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第1部 新時代の手掛かりを

住民が株主になり設立した「大宮産業」の店内。地域の未来をつなぐ=高知県四万十市
【03】

四万十 「農家108人株式会社」

 愛媛県境に近い四万十川支流の山あい。日用雑貨や食料品、肥料などが並ぶ店内に山村ののどかな空気が広がる。住民が出資した株式会社「大宮産業」。暮らしを支える地域のとりでだ。高知県四万十市西土佐の大宮地区。人口約300人、65歳以上の住民は45%近い。半数以上の世帯が農業を営み、コメを中心にナスやシシトウなどを生産している。

▽株式会社を決断

 同地区に大きな転機が訪れたのは2005年。農業生産の減少などに伴い、JAが出先機関の統廃合を打ち出した。地区を挙げて反対したが訴えは届かず、大宮出張所の廃止が決まった。出張所は地区で唯一、日用品のほかガソリンや軽油、農業資材を販売。車など交通手段を持たない高齢者や農家にとって「生命線」だった。「出張所を引き継ぐしかない」。窮地に追い込まれた住民に他の選択肢はなかった。協議を重ねる中、一時は農事組合法人化も検討したが、日用品販売に法規制があり断念。最終的な結論は株式会社の設立だった。約8割の世帯、 108人 が平均6万円余りを出資して700万円を確保。06年5月、住民が株主、取締役となる「大宮産業」が誕生した。県の補助金を活用して店舗や給油施設をJAから買い取り、社員とパートも1人ずつ雇った。店は残った。「田舎は捨てられるのか、と思った。みんなで心を一つにして自分たちの会社をもり立てていきたい」。株主でもある西岡寅男(にしおか・とらお)さん(72)は、会社への愛着を強調する。住民らの思い入れにも支えられ、設立後3年連続で黒字。08年度は1日平均76人の客が訪れ、売上高5116万円で、約2万8千円の黒字を達成した。

▽新たな事業も

 だが、地域の厳しい状況は変わらない。過疎化が進めば利用客も減る。「住民に必要とされる役割を果たさなければ」。竹葉伝(たけば・つたえ)社長(64)らは、会社維持へ新たな事業展開にも取り組む。6月からは住民から要望があった宅配サービスを開始。地元農産物の販路拡大にも乗り出し、高知市内の中学、高校2校へ地元産の「大宮米」の納入を始め、四万十市内の学校給食にも広げた。「農業者の自分らは一生、地域から逃げられない。次の世代に暮らしをつないでいくためにも、今ここで生きる基盤をつくっておきたい」。竹葉社長は力を込める。ことし大宮地区で約5年ぶりに新しい命が誕生した。大宮産業は地域を守る知恵の結集であり、地域自立の方向性も示唆している。(高知新聞社、文・横山仁美、写真・佐藤邦昭)

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一口メモ
消滅する集落

消滅する集落 国土交通省の2006年全国調査によると、1999年から7年間で191集落が消滅し、過疎集落6万2273のうち2643集落が、将来消滅の恐れがある。限界集落化して自然消滅する例が多く、衰退が加速している。



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