奥入瀬渓流の森に異変 暖冬の影響、目立つスギ
トチノキやカツラなどの落葉広葉樹やシダ類がうっそうと茂る十和田八幡平国立公園にある奥入瀬渓流(青森県)でここ数年、森の生態系に異変が生じている。本来はほとんど存在しないはずの針葉樹スギの幼木が目立ち始めたのだ。
原因の一つが、暖冬による湿った重い雪。昔は春先に限られていたが、厳冬期にも降り積もるようになった。枝や幹に付いた雪は夜の冷え込みで氷塊となり、重みで枝が折れ、木が倒れる。森の中で日が当たる部分が徐々に拡大し、周辺の山から供給されたスギの種子の成長を促している。
「放置すれば広葉樹の森ではなくなる」。地元の自然保護団体「八甲田・十和田を愛する会」の久末正明(ひさすえ・まさあき)代表は、将来、渓流の景観や植生が一変する可能性を指摘する。
スギの幼木は樹高五十センチから三メートルほどで、渓流全域に点在する。少なくとも百本を超え、苗を含めると相当な数に上るとみられる。
渓流内は湿潤で土も肥えていることから、スギの生育に適していた。ただ、以前は落葉樹やシダに広く覆われ、日光が遮られていたため、成長は抑えられてきた。
しかし近年、秋から冬にかけて、温帯低気圧が太平洋岸を北上しながら急速に発達し、青森県南部地方に強い風雨や雪をもたらすケースが増加。森林のダメージは着実に蓄積されつつある。
環境省十和田自然保護官事務所は「今後、スギの拡大傾向が進み、植生をかく乱する状況になれば対応を検討する」と述べるにとどめる。
だが、久末代表は「早急に手を打たないと、取り返しがつかなくなる」と、幼木の計画的な伐採や除去の必要性を訴える。(デーリー東北新聞社、文・沢田匡宏、写真・井深裕介)
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奥入瀬渓流 年間約五十万人が訪れる日本屈指の景勝地。総延長は十和田湖畔子ノ口から焼山までの約十四キロ。渓流沿いの遊歩道は、新緑、紅葉シーズンには多くの観光客でにぎわう。国立公園の特別保護地区、国の特別名勝、天然記念物に指定されている。