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第5部 新たなしるべ

試合終了後、子どもたちにサインする岡山湯郷ベルの選手。笑い声と応援が包む=岡山県美作
【02】

美作 「温泉街に女子サッカー」

 10月中旬、人口約3万2千人の岡山県美作市(みまさかし)で行われた女子っサッカー、なでしこリーグ戦。多くの日本代表を擁する日テレを相手に奮闘する岡山湯郷(ゆのごう)ベルの選手へ大声援が沸き起こった。「ひたむきに頑張る姿が好き。選手は家族みたいなもの」と、サポーターの鷺田幸雄(さぎた・ゆきお)さん(49)。試合後は、サイン会や写真撮影に大勢の子どもたちが押し寄せた。ホームゲームではおなじみの光景だ。
 
 ▽官民一体で
 
 美作市は湯郷温泉を抱える県屈指の温泉郷だ。しかし、宿泊客は瀬戸大橋が開通した1988年の42万人をピークに減少。旧美作町の後押しで、2001年発足した湯郷ベルには「温泉にスポーツという異質なものを加えて活性化を」=黒田和則(くろだ・かずのり)ゼネラルマネジャー(63)=との願いが込められていた。町が運営費を補助し、旅館や企業は選手を雇う。「官民一体」のチームが始まった。
 地域で働き暮らす。選手と住民の濃密なつながりが、チームを温泉街の新たなきずなに変えた。3けた台の観客が珍しくないリーグで、ホームゲームには千人を超える観客が集まる。運営には大勢のボランティアが参加しており、選手に食事を振る舞う津田祐助(つだ・ゆうすけ)さん(68)は「田舎で仕事をしながら苦労して頑張っている」と話し、温かなまなざしを向ける。
 
▽積極的に地域へ

 しかし、景気低迷の直撃は避けられなかった。年間1千万円以上を出資してきたメーンスポンサーが業績悪化で撤退。新たな大口出資先は見つからず、今季の運営費は5千万円に減った。ベンチ入りぎりぎりの選手16人で遠征に行き、トレーナーの派遣人数も減らすなど経費節減に取り組む。運営母体も、任意団体から特定非営利活動法人(NPO法人)に切り替え、新たなスポンサーや個人会員の開拓に汗を流す。
 地道な地域貢献にも活路を求める。きめ細かいサッカー教室やイベント参加を始め、小学校の授業で夢を持つ大切さを伝えるなど積極的に地域へ出向く。隣の津山市(つやまし)にある作陽(さくよう)高女子サッカー部との連携強化や、ベルキッズと名付けた小・中学生の選手育成に力を注ぐ。ベルキッズの一人、内田好美(うちだ・このみ)さん(14)は「全国を舞台にプレーするお姉さんたちは私たちの誇り。将来はベルに入りたい」と、目を輝かせる。
 ことしの新潟国体では県勢初優勝の原動力となり、明るい話題を提供した。「夢や希望を少しでも伝えていければ」。発足当初から指揮を執る本田美登里(ほんだ・みどり)監督(44)は話す。地元に深く根を張り、つながりを一層深めることで苦境の中に光を見いだそうとしている。(山陽新聞社、文・川中満仁、写真・田村文明)

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一口メモ
岡山湯郷ベル

岡山湯郷ベル 「ベル(Belle)」はフランス語で美人の意味。2001年創部。05年に日本女子サッカーリーグ1部に昇格、06年の全日本選手権で準優勝。08年の北京五輪ではゴールキーパー、福元美穂(ふくもと・みほ)、ミッドフィルダー、宮間(みやま)あや両選手が代表に選ばれた。



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