47NEWS >  地域ニュース >  地域再生 >  第5部 新たなしるべ  > 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」

地域再生 毎月更新

第5部 新たなしるべ

ボルトとナットを組み合わせた人形「ボルタ」。手作りの温かみが人気を集める=北海道室蘭市
【01】

室蘭 ボルト人形「ボルタ」

 硬い鉄から柔らかな文化を―。北海道室蘭市で長くまちを支えてきた鉄鋼業を見直し、新たな文化を発信する動きが始まった。斜陽化した基幹産業を市民の手で元気づけようという試みだ。
 その象徴が「ボルタ」だ。ボルトやナットをはんだ付けした身長5センチほどの人形。楽器を演奏したりスポーツしたり、武骨なはずの鉄の塊が愛らしい動きを見せる。これまでに100種類以上のボルタが生み出された。
 
▽ヒントは溶接

 「目指したのは鉄による新たな産業と雇用の創出、地域の活性化」。「てつのまちぷろじぇくと」の代表、川原隆幸(かわはら・たかゆき)さん(37)は振り返る。新日本製鉄室蘭製鉄所のおひざ元、室蘭市輪西町(わにしちょう)の若手経営者らでつくる輪西青年経営研究会を中心に「鉄冷え」の沈滞ムードを破ろうと立ち上がったのは2004年だった。
 鉄鋼業は大黒柱でありながら、素材産業のため市民との距離は意外に大きい。まずは親近感を高めてもらおうと、鉄をテーマに開いた市民祭りで人気を集めたのが溶接体験だった。小さな部品で作品づくりをすれば楽しめそうと、室蘭工業大学の学生らがデザインを手掛けボルタが誕生した。
 生産は市民が引き受けた。主婦や退職者ら11人が「職人」となり、3年前から1体ずつ手作りでスタート。ユーモラスな姿に口コミなどで人気がじわじわと拡大。インターネットによる全国販売もあり、1体600円のボルタは月3千個を超える生産が続いている。
 商店街の空き店舗を利用した工房では、07年から制作体験も始めた。ものづくりの面白さを楽しめると、数百人を超える観光客を集める。販売や体験事業から収益も生まれており、新たな雇用の場になりつつある。
 「商店街、町会などみんなで良い方向を目指すのが輪西の良いところ」と、輪西商店街振興組合理事長の土田昌司郎(つちだ・しょうじろう)さん(63)は、地域ぐるみの活動の手応えを話す。「まずやってみようという行動力が成果につながった」と、胸を張った。
 
▽プロも参加

 商店街の空き店舗を芸術家らに提供し、工房として活用してもらう取り組みも始まった。市民が手掛ける「鉄文化」を、プロの手でさらに広げようとの狙いだ。昨年秋から創作活動に取り組む彫刻家、登尾真帆(のぼりお・まほ)さん(24)は「鉄は硬いが柔らかく、冷たいが温かみがある。オールマイティな素材だ」と、魅力を話す。
 ことし10月、ボルタの巨大モニュメントが完成し、記念撮影スポットとして話題を集める。鉄がまちの中心として再び、熱く息づくことができるか。挑戦は続いている。(室蘭民報社、文と写真、野村英史)

twitterにこのエントリを登録
一口メモ
室蘭市の製造業

室蘭市の製造業 新日本製鉄や日本製鋼所など大手鉄鋼業を中心にさまざまな製造業が集積し、北海道内では有数の工業都市となっている。2008年の製造業の出荷額は6342億円で、苫小牧市に次ぎ道内2位。製造業の従事者7600人のうち、鉄鋼業は約半分の3600人を占める。



地域再生
NPO,研究者,行政担当者等の意見

地域再生列島ネットから

47TOPICSから
ニュース特集