裁判員をよむ

連載企画

参加者の戸惑い

対応分かれる裁判所 守秘義務「負担に感じる」

 「もっと重くてもいいと思った」。今月5日、パチンコ店に放火したとして、現住建造物等放火罪などに問われた被告に懲役9年の判決を言い渡したさいたま地裁の裁判員経験者は記者会見で、こんな感想を述べた。

裁判員経験者らの記者会見

裁判所職員が記者の質問に割って入った和歌山地裁の裁判員経験者らの記者会見=2009年9月、和歌山地裁

 記者の「弁護側が主張した懲役4年と、検察側求刑の懲役10年には開きがあるが、判断に苦しんだ部分はなかったか」という質問に答えた。

 ▽相次ぐ報道自粛要請

 「質問はセーフだが、答えはアウト」。裁判員を務めた人が担当した判決の当否を述べることを禁じた裁判員法に違反するとして、地裁職員は報道の自粛を求めた。

 さいたま地裁と同様に放火事件を審理した横浜地裁(今月8日判決)の会見でも「自分が思っていた結果だった」という裁判員経験者の発言について、地裁は報道しないよう要請した。

 一方、強盗強姦(ごうかん)事件の判決後の会見で「求刑通りでよかった」と明かした青森地裁の裁判員経験者の発言をめぐり、地裁は「裁判員法に違反する恐れがある」と指摘したが、報道するかどうかは各社の判断に委ねた。

 こうした裁判所による報道の自粛要請や裁判員法違反の指摘は、10件近くに上っている。

 強盗殺人事件の被告に無期懲役を言い渡した和歌山地裁の会見では、記者が「自分の意見が判決にどれくらい反映されましたか」と質問。裁判員を務めた男性が言葉に詰まると、地裁職員が「困っていらっしゃるので別の質問に」と割って入った。

 ただ同様の質問は各地裁の会見でもあり、裁判員経験者は「みんなの意見をまとめて一つにした感じだ」(大阪地裁)、「自分が感じたことも言えての結果です」(福岡地裁)などと答えたが、裁判所は何も言わず、対応は分かれている。

 ▽範囲あいまいなまま

 「守秘義務について一番真剣に考えているのは裁判員。不安を感じている彼らに違反させてはいけないという思いが働いてしまう。ただ微妙なニュアンスで判断するので物差しは難しい」

 さいたま地裁の加藤和広総務課長はこう話す。さいたま地裁では、これまでに4件の裁判員裁判があり、うち3件の会見で裁判所職員が報道自粛などを求めた。

 裁判員やその経験者の守秘義務については、国会審議で「範囲を明確化するように」と付帯決議されたが、裁判所は「感想なら述べていい」と説明するだけで、あいまいなまま。ある地裁で補充裁判員を務めた人は「どこまで話していいのか、分からない。すごくではないが、負担に感じている」と心境を明かした。


(共同通信社 2009年10月31日)


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裁判員制度とは

 有権者から無作為に選ばれた裁判員6人と裁判官3人が原則審理し、殺人など重大事件の被告が有罪かどうかを判断した上、有罪の場合は刑も決める。