裁判員をよむ

連載企画

評議の様子

まず投票“たたき台”に 「乗り降り自由」変更次々

 棒グラフは「懲役〇年以下」を頂点に弧を描いている。被害者が死亡した事件を審理する裁判員裁判の評議。罪名、共犯者の有無、被害者との関係―。条件を打ち込んで検索した類似事件の量刑データが裁判員の手元に配られ、裁判長以外に2人いる裁判官のうち1人が内容を説明した。

 「まず、あなたの意見を書いてください。懲役の年数は幅を持たせても構いません」と述べ、裁判員と裁判官計9人全員に紙が配られた。

 裁判員を務めたある男性は、裁判官が「懲役△~□年」と書いているのを見た。男性は「懲役〇~□年」と記した。裁判官が用紙を回収し、ホワイトボードに内容を書いていく。

 「懲役□~◇年」「懲役△年」―。9人の意見はバラバラ。それをたたき台にして評議が進められた。

 ある裁判員は「人一人の命を奪い、遺族も悲しんでいるのに、懲役〇年なんて短すぎる」と主張する。男性は「正義感が強い人だな。一番重い刑を書いたのはこの人だろう」と推測した。

 「被害者は優しい人。そんな人に暴行し、死亡させるなんて」と被告の悪質さに焦点をあてる裁判員もいた。被告の気持ちを想像してみようと、凶器を手にして事件当時の状況も再現してみた。

 男性は「被害者の行動に疑問を持ったが、最後まで分からなかった。検察官も弁護人も、被告と被害者の関係をもっと掘り下げてほしかった。結局、僕らも納得はしたんですけど」と振り返る。

 裁判長を含め裁判官3人はあまり意見を言わない。男性は「やはりプロは違うな」と思った。

 「意見を変えるのはいつでもどうぞ。乗り降り自由です」と裁判長。評議が進むにつれ、裁判員の意見はどんどん変わっていった。

 男性は「ほかの裁判員の意見には強い根拠がない」と感じ、一貫して比較的軽い刑を求めた。

 最初の投票結果をたたき台にした議論は2時間近く続き、ようやく休憩に。男性は評議室の隅に用意されたお茶を飲み、一息ついた。


(共同通信社 2010年04月02日)


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裁判員制度とは

 有権者から無作為に選ばれた裁判員6人と裁判官3人が原則審理し、殺人など重大事件の被告が有罪かどうかを判断した上、有罪の場合は刑も決める。