公判後の被告
「一審尊重おかしい」 控訴審、仏は市民増やす
昨年12月1日の東京高裁。全国初の裁判員裁判となった殺人事件で、東京地裁が懲役15年(求刑懲役16年)を言い渡した藤井勝吉(ふじい・かつよし)被告(72)の控訴審が始まった。

全国初の裁判員裁判に続き、初の控訴審も担当した伊達俊二弁護士(右)=09年8月、東京・霞が関の司法記者クラブ
一審の法廷と異なり、法壇には裁判官3人だけが着席している。弁護人が控訴趣意書を朗読後、被告人質問に。
弁護人「一審では、早く競馬に行きたいから事件を起こしたという認定になっていますが」
被告「そんなことはありません」
藤井被告は強い口調で反論した。その後、被害者の遺族が「控訴した被告に強い憤りを感じる」などと意見陳述。一審の審理には約8時間半が費やされたが、控訴審は約1時間で終わった。
一審と同じ弁護人の伊達俊二(だて・しゅんじ)弁護士は控訴趣意書で、東京地裁判決について(1)犯行動機に競馬や前日の飲酒を含めたのは誤り(2)「やるならやってみろ」という被害者の挑発するような発言があったことを認めないのも誤り(3)懲役15年は類似の事件と比べて不当に重い― などと指摘した。
しかし同月17日、東京高裁は伊達弁護士の主張をことごとく退け、被告側の控訴を棄却した。
「エリート裁判官には期待していないし、弁護人もわたしの意見を聞かずに方針を決めた。従来なら懲役10~12年。裁判員裁判で見せしめのように重くされた」。藤井被告は控訴審判決後、東京拘置所で記者に不満をぶちまけた。藤井被告は納得できず、上告した。
裁判員裁判の控訴審判決2件目となった今月15日の福岡高裁。やはり懲役6年の一審判決を支持し、殺人罪に問われた被告の控訴を棄却した。
2008年11月に最高裁司法研修所が公表した「控訴審では、裁判員裁判の一審判決をできる限り尊重すべきだ」とする報告書が実務の指針となっている可能性があり、福岡高裁の被告弁護人を務めた山本一行(やまもと・かずゆき)弁護士は「一審をチェックする高裁が、裁判員裁判の判断を優先するというのならば、それはおかしい」と疑問を投げ掛ける。
「国民参加の判断を裁判官だけで覆すのは難しい」とある裁判官。ただ同様に市民から選ばれた「参審員」と裁判官で重大事件を審理しているフランスでは「一審より多い国民で点検すれば、控訴審判決は納得してもらえる」(同国司法官)として参審員9人、裁判官3人の一審に対し、控訴審は参審員12人、裁判官3人で審理している。
(共同通信社 2010年01月23日)

