第5部 新たなしるべ
室蘭 ボルト人形「ボルタ」
硬い鉄から柔らかな文化を―。北海道室蘭市で長くまちを支えてきた鉄鋼業を見直し、新たな文化を発信する動きが始まった。斜陽化した基幹産業を市民の手で元気づけようという試みだ。
その象徴が「ボルタ」だ。ボルトやナットをはんだ付けした身長5センチほどの人形。楽器を演奏したりスポーツしたり、武骨なはずの鉄の塊が愛らしい動きを見せる。これまでに100種類以上のボルタが生み出された。
▽ヒントは溶接
「目指したのは鉄による新たな産業と雇用の創出、地域の活性化」。「てつのまちぷろじぇくと」の代表、川原隆幸(かわはら・たかゆき)さん(37)は振り返る。新日本製鉄室蘭製鉄所のおひざ元、室蘭市輪西町(わにしちょう)の若手経営者らでつくる輪西青年経営研究会を中心に「鉄冷え」の沈滞ムードを破ろうと立ち上がったのは2004年だった。
鉄鋼業は大黒柱でありながら、素材産業のため市民との距離は意外に大きい。まずは親近感を高めてもらおうと、鉄をテーマに開いた市民祭りで人気を集めたのが溶接体験だった。小さな部品で作品づくりをすれば楽しめそうと、室蘭工業大学の学生らがデザインを手掛けボルタが誕生した。
生産は市民が引き受けた。主婦や退職者ら11人が「職人」となり、3年前から1体ずつ手作りでスタート。ユーモラスな姿に口コミなどで人気がじわじわと拡大。インターネットによる全国販売もあり、1体600円のボルタは月3千個を超える生産が続いている。
商店街の空き店舗を利用した工房では、07年から制作体験も始めた。ものづくりの面白さを楽しめると、数百人を超える観光客を集める。販売や体験事業から収益も生まれており、新たな雇用の場になりつつある。
「商店街、町会などみんなで良い方向を目指すのが輪西の良いところ」と、輪西商店街振興組合理事長の土田昌司郎(つちだ・しょうじろう)さん(63)は、地域ぐるみの活動の手応えを話す。「まずやってみようという行動力が成果につながった」と、胸を張った。
▽プロも参加
商店街の空き店舗を芸術家らに提供し、工房として活用してもらう取り組みも始まった。市民が手掛ける「鉄文化」を、プロの手でさらに広げようとの狙いだ。昨年秋から創作活動に取り組む彫刻家、登尾真帆(のぼりお・まほ)さん(24)は「鉄は硬いが柔らかく、冷たいが温かみがある。オールマイティな素材だ」と、魅力を話す。
ことし10月、ボルタの巨大モニュメントが完成し、記念撮影スポットとして話題を集める。鉄がまちの中心として再び、熱く息づくことができるか。挑戦は続いている。(室蘭民報社、文と写真、野村英史)
室蘭市の製造業 新日本製鉄や日本製鋼所など大手鉄鋼業を中心にさまざまな製造業が集積し、北海道内では有数の工業都市となっている。2008年の製造業の出荷額は6342億円で、苫小牧市に次ぎ道内2位。製造業の従事者7600人のうち、鉄鋼業は約半分の3600人を占める。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
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- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「環境とともに」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
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- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
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- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
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- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

