第2部 新たな力
まとめ 「リーダー育成」
人類初の月面着陸を果たした1969年、国民生活審議会の報告書が話題になった。「地域共同体が形骸(けいがい)化、空洞化しており、自主的なコミュニティー構築が必要」。都市化の副作用への警鐘から「コミュニティー」という言葉が広まった。しかし政府の事業は集会施設の建設や自治体向け財政支援に偏った。構築どころか、今では住民のきずなが強かった農山村でも集落が存続の危機だ。
▽行動力を生かす
今年3月、首相官邸。 「行政に頼らず集落人口を増やした」「担い手は住民や各種団体など多様」。政府の地域経営懇談会で自治体や特定非営利活動法人(NPO法人)関係者は行政から住民主導への転換を訴えた。
長野県白馬村や京都市、島根県大田市ではいずれも住民、企業が自発的に動いた。活動の軸も住民が参加しやすい景観や街並みで共通している。
内閣府が7月に公表した世論調査では、地域が元気になる活動に参加したいという人が73%に上った。意欲的な高齢世代の経験や若者の行動力を生かす工夫が必要だ。
住民組織に関する制度も見直す余地は大きい。まちづくりが目的のNPO法人は全国で約1万5千と5年前から倍増した。しかし煩雑な運営事務に不満が募る。合併自治体が旧町村単位に置いたりする地域自治区の場合、自治体全域の設置が必要だったり、法人格がないため活動が制約されるなどの難点がある。
▽「邪魔」しない
リーダー役の不足も課題だ。政府はようやく人材育成支援に本腰を入れ始めたが、取り組みは教育の場にも広がる。
「地元食材を生かし酒のつまみ開発を」。7月、都内で早大大学院公共経営研究科の学生らが山梨県北杜市の幹部を前に、市の活性化戦略を提案した。市内に大手洋酒工場が立地するのに目を付けたアイデアだった。
担当の片木淳(かたぎ・じゅん)教授(62)は「地域の全体像を描ける担い手が少ない」として、住民を引っ張れる人材を育てたいともくろむ。住民とひざ詰めの議論を重ねた院生、幸地玲奈(こうち・れいな)さん(22)は「将来は地域資源のブランド化の仕事をしたい」と話す。
一方住民活動は資金不足がネックで、行政の補助金は使い道のルールが細かいとの不満も。住民側に権限を託す地域内分権がもっとあっていい。
コミュニティー再生を検討する参院調査会で4月、出席議員から指摘が出た。「地域の宝を生かすのは住民。国がああこうと指導するのは卒業し邪魔してはならない」。迫る衆院選。政治家も本気度が問われる。(共同通信社、文・岡部智也、写真・武隈周防)
政府の人材育成支援 都市住民を送り込む総務省の「地域おこし協力隊」や農林水産省の「田舎で働き隊」、水源地域の活性化に取り組むリーダーを養成する国土交通省の研修事業など幅広いが、各省が縦割りで個別に実施しており、連携強化が課題。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「自力で開く」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

