10年03月07日 17:28
【47】六十餘洲 純米酒 山田錦(ろくじゅうよしゅう)

ある蔵の新酒を楽しむ会に参加し、蔵の社長から、なぜかとても気に入られた。初対面だったのにもかかわらず社長が「杉玉あげるよ」と言ってくれたのには驚いた。杉玉は、蔵のシンボルのようなものだから。で、好意に甘え後日、車を片道2時間運転し、杉玉をいただきに行った。
わたくしはこの杉玉を、なじみの居酒屋にプレゼントしよう、と思っていた。おしゃれな店には杉玉は似合わない。バーみたいな店や、真新しい店にも似合わない。その点、なじみの居酒屋は、うらぶれた雰囲気で、杉玉が似合う。杉玉は、じっさいに1年間使用したもので、杉の香がすっかり抜けてにおわない。においがしないということは、飲食店には理想的。居酒屋の店主に「どうだ?」と話をもちかけると、「前々からほしかったんです」と二つ返事でOK。
さて、どこにぶら下げたのだろうか。プレゼントした2-3日後、わたくしはその居酒屋を訪れた。杉玉は、入り口付近にぶら下がっていた。う~ん、なかなか感じがいい。店の雰囲気が一気に盛り上がる。プレゼントして大正解だった。
さあ、「杉玉設置祝」をしよう。祝酒に選んだのは「六十餘洲 純米酒 山田錦」。長崎県の酒だ。この酒と杉玉のツーショットを撮ってから飲んだ。まず、冷やで。あっけないほど軽快な飲み口。典型的なすっきり系の酒。
このような酒は、ぬる燗にすれば変身するはずだ。ということで、ぬる燗をつけてもらう。すっきりキレの良いのは冷やのときと同じだが、酸が前面に出てきて、酒の表情にメリハリが出た。実に飲み飽きしない酒で、まさに食中酒。晩酌用にもってこいだ。杉玉を店内に下げ、ご満悦の店主は「うまいっす」と満面の笑み。一緒に飲んだ親友も「量をたくさん飲める酒だね」。
杉玉の祝酒に起用したこの酒の蔵は、創業230余年という。江戸時代から長崎で酒をつくってきたのだ。「六十餘洲」というブランド名は、明治時代以前、日本は60余国で成り立っていたことから、全国津々浦々の人たちに飲んでもらいたい、という思いを込めて命名したのだとか。さすが、江戸時代から続いている蔵の考えていることは違う。歴史を感じさせる。
杉玉をわたくしにくれた蔵の社長は、わたくしが居酒屋にプレゼントしようとしていることを見抜いて、手渡すとき「こんど、この杉玉を下げている飲み屋に、飲みに行こう」と言った。社長が当地に来ることがあれば、この居酒屋に案内するつもりだ。

