11年06月02日 20:41
【512】日高見 震災復興酒 希望の光 純米 絶対負けない石巻(ひたかみ)

【震災復興支援飲み会 全5回の②】
「日高見 震災復興酒 希望の光
このお酒は、平成23年3月11日(金)の東日本大震災によって被災したお酒です。
純米酒を中心に大吟醸や純米吟醸など、発酵中のお酒が被害に遭いました。震災直後、仕込み蔵は地震の揺れの激しさから、発酵中の醪(お酒)がタンクから溢れ、床一面、白い絨毯を敷き詰めたのかと、錯覚するような情景でした。溢れ出た醪は霧状になり辺り一面に立ち込め、蔵の奥が良く見通せない状況で、目の前の光景を疑いました。そして、溢れ出た醪が発生している音なのか、今までに聞いた事の無いような音が蔵内にこだまし、まるで醪の悲鳴のようにも聞こえ、何とも言えない恐怖感を覚えました。建物のいたるところが壊れ、立ち入る事が困難になり、同時にライフラインが寸断し、発酵中のお酒の管理が出来なくなってしまいました。何の手立ても出来ず、ただ、呆然と指をくわえて見守る日々が続きました。一週間が過ぎても復旧の目処が立たず、発酵中の醪の全廃を覚悟しました。しかし、震災から二週間目、電気など一部ライフラインの復旧などが重なり、諦め掛けていた醪を、遂にお酒として甦えさせる日がやって参りました。ただ、放置している時間が余りにも長く、垂れ口から搾りだされるお酒の品質がとても心配でした。しかし、我々の心配をよそに、そのお酒はとても力強く生命力に溢れ、我々に勇気と希望を与えてくれました。
本来の酒造りでは、如何に良い酒を造ろうかと凌ぎを削りますが、このお酒からは普段の酒造りでは味わえない感動を貰いました。蔵の有る宮城県石巻市はこの度の震災で、壊滅的な被害を受けました。勿論、弊社も甚大な被害を受けました。
しかし、被災した石巻市の惨状を見た時に、弊社は本当に生かされたのだと、強く感じるほか有りませんでした。
普段の生活では感じ得ない、感謝の気持ちを強く痛感させられ、造り酒屋として何か地域に貢献する事は出来ないか、自然と、その様な気持ちが芽生えて参りました。そして、この気持ちを大事にしたいと考えるようになり、この被災したお酒を震災復興酒として販売し、少ない金額になりますが、売上金の一部を義援金として、私達の住む石巻市に献金したいと考えております。また、我々が励まされた、このお酒を通して、御愛飲頂く全ての方々に希望の光をお送りする夢が出来れば幸いに思います。(株)平孝酒造 店主謹白」
これは、「日高見 震災復興酒 希望の光 純米 絶対負けない石巻」の一升瓶の裏ラベルに書かれている、蔵元さんの言葉だ。これほど文字数の多い裏ラベルは初めて見た。が、今回の震災で、日高見の蔵がどのような状況に陥ったのか、これを読めばよく分かる。想像を絶する光景だ。もっとも、一番信じられなかったのは蔵元さんだろう。
「希望の光」というネーミングがいい。そして瓶の肩に貼られている「絶対負けない石巻」というラベルに、蔵元さんのおもいがビンビン伝わってきて胸が熱くなる。
この酒は、生き残った醪をブレンドして搾ったもの。発酵時間がいつもよりかなり長くなり、一刻も早く搾ってしまわなければならなかったため、造りの違う別々の酒をすべて一緒に搾った。その結果、精米歩合40%の純米大吟醸クラス(大吟醸にする予定だったが、醸造用アルコール添加前だから純米大吟醸クラス)と60%の純米クラスのブレンドとなり、酒米もひとめぼれ、蔵の華、山田錦、短稈渡船、山田穂と5種類が混ざっている。大吟醸にするつもりだったのが山田錦。ほかの5品種は純米仕込みだった。
H居酒屋で開いたわたくしたち「震災復興支援飲み会」は、「墨廼江 純米吟醸 八反錦 一度火入れ」に続き、2番目にこの「日高見 震災復興酒 希望の光 純米 絶対負けない石巻」を選んだ。この酒も大震災をくぐり抜けたお酒だ。
さて、冷酒でいただいてみる。これが旨かったのだ。
店主「甘みがきて酸がくる。いい酒だ。常温で飲めば、さらにいい感じ。飲みやすい。ずっと飲めそうだ」
酒蛙「直前に飲んだ墨廼江より軽快。旨い。酸が来る。旨みがたっぷりだ」
F 「甘みもある」
店主「とてもいい酒だ。偶然かもしれないが。ブレンド割合がが分からないだろうから、二度と飲めない酒だな、きっと」
酒蛙「甘みもきた。ああ、泣きたくなる」
F 「いやあ、おいしいっす
酒蛙「飲み口がなめらか。それでいて、力強い。含み香は抑え気味。ああおいしい」
F 「あ、旨すぎてヤバい。私も泣いていました。震災をくぐった力強さがありますね」
ここで、遅れてKが参加する。まず、Fとわたくしが最初に飲んだ「墨廼江」を飲んでもらい、次に、「日高見」を飲んでもらった。
K [ん~~~! 旨い」
Kは、いきなり瓶の裏ラベルを読む。後日、店主に聞いたら、この酒を飲むお客さんは、一人残らず全員、裏ラベルの、「蔵元のおもい」を読むという。
このH居酒屋の冷蔵庫には「日高見 天竺 純米吟醸 短稈渡船 瓶囲い 生」(当連載【245】参照)も入っている。「日高見 震災復興酒 希望の光 純米 絶対負けない石巻」と飲み比べてみる。
酒蛙「『短稈渡船』の方がかなり香る。吟醸香が強い。すっきりした飲み口で甘みもある。『短稈渡船』の方が、酸味が少ない」
K 「『希望の光』の方が、酸が立ちますね」
F 「俺は、個人的には『希望の光』の方が旨いとおもう」
K 「ハートなんだよ。『希望の光』は、虚心坦懐でつくったんだよ」
店主「『短稈渡船』は飲みやすい。『希望の光』は味が深い」
ここで、希望の光のぬる燗を飲む。
全員「旨~~~~~~~っ!!!」
酒蛙「旨みが、冷酒のときより、さらにふくらむ。口の中に『旨み宇宙』をつくる。その宇宙に、旨み、酸味、甘みが共存している」
K 「旨いっす」
店主「飲みやす過ぎます」
K 「これ、おいしい。すかすか体に入ります。いっちゃいます。昇天します」
店主「昇天しちゃいます。おいしすぎる」
K 「もう、めちゃくちゃ旨い」
F 「石巻の力を感じます。復興しようという力強さを、この酒質に感じる。このお酒、生命力に満ちている。俺、このお酒にパワーをもらったよ」
酒蛙「まったくそうだね」
「日高見」というと、すっきりしたシャープな味わいの酒、というイメージをわたくしは持っていた。しかし、この震災復興酒は力強かった。しっかり芯があった。停電のため2週間も温度管理ができず、醪の日数が通常の仕込みの1.5倍も長くせざるを得なかったことが、逆に幸いし力強い酒を造ったのだろう。蔵元さんでも予想しなかった味。これは、お酒が蔵元さんに恩返しをしたのではないか、とおもいたくなる。二度と味わうことのできない酒。まさに奇跡の酒である。
裏ラベルの、蔵元さんの口上の最後に、この酒の売上の一部を義援金として石巻市に献金する、と書かれている。自ら激しく被災したのに、義援金を市に贈るとは。蔵元さんの気持ちに、胸がまた熱くなる。


酒蛙さんも私と同感だったのでよかったです。
生命感が在るところが不思議です。
511の墨廼江のところにもコメントしましたが、朝日新聞にも記事が載っていました。
各地の酒蔵も頑張っていると思うので、これからも飲んでいきたいと思います。
投稿者 yoshy : 2011年06月02日 21:13
yoshyさん、
本当に、不思議な印象でした。
もう二度と同じ酒が飲めないから、
なおさらそう感じるのかな、
ともおもっています。
投稿者 酒蛙 : 2011年06月03日 09:44
5/4石巻にボランティアに行った帰り、仙台市内の酒屋で希望の光を見つけました。即、購入。友人にも買って帰りましたが、みんな復興を願って大事に飲んでくれているようです。福島の曙酒造(天明)も被災したのですが、復興ラベルのお酒を出しています。しかも売り上げの一部を義捐金に寄付しています。ぜひ御購入を。
投稿者 Masa : 2011年06月05日 17:15
Masaさん、
おとといの夜、H居酒屋で酒友と晩酌をやったとき、
酒友が「日高見 震災復興酒」を飲みました。
「力強くて旨い。本当に旨い」と感激していました。
別のグループも復興酒をしみじみ味わっていました。
天明、機会があればいただいてみます。
情報、ありがとうございます。
投稿者 酒蛙 : 2011年06月05日 19:54
この記事、大変感動いたしました。
ブログに載せさせていただきました。
東北のお酒は本当においしいので、早い復活を
願います。
投稿者 ハンゾウ : 2011年06月19日 16:20
ハンゾウさん、
恐縮です。
投稿者 酒蛙 : 2011年06月21日 00:15