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第3部 「自力で開く」

「匠の蔵」シリーズを紹介する百田憲由さん。手前左が焼酎グラス、右がビアグラス=佐賀県有田町の有田焼卸団地
【03】

有田 「究極のラーメン金本」

 4年足らずで50万個を売り上げた有田焼の商品がある。佐賀県有田町の有田焼卸団地の商社21社が窯元とタイアップし「匠(たくみ)の蔵」と名付けたオリジナルシリーズだ。これまでに焼酎グラスやカレー皿など4アイテムを製品化、不況に苦しむ業界の起爆剤となっている。

 ▽協調と工夫

 同町は国内の磁器発祥地として、400年の歴史を誇る。高度経済成長期の1950年代には高級食器として人気を呼び、伝統の芸術品に加え、旅館向けの「割烹(かっぽう)食器」などが順調に伸び、輝きを放っていた。
 岐路は90年代のバブル経済崩壊だった。ドル箱の旅館から注文が激減。「個室での食事がバイキング形式に変わり、和食器の使用頻度が減少。シンプルな白磁は安価な海外品に取って代わられた」と、業界関係者は話す。最盛期に220億円を超えた生産額は、20年で3分の1に落ち込んだ。
 疲弊にあえぐ2004年、新たな試みが動く。14窯元などが同一形状のラーメン鉢開発に乗り出した。それぞれの窯元が技術を磨いてきた有田で「同じ形を共有するなんてあり得なかった」と、「匠の蔵」プロジェクトの初代リーダー、百田憲由(ももた・のりゆき)さん(41)は振り返る。
 それぞれが培ったノウハウを持ち寄って「究極」のラーメン鉢を追求。同時に各窯元は絵付けで特色を出し、約70種類の絵柄をそろえた。協調と独自の工夫の組み合わせは、多様化を求めた流れにも乗り13万個を超えるヒットになった。
  「この手法が突破口になるかもしれない」。百田さんら団地青年部は05年、7窯元でプロジェクトを立ち上げる。"全国区"に成長していた焼酎人気に着目し、まず32種類の絵付けを施した専用グラスを世に送り出した。
 狙いは当たった。機能性に加え、衣料量販店「ユニクロ」のように多彩な絵柄が選べるコンセプトが評判を呼んだ。2千円前後で「有田焼で焼酎を楽しめる」(百田さん)ぜいたく感も受け、売り上げは27万個を突破。酒器セットやビアグラス、カレー皿もヒットした。

 ▽成功で希望も

 ニーズが目まぐるしく変わる今、過去の成功体験だけでは通用しない。一方で付加価値が加われば、歴史と伝統に裏打ちされた有田焼は輝きを取り戻す。「そんな希望が、このプロジェクトの成功で生まれた」と百田さんらは話す。
 個々が競い合うだけでなく「知」と「技」を結集し発展を模索する。産地を挙げた再生への試みは広がっている。(佐賀新聞社、文と写真・大田浩司)

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一口メモ
有田焼

有田焼 約120の窯元があり、約300の商社が販売に携わる。熊本・天草産や地元の陶石を原料に白磁、色絵、染め付けなどを生産。ゴールデンウイークに開かれる「陶器市」には全国から毎年100万人を超す焼き物ファンが訪れる。



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