第1部 新時代の手掛かりを
夕張 「移住体験」
北海道夕張市。今年初め、自分の病歴などを記した書類を入れる筒状の容器が、高齢者ら約500世帯に配られた。市民有志約40人でつくる全市的な組織「ゆうばり再生市民会議」が、試験的に始めた運動だ。容器は「命のバトン」と名付けられ、自宅で保管してもらい、万一の際に救急隊が患者情報の把握に役立てる。同会議は、全戸に配布することも検討している。高齢化率43%、一人暮らしの高齢者が全世帯の3割近い同市だからこそ、重い意味を持つ取り組みだ。
▽広がる自主活動
市郊外にある「ふれあいサロン」では、お年寄りたちが持ち寄った漬物や菓子をつまみ、茶飲み話に花を咲かせていた。常連の田代(たしろ)テイ子さん(86)は「サロンがなかったら集まる場所がない。ここがあるからしゃべって、笑い合える」と、にこやかに話した。夕張市は、1990年に最後の炭鉱が閉山。柱だった産業を失った市は観光事業を推進したがことごとく失敗し、財政が破綻(はたん)。2007年3月に財政再建団体に転落した。「全国最高の負担と最低の行政サービス」を強いられる街だ。サロンは市内4カ所。財政破綻で廃止された市の出張所などを活用し、住民が自主運営して地域の草刈りから公衆トイレの清掃まで手掛ける。ボランティアの市民が、役所に出す書類の書き方など高齢者の相談にも乗る。市民会議は、清掃や除雪作業なども行っている。自らの手で進める活動が広がり、市民の多くは「財政破綻によって、地域住民の支え合いはむしろ強まった」と、口をそろえる。
▽官民挙げ模索
人口流出に待ったをかける動きも始まった。夏草に覆われた無人の市営住宅が立ち並ぶ中で目を引く赤い瓦の北欧風住宅。市が競売にかけた築54年の市営住宅を、小樽市のログハウスメーカー「トベックス」が買い取り、新築同様に改修した移住体験宿泊施設だ。ことし1月に完成し、10月まで予約でいっぱいという。宿泊施設として活用した後は移住者に売却する計画で、戸部勇司(とべ・ゆうじ)社長(59)は「再生の成功例にしたい」と力を込める。夕張市は施設の完成に合わせて、移住希望者向けの相談窓口を市役所に設置。同社も移住者の働く場所や交流の場を確保するため、JR夕張駅舎をカフェに改修し、隣に屋台村も建設中だ。財政破綻によって、人口の約1割に当たる1600人が流出した夕張市。一方で、再生に向けて新しい「自治の形」を見いだそうと、官民を挙げた模索が続いている。(北海道新聞社、文・高橋尚哉、写真・阿部裕貴)
財政再建団体 自治体の赤字が一定基準を超えると指定され、国の監督下で歳出削減などに取り組む。夕張市は2024年度までに約353億円の赤字を解消する計画。約25億円を返済したが、09年度から16年間で328億円が残る。自治体財政健全化法施行で本年度末に財政再生団体となる。
- 第12部 刺激を手掛かりに
- 【01】秋田市 「地域活性化の源泉」【秋田魁新報】
- 【02】金沢市 「先人の志を継承」【北國新聞】
- 【03】別府市 「温泉街に貢献」【大分合同新聞】
- 【04】まとめ 「留学生定着へ支援を」【共同通信】
- 第11部 医療を支える
- 【01】遠野市 「遠隔医療」【岩手日報】
- 【02】小鹿野町 「在宅ケア」【埼玉新聞】
- 【03】多治見市 「新型ドクターカー」【岐阜新聞】
- 【04】まとめ 「再建は急務」【共同通信】
- 第10部 財政の挑戦
- 【01】上越市 「地域活動資金」【新潟日報】
- 【02】安芸太田町 「ケチケチ作戦」【中国新聞】
- 【03】宮崎市 「地コミ税」【宮崎日日新聞】
- 【04】まとめ 自前の「財布」【共同通信】
- 第9部 人集うまちに
- 【01】坂井市 「地産地消」【福井新聞】
- 【02】高松市 「黒船来航」【四国新聞】
- 【03】対馬市 「韓国と交流」【長崎新聞】
- 【04】まとめ 「休日分散」【共同通信】
- 第8部 農を開く
- 【01】福島 「輸出に活路」【福島民友新聞】
- 【02】静岡 「アメーラ」【静岡新聞】
- 【03】熊本 「米粉メロンパン」【熊本日日新聞】
- 【04】まとめ 「知恵活用と連携」【共同通信】
- 第7部 足を守る
- 【01】鰺ケ沢町 「全住民参加」【東奥日報】
- 【02】富山 「攻めの投資」【北日本新聞】
- 【03】四国中央市 「デマンドタク」【愛媛新聞】
- 【04】まとめ 「移動の権利」【共同通信】
- 第6部 子育てを支える
- 【01】東通村 「公営塾」【デーリー東北新聞】
- 【02】山形 「協働」【山形新聞】
- 【03】群馬 挑戦【上毛新聞】
- 【04】まとめ 空回り【共同通信】
- 第5部 新たなしるべ
- 【01】室蘭 ボルト人形「ボルタ」【室蘭民報】
- 【02】美作 「温泉街に女子サッカー」【山陽新聞】
- 【03】鳥取 「芝生化効果」【新日本海新聞】
- 【04】まとめ 「メセナが再び」【共同通信】
- 第4部 地方議会動く
- 【01】蔵王 「会期は通年」【河北新報】
- 【02】山梨学院大 「町議会と協定」【山梨日日新聞】
- 【03】鳴門 「市議の大量逮捕」【徳島新聞】
- 【04】まとめ 「八百長と学芸会」【共同通信】
- 第3部 「自力で開く」
- 【01】喜多方 「5ミクロンの微生物」【福島民報】
- 【02】神戸 「大手の下請け返上」【神戸新聞】
- 【03】有田 「究極のラーメン鉢」【佐賀新聞】
- 【04】まとめ 「開発秘話」【共同通信】
- 第2部 新たな力
- 【01】白馬 「外国人経営」【信濃毎日新聞】
- 【02】祇園 「クギ1本」【京都新聞】
- 【03】石見銀山 「空き家を社員寮」【山陰中央新報】
- 【04】まとめ 「リーダー育成」【共同通信】
- 第1部 新時代の手掛かりを
- 【01】夕張 「移住体験」【北海道新聞】
- 【02】鬼怒川 「中国へ売り込み」【下野新聞】
- 【03】四万十 「農家108人株式会社」【高知新聞】
- 【04】まとめ 「コミュニティ」【共同通信】
- 番外編「スコットランドの分権10年」
- 【01】「住民の目線で法案」【共同通信】
- 【02】「削減目標、世界一」【共同通信】
- 【03】「紡績工場が世界遺産」【共同通信】
- 【04】「失業者のいない村」【共同通信】
- 番外編 「地域再生列島ネットから」発足1周年記念シンポ
- 【01】報道を活用、売り込み展開 メンバー活動報告(1)【共同通信】
- 【02】学生を引き込み全国発信 メンバー活動報告(2)【共同通信】
- 【03】地域が自発的に行動を メンバー活動報告(3)【共同通信】
- 【04】きずなづくりに着眼 メンバー活動報告(4)【共同通信】
- 【05】熱意と人材育成が活力に 総務相交え、パネル討論【共同通信】
地域再生列島ネットから
- 12.『国際交流、インフラも課題』
【意見のまとめ】地域の良さ見直す機会に - 11.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】高齢者の健康を地域で支えるには - 10.『自治体、財政情報公開を』
【意見のまとめ】財政に住民の声反映させるには - 9.『地域への誇りが魅力に』
【意見のまとめ】観光で人をひきつけるには - 8.『農業を再建するには?』
【意見のまとめ】安全性や連携が重要 - 7.【意見のまとめ】公共交通をどう守るか
- 6.『地方で子どもを増やすためには?』
【意見のまとめ】新住民ひきつける工夫を - 5.『文化を地域ビジネスにつなげるには?』
【意見のまとめ】資源を発見し情報発信を - 4.『期待される地方議員像は?』
【意見のまとめ】少数精鋭で首長と論戦を - 3.『(1)地域で活用できる経済的資源は?(2)新政権への期待は?』
【意見のまとめ】 情報発信、発想が自立の鍵 - 2.『地方自治体の新たな担い手は?』
【意見のまとめ】NPO、地域の顔に期待 - 1.『自治体の首長になったら?』
【意見のまとめ】鍵は愛着教育と特色づくり
第13回 7月下旬予定

