参加者の戸惑い
どちらに「共感」するか 刑軽重決める双方の訴え
最初の裁判員裁判となった8月の東京地裁の殺人事件。弁護人はこれまでの裁判と同様に「検察官の求刑(懲役16年)は重すぎて不当」などと訴えたが、判決は懲役15年となり、裁判員経験者の1人は「(検察官の求刑に対して)弁護人は何年が妥当だと思っているのかを知りたかった」と指摘した。

裁判員経験者が検察官の「執行猶予も考慮に値する」との求刑に驚いたことを明らかにした記者会見=2009年10月22日、さいたま地裁
▽具体的に刑提示へ
この感想の影響か、その後、弁護人が「懲役5年以内が妥当」(津地裁、判決は懲役6年6月)などと具体的に刑を提示するケースが相次ぐ。すると、今度は弁護人のこうした意見に首をかしげる裁判員が現れる。
「弁護人の『懲役4年が適切』という主張はないだろうと思った」。今月5日に放火事件の被告に判決を言い渡したさいたま地裁で裁判員を務めた男性は、こう振り返った。判決は懲役9年(求刑懲役10年)だった。
青森地裁は9月4日、強盗強姦(ごうかん)事件の被告に求刑通り懲役15年を言い渡した。弁護人が求めた懲役5年との隔たりは大きく、裁判員経験者の1人は「検察官から事件の悲惨さを聞いた後は、弁護人の主張が理解できなくなった」と打ち明ける。
一方、放火事件の被告に執行猶予の判決を言い渡した秋田地裁。裁判員だった1人は「弁護人のジェスチャーはオーバー気味だったが、気持ちは伝わった」と話す。
「青森の5年は言い過ぎだと思った。あまり非常識だと、かえって裁判員の反発を招く」と既に裁判員裁判を経験した弁護士。裁判員裁判に意欲を示す別の弁護士は「分かりやすく伝えるだけでは足りない。弁護側、検察側のどちらが裁判員の『共感』を得られるかで刑の軽重が決まるのではないか」とみている。
▽「猶予考慮」に驚く
今月21日、さいたま地裁の裁判員裁判。カラーコピー機で偽造した一万円札を使ったとして通貨偽造・偽造通貨行使罪に問われた会社員に対し、検察官は懲役3年を求刑した上で「執行猶予も十分考慮に値する」と述べた。裁判員らは「検察側と弁護側は対立するものと思っていたので、びっくりした」と驚いた。
さいたま地検の幹部は「同種の事件と比べると執行猶予もおかしくはないケース。ひたすら厳罰を求めるのは不自然で、言わないのは裁判員にも失礼だと考えた」と説明する。
検察側は組織的に、プレゼンテーションソフトや画像を多用する「ビジュアル重視」の立証を各地で進める一方、「こちらを向いて、まず話を聞いてください」などと語りかけ、あえて資料を配らずに裁判員へ訴えかける手法も目立っている。
(共同通信社 2009年10月31日)

