裁判員をよむ

連載企画

公判後の被告

「被害者の落ち度認めぬ」 報道による先入観も指摘

 昨年11月上旬、富山刑務所の面会室。「求刑の8掛けぐらいと聞いていたので、ちょっと重かった。一般人が先入観を持たずに裁判できるのか。被害感情も重視されやすい」。穴の開いたアクリル板越しに、坂井敏典(さかい・としのり)受刑者(29)=面会当時被告=は記者に裁判員裁判への不満を漏らした。

富山刑務所

坂井敏典受刑者が服役する富山刑務所=1月18日、富山市(了)

 坂井受刑者は交際している女性の悪口を言った知人の男性=当時(61)=をハンマーで殴り、殺害したとして殺人罪などに問われ、富山地裁の裁判員裁判で昨年10月、懲役17年(求刑懲役20年)を言い渡された。

 逮捕当初、強盗目的と疑われ、それが報道されたことで、裁判員は予断を持っていたのではないかと考えている。また男性1人、女性5人という裁判員の構成にも不満があるという。「男性が多ければ、自分が交際相手のことを思っている気持ちが伝わったはずだ」

 ただ、公判で裁判員から「思いとどまれなかったのか」と質問されたことや、判決の際に更生を願う裁判官と裁判員のメッセージが伝えられたことには「ありがたい。ちゃんと審理してくれたと感じた」とも話す。

 坂井受刑者は控訴せずに服役し、その後、記者にあてて「取り調べもひどかった。すべて録画すべきだ」などとつづった手紙を寄せた。

 「被害者にも落ち度があったのに認めてくれなかった。素人に裁判は無理だ」。昨年8月、全国初の裁判員裁判となった殺人事件の東京地裁判決で懲役15年(求刑懲役16年)とされた藤井勝吉(ふじい・かつよし)被告(72)=上告中=も、東京拘置所で納得いかない心境を明かした。

 一方、さいたま地裁で全国2件目の裁判員裁判の被告となった男性受刑者(36)のように「裁判員は自分の気持ちを分かってくれたと思う」(弁護人による)として、市民参加の裁判を評価する被告もいる。

 「裁判自体が初めてなので分からない」。昨年11月に千葉地裁であった覚せい剤密輸事件の裁判員裁判で、無罪を主張したが、実刑を言い渡されたスペイン人のオルキン・モンポ・フェルナンド被告(38)=控訴中。記者が千葉刑務所で、陪審制のスペインとの違いも含めて裁判の感想を尋ねると、こう答え、無実を訴え続けた。

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 2年目に入った裁判員裁判。昨年判決を受けた被告はどう考えているのか。また判決で相次いだ保護観察や多くの裁判員が知りたいと話す矯正の現場、裁判官だけの控訴審の実情はどうなっているのか。それぞれリポートする。


(共同通信社 2010年01月23日)


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裁判員制度とは

 有権者から無作為に選ばれた裁判員6人と裁判官3人が原則審理し、殺人など重大事件の被告が有罪かどうかを判断した上、有罪の場合は刑も決める。