裁判員をよむ

連載企画

評議の様子

遺体写真「気分どうか」 白板に争点、質問自由

 ある朝、男性は生まれて初めて地元の地裁に出向いた。それから約1時間半後には、被害者が死亡した事件の裁判員に選ばれ、評議室へ。楕円(だえん)形のテーブルやホワイトボードなどが置かれ、大手企業の会議室のようだ。

 「名前を使わないように番号で呼びますね」。裁判長は自己紹介後、男性やほかの裁判員5人、補充裁判員を見渡しながら言った。それぞれの趣味などについて雑談しながら昼食の弁当を食べ、法廷に向かった。

 裁判員と裁判官が居並ぶ法壇は「思っていた以上に高く、(廷内の人を)見下している感じがした」と男性。数日にわたる審理は「話を聞くだけで、ものを考える余裕がなかった」。被害者の遺族の供述調書が読み上げられたときなどは、男性は被告の表情をうかがった。

 法壇の後ろに小さい部屋があった。やはり会議室のようなところで、短時間の休憩時はここで過ごす。「論議なんてほとんどせず、休むだけ」と男性は振り返る。直前の法廷の内容について、頭の中を整理するのに精いっぱいだったという。

 被害者の遺体の写真を見た際、裁判長は「気分は悪くないですか」と裁判員を気遣ったが、男性は「遺体も見ないで、重大な判断はできない」と考えていた。

 裁判長は「審理の中で質問があったら自由にしてください」と勧めた。男性は現場に残された遺留品などに関して疑問点があったが、被告人質問のやりとりで解消した。審理が終わった。

 評議室のホワイトボードには、争点やそれについての検察側、弁護側の主張などが個条書きされていた。

 「今回は被告・弁護側が事実を認めています。有罪で問題はないと思います。量刑が争点です」と裁判長が切り出し、最終評議が始まった。

 量刑について裁判員や裁判官の意見が分かれた場合、裁判官1人以上を含む過半数の意見が判決となる―。裁判長のほかに2人いる裁判官のうち1人が、多数決で刑を決める方法を説明した。

  ◇  ◇  ◇

 裁判員裁判の評議はどんな様子なんだろう。どのようにして判決の内容が決まっていくのか。守秘義務に配慮しつつ、ある裁判員経験者の話を基に再現してみる。


(共同通信社 2010年04月02日)


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裁判員制度とは

 有権者から無作為に選ばれた裁判員6人と裁判官3人が原則審理し、殺人など重大事件の被告が有罪かどうかを判断した上、有罪の場合は刑も決める。