京の借景、東山の峰に異変 キクイムシ被害で危機に
比叡山から稲荷山へ。京都盆地の東に連なる東山三十六峰は、穏やかな稜線(りょうせん)とともに、南禅寺や清水寺などの名刹(めいさつ)をふもとに抱き、古都らしい景観をみせる。特に秋、寺社の借景を紅葉が彩り、観光客にも人気が高い。
その三十六峰の広葉樹が危機にある。原因は体長約五ミリの小さな甲虫、カシノナガキクイムシによるナラ類の枯死だ。二〇〇五年、三十六峰のひとつ高台寺山国有林で二百三十本の被害が見つかり、六十五本が枯れた。
京都府内では一九九一年、北部の大江山で初確認されていた。「いずれは東山にも来ると思ったが、予想以上に早かった」。市民団体「北山の自然と文化を守る会」の榊原義道(さかきばら・よしみち)代表幹事は言う。「以前は数年で集団的発生は収束したが、最近は止まらない」
被害は大文字山や稲荷山に広がる。景観面だけでなく生態系への影響や保水力低下による災害の危険もある。守る会は虫との知恵比べを始めた。
三十六峰の中間に位置する吉田山は二〇〇六年、八本が被害を受け、一本が枯れた。翌年、被害は三十本に広がり、枯死は三本。「数千匹が入る木と、隣り合っても被害のない木があるな」。拡散の法則を注視、被害木が枯死するとは限らないことも発見した。
つまようじを使った駆除法を試みた。二年間で二万六千個の虫の穴を手作業でふさいだ結果、〇八年には新たに百二十一本が被害を受けたが、枯死は三本にとどまった。
この駆除法は、伐採や薬剤散布に頼らず環境にも優しい。「害虫発生が防げないとしたら、共生しつつ木を守るしかない」。年々常緑樹の緑色が目立つ東山を憂いながら、今も地道な作業が続く。(京都新聞社、文・井上理砂子、写真・三木千絵)
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カシノナガキクイムシ 木に穴を開けて生息し、病原菌を持ち込むため木が枯れる。猛暑による樹木の抵抗力低下や里山が放置されて老齢木が増え、繁殖しやすくなったこと、温暖化でナラ類が北上し、虫が好む環境になったことなどが拡大の原因と疑われている。