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2012/01/20

「スーツ=没個性」って本当?

「スーツ=没個性」って本当?

 -Ask Me Why.


年が明けて、各大学では企業セミナーが盛んに開かれています。当然のようにキャンパス内ではスーツ姿が目立ちます。そんな風景を目にした大人たちがよく口にするのは「リクルートスーツは没個性」という台詞。先日、ソニーが「『シューカツ=スーツ』のルールを変えます」と学生に呼びかけて、話題になりました。

いろいろな考え方があると思いますが、当事者であるところの学生からすると「スーツを着ろとか着るなとか・・・いったい、どうすればいいの?」という感じではないでしょうか。

そこで、この際だからプロに聞いてみようということで、首都圏のデパートで紳士服を担当している知人と話し合ってみました。
(写真:2011年11月3日、フランス・カンヌのG20首脳会合会議場に到着したオバマ大統領とサルコジ大統領)


-今日はブリティッシュトラッドが決まっていますね。

「ありがとうございます。でも、まだまだ勉強中です。スーツの世界は奥が深いです」

-「就活にスーツは没個性」という言い方はどう思いますか。ソニーの呼びかけはあちこちで議論を呼んだみたいですね。

「個人的にも今の就活にはいろいろ問題があると思うので、一石を投じたという意味では意義深かったのではないでしょうか。でもソニーさんの『いまの均質な"シューカツ"。スーツはその象徴だと思うのです。』という一節には、やはり紳士服で生きてきた者としては、少し突込みを入れたいですね。別に反論というほどのものではないのですが」

-ぜひとも本音ベースでお願いしますね。

「スーツだから没個性というのは少し考えが浅いと思います。そういうのも一種のステレオタイプではないでしょうか。誠に失礼ながら、そういう言い方をする方に限って服装に興味をお持ちでないようにお見受けします。実は、基本を押さえた上で、いろいろな着こなしを楽しめるスーツほど個性を発揮できるものはないんですよ。トラディショナルなスーツを着ているハリウッド俳優を没個性と言いますか?」

-手厳しいですね。

「その方だけではないんです。日本の男性でスーツの基本を押さえている人は、あまりいないように感じます。これは特に私たちデパートの責任も大きいと自戒しています。お客様にこれまで適切にご案内できてこなかったことを、深く反省しなくてはならないと思います。大会社のトップの方でも『これはちょっと』という例が多いですし、政治家の先生方に至っては、多くの場合、言葉が見つかりません。どなたとは申しませんが、スーツ姿で国際的な恥をかいている例もあります。その点、フランスのサルコジ大統領などは流石の着こなしですよね」

-就活生もこの際、ちゃんとスーツを勉強した方がいいということですね。

「勉強というと堅苦しくなるので、楽しくルールを覚えていただきたいですね。スーツはビジネスの現場でのツールですから、せっかくなのでこの機会にということなんです。社会人になるちょっとした準備です。そんなに難しい話ではありません。量販店で何となく買って着ているようでは没個性と言われても仕方ないですね。量販店でもいい商品もありますし、勉強している店員さんもいらっしゃいますので、そこは誤解しないでいただきたいんですが。何にせよ『やはり落ち着いたものが』『清潔感があった方が』などという抽象的なアドバイスではなく、例えばボタンの数やベントについて具体的に話せる店員を選んでください。上着の丈、袖の長さ、カラーやラベル(襟の下の部分)の形とサイズ、ゴージライン(上襟と下襟のつなぎ目)の位置、パンツの裾処理などを理屈通りきちんと説明できる人でなくては意味がありません」

-就活って何かとお金がかかるので、学生は大変なんです。

「そうですね。セールなどでなるべくお求めやすくするように私たちもがんばります。各デパートでベルトや鞄と合わせて買うと割引するといったキャンペーンもやっていますのでぜひご利用ください。スーツは社会人になっても着るものですから、いいものをつくっておけば無駄にはならないと思います」

-いろいろな生地がありますが。

「生地はウールとポリエステルの混紡なら耐久性もありますし、何よりお安くなっています。2~3万円から用意していますので2着を検討された方がいいと思います。着たきりだとどうしてもくたびれた感じになりますので、印象がよくありませんよね。1着目の色はやはり紺色。それも鉄色がかった『紺鉄』をお勧めします。あらゆる場面で使えますから。量販店のサイトなどを見ていると『ベーシックな黒を勧めます』などと書いてますけど、避けた方がいいですね。黒は着こなすのが意外に難しいんですよ。それに普通の社会人にとって、黒は冠婚葬祭のイメージではないでしょうか? 女子の場合は少し事情が違うと思いますので、それは婦人服のプロにお任せしますが、男子就活生のスーツに関して黒はなしです」

-スーツ以外の注意点はありますか。

「シャツがとても大事ですね。ちよっとだけお金を使って体にフィットしたものをオーダーしてください。デパートでも1.5万円で2着ぐらいつくるようなセールをやっています。オーダーなら、シャツの袖が1センチ少しだけスーツ上着の袖からのぞくような、いい感じのサイズに仕上がります。色はホワイトでもいいですし、ほんの少しだけ灰色がかったオフホワイトでもいいと思います。襟は落ち着いた感じがするワイドカラーがいいと思います。ボタンダウンなどは上級者になるまでは避けた方が無難です」

-ネクタイって種類が多すぎて迷ってしまうんですけど。

「流行もありますしね。ですからまずはベーシックなところで、紺色の無地はいかがでしょうか。若い方でしたら少し明るめの紺がいいですね。これはどんなスーツとも相性がいいので、持っておくと便利です。量販店やデパートのサイトを見ると『若々しさをアピールするためにレジメンタルストライプをどうぞ』と勧めていますけど、私は基本を外していると思います。レジメンタルストライプは元々は英国で、退役軍人や将校クラブに集まる人々が締めていたものなんです。デザインの多くは連隊旗などから取ったものとお聞きになれば、ちょっとふさわしくないかなというのがお分かりになると思います。欧州では今でも、オフィシャルな場ではほとんど使いません。あと、テレビでタレントさんが締めていらっしゃるような細身のネクタイは不可です。遊びっぽくなってしまいますので」

-靴と鞄はどうしましょうか。

「就活は体力勝負ですから、ゴム底の歩きやすい革靴がいいと思います。まずはストレートチップ、ラウンドトゥなどのコンサーバティブなデザイン。ロングノーズは先々、慣れてから履いてください。こんな感じでしたら、うちでもセールだと1万円から2万円の間でいいものがあります。それから最も大事なことなんですが、靴はちゃんと自分で磨いてください。手入れの仕方を正しく説明できる店員からお求めいただきたいと思います。鞄は普通の黒で、固めのものなら何でもいいでしょう。この際、妥協して安く抑えませんか。上を見るときりがないので、それは給料をもらうようになってから、自分へのご褒美でお求めください」

-着こなしのアドバイスもいただけますか。

「ここで問題です。ポケットのフラップは外に出すのが正しいか中に入れるのが正しいかご存知ですか」

-ええっと、何かの本で本で読んだことがあります。室外ではゴミなどが入らないように外に出す。室内では中に入れるというのが正解ではないかと。

「よくご存知でしたね。その通りです。あと上着のボタンの一番下はかけないというのは常識だと思いますが、座ったときには上のボタンも外すというのはいかがですか?」

-いや、知りませんでした。立っているときはかけて、座ると外すというのはきまりなんですか。

「そうです。ほとんどの方は知らないと思いますが。テレビのニュースなどで、オバマ大統領が専用車から降りたときに、さっと上着のボタンをかける姿に見覚えありませんか」

-おお! そういえば、そうですね。

「あれはスーツがしわにならないために、車の座席では外しているんです。海外の要人と会う時でも、椅子に腰かけているときは上着の前ボタンは外していらっしゃるはずです。車を降りると同時に、機敏にボタンをかけるしぐさが、さあこれからビジネスだ、戦闘開始という感じでとても格好いいですよね」

-服装や着こなしって大事ですね。無自覚な自分が少し恥ずかしくなってきました。

「スーツひとつとっても基本となるルールを理解して着ているのと、周りもスーツだからということで何となく着ているのではずいぶん違うと思います。面接官が必ずしも服装に詳しいとは思いませんが、中には『この学生分かっているな』と見抜く方もいらっしゃいます。そうでなくてもスーツを基本を踏まえて着こなした学生の姿はどこか堂々としていて、すべての面接官に良い印象を与えると思います。だれもそれを没個性とは言えないのではないでしょうか。自分に合ったスーツを着て、よしやるぞという感じで就活に臨んでいただきたいと思います。私たちも応援しています」

(就活NewsNaviプロジェクトマネジャー 浜村寿紀)