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地域再生
NPO,研究者,行政担当者等の意見

地域再生列島ネットから

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地域再生列島ネットから

 地方が抱える問題を話し合うため、全国の地方新聞社と共同通信社が識者らとつくった。街づくりなどに取り組むNPOの代表者や研究者、行政担当者ら多様な専門を持つ47人で構成する。毎月、テーマを決めてメールで意見交換を進め、インターネット上の「シンクタンク」を目指す。

鍵は愛着教育と特色づくり 地域の良さ見直しが出発点

 地方が抱える課題を話し合おうと、全国の地方新聞社と共同通信社は、合同企画「地域再生」の柱の一つとして、街おこしに取り組む団体の代表者や識者らに参加を呼び掛け「地域再生列島ネット」を結成した。各地でさまざまな活動に携わっている人たちの「現場の目」を通して、問題の所在を浮き上がらせ、解決策を探るのが狙いだ。第1回の意見交換は「自治体の首長になり対策を打つとしたら」をテーマに電子メールで意見を寄せてもらった。その結果、愛着を育てる教育と特色を生かす産業の二つの戦略が支持を集めた。地域の「地力」育成が重要との認識でも一致、自らの街を見つめ直すことが出発点といえそうだ。

▽「刷り込み教育」

 「自分がこの地域に不可欠だと刷り込む教育を」。藤波匠(ふじなみ・たくみ)・日本総合研究所主任研究員(東京)は、子供たちに郷土を思う心を育てる重要さを指摘する。学生と街づくりに取り組んでいる白戸洋(しらと・ひろし)・松本大教授(長野)も「地域の担い手に専門教育が重要」と訴えた。教育重視の背景には、人材流出への地方共通の危機感がある。窪田裕行(くぼた・ひろゆき)・福井県政策推進課課長補佐は「県外進学者の6割は都市へ流出」と指摘。進学などでいったんは都市部へ出ても、古里への愛着があれば再び戻り、街づくりに取り組む動機になるというわけだ。吉井仁美(よしい・ひとみ)・八戸市水産科学館館長(青森)は、政策効果を発揮するために人材育成が重要とし「学校教育の充実を」とする。教育は将来につながる「マグマ」(真渕智子(まぶち・ともこ)・伊香保おかめ堂本舗取締役=群馬)と期待した。人材活用のため、行政改革を求める声も上がった。河内山哲朗(こうちやま・てつろう)・前山口県柳井市長は、振興策を担当する遊軍チームの設置を提言。吉成信夫(よしなり・のぶお)・岩手県立児童館いわて子どもの森館長は、都会の研究者らを巻き込んで「プロデューサー型の人材登用を」と呼び掛けた。

▽農業の見直しも

 景気悪化で深刻化する地方経済。産業振興も課題だが、相次ぐ工場閉鎖や人員削減で企業誘致が切り札でない実態が露呈された。「第1次産業に軸足を」(松田千春(まつだ・ちはる)・滋賀県企画調整課副主幹)や「もうかる農業に脱皮を」(小林敬典(こばやし・たかのり)・鳥取県政策企画総室長)と、農業再建を求める声は「教訓」を踏まえた形だ。里山の景観保護などに取り組む「緑と水の連絡会議」の高橋泰子(たかはし・やすこ)理事長(島根)は、就農希望者に一定の生活保障を行い技術を教える一方、高齢者支援に携わる仕組みを提案し、受け入れ地域にもプラスとした。自立には地元の資源を生かした産業を育てるべきだとの指摘も相次いだ。鈴木泰弘(すずき・やすひろ)・小名浜まちづくり市民会議副会長(福島)は、水族館誘致などを進め港を交流スポットに育てた経験から、特色を生かした街づくりが産業にもつながると提案。渡辺英彦(わたなべ・ひでひこ)・富士宮やきそば学会会長(静岡)は、ブランド戦略の重要さを指摘した。第1回の意見交換は6月に行った。今後、月1回のペースで行う計画。

◎「地・宝・人」を紹介

 「地域再生列島ネット」には、全国の地方新聞社や共同通信が推薦する多彩な顔ぶれが集まった。創意あふれる活動を展開する人たちを「地・宝・人(ち・ほう・じん)」と名付け、横顔を順次、紹介する。

◎地元に愛される施設に、八戸市水産科学館館長の吉井仁美(よしい・ひとみ)さん

八戸市水産科学館で車いすのお年寄りを案内する館長の吉井仁美さん=青森県八戸市

 入館者が減り寂れていた水産科学館の再建に貢献し今年4月、新たに館の指定管理者になった企業組合の代表兼館長に就任した。最初は3年前、当時の指定管理者だった民間非営利団体(NPO)の事務員として館に勤務したのがきっかけ。事務に飽き足らず、入館者を増やそうと「まず地元の支持が大事」と、館がある地区を一軒一軒PRして歩いた。太平洋を一望する展望室を使ってもらおうと、「市内の高齢者施設に『営業』もした」という。今、展望室はお年寄りの昼食や地元の女性たちの語らいの場としてにぎわう。八戸港が水揚げ量日本一のイカの遊泳飼育など、展示の工夫も提案した。その結果2万人程度だった入館者が2007年度は倍増、08年度は5万6千人に上った。地元の短大を卒業。結婚し子育てのかたわら、ビジネス実務マナー1級など10近い資格を取得した。資格があれば仕事の強みになる。館長就任後、若いスタッフに潜水士の資格を取得させた。えさやりや水槽の清掃を自前でやれば、業者への委託費を減らし資格を得たスタッフの給料を増やすことができる。「スタッフのコスト意識と能力アップが、館のサービス向上につながる」と考える。5月に子どもたちを対象に地球探検クラブを発足させた。「将来海洋科学者を育てたい」という夢を抱いている。50歳。

◎B級グルメの雄、静岡県・富士宮やきそば学会会長の渡辺英彦(わたなべ・ひでひこ)さん

スタッフに囲まれる静岡県・富士宮やきそば学会会長の渡辺英彦さん(中央)=静岡県富士宮市

 「この街の味は他と違うという声で話が盛り上がった」。B級グルメとして知られる「富士宮やきそば」の売り出しを決めた当時を振り返る。東京で大学に進学し就職後、28歳でUターンし保険代理店を開業。転機は青年会議所活動だった。街づくりに関心が高まり、中心市街地活性化を練る富士宮市のワークショップへ参加。メンバーだった会社員や学生ら10人余りで街づくりのアイデアをひねった。ヒントは「路地裏」だった。「焼きそば店が多いねと言うと、焼き方がどう、めんはこうと、うんちくがあふれた」。小さいころ、十円玉を握り締め店で焼き上がりをわくわくして待った記憶がよみがえった。2000年に学会設立、PRを始めた。店の調査役「Gめん」や、他のご当地めんと味比べする「天下分けめんの戦い」など活動に遊び心があふれる。ただ「勝手な応援団」のため、焼きそば店から会費などは取らない。あくまで目的は富士宮の魅力発信だ。04年には市内にアンテナショップを開業、富士宮やきそばも商標登録。こうした売り上げなどを基にした、約15人の従業員を抱える企業がことし3月発足。街づくりが新事業まで生み、続けていく体制ができた。業界や行政に頼らず、ユニークな発想で多くの人の関心を集めて、活動を広げてきた。「お金がない自治体でも成り立つやり方」と笑った。50歳。