47NEWS >  地域ニュース >  地域再生 >  列島ネットから
地域再生
NPO,研究者,行政担当者等の意見

地域再生列島ネットから

47TOPICSから
ニュース特集

地域再生列島ネットから

 地方が抱える問題を話し合うため、全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくった。街づくりなどに取り組むNPOの代表者や研究者、行政担当者ら多様な専門を持つ47人で構成する。毎月、テーマを決めてメールで意見交換を進め、インターネット上の「シンクタンク」を目指す。

「文化を地域ビジネスにつなげるには?」 資源を発見し情報発信を

 経済危機は地域経済に大きな傷を与えた。厳しい情勢の中、食や歴史など土地の「文化」を見直し、地域ビジネスに育てる動きが始まっている。ただ、成功への道は険しい。全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくる「地域再生列島ネット」が行った第5回意見交換から、その土地ならではの「資源」を発見し「情報発信」することの重要性が浮かび上がった。
 
 ▽外の目で気付き
 
 まず、論議は「資源」を、どう見つけるかが焦点となった。「地元に眠る魅力の掘り起こしを」。真淵智子(まぶち・ともこ)・伊香保おかめ堂本舗取締役(群馬)は指摘。旅館のおかみらと活性化に取り組む経験から地域の良さを探すことが重要とし、突拍子もないものを目玉とする必要はないと提起した。
 公文豪(くもん・ごう)・高知短大非常勤講師は、坂本竜馬のように「地域の歴史や人材を活用すればビジネスに結び付く素材はある」と指摘。ただ、こうした「資源」は住民には見慣れていて埋もれがちなため、外部の人や組織と協力し「気付かせる活動」(高橋泰子(たかはし・やすこ)・緑と水の連絡会議理事長=島根)が重要との注文がついた。
 一方、新たなアイデアの戦略も重要との声も出た。神戸市長田区では同市出身の漫画家、故横山光輝(よこやま・みつてる)氏の作品を核にまちづくりが進む。10月には鉄人28号の巨大像が完成、約1カ月で「30万人」(同市都市計画総局)を集めた。携わる東朋治(あずま・ともはる)・神戸ながたTMO総括マネジャーは、三国志ミュージアムの計画もあり「究極の実験」と意欲的だ。
 
▽リーダーが必要

 次のステップは「資源」のアピールだ。各地の食文化を「B級グルメ」としてビジネスに乗せている渡辺英彦(わたなべ・ひでひこ)・富士宮やきそば学会会長は、情報発信が重要とし「話題作りに心掛け認知度を高める」取り組みを促した。
 リーダーが不可欠との指摘も相次いだ。山崎美代造・前とちぎインベストメントパートナーズ社長は、宇都宮市のギョーザが地域ブランドに成長した要因はリーダーと住民らの熱意と指摘した。
 
▽行政も戦略を

 行政の対応も重要だ。日本博物館協会によれば、動物園なども含めた博物館は2007年度で4062館と、1998年から371館も増加した。行政が主導して整備に動いたケースも多いが、地域を豊かにしたのか「確認が必要」(松田千春(まつだ・ちはる)・滋賀県企画調整課副主幹)なのが現状だ。
 福井県は本年度、県立恐竜博物館を教育委員会から観光営業部に移管した。窪田裕行(くぼた・ひろゆき)・福井県政策推進課課長補佐は、入場料の上乗せ分を米国の化石購入費にあてたり巡回展を開くなど、旧態依然の文化行政の殻を破る試みだとし、地域間競争をにらんで行政にも文化戦略が必要と提起した。
 ただ、藤波匠(ふじなみ・たくみ)・日本総合研究所主任研究員は、地域おこしの成功例と失敗例に「ほとんど差はない」と指摘。「ひと山当てようと成功例をまねるより、文化の多様性を守る取り組みが大切」と話す。早急に成果を求めるのではなく、地域の「宝」をじっくり育てる構えが重要といえそうだ。

 ◎地宝人
 「地域再生列島ネット」に参加した多彩な人たちを「地・宝・人(ち・ほう・じん)」と名づけた。その活動と横顔を順次、紹介する。

 自治体史は地域づくりのヒントと訴える金沢学院大教授、東四柳史明さん

各地の自治体史を研究する金沢学院大教授の東四柳史明さん=金沢市

 専門は加賀・能登の中世史。30近くに及ぶ石川県の自治体史編さんにかかわり、研究室の書棚は完成品がずらり。「歴史を掘り起こせば、元気だった時代、埋もれた文化遺産が見えてくる」と語るが、地域づくりのヒントとして生かされない現状がもどかしいという。
 実家は同県穴水町に代々続く神社だ。「高校教師で生計を」と東京の大学へ進んだが、県から請われ文化財保護、加賀・能登の史料編さんに携わり、教壇に立ったのは2年だけ。学生時代、同県羽咋市史や東京都町田市史づくりを手伝った縁で、各地の自治体からも次々に要請がきた。
 1960年代後半から70年代は全国的に自治体史ブーム。ただ「立派でも市民に渡らなければ宝の持ち腐れ」と感じ、手に取りやすいようオールカラーの図説編を出したり、販売・広報に力を入れたり工夫を重ねた。
 神主として地元の集まりに顔を出せば暗い話ばかりだが、かつて地域が元気だった当時のエピソードを持ち出し「取り残されたと嘆く必要はない。環境重視の現代だから再び光が当たる」と説く。
 大学では「卒業したら古里へ帰れ」が口癖。卒業論文は出身地の歴史をテーマにさせる。希望ではない仕事でも、いずれ誇りが持てるというのが持論で「郷土史家が少なくなったが、地域を守るには物知りが必要だ」と訴える。61歳。

古里でコミュニティーFMを設立・運営する黒田周子さん

スタッフらと話す黒田周子さん(中央)=愛媛県今治市

  「思い込みと勢いはあったわね」。3人の子育てが一段落した後「普通の主婦」が一念発起、愛媛県今治市にコミュニティー放送「FMラヂオ バリバリ」の開局にこぎつけた原動力を問われ、冗談めかして笑う。
 市町村を放送エリアとするコミュニティーFM放送は1992年、制度化され、北海道函館市で第1号が開局。松山市でも計画が持ち上がったが頓挫。ではわが町にと思い立ったのが始まりだ。
 しかし、知人らと実行委員会をつくったものの、放送業界は素人。国の出先機関に何度も通って、手続きや書類の書き方を詰めた。資金集めをと「アポイントメントの取り方も分からない」まま、市内の企業を回ったが色よい返事はなかった。
 ただ「こんな良いものができるのに」と思う気持ちはなえなかった。地元有力企業の会長が、2年余り通い続けた熱意にほだされ、ようやく出資を了承。これをきっかけに他の企業にも参加が広がり、市の支援も得て2002年、開局した。
 外へ外へと広がってきた社会が「地域への意識を大事にしないともたなくなった」といい、コミュニティー放送には求心力があると話す。番組に参加するボランティアには300人余りが登録、商店街の空き店舗にあるスタジオには多くの人が訪れる。「住んでいる地域を愛すこと。それは最先端だと思う」と力を込めた。53歳。