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地域再生列島ネットから

 地方が抱える問題を話し合うため、全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくった。街づくりなどに取り組むNPOの代表者や研究者、行政担当者ら多様な専門を持つ47人で構成する。毎月、テーマを決めてメールで意見交換を進め、インターネット上の「シンクタンク」を目指す。


 【テーマ】自治体の首長になったら?

河内山哲朗・前山口県柳井市長

 2ヶ月前まで本物の市長(首長)でしたのであまり大胆な提言ではありませんが、地域の振興を図るためには地方公務員が奮起することが大事なので、遊軍の地域振興チームを作り、下記の事項に重点的に取り組むことにします。

   1、農商工連携による地域内特産品作りによる若者雇用10倍プロジェクト

  地域内には品質のよい1次産業の産品はたくさんありますが、加工や売り込みは農家や漁家には難しいのが実情です。公務員サポートチームの腕の見せ所です。柳井市では昨年特別チームが「学校給食協力会」をつくり域内流通を急速に拡大することに成功しました。

   2、規制の多い業種の改革によるコミュニティビジネスづくり

 地域には多くのニーズがありながら供給ができないサービス業がたくさんあります。たとえば地域になくなりつつある性格の足、公共交通がそれです。さまざまな法令の規制がコミュニティの力による起業を阻んでいます。柳井市でも数年にわたって移動支援サービスの実験をしていますがあと一歩の行政のサポートが必要です。 

 熊紀三夫・高松丸亀町商店街振興組合専務理事

   中心市街地の抱えている問題に対して、人口減・少子高齢化という時代の流れの中で、土地をコントロールする仕組み及び活動原資の確保というものが必須である。自治体を維持する観点からも、拡散型ではなく、集中型の都市開発が望まれる。現在の振興組合等の組織では、土地をコントロールすることも、自主財源の確保もままならない。特に、土地のコントロールという点においては、郊外化が進展し,中心市街地に空き家・遊休地が発生しても、郊外に比べすべてのコストが高く、用途転換を促すことが難しく、空き地のまま放置されることで、都市の価値を下げてしまうことになる。これは、単に中心市街地の衰退といった点だけではなく、自治体の税収の在り方にも大きな影響を与える。そういった点で、自治体の方策としては用途転換への集中援助及び法律・条例の柔軟な対応が必要である。これは住宅に限った事ではなく、高齢者施設、映画館、医療機関なども含まれる。 

藤波匠・日本総合研究所主任研究員(東京)

   エコノミストらしからぬ意見ですが、私は子供達に、「あなたは地域にとって不可欠な存在である」ということを刷り込む教育を行いたい。地域学習に始まり、部活、地域活動を通じ、郷土とのつながりを説き続けるのです。地域が持続的であるには、より多くの若い力が必要です。一旦は進学や就職で地域を離れた若者も、いつかは戻り地域のために活躍してもらうための教育を実践すべきです。

 現実には、地域を担うべき人材が大都市に流出しています。「仕事が無いから」という諦めの声も聞かれます。しかし、仕事は自然発生的には生まれませんし、短絡的な企業誘致も持続的な雇用を保証してはくれません。

 わたしは、若者が持つ新たなものを生み出す力に期待したい。知識と経験をつんだ若者が、家業を継いだり、事業を興したりすることが、内発的な地域発展をもたらすのだと信じています。そのためにも、郷土を思う心を育てる教育が何より重要だと思っています。 

阿部欣司・北海道電力地域担当部長

   北海道は財政力指数0.2未満の自治体が180市町村中61ある(07年度)。国の交付税に極度に依存する自治体の行政力は借金の返済も重荷となり、縮小している。ここでの地域振興は地元力が鍵だと思う。地元力とは地域の各主体が思いを自ら実行し、重なり合う思いの部分は各主体が繋がりを持って実行する力である。北海道の東にある人口7千人の浜中町には霧多布湿原の民有地取得とこれのワイズユースを目的とする認定NPO法人霧多布湿原トラストがある。トラストの修学旅行生受入活動はエコツーリズムが当地に育つきっかけとなった。町、町の基幹産業の酪農業界とトラストの地元力による未利用農地を森に戻す等の自然保護活動が浜中産品のブランド価値を高めた。今年の2月、トラストが湿原50万坪取得のため12百万円の寄付を募ったところ、地元を始め、全国から3ヶ月で17百万円が集まった。この実績は浜中町の地元力を全国の市民が評価・応援したことの証だと思う。 

 松田千春・滋賀県企画調整課副主幹

 地域社会の振興をどうするかを考えるのは正に自治体の役割の一つだと考えるが、先の見えない財政状況と次々に起こる課題への対策で日々追われているような現状である。

 以前に計画の目標として「家族全員で地元の食材で作った夕食が食べられる」「家で臨終を迎えられる」と考えたことがある。地域で食料が調達でき、地元で安定した仕事があるというかつての当たり前の生活を取り戻すことが必要なのではないか。熱心に企業を誘致しても、いざとなったらあっさりと撤退してしまう。滋賀県は内陸工業県で第2次産業の割合が突出しているが、もう一度第1次産業へ軸足を移す必要があるように思う。

 シーボルトが滋賀県産のトキの剥製を持ち帰ったエピソードをきっかけに有志で復活を画策している。トキもかつてはありふれた鳥だったという。それが絶滅したのはなぜなのか。当たり前を取り戻すことが人間らしい生活への道ではないかと考えている。 

沢井安勇・日本防炎協会理事長(東京)

 近未来の分権・市民社会を見据えた国・地方のガバナンス改革という視点から、次のような市民・近隣コミュニティの力を引き出すエンパワメント(自立支援)プログラムを推進すべきと考えます。

   ◎自治体から近隣コミュニティ・市民公益組織への権限委譲(国から地方への分権と併せた、いわゆる二重の分権)および官民協働促進のための行政サービス棚卸し・競争入札等の実施(いわば協働化テスト)

   ◎市民主体の近隣計画の作成およびマッチング・ファンド等地域協働による計画実現体制の整備(米国シアトルの近隣政策がモデル)

   ◎市民・企業市民主体のソーシャル・ベンチャー、ソーシャル・エコノミーの活動奨励・支援(市民社会を基盤とする新たなビジネスモデルの育成)

   ◎市民相互間の多様なネットワーク・絆づくり、社会参加のための諸施策の推進(いわゆるソーシャル・キャピタル政策) 

鈴木泰弘・小名浜まちづくり市民会議副会長(福島)

 地域再生のポイントはズバリ、地域循環型の経済の再構築ではないでしょうか。

   全国的各地で地域の特色を活かしたまちづくりが進められておりますが、いわき市小名浜では、水族館誘致や商業施設建設などの港湾再開発を行い、また市民団体である小名浜まちづくり市民会議による港湾管理とイベント誘致を行い、250万人が訪れる交流スポットへと成長しています。

   小名浜は港を生業としてきたまちでしたが、時代と共に漁業が衰退。以後、地域のまちづくりから賑わい空間の創造を行い、新たな起業と地域のネットワークづくりを行った成果ともいえるでしょう。

   小名浜では、港町である特色を活かし、漁業に変わる時代に即した新たな生業を創り出してきましたが、どの地域でも、まちづくりから地域の産業創造へつなげて行くことで地域循環型の経済システムの構築へつながると考えています。 

 山崎美代造・とちぎインベストメントパートナーズ前社長(栃木)

 何より未来を担う人づくり、なかんずく、子育て環境整備である。人がいない地域では、発展可能性がない。これからの地域の問題点は、高度成長時代等に造った公共施設は勿論、人がいなくなった荒廃する農山村をどう維持していくかだ。地方の市部以外の地域の高齢化・過疎化は急速だ。税金を納める人がいなくなる。地方財政が維持できなくなり、地域が崩壊する。その解決策は、若い人が集まる条件整備の他ない。その一つは明日を担う人づくりのための保育、教育と住環境の整備。2つは、地域で働く場作りだ。そのためには地方の主産業である農林業の企業化と中小企業の活性化だ。具体的には農林業は経営と資本・所有(農地)の分離による経営能力のある者が農業経営をやる仕組みづくり。中小企業育成はオンリーワン技術企業の育成と地域の立地条件にあった企業起しと誘致である。こうすれば就業機会ができ、人が定着して、過疎化防止と地域的活性化につながる。

吉井仁美・八戸市水産科学館館長(青森)

   地域振興の主役はそこに暮らす住民であり、その原動力は住民の意識であると考えます。行政が出来る事、民間が出来る事、その重なりが地域力になるのではないかと考えます。しかし、地域の方々が本当に困って「何とかしたい」と強く思わなければ、行政がどの様な施策を打ち出しても結果を出せるものではないと考えます。全ての事柄は人間あっての出来事です。地域に誇りを持ち、問題解決へ根気強く取組み、皆と仲良く生活できる大人としての自覚を持った人々が地域社会の振興には不可欠と思います。そのため何よりもしっかりとした意識を持った人を育て続けるが大事になります。そこで、長期的な計画として地域社会を意識した学校教育の充実を図ります。就業体験を通し働くことの厳しさ、楽しさを実感し、伝統文化に触れ郷土への愛着を感じる事の出来るカリキュラムを作成し、地域社会の生活に密着した子供自身の人間力の向上に努めたいと考えております。 

 舩木上次・萌木の村株式会社社長(山梨)

   田舎に生まれ育ち、ふと振り返ると、最近なんと住みにくい社会になったのかと嘆きたくなる。次から次へ規制を作り、地方の人達から自由を奪い、考える力をドンドン劣化させ、心の力・目の力を失った人が増えて来ている。毎日、新聞やテレビで世の中を憂いていますが、一番いけないのは、リーダーとなるべき人達が志を失ったことではないでしょうか?!社会の基本となるべき人達が壊れていることが一番の問題でしょう。“手段”が“目的”になっていることを自覚しなければいけないと思います。

 規制がとにかく多すぎます。なぜ田舎のおいしい地下水に塩素を混ぜないと飲んではいけないのですか?!なぜ牧場の絞り立ての生の牛乳を買って飲んではいけないのですか?!なぜ大工さんの匠の技で和風の家が造れないのですか?!人はもっと人生を大切に生き、命あるあいだは少しでも構わないので人の役に立つ行いをして、楽しい人生を送りたい

ものです。 

渡辺英彦・富士宮やきそば学会会長(静岡)

 村上春樹の新作「1Q84」が発売初日に68万部売れるという社会現象が起きました。

モノが売れずに悩んでいる地方の事業者等にどのように映ったでしょうか?

 今回の作品に関しては書店関係者にもその内容が知らされてなかったそうです。買って読んでみなければ面白いかどうかもわからないのに、「あの村上春樹の満を持した新作を買うのは国民の義務である!」とでも言わんばかりのブランドイメージが消費者の購買意欲を突き動かした結果だと言えます。

 情報化社会における究極のマーケティング戦略の手法がここにはあると思いますが、地域再生に於いても活用が可能であると私は考えています。「一度はあの富士宮やきそばを食べなければ!」と皆が感じ、食べてみたらやはり確かな地域力に支えられた美味さがあり、リピーターを生み、波及効果による循環型の地域活性、地域再生が図られる。私の理想とする構図はそんなところにあります。 

吉成信夫・県立児童館いわて子どもの森館長(岩手)

   行政経営、顧客サービスといった内側からの意識改革が役場で行われつつありますが、その効果を待つ余裕が地域にはありません。今こそ創意工夫に満ちた事業開発が必要です。今、行政に不足しているのは、地域の人々のフツーの暮らしへの共感に軸足を置きつつ、問題を発見し解決の方向性を提示する能力に優れた、リスクを恐れない事業プロデューサー型の人材登用ではないでしょうか。私が強調したいのは、実際の現場指揮官である課長クラスを5人10人と複数役場に入れること。つまり外部からの人材登用を大胆に図ることです。一人では組織内の同質化圧力に負けてしまいます。特任でも期間限定でもいいから一定数混ぜること。予定調和を前提にしない自由で真摯な論議をまき起こすこと、です。都会であてのない競争を続けることから降りて、家族で移住して新たなキャリアを開拓したいコンサルタントや企業人、研究者を列島中の県や市町村職員に引きずり込むのです。 

真渕智子・伊香保おかめ堂本舗取締役(群馬)

   地域社会の振興に重要なのは、何よりもまず「教育」と考えます。ここで言う「教育」とは、一、人としてのモラルや倫理観を身につけること。二、郷土愛を育むこと。三、生きるための知識と技術を習得すること。をさします。戦後、高度成長期を経て、私達は長いこと「いい大学を出て、大企業に就職し、高い給料を得て、大都市の一戸建てに住む」というようなひとつの価値観に支配され続けてきたように思います。その価値観こそが多くの子ども達を大都市に送り込み、そこから生まれたヒエラルヒーからこぼれたものは、駄目なもの、不適格なものとして扱ってきました。「教育」は必ずしも地域振興に即効性は無いのかもしれない。けれど、10年後20年後の地域振興にとっての大きなマグマになると確信します。「歌の町」という童謡をご存知ですか。よい子が住んでるよい町は、皆、自身の町や仕事に誇りを抱き、隣人や自然を愛し、楽しく暮らしているのです。 

 東朋治・神戸ながたTMO総括マネジャー

 「24時間営業」「年中無休」を原則として規制する。立地規制より効果的でないか。

 地方の中心市街地が元気だった頃、大型店と中小店は共存していた。大型店の定休日は力を入れてセールし、大型店に依存する商店街は定休日を合わせていた。地域住民は買い溜めするため、売上そのものはそれほど変わらない上に、大型店でも休業することで人件費など経費が削減される。営業日・時間にメリハリをつけることで、賑わいも集中する。

 企業の雇用情勢が悪化する中、地域社会の経済を担っている汚い・きつい・給料が安い・危険・帰れない「5K」職場では、逆に求人に苦しんでいる。せめて「帰れない」ぐらいは改善されるだろう。お店が休むことで従業員にもゆとりが生まれ、「お金を使うヒマがない」という贅沢な悩みも解消される。

 元旦営業が当たり前の昨今。せめて正月3が日は家族団欒を楽しみ、4日にお客もお店も初売りにパワーを爆発させればよいのだ。 

大南信也・グリーンバレー理事長(徳島)

   過疎の故郷をどうにかしたい。そんな思いで30年近く自分なりの挑戦を続けてきました。最初は町にあるもの(自然など)を生かそうと。でも展望は開けませんでした。町に変化を呼び起こしたのは、国際芸術家村を作ろうと1999年に始めた現代アートのプログラム。年を追うごとに注目を集め、「神山で何かをしたい」と創造を担う人たちの集結が始まりました。こうして集まった「面白い人たち」が新たなコンテンツとなって、また新たな「面白い人たち」を呼び寄せる。そんな連鎖や循環が現実のものとなってきました。地域振興には「ヒト」「もの」「カネ」すべてが必要です。しかし後の二者は不可欠とまでは言えないと思います。あらゆる可能性に挑戦する「ヒト」の集積こそが、永続的な変化を地方に生み出し、地域振興を可能にする絶対条件だ、と。「ヒト」をコンテンツとする町。答えを焦らず磨くことで、きっと未来の方が町に近づいて来てくれると信じています。 

伊豆哲也・TMO佐賀タウンマネジャー

 少し観念的な言い方になるが、地域振興でもっとも重要なポイントは関係者間のビジョンの共有だと思う。これまでT   M  O マネージャーとして、市民・行政・商業者間の橋渡しのような仕事をしてきたが、それぞれに思いがあって、合意形成は容易ではなく街づくりが遅々として進まない。ビジョンを描くのはリーダーたる首長の仕事なのかも知れないが、理想的にはボトムアップで上がってきたものが練磨されてビジョンとなるべきだ。この3月に英国のパートナーシップを学ぶ為に、シェフィールド市を訪れたが、関係団体の代表者が市の基本計画を定める議論を行い、そこで決めた方針をそれぞれの団体に持ち帰り、更にそこから関係者に流す(デリバリー)という形ができていた。行政といえども団体(ユニット)のひとつに過ぎない。こうした仕組みだと、例えば、「子どもの健全育成」が重点方針に定められると、目標に向け夫々が役割分担し、協働が効率的に進められる。 

窪田裕行・福井県政策推進課課長補佐

   日本の3大都市圏には6200万人が住み、人口の集中は明治以降に急激に進んだ。

   急激な膨張により、都市は単独ではその機能を維持できず、地方に人材、食料、水、電力など様々な基礎的資源を依存している。

   福井県は学力テスト、体力テストともに全国1位、出生率も全国で唯一4年連続上昇させており、保育所の待機児童もないなど、相当の投資をして人材を育成してきている。

   一方、県外へ進学した子供の6割は都市へ流出し、世界に例を見ない経済成長を支えてきた。これが日本型の成長システムであろう。

   しかし、地方も自らの機能を維持し、地域振興につなげるために人材を必要としている。この点において、都市と地方の問題は未解決のまま100年を経過しようとしている。

   ふるさと納税はこの問題に一石を投じようとしたものであるが、地域と都市の繁栄を支える人材を育てていくためにも、都市と地方が支えあう循環システムが国策として求められる。 

 田村亨・室蘭工大教授(北海道)

   私が考える方策は、あるレベルの信頼関係が築かれた地域コミュニティづくりである。犯罪などが起きない社会を低コストでつくる方法として町内会が形成されたように、コミュニティが安定していれば、数十年後の安定した展望を持つことができ、投資計画なり消費計画なりを立てられる。問題はコミュニティのあり方を市民が議論して決められると考えるか否かである。議論の風向きによっては昨日までと百八十度ちがうようなコミュニティのあり方が打ち出されるようでは、極めて不安定な状況になる。このコミュニティ形成において官は決定的な役割を果たす。個別主体のあいだを関係づけ、それらの協議の媒介者をやる、皆に対して将来へ向けたさまざまなプランの代替案を提示し、それを推し進めるときの媒介者になることは官以外にはできないのだ、と考えて初めて官のなすべきことが分かる。今、官はこれまでと異なる「信頼創造」に仕事の原点を見出すときであろう。 

長谷尾雅通・大分県財政企画監

   一つだけなら産業振興策を講じたい。地方の疲弊は、農林水産業の衰退とそれに伴う人口減少に尽きるのではないか。県予算に占める一次産業関連の予算は、1割を超える程度だが、施策のハードからソフトへの流れの中で、年々予算額は減少している。

   このような状況で、一次産業の抜本的てこ入れ、それは食料自給率向上と企業的経営の普及を視点に進めるべき。農業の企業誘致も重要である。そのための投資は惜しんではならない。今、農山漁村では、後継者不足と高齢化に苦しみ、藁をもつかむ気持ちで頑張っている人々がいる。行政は、その動きを的確に捕捉し、支援していくことが必要である。

   併せて、商工業の振興、すなわち企業誘致や地場企業の育成により、地方県のバランスある発展をめざすこと。

   これらの施策を同時並行で進めつつ、もうかる農林水産業の実現と活力ある商工業の振興を図りたい。 

白戸洋・松本大教授(長野)

   従来の学校教育は、画一的な価値観を学校という孤立した空間の中で刷り込んできた。その結果、すでに都会に出る前に、地域から子ども・若者はいなくなり、「児童・生徒」「うちの子」として学校と家庭に囲い込まれた。そして全国一律の価値観で育った若者は当然の帰結として都会に出ていく。

 「まちをつくるというのは、人の心を変えることだね」と松本のまちづくりに関わった学生は言う。 

   将来地域を担う若者を育てるためには、学校で地域の素敵な大人と出会い、地域を担う「心」を学ぶ必要がある。学生たちは地域の中で「こんな人になりたい」と感じた経験を殆ど持たない。一人より十人、十人より百人と出会うことができる教育を具体化したい。

   さらに高等教育段階で、地域から流出する農家、商店、旅館、中小企業の二男や三男、兼業農家の子弟を地域の担い手に育てる実践的な専門教育を大学等と連携して取組みたい。 

公文豪・高知短大非常勤講師(高知)

   地方の衰退は、廃藩置県、中央集権国家体制確立以来の問題で、特に近年の市場主義が地方に与えたダメージは最悪です。弥縫策として、古くは企業誘致、リゾート開発など様々な「活性化」策が講じられてきましたが、殆ど破綻してしまいました。国の政策に追随するしかない現在の統治システムを改めることは焦眉の課題です。

   しかし、住民の意識改革が伴わない地方分権は、単なる権力の再配分になりかねません。

これからは、大人・子供を問わず、自治の担い手として主体性をもった住民、真の意味での「住民力」を作り出す教育が必要だと思います。私は夜間大学で非常勤講師をしていますが、学生の多くは学び直そうという意欲をもった中高年です。大学などと提携して「市民大学」を常設するなど、学習運動を地域振興の土台にすえないと、これまでの失敗を繰り返すだけではないでしょうか。モノもカネも、作り出すのはヒトですから、長期的視野にたった人づくりが大切と考えます。 

小山良太・福島大准教授

   皆様のご意見に共通しておりますが、開発対象としての「地域」から持続可能な「地域づくり」へ転換が必要だと思います。

 企業誘致型の開発の失敗は、端的に産業の論理と地域の論理の矛盾である。これまでの全国総合開発計画などは、トップダウン式の地域の「開発」であり、地域は開発の「対象」であった。今求められているのは、ボトムアップ型の地域振興であり、それには、①住民自治(ここに地域教育が含まれると思います)、②内発的発展(地域資源の再発見)、③地域内再投資力(地域内経済循環をつくる1次産業を基盤とした6次産業化)の3点である。

 政策としては、具体的には①移入代替(地域内自給率の向上):これは地元販売している域外産の商品・土産品などを域内産に転換していくこと。

 ②移出代替(域内加工・移出率の向上):加工工程を内部化し、付加価値生産をしていくこと。6次産業化。福島県では、そばを生産しそれを他地域に出荷、加工製造されたものを、自地域で販売するという形が散見されます。原料を生産するだけではなく、同じく商品化するのであれば自前で行おうというものです。

 ③移出財再移入の防止(地産地消):自分のところで作っている味噌・醤油を他地域に販売し、使用分は別途他地域から購入している状況を改めようというものです。

 ④地場産業の再検討(コア産業の発見):上記のような取り組みが可能な分野は何か、地域内で再発見しようというもので、多くの農村部ではやはり第1次産業ということになるでしょう。原料生産では付加価値を域内に保持できない。域内における加工・製造工程(商品化)の必要性。内発的な発想の必要性が重要だと考えます。 

 小林敬典・鳥取県政策企画総室長

   この10年日本の姿は、構造改革の名の下に規制緩和が進められ、結果として地域間格差が拡大するとともに、地方から首都圏への人口の再集中をもたらした。首都圏と中京圏を除く地域では社会減に拍車がかかっている。かつてであれば地方への企業誘致といった政策が最優先されたかも知れないが、それも重要な政策であることに今でも違いはない。それらに加えて農業を中心とした第一次産業の復権が喫緊の課題。農業の振興こそが第二の企業誘致と位置づけてはどうか。食糧自給率の推移を見ると、昭和30年代の高度成長期7~8割だったものが今では4割前後に低迷している。(欧州先進国は7~8割をキープ)効率化追求のあまり足腰の強い農業が衰退してしまった結果ではなかろうか。多少非効率であっても昭和30年代の農業に回帰してみてもよいのでは。安全で安心な食糧が供給でき、儲かる産業として脱皮した農業へ支援する仕組みづくりが必要と感じる。 

平竹耕三・京都市文化芸術都市推進室長

 私はまちの作り直しを提案したい。

   とりわけ戦後の日本においては、まちは、既存の宅地や業務用地を再整備するよりは、周辺へと向かってスプロールしていった。これは必ずしも都市に限られたことではなく、町村においても、同様に拡散した。

   しかし、首都圏への人口一極集中が進み、人口が減少局面に入いると、地方都市を中心に、歯抜け状に空き家や空き店舗が発生し、車がなければ、単に通院や買物といった日常生活を営むことさえ困難で、暮らしにくいまちになってしまった。

そこで、私としては、これを解消し、子どもからお年寄りまでが安心して暮らせる地域社会を取り戻すことを提案したい。すなわち、まちの作り直しである。そのためには、地域社会の人間力を高め、協働的活動を盛んにすることと、土地利用をまったく個人に委ねる現在の制度から、地域社会が適正に利用をコントロールできる制度の構築が必要となる。 

高橋泰子・緑と水の連絡会議理事長(島根)

 地域内で物質循環できる農林業の振興をやりたい。地域内の資源をつぶさに利用し、生活を維持、そこに豊かな文化が存在できる仕掛け作り。その文化を伝承するに必要な人・金物が集まり、コミュニティが健全に発達するような農林業振興。そこには教育・福祉が言わずもがな備わる筈。そんな「まち」に仕切り直すためには先ず誰にでも農林地を取得できるチャンスが得られるようにしたい。土地が手に入れば次は生産技術を身につける教育の確立だ。農大に入学してもいいが、地域に直接入って教えを請えるシステムが必須だ。これは地域との付き合い方も一緒に学べて一挙両得である。いずれも5年間は生活保障付き。地域に入るほうは高齢者の安心見守りも兼ねるので倍の保障とする。新規就農者を迎え入れた地域にも特典があったほうがいい。また、バイオマスの徹底利用を考えていこう。エネルギーの地産地消はもちろんチップ・ペレット生産等で若者の就労の場作りも必要。 

都竹淳也・岐阜県商工政策課課長補佐

 地方のみならず、我が国全体の課題は人口の減少である。少なくとも向こう半世紀は続くと見込まれるこの問題の中で特に注目すべきは、所得を稼ぎ、消費し、地域を支える現役世代の人口が減少することである。それは、そのまま、地域の担い手が減り、消費が減少し、地域の経済が縮小することを意味する。

   人口減少時代において、地域を振興する最も効果的な対策の一つは、交流人口を増やし、地域外から消費を呼び込むこと、すなわち観光交流の拡大に取り組むことである。

   そのためには、人を魅了する地域資源を大いに活用すること、地域の食材や伝統を活かした食事や土産を準備すること、長時間滞在につながる仕掛けをつくることが必要である。

   これらはまちづくりそのものといっていい。一発逆転型のアトラクション開発に頼るのではなく、地域の魅力を見つけ出し、創り出し、磨き上げ、人に知らしめていくという地道な取り組みこそが、今求められていると思う。 

熊倉浩靖・群馬県立女子大准教授

 前世紀の末に「グローカル」という言葉に触れた時、日本人らしい造語だなと思ったが、暫くして、それがUNESO提唱の言葉であると知った時の驚きと感動が今も続いている。

 思い返してみれば、世界遺産の考え方はまさにそのようなものだ。地域固有であるとともに、それゆえにこそ人類的普遍性を持ちうる営み、その歩みこそ世界遺産にふさわしい。

 そこから、地域振興を考え、あるいは進める時、その思いや活動はグローカル(glocal)かがいつも気になる。地域にあって人々が暮らしあえることが地域振興の基本だが、それは、60億を超える人々と暮らしあえることでなければならないと思うからだ。持続的発展可能な社会を、内発的な発展を進め合う地域間の交流でどう形作っていくか。内部にあっても、人類普遍の価値を求め生み出すような組織、仕組みになっているか。その絶えざる検証が必要なように思う。そのためには、自らの位置を客観的に見ることが不可欠と思う。 

沼尾波子・日本大教授(東京)

   米国都市経済学者フロリダ曰く、都市の発展には才能、技術、寛容性(3つのT)の集積が必要、とのこと。実際に、都市であれ農村であれ、風土・自然と、そこで生まれた伝統(技能)や文化を大切に育みつつも、外部の多様な空気を受け入れる寛容さは、地域の暮らしをより豊かなものにしていくうえで、大切である。

 だが、土地への愛着や、地域の文化・風習を守り伝える思いは、日々の暮らしのなかで次世代に伝わりにくくなっていることも確か。家族の変容や、生活空間と生産空間の分断などを背景に、地域に軸足を置いた生活を意識できなくなっているのではないか。コミュニティや学校がこうした機能を担う必要が出ていると感じる。

 各地の事例をみていると、生産者と生活者が一体となって地域資源を守り、産業と暮らしを豊かにしようという取組みや、年齢・性別・国籍などなど多様・多彩な人たちが参加する試みに取り組んでいる地域は元気だと感じる。 

東四柳史明・金沢学院大教授(石川)

   私は、大学で歴史を教えていますが、常々ゼミの学生たちに、卒業したら給料は少し安くても地元で就職し、故郷で落ち着いて暮らすことを強く勧めており、今春もほとんどのゼミ生が、出身地に帰って行きました。また卒業論文のテーマを選ぶ際も、できるだけ出身地域の歴史や民俗を研究するよう指導してきました。

   それは地域社会の振興は、故郷で生きることに誇りをもつ若者たちが、多く輩出することに尽きると考えているからです。

 また私の住む能登半島は、過疎地で悩んでいますが、近年空港ができ、東京が近くなりました。

   一方石川県では、金沢市周辺に一点集中の傾向が強まっています。そこでお父さんたちは、都会で仕事をしていても、その家族の生活拠点を地方に移し、子供たちを、祖父母の住む地方の学校で学ばせることができないかと考えています。

   国や地方自治体のそれに向けての方策や生活環境整備への工夫を期待します。地方では若年層の定住の増加が急務です。 

 木村陽子・地方財政審議会委員(東京)

 「過疎化、人口減少に悩む町の町長と仮定して、地域社会の振興のために何をするのかひとつだけ選べ」というのが設問である。

 「穏やかで端正な日常がある地域社会。外部の人もその暮らしぶりに魅力を感じる地域社会」を作り出すことを私は目指す。それによって、町民の所得をあと100万円か200万増やしたいのが本音である。

   わが町が新たに地域社会の振興にとりかかる段階であるとして、質問に対する回答は、「外部との肉づきの良いネットワークを立ち上げる」である。

   具体的に言うと、町外から結婚のためにわが町にやって来てくれた女性を中心に、農林漁業・小売業従事者、老人施設の職員など、また年齢も異なる女性を10人ほど選び、全国から参加者がやってくる地域振興を考えるいくつかの講座に延べ3ヶ月以上参加してもらう。そして講座受講中および終了後の彼女たちの思いを支える体制をしっかり組む。

 


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