第5部 新たなしるべ
鳥取 「芝生化効果」
「子どもたちの薬代が掛からなくなったんです。庭が芝生になって」
鳥取市の郊外にある松保保育園の清水幸江(しみず・さちえ)園長(49)は、ほほ笑みながら園庭で遊ぶ園児たちを見つめた。芝生化以来、転んで泣きだす園児の姿を見なくなったという。
サッカーをして遊んでいた西尾颯太(にしお・そうた)ちゃん(6)は「転んでも痛くないから、芝生だとサッカーが面白い」と、元気いっぱいで走っていった。
▽各地に広がる緑
芝生化を進めたのは、特定非営利活動法人(NPO法人)「グリーンスポーツ鳥取」だ。ニュージーランド出身のニール・スミスさん(55)が代表を務める。
2003年から校庭や空き地の芝生化に協力する活動を開始。成長の早い品種を選び、手間やコストをかけない「鳥取方式」と呼ばれる手法を開発、多くの自治体や団体が視察に訪れる。これまでに33都道府県で606カ所、計101ヘクタールが緑のじゅうたんに変わった。
きっかけはラグビーだった。スミスさんは証券会社を退社後、1998年に妻の実家がある鳥取市に移り住んだ。母国でラグビーの経験があり、早速、チームをつくってプレーしようとしたが、芝生のグラウンドがなかった。日本のグラウンドは土が標準だからだ。
「ニュージーランドでは生活の一部ともいえる芝生が、日本にはない。子どもは本来、体を動かしたがるもの。その本能を引き出すのが芝生だ」
スミスさんは鳥取市内の県有地2・1ヘクタールを借りて、仲間と芝のグラウンドの整備に取り組んだ。整地から芝の植え付け、その後の維持管理まで独力でやり遂げ、行政に頼らなくても住民たちで広場をつくることができることを実証した。
牧草地は芝生の広場に変わり、住民がフリーマーケットやスポーツ大会に利用できる地域の交流拠点が誕生した。こうした「芝生化効果」こそ、まちを変える「力」だ。
▽行政も動く
NPO法人のホームページに、スミスさんのこんな自己紹介がある。「日本中の校庭および空き地が芝生になる運動を起こしている頑固おやじ」。
理事の谷尾洋介(たにお・ようすけ)さん(52)は「校庭は土が当たり前という固定観念が変わってきた」と語る。「芝生の国で育ったニールさんだからこそ、日本人が気づかない疑問に自然と目を向けたのだろう」と指摘した。
緑のじゅうたんは、生涯スポーツの振興と地域の活性化という思いの象徴だ。行政も呼応し、鳥取市は市内の全45保育園で芝生化を目指し動き始めた。(新日本海新聞社、文と写真・山本圭介)
鳥取方式 芝生の利用目的や頻度に合わせ、施工法と維持管理を変えるのが特徴。例えば、苗を最初から敷き詰めずに、小鉢程度の単位で点々と植え、すき間は繁殖を待つ手法を導入。手間がかからず、維持管理も楽になる工夫をしている。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「環境とともに」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

