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日本酒 津々浦々

10年09月10日 20:30


【252】黎明 本醸造(れいめい) 【沖縄】

沖縄県うるま市 泰石酒造
沖縄県うるま市 泰石酒造

 昨年11月の日本酒研究会月例会。この日のトップバッターとして、わたくしたちの目の前にあらわれたのは、沖縄の酒、すなわち日本最南端の酒「黎明 本醸造」だった。沖縄の酒なのだが、浮世絵女性をあしらったラベル。飲む前から、かなり面食らってしまった。
 沖縄の酒は、研究会(単なる飲み会ね)の例会会場にしているM居酒屋の店主にお願いして仕入れてもらったものだ。毎月6~8種類の酒を飲んでいるうちに、メンバーの1人が「かなりの都道府県の酒を飲んだんじゃないか?」と気づき、「全国制覇をしようじゃないか」と提案した。「よ~し、調べてみよう」とわたくし。
 調べた結果、全国47都道府県の中で、日本酒をつくっていない県は鹿児島県ただ1県。なんと沖縄県でも酒をつくっていることが分かった。そして、あと数県の酒を飲めば“全国制覇”をすることが分かった。そこで店主に「全国制覇のために、ぜひ沖縄の酒を入れてちょうだい」とお願いし、入れてもらった、というわけだ。
 酒づくりといえば、冬の寒さが必要だが、なぜ、あの暑い沖縄で酒ができるのだろう。その疑問に対する答えは、化粧箱に書かれていた。
 それによると、「酒づくりに敢えて挑戦したのが当蔵の創業者で杜氏の安田繁史でした。安田は現岩手大学で農芸化学を修め、技術者としてのプライドを沖縄の地での清酒づくりに賭けたのです。ご存知のように清酒は秋口から冬に仕込みます。しかし、年間の平均気温が20度前後ある沖縄では、逆にその環境を作らねなければ清酒はできないのです。幾度かの試行を重ね『黎明』が誕生したのが30余年前のことです。仕込み樽、貯蔵タンクの周囲に冷水を回し、酒温度を15度以下に保つ。その製法は今でも当時のまま守り継がれています」
 「美ら島物語 泡盛コラム」(文・森山卓)には、事情をもっと詳しく書かれているので、以下に転載する。
 「清酒造りには、低温での長期発酵環境が必要。冬場でも気温が20度近い沖縄での一番の問題はやはりこの温度管理だった。そんな中、いろいろ調べてみると、長崎県にある黎明酒造(現杵の川酒造)が、冷房装置を使った醸造で特許を取ったことを知った。『思い』『夢』を伝えると技術とノウハウを提供してくれることになった。そして、地下水を汲み上げてタンクの周りを循環させる冷却設備を独自に作り出したことによって、温度を一定化させることができ、ついに沖縄で清酒を造り、世に送り出すことができた。日本最南端の清酒、『黎明』。その名は長崎の黎明酒造からあやかって頂戴した名前だ」
 自然にさからって、そこまでして酒をつくるのか、という声があるかもしれないが、わたくしは不可能を可能にする技術者魂に共感をおぼえる。
 さて、全員、緊張した面持ちで、日本最南端の酒「黎明」を飲む。
 酒蛙「ん~? なんだか、熟成感っぽいな。昔の酒、という印象だ。辛口に感じるけど、その半面、甘さが強く、不思議な飲み口だ」
 F「舌が慣れてくると、普通の酒のようにおもえる。沖縄でも普通の酒ができるんだあ」
 蛙「うん、舌が慣れてくると、強い甘さが消える。でも、ちょっと甘さが残るな。味の厚みもすこし感じられるようになり、まったりコクがあるなあ。味覚の変化が面白いな」
 K「この酒、蒲鉾と合います。慣れたら、おいしいですよ~」
 蛙「たぶん、当県初上陸じゃないか?」
 店主「そうだと思います」
 K「最初の一口を飲んだとき、驚いたけど、、まずまずですね」
 蛙「けっこう力強いので、この酒、燗に向いているかも」
 蔵のホームページを開いてみた。それによると、蔵ができたのは1952(昭和27)年。翌53年に焼酎の製造開始、55年に泡盛とウイスキーの製造開始、59年にリキュール製造開始、そして67年からついに清酒の製造を始めた、という。今では古酒、純米吟醸、純米、本醸造と酒のラインナップはなかなかだ。
 そして、化粧箱で「『黎明』それは情熱の美味なり、と当蔵では考えております。一度に造れる酒量には限りがありますが、先代の技を守り抜き、その心を忘れることなく、これからも沖縄の酒文化の一端を支える『黎明』でありたいと願っております」と、高らかに宣言している。沖縄の酒、意気軒昂だ。
 無理を言ってM居酒屋に「黎明」を入れてもらったのだが、売れずに残っているのでは…と心配になった。そこで、翌月の月例会でM居酒屋を訪れたとき、聞いてみた。すると店主は「あはは。すぐ空になりましたよ。みなさん、珍しがって次々、お召し上がりになりましたよ」。よかった。
 かくして、当連載「日本酒津々浦々」、酒をつくっている全国46都道府県をひとめぐり。めでたく全国制覇となった。連載は、まだまだ続く。



沖縄 | 2010/09/10 | 20:30 | コメント (6) | コメントを書くコメント一覧 |


地方新聞社元記者。唎酒師。本籍・住所・年齢不詳。性別は男。飲んだことのない酒を飲むことと、ぬる燗が趣味。燗つけ器を、なじみの居酒屋に置いて、燗酒を楽しんでいる。酒席での「とりあえずビール」は、ビールにも酒にも失礼だ、といきなり酒を飲み始める。酸味のある濃い酒を好む。毎年、500種類以上の酒を飲んでいる。

沖縄は気候が温暖で造りにくいのは当然ですが、北海道は逆に寒すぎて造りに向いてないとか。
仕込み水が凍るのは序の口で、低温過ぎて発酵が進まないんだそうで…

また、意外なことに水が悪いそうで、その点でも日本酒の製造に向いてないとかで
水道水を超純水に濾過してから、醸造に必要なミネラル分を
加えて醸造に使っている蔵もあるそうです。

まぁ、なんにしても極端すぎるのも問題なようです(笑)

投稿者 ZEN : 2010年09月10日 22:12


沖縄でこの黎明を探して酒屋探検したら、新潟のKや灘酒ばかり。やっと見つけたときは嬉しかったです。

本土で皆で飲んだのですが、わりと普通で拍子抜けでした。
仰るように「燗」映えしそうに思い温めたところ、
「うへぇ×■▽◇×」「とてもコメントできない」
等、驚く変身ぶりに逆絶賛の嵐でした。
暑い沖縄で「燗」は無いんだろうなーと一同納得、逆に「らしさ」を満喫できました。

蛙さん達も「燗」つけてみてほしかったです(笑)。

投稿者 読者 : 2010年09月11日 11:27


ZENさん、
あれま、北海道では、そのような努力をしているんですか。
知りませんでした。
海岸近くの北海道の「国稀」(日本最北端の酒)は旨いとおもっていましたが…。
情報、ありがとうございます。

投稿者 酒蛙 : 2010年09月11日 15:52


読者さん、
へ~~っ! 燗には向かないんだああ。
冷やで飲んだときは、経験的に燗上がりするとおもったのですが…。
酒の世界は、想定外の展開になることが多いので面白いですね。
情報、ありがとうございます。

投稿者 酒蛙 : 2010年09月11日 15:54


本文中に鹿児島に蔵元がないとなっていますが
薩州正宗という日本酒があり47都道府県すべてに日本酒はあります

投稿者 セック鈴木 : 2016年05月25日 14:57


■セック鈴木さん、

読んでくださり、ありがとうございます。

この記事を書いた時点では、
清酒蔵元さんは鹿児島県にはありませんでした。
その後、薩州正宗が生まれましたので、
販売してからほどなく入手し、記事を書いております。

当連載【970】の「薩州正宗 純米酒 生貯蔵酒」を
ご覧くださいませ。

あくまでも、その時点のことを書いていますので、
後日、書き直しはしないことにしています。
ご了承いただければ幸いに存じます。

投稿者 酒蛙 : 2016年05月25日 18:18








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