、売上に差が出始めている。

 当地区は従来ケミカルシューズの街。衰退した地場産業に代わり、鉄人誕生をきっかけに、空店舗にアニメ制作スタジオが次年度誕生する。人材育成、大学卒業生の雇用確保、新産業育成などがコンセプト。クールジャパンの代名詞とされる日本アニメ(漫画)。文化(サブカル)で飯が食えるか、という究極の実験が東京でなく神戸の、それも中心地でない新長田でスタートした。自信は、ある。 

河内山 哲朗・前山口県柳井市長

 経済活性化がうまくいっていない地域でも魅力的な文化や地域資源を有しているところはたくさんあるが、そういう条件不利地域で所得を得て現役世代が定住していけるとなると本当に難しいというのが実情である。

 文化やソフトそのもの自体が所得を生み出す場合はともかくとして、そうでない場合は「食文化」「農家民泊」などと組み合わせて条件不利地域に人が訪れ、所得を生み出す工夫が肝要である。

 しかしながら、食文化のひとつである魅力ある地酒、手作りワイン、小規模な宿泊施設の運営などは規制が多くてスタートさえ切れないのである。成功事例としては、岩手県遠野市の「どぶろく特区」があるが、特区制度では不十分である。特区に認定されること自体が針の穴を象が通るほど難しいのである。

   地域のことは地域で決める「分権社会」を全国に広げていくことがより重要だと思う。 

小林 敬典・鳥取県政策企画総室長

 各地の地域資源の中には、新たに創り出されていくもの、古来伝承されてきたものもあれば、消滅しかけているものもある。

 ゲゲゲの鬼太郎で有名な境港市の水木しげ

るロードには、妖怪のブロンズ像をはじめ、妖怪神社が祭られ、JR境線を走る車両の内外には鬼太郎はもちろん、ねこ娘やねずみ男などが登場する。鳥取砂丘では、テーマを決めて、砂で固めた精巧な造形を砂像として展示する「砂の美術館」が好評を博している。いずれも地元を知る皆さんの豊かな発想の連鎖が新たな文化を生み出している事例だと思う。

 一方で、伝統文化のなかには後継者不足から消滅の危機に瀕しているものもある。現に私の地元でも、子どもの頃秋祭りで舞われていた獅子舞が無くなって久しい。実際に舞うことが出来なくても、舞い方を書き物にして残すか、部分的にでも復活が出来ないものかと模索を始めようと考えている。

   地域にある資源は、自分たちが一番良く知っていてわかっているんだと、自信と誇りを持って連帯感を共有することが、文化として活力を漲ぎらせる原点だと思う。 

高橋 泰子・緑と水の連絡会議理事長(島根)

石見銀山の世界遺産登録で一躍有名になった大田市であるが、地域の特徴は過疎・高齢化の進んだ日本のどの農村にでもある平凡な中山間地域である。住み慣れた風景の中で生活にうずもれていると、その土地固有の価値を発見するのが困難になる。私たちはJTBや他のNPOと協同し都市との人的・物的交流など、経済活動を伴う外からの力をコーディネイトし、地元の魅力を次世代をも含めて気付かせる活動を行っている。また、大田市の魅力再発見として、全国や世界の大学生を募集してインターンシップや国際ワークキャンプ石見銀山を主催し、民泊を含む農林漁業体験ツアーを実施した。また国立公園三瓶山野焼きボランティア・イバラ刈り「石見銀山 世界遺産を守る森づくり」竹刈ボランティアにも多くの都市市民を募り共同作業している。これらを通じて、地元住民・次世代に外部の評価を導入することで自分の住む地域の良さを再発見させまち作りに発展させつつある。 

大南 信也・NPO法人グリーンバレー理事長(徳島)

   「文化が経済を育む!」信じて疑いません。ただしグラスゴーやビルバオの例にもあるように、即効性に欠け、時間が掛かるのが難点ですね。二三十年間辛抱強く続けられるかどうかがポイント。文化によるまちづくりは、一見文化そのものを磨いているように映りますが、実際には人間を磨いていく行為だと思います。文化の活用によって、地域の魅力が増し、面白い人たちが集まってくる。この連鎖と循環を起こし、創造の場つくること。つまり、人が人を呼ぶ仕組みが築かれる中で、経済活動は自然発生するのではないでしょうか。現在、サンフランシスコは環境先進都市として注目を浴びています。そのけん引役になっているのは六十年代後半から七十年代前半に全米から集まり、今や社会の中枢を担っているヒッピーやその第二世代だそうです。多様で創造性に満ちた人たちが集結し、知恵を融合させることによって、「文化で、飯が食える」状態が現実になるのだと信じます。 

熊 紀三夫・高松丸亀町商店街振興組合専務理事(香川)

 それぞれの地方で独自の文化や伝統が存在しており、街づくりにおいても重要な要素であることは間違いない。しかし、首都圏と地方においての大きな違いは、総合的に判断できるプロデューサーの有無であるように感じる。地域に存在する様々な文化を明確に住民や観光客に伝えている所は少なく、多くの人が理解不足である。そのような状況で、支援の拡大やビジネスへの転換は望めない。

 そして、このプロデュース機能をどこがどのような形で持つかが重要であり、地方においてはこの仕組みを町の機能として組み込めるかどうかが重要である。様々な地域でアートフェスタが行われているが、住民に浸透している度合いの差によって効果に差が出ている様に思う。

 また、話は大きく変わるが、同じソフト事業であっても文化とイベントはまったく違うものであると認識すべきである。イベントだけでは街は活性化しない。いままで街が蓄積してきたモノをどう大切に育むかが重要である。 

河野 達郎・おおず街なか再生館専務(愛媛)

   今回は、皆様方のご意見、議論を興味津々で拝見いたしておりました。

   そもそも文化とは?辞書によると、人々が長年かかって積み上げてきた精神的所産により生まれた有形無形のものとありました。

   地域によって、この「文化」には違いがあります。例えば当大洲市で考えてみると、「超自然現象」と称される「肱川あらし」が、地域の人々にもたらす「影響」は長年かかって独特の「生活習慣」を生み出しています。「歴史」、「伝統」、「文化」はそこからできあがってきています。これらの要素は「地域資源」だと考えておりますが、ここに経済効果を見いだすためには、どうしても「素材化」する必要性があります。問題は、これを誰がするかです。

   窪田さんのご意見に対する公文さんの反論は、正にこの部分を突いている議論ではないかと感じました。自然と人々、生活習慣、積み上げた地域の歴史に基づく伝統と文化は、皆さん方で「共有」することが大前提です。「メシ」を食うためには、より多くの集客効果を創出する必要があります。

   しかし、内側からの「守り」には限界があります。大方の場合、外部の状況が見えず、弾力的活用が出来ません。より多くの人々に来ていただき、様々な刺激を受けることで外側から「育てていく」ことは、最終的に「守り受け継ぐ」ことになります。ここに、学芸員の新たな存在価値も見えてくるでしょう。

   大切なのは、何といっても「地域のプロデューサー」の存在です。「文化でメシを食う」ためには、この存在が不可欠であり、今、地域や地方自治がもっとも重要な課題のひとつとして取り組むべきことだと考えます。 

公文 豪・高知短大非常勤講師

 現在、高知県は来年の大河ドラマ「龍馬伝」に便乗し、坂本龍馬にかかわるイベントが目白押し。広告物も氾濫しています。幕末から明治にかけて人材を輩出した高知県では、固有の歴史も地域文化の得難い土壌となっています。ただ、現在の龍馬一辺倒のキャンペーンには、いささかウンザリ。主導する行政も視野を広げ、もっと重層的な取り組みはできないものかと思います。例えば、7月には、板垣退助生誕地がある高知市天神橋商店街が、商店街をPRし、買い物客を呼び込もうと板垣の描かれた百円札2700枚をお釣りに渡すキャンペーンを行い、全国からの注文を含め通常の数倍もの売り上げを記録しました。第3セクターが経営する「ごめん・なはり線」では、やなせたかし氏が描いた各駅のキャラクター・バッチを販売。これも魅力的です。地域の歴史や人材を活用すれば、まだまだビジネスに結びつく素材はあるはず。要は地域の宝をどれだけ掘り起こすかでしょうね。 

伊豆 哲也・TMO佐賀タウンマネジャー

 文化でメシを食うには、独自性の発揮が必要不可欠であり、そのためには地域固有の歴史文化の中に素材を探し当てるか、或いはまったく新たな物を創出するかしかない。  

   しかし、いずれの道を採るにせよ、継続発展を考えた時に最終的な勝負所は「品質=クオリティ」なのだと思う。これまでも街おこしを目的に様々な取組がなされてきているが、途中で消滅或いは今一歩発展しなかったものの多くが、自己満足型で余所者が見たときに余り魅力的に映らなかったのではないかと感じている。

   わが故郷佐賀が最も輝いた明治維新前後の人物・科学技術面等を再度地域資源として見直そうという動きがこの所急になって来ている。内容的には不足ないので、上手く発信できればと思っている。

   新たな文化の創出ということでは、TMO佐賀自身で「楠の杜手づくり市」というアートクラフト展を開催しているが、全国に向けた出展者の募集に佐賀市内の企画ギャラリーが関わってくれている。これにより品質の維持を確保している。 

長谷尾 雅通・大分県財政企画監

 文化だけでは飯は食えないというのが感想です。しかし、文化・スポーツを起点に活力を呼び起こすことはできると考えます。

   例えば、大分県豊後高田市の「昭和の町」は、平成13年に着手した町づくりであり、今では年間30万人が訪れます。キーワードは「古き良き思い出の町」といったところでしょうか。昭和30年代を意識した商店街に足を踏み入れると、懐かしさに思わず感激します。また、湯布院温泉は全国的に有名です。他方、スポーツでは、かなり苦戦していますが、サッカーJリーグのトリニータがあり、スポーツ文化が大分県に根付いてきました。

   ところで、何故このような成功を遂げられたか。そこには共通項として、リーダーの存在と、月並ではない逆転の発想に基づく明確なコンセプト、さらに地域や関係者の弛み無い努力があります。このため、行政の仕事の一つは、将来を見据えた「人づくり」にあると考えているところです。 


地域再生
NPO,研究者,行政担当者等の意見

地域再生列島ネットから

47TOPICSから
ニュース特集